※本記事は、コスモ・バイオ株式会社の有価証券報告書(第43期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コスモ・バイオってどんな会社?
ライフサイエンスに関する研究用試薬、機器および受託サービスの仕入販売を展開する専門商社です。
■(1) 会社概要
1983年8月にバイオの基礎研究試薬販売事業を目的として設立されました。1986年4月に現在のコスモ・バイオに社名を変更し、バイオ研究用機器販売を開始しています。2000年9月にMBOによりコスモ石油から独立しました。2005年9月にジャスダック証券取引所に株式を上場し、現在は様々なライフサイエンス研究関連製品の開発や製造も手掛けています。
従業員数は連結で182名、単体で144名です。筆頭株主はベンチャーキャピタルの東京中小企業投資育成で、第2位は信託業務等を行うみずほ信託銀行、第3位は投資ファンドのUH Partners 2 投資事業有限責任組合です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東京中小企業投資育成 | 20.30% |
| みずほ信託銀行 退職給付信託 コスモ石油口 再信託受託者 日本カストディ銀行 | 10.15% |
| UH Partners 2 投資事業有限責任組合 無限責任組合員 UH Partners 2 | 7.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は柴山法彦氏が務めています。役員のうち4名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柴山法彦 | 代表取締役社長 | 1994年丸善石油化学入社。2000年同社入社。2016年総務部長兼情報システム部長、2017年取締役などを経て、2024年3月より現職。 |
| 栃木淳子 | 常務取締役企画部長 | 1998年同社入社。2013年製品情報部長、2017年取締役製品情報部長、企画部長などを経て、2023年3月より現職。 |
| 林政徳 | 取締役財務部長 | 1999年協和発酵工業(現協和キリン)入社。2012年同社入社。2019年財務部長などを経て、2023年3月より現職。 |
社外取締役は、佐藤和寿(元丸善石油化学取締役)、佐々木治雄(佐々木会計事務所所長)、島村和也(島村法律会計事務所代表)、原口純一郎(東京中小企業投資育成特任参事役)です。
2. 事業内容
同社グループは単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) ライフサイエンスの商社事業
世界各地にある約500社の仕入先から最先端の商品を導入し、基礎研究に携わる研究者に提供しています。主力の研究用試薬のほか、研究用機器・消耗品、創薬研究支援や実験代行などの各種受託サービスを展開しています。
収益は、大学や公的研究機関、企業の研究者への商品の卸売販売やサービス提供により得ています。運営は主にコスモ・バイオおよびビーエム機器が行っており、米国子会社を通じて全世界向けへの輸出事業も展開しています。
■(2) 製品開発・製造および自社受託サービス事業
大学等の研究機関と提携しながら、自社ブランド品の開発や製造、自社受託サービスの提供を行っています。輸入細胞では代替できない細胞の製造や、市場にない試薬の開発、ペプチドのカスタム合成などに対応しています。
収益は、研究機関や製薬企業の創薬研究向け製品販売および抗体作製等の受託サービスから得ています。また、鶏卵バイオリアクター技術を用いた有用タンパク質の大量製造事業も展開しており、運営は同社が主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を比較すると、売上高は92億円から108億円へと拡大傾向にあります。経常利益は一時的に減少した時期がありましたが、直近では5億円まで回復しており、安定した収益基盤を維持しながら堅調に推移しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 96億円 | 93億円 | 100億円 | 108億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 8億円 | 7億円 | 4億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 11.9% | 8.3% | 7.0% | 3.6% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 4億円 | 5億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の100億円から当期は108億円へと増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は30%台で安定しており、営業利益率も前期と同水準を維持しつつ、利益額は着実に成長しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 108億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 37億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.2% | 34.4% |
| 営業利益 | 3億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 3.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が10億円(構成比30%)、賞与が2億円(同6%)を占めています。なお、売上原価の構成比についての詳細な記載はありません。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動による収入と資産の売却等による投資活動からの収入を、借入金の返済などの財務活動に充てる改善型の傾向を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | 6億円 |
| 投資CF | -2億円 | 0.4億円 |
| 財務CF | -5億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「生命科学の進歩に資する」を目的とし、ライフサイエンスに携わるすべての人に科学を届けるための機能的な組織となることを目指しています。生命科学の進歩の一助になるよう、製品やサービス、情報の品質を高め、社会から認められる付加価値を誇りとし、持続的な成長を追求しています。
■(2) 企業文化
社会と共に未来を創り出す企業を目指し、「ライフサイエンス(生命科学)の力で次代の価値を共創する」というビジョンを掲げています。「研究成果の創出を加速させ、社会課題の解決に貢献する」「信頼できる情報・知見を、世界の研究者と社会へ届ける」「挑戦と共創を通じて、やりがいと生きがいを実現する」という方針を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は企業価値の向上を核となる目標として掲げ、以下の経営目標の達成を目指しています。IR活動の充実や株主還元の強化、DXによる業務効率化を通じた既存ビジネスの高収益化に取り組んでいます。
* ROE8%以上の達成
* PBR1倍以上の水準維持
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な企業価値向上と社会的価値の創出を両立させるため、中長期的な戦略を推進しています。社内外のデータを活用したポートフォリオの転換やマーケティング機能の進化に加え、新規事業の本格展開に注力しています。
* ポートフォリオの転換
* マーケティング機能の進化・強化
* 新規事業の本格展開
* グローバル販売の強化
* 事業運営の最適化と強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業成長に必要な人材育成を重点施策とし、従業員がその能力を十分に発揮できる環境整備や、多様な働き方への対応を積極的に進めています。国籍や性別、年齢にとらわれず、創造性に富む多様な人材を採用・育成・登用するとともに、エンゲージメントの向上を重視した人事施策を展開しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.9歳 | 9.1年 | 6,651,310円 |
※平均年間給与は賞与、基準外賃金及び確定給付企業年金の年間積立額を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 39.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 87.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 62.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
※男性労働者の育児休業取得率については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(54%)、経験者採用の割合(66%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ライフサイエンス研究関連費用の支出動向にかかわるリスク
同社グループの既存事業のエンドユーザーは、大学・公的研究機関および企業における研究者が大きな比重を占めています。そのため、公的研究費や企業の収益、研究開発支出が減少した場合、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 仕入先M&Aリスク
同社グループの仕入先の多くは海外企業であり、仕入先のM&Aやこれに伴う日本における販売体制の改編等により、仕入価格や国内販売権に影響を受ける可能性があります。主要な仕入先のM&Aによって商権が喪失・縮小した場合には、業績に影響を及ぼす懸念があります。
■(3) 為替リスク
同社グループの商品の多くは外貨で決済される輸入品であるため、為替変動によって売上原価が変動します。為替予約によるヘッジを実施しているものの、急激な為替相場の変動が生じた場合には、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 業界における競合リスク
ライフサイエンス研究関連商品の国内市場においては、業界内の競合激化から価格競争に陥る可能性があります。マーケティング力の強化や新商品の導入等で差別化を図っていますが、他社との更なる競合の激化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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