スペース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スペース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スペースは、東京証券取引所プライム市場に上場し、ショッピングセンターや専門店など商業施設の企画・設計・施工を主力とする企業です。直近の業績は、活況な受注環境や大型案件の獲得により、売上高、各段階利益ともに過去最高を更新し、大幅な増収増益を達成するなど、力強い成長トレンドを描いています。


※本記事は、スペースの有価証券報告書(第54期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スペースってどんな会社?


商業空間の創造を通じて豊かな社会の実現を目指す、企画・設計・施工の総合プロデュース企業です。

(1) 会社概要


スペースは、1948年にカトウガラスとして設立され、1954年に本格的な店舗の設計・施工請負業を開始しました。1989年に現在の商号へ変更し、1994年に日本証券業協会へ株式を店頭登録しています。以降、中国や東南アジアへの海外子会社の設立や、エム・エス・シーとの資本業務提携等を経て事業を拡大してきました。

同社グループは、連結で990名、単体で949名の従業員を擁しています。筆頭株主は自社の従業員を持分とする持株会であり、第2位は資産管理業務等を行う信託銀行、第3位は取引先を持分とする持株会となっています。

氏名 持株比率
スペ-ス従業員持株会 12.26%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.73%
スペース取引先持株会 7.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は庄村香史氏が務めており、社外取締役比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
庄村香史 代表取締役社長兼営業統括本部長 1995年同社入社。名古屋本部長等を経て2019年取締役。専務執行役員等を経て2026年1月より現職。
森田昭一 取締役常務執行役員大阪本部長 2000年同社入社。商環境研究所長等を経て2019年取締役。大阪本部長等を経て2023年3月より現職。
松尾信幸 取締役常務執行役員経営統括本部長 1992年同社入社。人事企画本部長等を経て2019年取締役。経営管理本部長等を経て2026年1月より現職。
林不二夫 取締役 1975年同社入社。1991年取締役。代表取締役専務、代表取締役会長などを歴任し、2022年4月より現職。
佐々木靖浩 取締役 1987年東京スペース入社。2011年同社取締役。東京事業本部長、代表取締役社長等を経て2020年1月より現職。
加藤千寿夫 取締役 1981年同社入社。1988年取締役。代表取締役社長、代表取締役会長などを歴任し、2013年3月より現職。
若林弘之 取締役 1982年同社入社。1991年取締役。専務取締役、代表取締役社長などを歴任し、2013年3月より現職。
三品和久 取締役(監査等委員) 1980年同社入社。経営管理室長、総務部長、管理本部長などを歴任し、2019年3月より現職。


社外取締役は、嶋田博子(京都大学公共政策大学院教授)、前川弘美(セントラル法律事務所パートナー)、和田良子(敬愛大学経済学部教授)、田口聡志(同志社大学大学院商学研究科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ディスプレイ事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

商業施設企画・設計・施工事業


スペースグループは、ショッピングセンター、百貨店、各種専門店、飲食店などの商業施設に対する企画、設計、監理、および施工に関するサービスを総合的に提供しています。常設施設の内装・外装工事をはじめ、イベントなど一時的な施設の展示工事、建築物の躯体工事、メンテナンス工事まで幅広く手掛けています。

収益源は、顧客である流通小売業や飲食業、サービス業などの企業からの工事請負代金およびコンサルティング・設計監理手数料です。主にスペースが国内業務を牽引し、エム・エス・シーが調査・リーシングを担当するほか、香港や上海、ベトナムの海外子会社が現地情報の入手や什器等の輸出入を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりの成長を継続しています。利益面では一時的な踊り場があったものの、直近2期間では連続して大幅な増益を達成し、利益率も改善傾向にあります。底堅い設備投資需要を背景に、安定した収益拡大を実現しています。

