※本記事は、セーラー万年筆株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
セーラー万年筆は、文具とロボットの製造販売を主たる事業内容としています。同社グループは、筆記具関連の文具や、プラスチック射出成形品用自動取出ロボット、特注自動化装置などのロボット機器の設計・製造・販売を手掛けています。
セーラー万年筆の単体従業員数は184名、連結従業員数は197名です。セグメントは文具事業、ロボット機器事業、全社(共通)の3つです。
主な国内グループ会社は、プラスなどです。
セーラー万年筆は、2022年5月23日の親会社の異動により、プラス株式会社の子会社となり、プラスグループの一員となっています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
セーラー万年筆は、長年の歴史を持つ文具事業と、現代のロボット機器事業を両輪とする企業です。同社グループでは、従業員が長く働き続けられる環境づくりに力を入れ、多様な働き方を支援する制度を整備しています。人材育成にも注力し、従業員一人ひとりの成長を後押しする方針が示されています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高めであることから、安定した環境でキャリアを築いている従業員が多い傾向が見られます。これは、長期的な視点で働き続けたいと考える方にとって、魅力的な要素となるでしょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 4,020,372円 |
| 平均勤続年数 | 17.3年 |
| 平均年齢 | 42.9歳 |
| 単体従業員数 | 184人 |
| 連結従業員数 | 197人 |
| 単体のグループ内比率 | 93.4% |
同社は、従業員の退職給付に充てるため、積立部分及び非積立部分から成る確定給付制度(退職一時金制度統合型)を採用しています。確定給付型とは、給与や勤続年数に応じて将来の給付額が決まる制度です。この制度は国内および海外の従業員に適用されています。
退職一時金制度も存在します。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、2025年12月31日時点の退職給付債務は7.6億円、年金資産は2.4億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社は、人材を重要な経営資源と位置付け、変化する経営環境に柔軟に対応できる多様な人材の育成に努めています。従業員一人ひとりが新たなことに挑戦し続けるチャレンジ精神を培うため、プラスグループの資格取得支援制度やeラーニングシステムを活用し、スキルアップを支援しています。
また、従業員が働きがいを持って能力を十分に発揮できるよう、社内環境の整備にも力を入れています。具体的には、広島工場の新棟建設や照明LED化による職場環境の改善を進め、業務効率化と従業員満足度の向上を目指しています。
従業員の定着率向上に向けた取り組みとして、健康診断やストレスチェックを活用した健康管理、産業医との連携によるフォロー体制を構築しています。さらに、ノー残業デーの設定や育児休業制度、時短勤務、時差勤務、リモートワークなど、多様な働き方ができる体制づくりを推進しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、提出会社単体のデータを示します。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.76% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.17% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.86% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.41% |
指標及び目標
提出会社単体のデータです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率(目標:2030年までに8.0%) | 4.76% |
| 男性育児休業取得率(目標:100.0%) | 100.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
セーラー万年筆は、文具とロボット機器の製造販売を主たる事業としています。長年にわたり培ってきた技術とノウハウを活かし、国内外の市場で事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、文具事業とロボット機器事業の二つのセグメントで収益を上げています。文具事業は筆記具を中心とした製品を提供し、ロボット機器事業は生産用自動装置を手掛けています。両事業ともに国内外の市場動向や原材料価格、為替変動が経営に影響を与える要因となっています。
文具事業
文具事業では、万年筆、ボールペン、シャープペンシルなどの筆記具の製造販売、および文具の仕入販売を行っています。国内市場では、独自の特殊ペン先万年筆やインクのラインナップ拡充に力を入れ、高価格帯の限定製品が好調に推移しています。海外市場では、欧州で高価格帯製品の売上が伸びる一方、中国の景気停滞や北米の関税政策により中価格帯製品が苦戦する状況が見られます。収益は、筆記具および関連製品の販売から得ています。運営は、セーラー万年筆が製造販売を担い、国内文具営業はプラスに委託、海外販売はSailor Pen Europe SASが行っています。
ロボット機器事業
ロボット機器事業では、プラスチック射出成形品用の自動取出ロボットや、二次・三次工程の自動化、FA化システムなどの特注自動化装置、およびその補修部品の製造販売を行っています。国内市場では、企業の設備投資計画の中止や先送りが多く発生し、厳しい状況が続いています。海外市場では東南アジアが伸長しましたが、米国市場では計画実行に遅れが生じました。収益は、取出ロボットや特注自動化装置の設計、製造、販売から得ています。運営は、セーラー万年筆が設計、製造、販売を担い、海外販売はTHE SAILOR(THAILAND)CO.,LTD.が行っています。
| セグメント | 売上高(2024年12月期) | 売上高(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 文具事業 | 33.9億円 | 33.4億円 |
