ラックランド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラックランド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するラックランドは、商業施設や小売・飲食店舗など多様な商空間の企画から設計、施工、メンテナンスまでを一貫して手掛ける企業です。直近の業績では、建設業界の良好な受注環境や適正な受注価格の確保により売上高が伸長し、各段階利益も大幅な増加となる増収増益を達成しています。


※本記事は、ラックランドの有価証券報告書(第56期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ラックランドってどんな会社?


商業施設や小売・飲食店舗などの商空間の理想的な環境づくりを目的とした企画・設計・施工・メンテナンスを展開しています。

(1) 会社概要


1970年5月に設立され、1995年1月に株式を店頭公開しました。2003年に大阪支店を開設して西日本エリアへ展開し、2013年には初の海外拠点としてシンガポールに海外子会社を設立して海外展開を本格化させています。また、同年にM&Aでニイクラ電工を子会社化し、以降も複数社のグループ化により事業領域の拡大を図っています。

従業員数は連結で1,338名、単体で954名です。筆頭株主は野村信託銀行(取引先信託口)で、第2位は同社の元代表取締役社長が代表を務める資産管理会社のエイ・クリエイツ、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
野村信託銀行(取引先信託口) 13.78%
エイ・クリエイツ 13.35%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は笠原弘和氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
笠原弘和 代表取締役社長 2003年プライムマックス入社。2019年ジー・スリーホールディングス代表取締役社長。2023年モルフォース代表取締役社長を経て、2024年より現職。
錦織正人 取締役営業管掌 兼首都圏営業本部長 1994年同社入社。2007年大阪支店長、2020年執行役員大阪支店長等を歴任。2024年取締役営業本部長等を経て、2025年より現職。
磯部伸弘 取締役西日本支店長 兼グループ会社統括管掌 2015年同社入社。2024年執行役員管理本部長等を歴任。複数グループ会社の役員を務め、2025年より現職。
大濱尚 取締役工事本部長 兼 安全品質管掌 2013年同社入社。2017年工事本部第3工事部門長、2023年執行役員工事本部長を経て、2024年より現職。


社外取締役は、若林要(元グッドマンジャパン社長)、重田秀豪(インサイト代表取締役)、橋本真樹夫(DHD代表取締役)、沼井英明(沼井綜合法律事務所代表弁護士)、大下良仁(善国寺坂法律事務所パートナー弁護士)、横山友之(横山経営会計事務所代表者・指名委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「店舗施設の制作事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

店舗施設の制作事業


スーパーマーケット、飲食店、食品専門店などの食に関わる店舗や、雑貨店、クリニックなどの多様な業種・業態の店舗制作を行っています。創業初期からの同社の中核事業であり、食に関連する物件や冷凍冷蔵技術を必要とする物件を強みとして展開しています。

収益は、顧客となる各店舗の運営企業から企画・設計・施工の対価として受け取ります。同社が中心となり、建築設計や内装監理を行うケークリエイトなど複数の子会社と連携して一貫したサービスを提供しています。

商業施設の制作事業


商業施設における建築設備の設計や施工、施設内に出店する複数テナントの専有部および共用部の制作を行っています。店舗施設の制作で培った内装と設備の技術を活かし、同社が更なる成長を目指して注力している分野です。

収益は、不動産デベロッパーや鉄道会社系列の企業などから、施設の有効活用や来客数増加を目的とした大規模改装の請負代金として受け取ります。同社をはじめ、電気設備工事を担う光電機産業などのグループ各社が協働して運営しています。

その他の制作・保守事業


食品工場や物流倉庫の制作事業では、冷凍冷蔵設備を備えた施設の企画から施工までを手掛けます。また、完成後の設備の保守や修繕を担うメンテナンス事業や、建物全体のリニューアルや耐震補強を行う建築事業なども展開しています。

