※本記事は、いであ株式会社の有価証券報告書(第58期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. いであってどんな会社?
いであは環境保全や社会基盤整備を支える総合コンサルタント企業です。
■(1) 会社概要
1968年にトウジョウ・ウェザー・サービス・センターとして設立され、翌年には新日本気象海洋へ社名を変更し環境調査業務を本格化させました。1985年に店頭登録を果たし、2006年には日本建設コンサルタントと合併して現在のいであに社名を変更するとともに、建設コンサルタント事業への進出を果たしました。
現在の従業員数は連結で1105名、単体で1001名となっています。筆頭株主はいであ従業員持株会で、第2位は外国法人の信託口、第3位は法人のライフケアサービスです。多様なプロフェッショナルが連携し、人と地球の未来を創る総合コンサルティング企業として、持続可能な社会への貢献を目指しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| いであ従業員持株会 | 10.11% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC)RE IEDP AIF CLIENTS NONTRETY ACCOUNT | 5.32% |
| ライフケアサービス | 5.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長の田畑彰久氏が経営を牽引しており、取締役10名中4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田畑 彰久 | 代表取締役社長社長執行役員経営企画本部長 | 1996年同社入社。経営企画本部長や海外事業担当を経て、2019年より現職。 |
| 田畑 日出男 | 代表取締役会長 | 1968年同社入社。代表取締役社長などを歴任し、2013年より現職。 |
| 安田 実 | 代表取締役副社長建設コンサルタント事業担当情報システム事業担当 | 1981年建設省入省。2012年同社入社。社会基盤本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 森下 哲 | 取締役副社長環境創造研究所長 | 1986年環境庁入庁。地球環境審議官などを経て2020年同社入社。2024年より現職。 |
| 島田 克也 | 常務取締役常務執行役員営業本部長環境技術事業担当管理部門担当 | 1988年同社入社。国土環境研究所長や環境技術事業本部長を経て、2024年より現職。 |
| 峯岸 宣遠 | 取締役常務執行役員環境調査測定事業本部長外洋調査事業担当 | 1995年同社入社。環境調査事業本部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、道田豊(東京大学大気海洋研究所特任教授)、藤田武彦(海外運輸協力協会会長)、中山泰男(セコム特別顧問)、畑中景子(プロフェッショナル・コーチ)です。
2. 事業内容
同社グループは、「環境コンサルタント事業」「建設コンサルタント事業」「情報システム事業」「海外事業」「不動産事業」を展開しています。
■環境コンサルタント事業
港湾、河川、ダム、道路などの建設に係る環境アセスメントや、生物多様性の保全を含めた自然再生、海洋環境調査、土壌や環境汚染の調査・分析等を提供しています。官公庁や民間企業を主な顧客とし、微量有害化学物質の分析や気象に関連した情報配信も行っています。
顧客からの調査・分析・計画策定の委託費用が主な収益源です。運営は主としていであが担うほか、新日本環境調査や沖縄環境調査、東和環境科学などの連結子会社が地域や専門分野に応じた環境調査や分析、廃棄物・土壌汚染対策業務を提供しています。
■建設コンサルタント事業
河川、砂防、海岸等に係る計画の策定や、堤防、排水機場などの河川構造物の設計、維持管理に関するコンサルティングを提供しています。また、道路や橋梁に関する計画、設計、施工管理なども実施しており、主に国や地方自治体などの官公庁向けにサービスを展開しています。
インフラ整備や維持管理に関する設計・計画策定の手数料が主な収益源です。運営はいであが主体となって行っているほか、連結子会社であるクレアテックが構造物・地盤解析や土木設計業務を担う体制で、専門性の高いサービスを提供しています。
■情報システム事業
渇水対策に向けたAIによるダム低水管理支援システムや、カメラ画像解析による高度流量観測、土石流検知システムなど、各種防災関連のクラウドシステム構築を行っています。また、地球観測衛星の運用支援や通信会社のスマートフォンサービスの技術検証なども提供しています。
官公庁や民間企業に対するシステムの設計、構築、運用支援に係るシステム開発費およびサービス利用料が主な収益源です。当セグメントの事業は、いであが単独で運営を担当しており、AIやデジタルツインを活用した先進的なシステム開発を展開しています。
■海外事業
開発途上国を対象に、海洋ごみなどの廃棄物管理、湖沼の水質保全、水資源管理や洪水対策、港湾関連インフラの整備に関するコンサルティングを提供しています。気候変動対策としての海洋温度差発電や深層水利活用など、地球環境の保全と防災能力強化に貢献しています。
政府開発援助(ODA)関連機関や海外政府からのプロジェクト受託費用が主な収益源です。いであが主体となって事業を展開するほか、連結子会社であるIdesが、港湾を中心とした交通インフラ整備や環境保全分野における総合的なコンサルティングサービスを提供しています。
■不動産事業
東京都港区赤坂のオフィスビルや、大阪府の旧大阪支社跡地などの保有不動産を活用し、賃貸サービスを提供しています。自社グループの事業基盤を活かし、安定した収益を確保するための資産の有効活用を図っています。
保有するオフィスビルや駐車場などの賃借人から得られる不動産賃貸収入が主な収益源です。本事業は、いであが単独で不動産の管理および運営を行っており、グループ全体の収益基盤の多角化と安定化に寄与しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は堅調な拡大傾向にあり、約206億円から246億円へと成長しています。経常利益も21億円から一時34億円まで増加し、高い水準を維持しています。利益率も10%台から13〜14%台へと改善し、安定した収益力を確保しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 206億円 | 230億円 | 227億円 | 243億円 | 246億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 33億円 | 30億円 | 34億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 10.2% | 14.2% | 13.2% | 14.1% | 13.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 21億円 | 20億円 | 24億円 | 24億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となったものの、重点事業分野への投資や人的資本投資の強化に伴う費用の増加により、営業利益はわずかに減少しています。それでも営業利益率は12%台後半と、コンサルティング業界として引き続き堅実な水準を維持しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 243億円 | 246億円 |
