ウィル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウィル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウィルは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、関西・中部・東京圏で不動産の流通、リフォーム、開発分譲などの事業を展開する企業です。地域密着型の店舗展開と住まいのワンストップサービスを強みとしています。直近の業績は売上高149億円、経常利益12億円と増収増益を達成し、順調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社ウィルの有価証券報告書(第31期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウィルってどんな会社?


ウィルは不動産流通、リフォーム、開発分譲など「住まいのワンストップサービス」を展開する企業です。

(1) 会社概要


1995年6月にウィル不動産販売として設立されました。1999年に開発分譲事業、2003年にリフォーム事業を開始しています。2007年にジャスダック証券取引所へ上場し、2008年に現在のウィルへ商号変更しました。その後、中部圏や東京圏へ営業エリアを拡大し、人事コンサルティング等の事業も展開しています。

従業員数は連結272名、単体197名です。筆頭株主は創業者の岡本俊人氏の資産管理を行う事業会社で、第2位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
岡本俊人 56.78%
ウィル従業員持株会 6.83%
岡田 洋子 2.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は田中真次氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 真次 代表取締役社長 2003年同社入社。流通営業の各グループマネージャーを経て、2024年取締役就任。2025年7月より現職。
坂根 勝幸 取締役会長 1997年同社入社。2006年取締役、2014年代表取締役、2019年代表取締役社長を経て、2025年7月より現職。
友野 泉 取締役 1999年同社入社。2005年取締役、2011年代表取締役就任。リノウエスト等の子会社取締役を経て現職。
佐藤 慎二郎 取締役 1999年同社入社。2011年取締役就任。ウィル空間デザインやリノウエストの代表取締役を経て現職。
神野 正和 取締役 2002年同社入社。流通営業の各地域グループマネージャーを歴任し、2024年3月より現職。


社外取締役は、奥田哲久(特定社会保険労務士)、田中豪(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「流通事業」「リフォーム事業」「開発分譲事業」「賃貸事業」「不動産取引派生事業」および「その他」事業を展開しています。

流通事業


関西圏、中部圏、東京圏で不動産売買の仲介業務等を行っています。地域密着型の店舗展開により、対象地域における不動産動向や顧客ニーズ、物件情報等の収集を図っています。

収益源は不動産売買の仲介手数料などです。運営は同社が行っています。

リフォーム事業


中古住宅のリフォームや家具の提案、およびリフォーム工事等の請負業務を行っています。流通事業の顧客に対し、中古物件購入とリフォームを併せた提案営業を推進しています。

収益源はリフォーム工事の請負代金や家具の販売代金です。運営はウィル空間デザインが行っています。

開発分譲事業


戸建住宅や宅地等の仕入、企画、開発、販売業務を行っています。流通店舗に集まる売却情報を活かした適正価格での仕入や、顧客ニーズを反映した自社分譲ブランドの企画開発を推進しています。

収益源は開発物件の販売代金です。運営は同社およびリノウエストが行っています。

賃貸事業


テナント用事業用地や商業施設、シェアハウス等を所有し、運営および賃貸業務等を行っています。単に賃料収入を得ることだけでなく、地域社会が活性化するコミュニティの創出を目指しています。

収益源はテナント等からの物件の賃料収入です。運営は同社およびリノウエストが行っています。

不動産取引派生事業


各事業に付随する損害保険代理業務、生命保険募集業務、ローン事務代行業務に係るファイナンシャルプランニング業務や、引越業者の紹介、販売物件の広告制作業務等を行っています。

収益源は各種手数料や紹介報酬などです。運営は同社、ウィルフィナンシャルコミュニケーションズ、ウィルスタジオが行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、受託販売事業、広告制作事業、経営コンサルティング事業、人事コンサルティング事業等を行っています。

