※本記事は、東京都競馬株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京都競馬ってどんな会社?
東京都競馬は、大井競馬場等の公営競技施設賃貸を中核に、遊園地や物流倉庫などの空間創造事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1949年、戦災復興財源確保を目的に東京都の競馬事業運営を図るため設立されました。1950年に大井競馬場を開場し、1955年に上場を果たしました。その後、1970年に東京サマーランドを設立して遊園地事業へ進出し、1984年には倉庫部門を分離独立させて倉庫賃貸事業を開始するなど多角化を進めています。
従業員数は連結で198名、単体で110名です。大株主の構成をみると、筆頭株主は地方公共団体である東京都で、第2位は大井競馬を主催する特別区競馬組合となっており、公共性の高い強固な事業基盤を有していることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東京都 | 30.69% |
| 特別区競馬組合 | 14.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は多羅尾光睦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 多羅尾光睦 | 代表取締役社長 | 東京都港湾局長、総務局長、副知事などを経て、2023年3月より現職。 |
| 伊藤昌宏 | 常務取締役 | 同社入社後、競馬事業部長、財務部長などを歴任し、2022年3月より現職。 |
| 髙倉和仁 | 常務取締役 | 同社入社後、総務部長などを経て、2025年3月より現職。 |
| 小山哲司 | 常務取締役 | 東京都下水道局長などを経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、森﨑純成(元日本シェアホルダーサービス社長)、田中秀司(元東京都港区副区長)、筧悦子(元日本アイ・ビー・エム担当理事)、村田順子(現明海大学浦安キャンパス学務部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、公営競技事業、遊園地事業、倉庫賃貸事業、サービス事業を展開しています。
■公営競技事業
大井競馬場や伊勢崎オートレース場などの公営競技施設、および場外発売所施設を地方公共団体等に賃貸し、公正なレースが実施できるよう維持・管理を行っています。また、南関東4競馬場の在宅投票システムであるSPAT4の運営も手掛けています。
収益は、競馬法等に基づき競馬を主催している特別区競馬組合などから、勝馬投票券の売上高に応じた賃貸料として受け取っています。施設の維持管理は同社が行い、場内サービスは東京プロパティサービス、在宅投票システムの運営はeパドックがそれぞれ担っています。
■遊園地事業
東京都あきる野市に位置する総合レジャーランドの東京サマーランドを所有し、季節を問わず楽しめるプールや遊園地のアトラクション、アウトドア複合施設などを通じて、顧客にレジャー体験を提供しています。
収益は、施設を訪れる一般顧客からの入園料や飲食・物販の販売代金などから構成されています。事業の営業のすべては、同社からの委託を受けて連結子会社の東京サマーランドが行っています。
■倉庫賃貸事業
東京都品川区や大田区、千葉県習志野市などに物流施設や物流用地を所有し、首都圏における重要な物流拠点として施設の賃貸を行っています。顧客は主に大手物流企業などです。
収益は、賃貸先の企業から毎月支払われる不動産賃貸料収入を主体としています。施設の賃貸および管理運営は、同社から施設や用地を賃借している連結子会社の東京倉庫が行っています。
■サービス事業
商業施設の大井競馬場前ショッピングモールであるウィラ大井や、オフィスビルなどの管理・運営を行うほか、トランクルーム、賃貸マンション、賃貸レストランなどを所有し、空調設備の設計・施工管理も手掛けています。
収益は、テナントとして入居する企業からの賃貸料や、設備工事の請負代金などから構成されています。商業施設等の管理運営は東京プロパティサービスが、空調設備の設計・施工管理はタックがそれぞれ担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が継続して右肩上がりで成長しており、着実な事業拡大が伺えます。経常利益率も常に30%以上の高い水準を維持しており、高収益なビジネスモデルを確立していることがわかります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 318億円 | 355億円 | 375億円 | 404億円 | 418億円 |
| 経常利益 | 128億円 | 142億円 | 134億円 | 139億円 | 154億円 |
| 利益率(%) | 40.4% | 40.0% | 35.6% | 34.4% | 37.0% |
| 当期利益 | 87億円 | 86億円 | 74億円 | 88億円 | 93億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。特に営業利益率は改善傾向にあり、本業での稼ぐ力が強まっていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 404億円 | 418億円 |
| 売上総利益 | 161億円 | 177億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.8% | 42.3% |
| 営業利益 | 139億円 | 154億円 |