| ロボット機器事業 | 12.9億円 | 9.6億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向にあります。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は、直近の当連結会計年度において損失幅が縮小しました。特に親会社株主に帰属する当期純損失は、前期に比べて大幅に改善しています。これは、文具事業におけるコストダウン施策と高価格帯製品の販売注力が奏功し、セグメント利益が黒字転換したことが主な要因です。一方で、ロボット機器事業は引き続き損失を計上しています。営業活動によるキャッシュ・フローは増加に転じており、本業からのキャッシュ創出能力は改善の兆しを見せています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 53.9億円 | 50.3億円 | 45.6億円 | 46.8億円 | 43.0億円 |
| 経常利益 | 1.0億円 | △1.5億円 | △3.3億円 | △2.2億円 | △1.9億円 |
| 経常利益率 | 1.9% | △2.9% | △7.2% | △4.6% | △4.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 53百万円 | △1.9億円 | △15.1億円 | △11.4億円 | △2.2億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 3.67 | △8.13 | △50.94 | △38.65 | △7.48 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、前期からわずかに減少しています。これは、連結従業員数が減少したものの、売上高の減少幅がそれを上回ったためと考えられます。一方、従業員1人あたり営業利益は、前期の損失から当期は損失幅が縮小しており、生産性の改善傾向が見られます。これは、文具事業の損益改善が全体に寄与したことによるものです。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 22.1百万円 | 21.8百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △1.3百万円 | △1.0百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、事業活動による資金の動きや自己資本の状況から、現在の経営状態を把握することができます。特に、継続企業の前提に関する重要な事象が存在していると認識されています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤を見ると、自己資本比率は当期で24.0%となっており、前期の26.4%から減少しています。これはプライム市場の製造業平均と比較すると低い水準を示しています。ROE(自己資本利益率)も当期で△19.3%と前期の△62.8%から改善はしているものの、引き続きマイナスとなっています。手元資金である現金及び預金は当期で5.3億円と、前期の5.8億円から減少している状況です。これらの数値は、同社グループが財務面で課題を抱えていることを示しており、雇用や給与の安定性を検討する上で注視すべき点となります。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 12.6億円 | 10.5億円 |
| 自己資本比率 | 26.4% | 24.0% |
| ROE(自己資本利益率) | △62.8% | △19.3% |
| 現金及び預金 | 5.8億円 | 5.3億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは当期で34百万円の増加となりました。これは前期の4億5百万円の減少から改善しています。主な増加要因は売上債権と棚卸資産の減少であり、税金等調整前当期純損失や仕入債務の減少が主な減少要因となっています。投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得による支出などにより75百万円の減少となりました。その結果、営業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュフローは41百万円のマイナスとなっています。財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金の純増加があったものの、リース債務や長期借入金の返済により12百万円の減少となりました。これらの資金の流れは、本業での資金創出がまだ十分ではなく、投資を賄いきれていない状況を示しており、今後の事業回復と財務基盤の改善が雇用安定性や給与水準に影響を与える可能性があります。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △4.1億円 | 34百万円 |
| 投資CF | △68百万円 | △75百万円 |
| 財務CF | 3.9億円 | △12百万円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △4.7億円 | △41百万円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
同社グループは、連続して営業損失および親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在していると認識されています。しかし、親会社からの資金支援確約などの施策により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断されています。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの文具事業では、万年筆ユーザーの規模が想定を超えて急速に減少した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、樹脂材、金属材、金地金などの原材料価格が高騰し、安定的に調達できなくなった場合も、総利益や営業利益に影響を与えるリスクがあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループの中長期的な成長は従業員個々人の力量に大きく依存するため、適切な時期に優秀な人材を確保し雇用を維持することが必須であると認識されています。人材の確保が計画通り進まなかった場合や既存の人材が社外に流出した場合には、将来の成長や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