| 売上総利益 | 82億円 | 82億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.8% | 33.2% |
| 営業利益 | 33億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 13.4% | 12.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が23億円(構成比46%)と最も大きな比重を占めています。また、売上原価についても労務費が73億円(同46%)、外注費が46億円(同29%)となっており、事業の性質上、人材関連の費用が大半を占めていることがわかります。
■(3) セグメント収益
主力の環境コンサルタント事業は、大規模な海洋環境調査や再生可能エネルギー関連の環境アセスメントの受注により増収となりました。建設コンサルタント事業は横ばいですが、情報システム事業や海外事業は堅調に推移し、全体としての売上高成長に貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 環境コンサルタント事業 | 157億円 | 160億円 |
| 建設コンサルタント事業 | 73億円 | 73億円 |
| 情報システム事業 | 6億円 | 7億円 |
| 海外事業 | 5億円 | 5億円 |
| 不動産事業 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 243億円 | 246億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
いであのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、不動産賃貸事業の一部を自社利用とした影響で、営業活動による資金獲得額は前年同期比で減少しました。投資活動では、有形固定資産や投資有価証券の取得に資金を使用しました。財務活動においては、長期借入金の返済や配当金の支払いが主な資金流出要因となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 40億円 | 12億円 |
| 投資CF | -12億円 | -11億円 |
| 財務CF | -14億円 | -9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「安全・安心で快適な社会の持続的発展と健全で恵み豊かな環境の保全と継承を支えることを通じて社会に貢献する」という経営ビジョンを掲げています。このビジョンは、日々の事業活動を通じて自然と社会が調和した未来を目指すという企業の使命を表しており、持続可能な社会や自然の恵みを次世代に引き継ぐことを最大の責務としています。
■(2) 企業文化
「革新的な技術と多様なプロフェッショナルの共創により、人と地球の未来を創る」ことを2035年に目指す姿として設定しています。多様な専門性を持つ人財が自身の強みを発揮し、部署や専門分野の垣根を越えて社内外と連携する「共創」の文化を重視しています。社員一人ひとりが挑戦できる環境を整え、ともに成長し続ける組織風土を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
「第6次中期経営計画(2025年〜2027年)」では、「DX推進と共創による新たな価値創造に向けた変革への挑戦」をスローガンとして掲げています。株主への利益還元と将来の事業拡大に向けた経営基盤の強化を両立させる計画です。
* 配当性向35〜40%
* 総還元性向50%
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として5つの柱(事業、DX、人事、財務、サステナビリティ)を設定しています。重点事業分野への経営資源の投入やIoT・AIなどの先端技術の活用によるビジネスモデルの変革、社内外の共創によるイノベーション創出を推進します。また、気候変動や生物多様性などの社会課題解決に貢献するサステナブルな事業展開を強化していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を「人財」と位置づけ、多様な専門性を持つ社員の成長と挑戦を支援しています。「チャレンジ精神あふれる多様な人財の確保・育成と魅力ある職場づくり」を重要課題に掲げ、専門技術の習得や論理的思考力の向上を目指した研修制度を充実させています。また、柔軟な働き方を促進し、ウェルビーイングと生産性の向上を図る環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 44.4歳 | 15.4年 | 7,770,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 97.2% |
※賃金差異の要因として、パート・有期労働者に占める女性比率が高いことや労働時間の違い、各種手当の有無などが影響しています。
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、若手社員の3年以内離職率(8.9%)、ストレスチェック受検率(86.9%)、業務受注に有効な資格取得者数(1033名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 官公庁等への高い受注依存
同社の売上高は官公庁や公益法人からの受注が8割以上を占めています。そのため、国や地方自治体の公共事業関係費の増減や、関連技術分野に対する予算執行の制約が発生した場合、受注額および売上高が減少し、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 専門性の高い人材の確保と流出
同社の技術力や競争優位性を維持・向上させるためには、専門性の高い優秀な人材の採用と育成が不可欠です。人材獲得競争が激化する中、必要な人材を十分に確保できない場合や、競合他社への移籍によって独自の知識やノウハウが流出した場合、事業展開や生産性に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 成果品における重大な瑕疵の発生
同社は厳格な品質保証システムを運用し、成果品の品質向上に努めていますが、万が一提供したコンサルティング成果品に重大な瑕疵(契約不適合)が生じた場合、多額の損害賠償請求や官公庁からの指名停止処分を受ける恐れがあり、社会的信用の低下とともに業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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