※本記事は、株式会社千趣会の有価証券報告書(第81期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 千趣会ってどんな会社?
同社は通信販売事業を中心とし、法人向け支援や保険、子育て支援など多様な事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1953年に個人で創業し、1955年にこけし人形の頒布を目的として設立されました。1975年にカタログ事業部を発足させて通信販売を本格化し、1990年には東証・大証一部に上場しました。近年はEC化の推進や子会社の再編を進め、2025年には事業構造改革の一環として大阪本社を売却しています。
現在の従業員数は連結で886名、単体で489名です。筆頭株主は事業提携先である東日本旅客鉄道で、第2位はブレストシーブ、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東日本旅客鉄道 | 12.22% |
| ブレストシーブ | 7.80% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は鈴木聡氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木聡 | 代表取締役社長執行役員 | 2005年入社。ベルメゾン事業本部ホームファッションユニット部長、ママ&チャイルドユニット部長、執行役員等を経て2025年より現職。 |
| 三村克人 | 取締役常務執行役員 | 2008年入社。モバコレ代表取締役社長、ベルメゾン事業本部本部長、取締役、常務執行役員、東京本社代表等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、高杉信匡(弁護士法人淀屋橋・山上合同パートナー)、榊真二(元東急リバブル代表取締役社長)、大平裕子(元三越伊勢丹研究所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、通信販売事業、法人事業、保険事業およびその他の事業を展開しています。
■通信販売事業
インターネットやカタログを中心とした各媒体による通信販売を行っています。主にインテリア・雑貨、ファッション、ママ・ベビー・キッズ等の商品を取り扱い、ターゲット層に合わせた世代別の事業ドメイン展開を進めています。
収益源は一般消費者への商品販売による代金であり、主に千趣会および子会社の千趣会イイハナ等が運営を行っています。商品の荷造・梱包業務は千趣会ロジスティクスサービス、受注業務は千趣会コールセンターが担っています。
■法人事業
通信販売に関連した業務支援ニーズに応えるため、法人顧客に対して物流代行やコールセンターサービス、プロモーション支援などのソリューションサービスを提供しています。株主優待品の受託やギフト、卸事業なども手掛けています。
収益源は法人顧客からの業務受託料や広告料などであり、千趣会のインフラを活用して事業を展開しています。運営は千趣会のほか、子会社の千趣ロジスコや千趣会コールセンターなどが共同で担っています。
■保険事業
ベルメゾン会員を中心とした顧客を対象に、最適な保険選びのサポートやマネーセミナーの開催など、保険サービスの提供を行っています。結婚式場や法人保険、産院等での活動も展開しています。
収益源は、保険会社に対する保険契約の取り次ぎに伴う手数料収入です。本事業の運営は、主に親会社である千趣会が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、関東・関西エリアでの保育施設や学童施設の運営など、子育てに関わる人々に寄り添う子育て支援事業を展開しています。
収益源は、保育施設等の利用者からの利用料収入や関連するサービスの手数料などです。運営は千趣会のほか、子会社の千趣会チャイルドケアが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は減少傾向が続いており、事業の構造改革や不採算商品の見直しを進めています。利益面では経常赤字が継続しているものの、コスト削減効果により赤字幅は年々縮小しています。直近の当期利益については、本社売却に伴う固定資産売却益の計上により黒字へ転換しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 731億円 | 589億円 | 492億円 | 459億円 | 421億円 |
| 経常利益 | 5億円 | -79億円 | -57億円 | -39億円 | -27億円 |
| 利益率(%) | 0.7% | -13.4% | -11.5% | -8.5% | -6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -29億円 | -109億円 | -47億円 | -36億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い売上総利益も減少していますが、販売促進費や支払手数料など注文獲得費用の効率化、および固定費の低減を進めた結果、営業赤字の幅は縮小しています。抜本的な収益改善に向けた取り組みが継続されています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 459億円 | 421億円 |
| 売上総利益 | 235億円 | 213億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.2% | 50.7% |
| 営業利益 | -35億円 | -26億円 |
| 営業利益率(%) | -7.5% | -6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が43億円(構成比18%)、支払手数料が39億円(同16%)、運賃及び荷造費が33億円(同14%)を占めています。また、売上原価は207億円(売上高に対する構成比49%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力である通信販売事業は、ECを主戦場としたビジネスモデルへの転換や不採算商品の改廃を進めた構造改革の影響により減収となりました。一方、法人事業は物流業務や株主優待品の代行受託が堅調に推移し、その他の子育て支援事業も保育施設の運営が順調で増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 通信販売事業 | 399億円 | 360億円 |
| 法人事業 | 39億円 | 40億円 |
| 保険事業 | 5億円 | 4億円 |
| その他 | 15億円 | 17億円 |
| 連結(合計) | 459億円 | 421億円 |
本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -35億円 | -31億円 |
| 投資CF | 3億円 | 99億円 |
| 財務CF | -7億円 | -25億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「良い商品」「良いサービス」をお客様に提供することを通じて、社会に貢献することを基本理念としています。また、株主・顧客・取引先および従業員など、すべての関係者と共存共栄を図り、企業価値を高めることを行動の指針としています。
■(2) 企業文化
社是にある「企業の存在理由は社会貢献にある」という想いを軸に、環境や社会課題の解決に向けた取り組みを進めています。多様なライフスタイルと価値観を理解した上でパートナー企業と共創し、特に女性比率が高く子育て世代が多い同社の顧客に寄り添い、ジェンダー平等の実現や子育てを応援する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「再生計画(2025年~2027年)」を発表し、中核事業である通信販売事業の再成長に向けた抜本的な構造改革を実行しています。最終期である2027年12月期の目標とする経営指標は以下の通りです。
* 連結売上高 500億円
* 連結営業利益 16億円
■(4) 成長戦略と重点施策
従来のカタログ主体のビジネスモデルから、ECを主戦場とした高収益な事業体質への転換を図っています。コアターゲットに向けたマーケティング起点での商品開発により商品力を向上させるとともに、ECモールやリアル店舗展開による顧客とのタッチポイント拡大を進めます。さらに、法人事業でのBtoB強化や、知的財産活用事業など企画開発力を活かした新領域の展開により、ビジネスの拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループが持続的な成長と進化・発展を遂げるため、様々な経験や技能、属性を持った多様な人材が不可欠であると考えています。そのため、多様な人材が積極的に能力を発揮できる人事制度の整備を進めるとともに、心身ともに健康で働き甲斐を感じ、従業員のエンゲージメント向上を促進できる社内環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.5歳 | 10.3年 | 6,160,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.4% |
| 男性育児休業取得率 | 114.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 72.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率の目標(30%以上)、男性育児休業取得率の目標(80%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外生産国への依存リスク
販売する商品の大半を中国などのアジア各国から輸入しているため、これらの地域の政治情勢や経済環境の悪化、為替相場の大幅な変動などが生じた場合、商品の安定供給や調達コストに影響が及び、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 情報システムの障害・セキュリティリスク
業務のほとんどをコンピュータシステムで処理しているため、自然災害やハードウェア・ソフトウェアの障害、サイバーテロなどによりシステムに支障が生じた場合、受注処理や商品出荷業務の停滞、個人情報の漏洩などに繋がり、企業の信頼失墜や業績悪化を招く恐れがあります。
■(3) 通信販売事業における法的規制リスク
景品表示法、特定商取引法、薬機法、製造物責任法など多くの法的規制を受けており、これらに関連する法令の改正や新たな規制の導入、万が一のコンプライアンス違反による規制抵触が生じた場合、企業イメージの悪化や事業継続への支障をもたらす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。