| 営業利益率(%) | 34.4% | 36.9% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料等が9億円(構成比40%)、租税公課が3億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の公営競技事業がインターネット投票サービスの好調により増収を牽引しました。倉庫賃貸事業も新規施設のフル稼働などで順調に伸びています。一方で遊園地事業は天候等の影響で入場人員が減少し、やや減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 公営競技事業 | 287億円 | 297億円 |
| 遊園地事業 | 38億円 | 37億円 |
| 倉庫賃貸事業 | 58億円 | 61億円 |
| サービス事業 | 22億円 | 22億円 |
| 調整額 | -2億円 | -2億円 |
| 連結(合計) | 404億円 | 418億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業と言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 161億円 | 199億円 |
| 投資CF | -86億円 | -128億円 |
| 財務CF | -54億円 | -87億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「空間に思いを馳せ、人々の笑顔を創造する」という企業理念を掲げています。同社が所有する公営競技場や遊園地などの「空間」を訪れる人々の安心・安全・信頼を第一に考え、公共性にも配慮した事業を展開することで、すべてのステークホルダーの期待に応え、社会の発展に寄与する企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
これまで取り組んできたCSRを発展させ、提供空間および周辺地域における環境や社会に配慮した独自のトリプルボトムライン「PLACE, PLANET, PEOPLE」を掲げています。これは地球環境や従業員、地域社会をケアすることを意味しており、事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「長期経営ビジョン2035」の具現化に向け、2026年度から2030年度までの5年間を対象とする第4次中期経営計画「未来の空間創造プロジェクト the 1st Furlong」を策定しています。最終年度である2030年の経営目標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高:480億円以上
* 営業利益:190億円以上
* ROE:5年平均10.0%以上
* ROIC:5年平均9.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
都心型エンターテインメント競馬場を核とした大井エリアの魅力的なまちづくりを目指しています。公営競技の振興として新トレーニングセンターやAIを活用した新サービスの整備を進めるほか、競馬だけでなくスポーツやライブを楽しめるアリーナの整備検討など、資産のポテンシャルを最大限に発揮する空間デザインを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「笑顔あふれる“まちづくり”を牽引する空間創造企業」の実現に向け、個性豊かな人材を最重要資本と位置づけています。企業価値を高める「新たな価値創造人材」、適時適切に仕組みを変える「専門人材」、日々の事業を確実に運営する「現場運営リーダー」の確保と育成を推進し、能力発揮を促す人事制度の確立を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 37.3歳 | 11.9年 | 7,303,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.6% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 70.0% |
また、同社は「人的資本に関する情報開示」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、デジタル人材数(7名)、基本デジタルスキル習得割合(37.3%)、建物・設備管理に関する専門人材数(15名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 災害による影響
地震や風水害等の自然災害、事故やテロなどが発生した場合、所有資産の劣化や滅失により営業を休止する事態が想定されます。また、交通機関への被害により、競馬場やオートレース場、遊園地などの入場者数が減少し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報システムに関するリスク
公営競技事業の在宅投票システムや遊園地事業の入園管理システムなど、重要な情報システムを運用しています。予期せぬコンピューターウイルスの感染や外部からの不正アクセス等によりシステム障害が発生した場合、営業活動の中断や社会的信用の失墜を招く可能性があります。
■(3) 気象・天候条件の影響
屋外での活動が中心となる施設において、長雨や台風、降雪などの天候悪化は、競馬場やオートレース場の開催可否、遊園地の営業休止に直結します。特にプール営業を主体とする遊園地事業においては、夏季の気象状況が入場者数や業績を左右する重要な要因となります。



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