初穂商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

初穂商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

初穂商事は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、内装建材、エクステリア、住環境関連資材の販売を主力とする専門商社です。2025年12月期は過去最高の売上高を更新し増収となった一方で、人件費を中心としたコスト増加の影響により経常利益は二期連続の減益となりました。持続的成長に向け体制強化を進めています。


※本記事は、初穂商事株式会社の有価証券報告書(第68期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 初穂商事ってどんな会社?


同社は内装建材やエクステリア商品の販売を通じて、快適な社会づくりに貢献する建設資材の専門商社です。

(1) 会社概要


1958年に設立され、1974年に小牧流通センターを開設し資材販売を拡大しました。1995年に株式店頭登録を行い、2004年にジャスダック証券取引所に上場しました。2019年にはアイシンを子会社化しエクステリア事業を強化しており、2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。

従業員数は連結で485名、単体で298名です。筆頭株主は白百合商事で、第2位は創業家出身であり代表取締役社長を務める斎藤悟氏、第3位は取引先を対象とする持株会のハツホ共栄会です。

氏名 持株比率
白百合商事 16.62%
斎藤 悟 10.80%
ハツホ共栄会 6.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は斎藤悟氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
斎藤 悟 代表取締役社長 1980年同社入社。常務取締役静岡営業所長、常務取締役管理本部長等を経て、2001年より現職。
志岐 義幸 取締役副社長営業本部長兼西日本地区統括 1982年同社入社。福山営業所長や営業本部長等を経て、2024年より現職。
月東 達也 取締役住環境関連事業統括兼小牧営業所長 1984年同社入社。豊橋営業所長や中部地区鉄鋼二次製品統括等を経て、2023年より現職。
渋川 信幸 取締役東日本地区統括 2009年同社入社。北関東営業所長や執行役員東日本地区統括等を経て、2023年より現職。
成田 哲人 取締役経営管理室長 2010年同社入社。経営管理室長や執行役員経理部長等を経て、2023年より現職。
斎藤 豊 取締役(常勤監査等委員) 1993年同社入社。内部監査室長や取締役総務部長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、磯部隆英(公認会計士)、森美穂(弁護士)、大橋伸子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「内装建材事業」、「エクステリア事業」、「住環境関連事業」を展開しています。

内装建材事業


主に天井仕上げ工事や間仕切り工事を行う内装仕上げ工事業者向けに、軽量鋼製下地材や石膏ボード等の内装工事用資材を販売しています。

建設工事業者などから商品代金を受け取る収益モデルです。事業運営は同社が行っています。

エクステリア事業


ハウスメーカーや外構工事業者等向けに、カーポートや物置、フェンスや石材等のエクステリア商品を販売しています。

商品の販売代金等を収益源としています。事業運営は子会社のアイシンが行っており、商品の輸送業務も管轄しています。

住環境関連事業


屋根工事や外装板金工事といった建設工事業者向けにカラー鉄板などを、卸業者やメーカー向けに建築金物や鉄線等の販売を行っています。

卸売代金や販売代金を収益源としています。事業運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加傾向にあり、直近では354億円規模に成長しています。一方で経常利益は2023年12月期をピークに二期連続の減益となっており、利益率も直近は4.1%に低下しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 299億円 318億円 344億円 348億円 354億円
経常利益 9億円 14億円 16億円 15億円 14億円
利益率(%) 3.1% 4.5% 4.6% 4.3% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 6億円 8億円 7億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加したものの、営業利益は減少しています。人件費などのコスト増加が影響し、売上総利益率および営業利益率ともにわずかに低下傾向が見られます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 348億円 354億円
売上総利益 62億円 62億円
売上総利益率(%) 17.8% 17.6%
営業利益 13億円 12億円
営業利益率(%) 3.7% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比45%)、荷造運搬費が4億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


内装建材事業と住環境関連事業は前年並みの売上を維持しました。エクステリア事業は販促キャンペーンや物件受注の増加が寄与し、売上規模が伸長しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
内装建材事業 181億円 181億円
エクステリア事業 123億円 129億円
住環境関連事業 45億円 45億円
連結(合計) 348億円 354億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 6.3億円 21.7億円
投資CF -3.1億円 -11.0億円
財務CF -6.6億円 -6.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「建築資材の取扱いを通して、より快適な夢と希望あふれる社会づくりに貢献する」ことを基本理念としています。損得より先に善悪を考え、顧客のためのサービスを提供してともに栄えることを目指し、広く社会に貢献できる企業価値の更なる向上を掲げています。

(2) 企業文化


人を大切にし、努力が成果につながる職場環境を提供することを重視しています。社員一人ひとりの能力の更なる発見を目指し、プロフェッショナル集団となる人材を育成することで、「100年企業」に向けて持続的に成長する文化を根付かせています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、内装建材事業、エクステリア事業、住環境関連事業の三本柱で多角的な成長を続け、建設資材商社のナンバーワンを目指しています。資本コストや株価を意識した経営を実現するため、以下の数値目標を掲げています。

・2027年までに連結売上高400億円
・ROE8%超の維持継続
・PBR1倍の達成

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業への追加投資やM&A等により収益性と成長の機会を両立させます。グループシナジー効果の最大化を図り、販売・物流拠点の共有化による業務効率化を進めます。また、高水準のROE維持を意識した経営に注力し、最適な資本構成の明確化や非財務情報の発信充実によりIR活動の強化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「100年企業」を実現するための経営基盤づくりとして、人材の育成・確保を最重要課題と位置付けています。多様な学びの機会を提供する教育制度の充実や、柔軟な働き方の本格導入を進め、社員の成長と会社の成長がリンクする魅力ある職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.2歳 13.7年 5,440,995円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 79.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月あたりの平均残業時間(11.2時間)、有給休暇取得率(57.2%)、離職率(3.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人口の減少に伴う市場縮小リスク


日本国内の少子高齢化による新設住宅戸数の減少や非住宅需要の伸び率低下、労働者不足による受注制限が発生した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は多角的な事業展開や成長市場への参入により、環境変化に適応できる経営基盤づくりを進めています。

(2) 特定の取引先への依存によるリスク


主力販売商品である軽量鋼製下地材やエクステリア資材において、一定割合を特定の取引先から購入しています。取引関係に急激な変化が生じたり、契約条件の大幅な変更や取引ルート等の変更が発生した場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 物流コスト上昇及び配送制限によるリスク


物流業界における時間外労働の上限規制の適用や原油価格の高騰による配送コストの上昇、ドライバーの人手不足による配送制限が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は協力会社との良好な関係維持やドライバーの待遇改善による人員確保に努めています。

(4) 人材育成・確保におけるリスク


「100年企業」を実現できる経営基盤づくりを進めるためには、優秀な人材の育成・確保が不可欠であり、必要な人材を確保できない場合、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。同社は教育に対する投資やチャレンジできる環境整備、待遇面の改善に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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