項目 第50期 第51期 第52期 第53期 第54期
売上高 424億円 467億円 528億円 642億円 715億円
経常利益 23億円 21億円 26億円 35億円 49億円
利益率(%) 5.3% 4.6% 5.0% 5.5% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 14億円 17億円 24億円 38億円

(2) 損益計算書


売上高の順調な拡大に加え、外注費率の改善等によって売上総利益が大きく伸長しています。販売費及び一般管理費の抑制も進んだ結果、営業利益は前期比で大きく増加し、営業利益率も向上するなど、本業の稼ぐ力が着実に高まっています。

項目 第53期 第54期
売上高 642億円 715億円
売上総利益 71億円 83億円
売上総利益率(%) 11.0% 11.6%
営業利益 35億円 48億円
営業利益率(%) 5.4% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比49%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はディスプレイ事業の単一セグメントであるため、市場分野別の売上動向を分析します。飲食店やサービス等分野での大型新装・改装案件の獲得が大きく牽引し、各種専門店や複合商業施設でも手堅く増収を達成しています。

区分 売上(第53期) 売上(第54期)
複合商業施設・総合スーパー 141億円 145億円
食品スーパー・コンビニエンスストア 72億円 71億円
各種専門店 197億円 207億円
飲食店 78億円 103億円
サービス等 154億円 190億円
連結(合計) 642億円 715億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 第53期 第54期
営業CF 21億円 29億円
投資CF 6億円 -13億円
財務CF -10億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も77.2%と、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは創業以来、「商空間の創造を通じて、豊かな社会の実現に貢献します。」を企業理念として掲げています。経済成長と社会課題の解決が両立し、持続可能な発展を可能とする社会の実現を目指し、「空間の可能性を追求する」という使命のもと事業を展開しています。

(2) 企業文化


多様な個人が尊重される社会の実現に貢献し、人材が価値を生み出す源泉であるという考えのもと、社員が能力を発揮し活躍できる労働環境の実現を目指しています。「全社員総合職の実現」に向け、社員一人ひとりの成長に重きを置き、個の力を最大限に引き出すことで競争優位性を築く文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


2028年12月期を最終年度とする中期経営計画「拡大成長」を策定し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。株主還元方針としては、配当性向50%以上の維持を目標としています。

* 売上高800億円
* 営業利益率8%
* ROE12%

(4) 成長戦略と重点施策


顧客から選ばれ続ける「商いの共創パートナー」としての地位を確立するため、既存事業の深化や価値創造事業への挑戦、バリューチェーンの強化等に取り組み、安定的な収益基盤の構築を進めます。強みの源泉である人と組織の高度化を進め、多様な人材が能力を十分に発揮できる成長環境の整備に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、代替不可能な競争優位性を生み出す人材を「自身の得意領域を持ちながら、バリューチェーン全体を見渡せる人材」と定義しています。多様な人材が専門性を活かして活躍できるよう複線型人事制度を導入するほか、役職に応じた研修や資格手当の拡充を通じて、社員の自発的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第54期 38.2歳 12.5年 9,185,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.9%
男性育児休業取得率 45.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 47.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、サステナブル素材活用案件率(38.2%)、1人当たり所定外労働時間(393時間/年)、有給休暇取得率(72.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変動


同社グループは受注企業であり、景気の動向等により主要顧客である流通小売業の設備投資が変動し、新規出店や改装に影響が出た場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、まちづくり関連法規の改定などで大型商業施設の出店計画に変更が生じた場合も影響を受けます。

(2) 法的規制への抵触


建設業法、建築士法および宅地建物取引業法など様々な法規制の適用を受けており、許認可の取得と法令遵守が義務づけられています。関連する法律の変更や、何らかの事情で法令に抵触する事態が発生した場合、業務遂行に支障をきたし、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 施工物件の品質問題


施工物件の品質については万全な体制を敷いていますが、品質不良を完全に排除することは困難です。万一、提供した空間や施設において品質上の重大な問題が生じた場合、賠償金の支払いや信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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