収益源はコンサルティング報酬や受託販売手数料等です。運営は同社、ウィルスタジオ、部活のみかたが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期の業績推移を見ると、売上高は87億円から149億円へと継続的に拡大しています。経常利益も8億円から12億円へと右肩上がりで成長を続けており、強固な収益基盤の構築が進んでいることが伺えます。利益率も概ね7%〜9%台で安定的に推移しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 87億円 95億円 116億円 132億円 149億円
経常利益 8億円 9億円 9億円 10億円 12億円
利益率(%) 9.2% 9.2% 8.1% 7.7% 8.1%
当期利益 4億円 3億円 1億円 3億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増収となり、それに伴い売上総利益および営業利益も増加しています。売上総利益率は16%台、営業利益率は8%台と、ともに前期から改善傾向にあり、事業の収益性が高まっていることがわかります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 132億円 149億円
売上総利益 21億円 24億円
売上総利益率(%) 16.0% 16.4%
営業利益 11億円 13億円
営業利益率(%) 8.5% 8.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3億円(構成比24%)、賞与が2億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である開発分譲事業をはじめ、流通事業やリフォーム事業など主要セグメントがいずれも前期比で増収となっています。特に流通事業は新規出店やネット集客の強化が奏功し、売上を順調に拡大させています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
流通事業 31億円 37億円
リフォーム事業 21億円 24億円
開発分譲事業 73億円 81億円
賃貸事業 2億円 2億円
不動産取引派生事業 2億円 3億円
その他 3億円 3億円
連結(合計) 132億円 149億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -4億円 -4億円
投資CF -2億円 -1億円
財務CF 1億円 0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「住まい・暮らしに関するワンストップサービスの実現」を目指しています。外的環境の影響リスクを保守的に評価しながら、ワンストップ体制のシナジー最大化戦略の推進を継続することで、持続的成長と高収益体質の実現を目指すことを経営方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、多様な人材の活用を積極的かつ継続的に行い、それぞれの特性や能力を最大限生かせる職場環境および組織体制の整備や人材育成に関する社内文化の醸成を重視しています。また、企業倫理・コンプライアンスについて全役職員が共通の認識を持ち、的確で公正な意思決定を行う風土を醸成する仕組みを整備しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値の最大化に向け、将来の事業拡大および財務体質の強化を目的とした内部留保の充実に努めるとともに、株主への利益還元を経営上の重要な施策と考え、業績に連動した配当を安定的に実施することを基本方針としています。中長期的な目標として、連結当期純利益の30%程度の配当性向を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の注力領域として、三大都市圏における不動産事業を中心としたサービスの幅を広げることを基本方針とし、流通事業を軸とした事業基盤の強化を図ります。また、リフォーム事業における施工管理体制の構築や、開発分譲事業における顧客ニーズを的確に捉えた物件創りを進め、各事業のシナジー拡大による競争力強化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業および経営理念に共感する新卒および第二新卒社員を採用することで事業基盤の安定並びに拡大を図る方針です。ダイレクトリクルーティングにより優秀な人材へ能動的にアプローチし、研修制度の充実により一人ひとりの営業スキルやノウハウを向上させます。また、社員が中長期で働きやすい環境作りにも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 30.0歳 6.6年 7,966,338円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 43.2%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 70.9%
男女賃金差異(正規労働者) 99.4%
男女賃金差異(非正規労働者) 145.4%


※男性労働者の育児休業取得率について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
※全労働者における男女の賃金の差異については、パート・有期労働者に占める女性の割合が高いことが影響しています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の産休・育休後の復職率(100%)、女性従業員比率(47.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制の変更・許認可の取消し


同社グループは不動産業および建設業に属し、宅地建物取引業法や建設業法などの法的規制を受けています。不正な手段による免許の取得や法令違反等により許認可が取り消された場合や、新たな法的規制が生じた場合には、事業活動に支障をきたし、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 住宅市況や金利動向などの変動


不動産業界は景気動向や金利動向、地価、住宅税制等の影響を受けやすい環境にあります。景気見通しの悪化や大幅な金利上昇、地価上昇などにより住宅購入者の意欲が減退した場合や、金融機関の融資姿勢の変化により事業用地の取得が困難になった場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 不動産業界における競合激化


三大都市圏など同社が事業を展開する地域では、資本力やブランド力に優れる大手企業を含む多数の事業者が存在し、激しい競合が生じています。各種サービスによる差別化を推進していますが、競合激化により想定通りの事業拡大が図れない場合や、開発分譲事業での販売長期化や値引販売が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 営業地域の市場動向への依存


同社グループは、関西圏の阪神間・北摂地域と大阪市内、中部圏の名古屋市、および東京圏の東京23区を主たる営業地域として事業展開を行っています。地域密着型の事業展開を行っているため、当該地域の不動産市況の低迷や地域的な景況感の悪化が生じた場合、業績や財政状態に強い影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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