セーラー万年筆は、「文化の発展に貢献する万年筆をつくる」という創業者の経営理念を掲げています。手書き文化を支える先駆者であり続け、人びとの感性をゆさぶるブランドになることを目指しています。ものづくりへの思いと挑戦する魂を大切にする企業です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
セーラー万年筆の経営の基本方針は、創業者・阪田久五郎の経営理念である「文化の発展に貢献する万年筆をつくる」です。同社グループは「お客さまに喜んでいただきたい」という思いから、型破りな発想や遊び心、さらなる機能の追求を大切にしています。
「手書き文化を支える先駆者であり続けながら、自らも厳しい目を持つ書き手であれ」というこだわりを持ち、精緻な技術と本物の美しさを追求しています。人びとの感性をゆさぶるブランドになること、ものづくりへの思いと挑戦する魂を続けることを目指しています。
ブランドロゴの「錨」は希望・信頼の象徴であり、技術力の高さと繊細で日本的な美意識を込めています。コーポレートカラー「SAILOR BLUE - 黎明」は、夜明けの意味と共に新しいことが始まる時を指し、創業者の希望を表現しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、「働きがい」と社内の意識改革に関する方針を掲げています。事業計画を全社員で共有し、目標を不屈の精神と創意工夫を持って最後まで粘り強くやり遂げる「執着心」を醸成することを目指しています。
社員一人ひとりが自らに枠を設けず、勇気をもって新たなことに挑戦し続けるチャレンジ精神を大切にしています。プラスグループの一員として、社内に新しい感覚や風土を取り入れ、セーラー万年筆社員の内なる意識変革を促しています。
人材育成方針では、人材を重要な経営資源と位置付け、変化に柔軟に対応できる多様性のある人材を育成する必要があると考えています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、連続して営業損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上している事実を厳粛に受け止め、抜本的な経営改革を実行していくとしています。組織・文化・人材・社会的責任に関わる重点テーマとして、人材育成と社内環境整備に関する方針を掲げています。
具体的には、女性管理職比率の向上、男性育児休業取得率の向上、男女間賃金格差の是正に取り組んでいます。女性の勤続年数が伸ばしやすい環境作りとして、短時間正社員制度の導入などを進めています。
また、万年筆のサステナブル性をアピールし、修理やメンテナンスを充実させることで長く愛用してもらえる企業活動を推進しています。従業員が安心・安全に働ける職場を目指し、職場環境の整備・改善も継続的に実施しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
セーラー万年筆は監査等委員会設置会社として、社外取締役が過半数を占める監査等委員が取締役会に議決権を持って参加する体制を採用しています。これにより、経営の監査・監督機能の強化と意思決定における透明性・客観性の向上が図られています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の筆頭株主は事業会社であるプラスであり、同社グループの資本構成において大きな存在感を示しています。上位株主には個人株主や取引先持株会も名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| プラス | 57.81% |
| 山中 央行 | 1.35% |
| セーラー万年筆取引先持株会 | 1.33% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は8名(男性6名・女性2名)で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は田村光氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田村 光 | 代表取締役社長 | 1988年3月プラス株式会社入社。2019年8月同社出向 執行役員文具事業部経営企画本部商品開発部長。2025年3月同社代表取締役社長より現職。 |
| 木村 孝 | 常務取締役 管理本部長 | 1987年4月同社入社。2022年9月執行役員管理本部長。2025年1月常務取締役管理本部長より現職。 |
| 和田 直樹 | 常務取締役 開発本部管掌 | 1989年4月ぺんてる株式会社入社。2023年6月同社出向 執行役員製造本部長。2025年10月同社常務取締役開発本部管掌より現職。 |
| 米澤 章正 | 取締役 製造本部長 | 1985年4月同社入社。2024年6月取締役管理本部長。2025年10月取締役製造本部長より現職。 |
| 佐山 嘉一 | 取締役 営業本部長 | 1987年4月同社入社。2024年4月同社取締役営業本部長。2025年5月同社取締役営業本部長より現職。 |
社外取締役は、中澤俊勝氏(公益財団法人全国有料老人ホーム協会理事長・常勤監査等委員)、熊王斉子氏(弁護士・監査等委員)、長谷川弥生氏(弁護士・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、監査等委員である社外取締役が取締役会の議決権を有することで、経営の監督機能と意思決定の透明性を強化しています。これにより、株主をはじめとするステークホルダーの期待に応える体制を構築しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社は、企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとして役員報酬を設計しています。基本報酬は月例の固定報酬とし、同社の業績や役職、経営内容、社会情勢、各役割に応じた貢献度合い、在任年数などを総合的に考慮して決定されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 6名 | 70百万円 | 11.7百万円 |
| 社外役員 | 3名 | 10百万円 | 3.3百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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