収益は、食品メーカーや物流企業、店舗運営企業などからの工事請負代金やメンテナンス費用、設備レンタル料などとして受け取ります。同社および、ビルメンテナンスを行うエースセンターなど専門性を持つ子会社群が各領域を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、特に直近では大型物件の引渡しなどにより大幅な増収となっています。利益面では過去に一時的な損失を計上し赤字となる期間もありましたが、直近の期間では適正な受注価格の確保が進んだことなどで経常利益、当期利益ともに大幅な黒字転換を果たし、高水準の利益を達成しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 359億円 410億円 451億円 477億円 566億円
経常利益 -0.7億円 1億円 6億円 4億円 42億円
利益率(%) -0.2% 0.2% 1.4% 0.8% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -3億円 -10億円 -0.5億円 -12億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて、物価や労務費などのコスト上昇が継続する環境下においても適正な発注価格の確保が進んだことで、売上総利益率が大きく改善しています。また、交際接待費や業務委託費の削減などコスト抑制に努めた結果、営業利益も大幅に増加し、収益性が大きく向上しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 477億円 566億円
売上総利益 60億円 98億円
売上総利益率(%) 12.5% 17.2%
営業利益 2億円 40億円
営業利益率(%) 0.5% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が21億円(構成比37%)、役員報酬が4億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の店舗施設の制作事業では、様々な業種・業態の新規開拓が奏功し順調に売上を伸ばしています。商業施設の制作事業や建築事業においても、不動産活用やインバウンド需要の高まりを背景としたリニューアル工事の引き合いが増加し、売上高を大きく牽引しています。一方、食品工場・物流倉庫の制作事業は端境期にあり減収となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
店舗施設の制作事業 297億円 323億円
商業施設の制作事業 80億円 136億円
食品工場、物流倉庫の制作事業 32億円 16億円
メンテナンス事業 29億円 28億円
省エネ・CO2削減事業 1億円 1億円
建築事業 38億円 62億円
連結(合計) 477億円 566億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 9億円 45億円
投資CF 5億円 7億円
財務CF -11億円 -5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「様々な人々の期待に応える」を経営理念として掲げています。株主、顧客、協力会社、地域社会、社員などすべてのステークホルダーの期待に誠実に応えることを企業使命と位置づけています。また、「商空間創りを通じ、皆の笑顔を創りだすこと」をミッションとし、単なるものづくりを超えたサービス業として社会に笑顔をもたらすことを目指しています。

(2) 企業文化


企業活動のあらゆる場面において、「透明性」と「誠実さ」を大切にしながら活動することを重視しています。従来の枠組みに捉われることなく、時代の変化や新たな技術のニーズに柔軟に対応し続ける姿勢を持っています。安定した収益基盤を確立しつつ、持続的に成長できる企業でありたいという考えが組織の価値観として根付いています。

(3) 経営計画・目標


2026年12月期から2028年12月期までの3か年を対象とする中期経営計画を策定し、次期に向けた「飛躍のための土台作りフェーズ」と位置づけています。増収と利益率の安定を両輪に、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。

* 2028年12月期営業利益:46億円
* 2028年12月期売上高:620億円
* 2028年12月期営業利益率:7.4%
* 各期ROE:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


事業・財務・人財の3要素を重点テーマとし、DXを軸にこれらを循環させて成長を加速させる戦略を描いています。具体的には、ワンストップ対応力や専門性の高い設備領域を活かして顧客価値を最大化するとともに、業務プロセスの標準化や基幹システムの刷新により生産性を向上させます。また、有資格者の確保・育成やデータに基づく経営への転換を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業成長の基盤は「人財」であるとの認識のもと、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境づくりと技術の継承を重視しています。建築士や施工管理技術者をはじめとする有資格者の確保・育成を進めるとともに、タレントマネジメントシステムの導入により人財活用の高度化を図っています。多様で柔軟な働き方を推進し、社員エンゲージメントの向上と組織力の強化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.9歳 7.1年 5,941,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用) 67.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業界・取引先への依存リスク


飲食料品小売業界および外食業界に属する企業への売上高が大きなウェイトを占めています。そのため、景気動向やこれら業界の急激な変化が生じた場合、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業績の季節変動と引渡し遅延


顧客企業の出店政策や計画の影響を受けやすく、売上や利益に季節的な変動が見られます。また、大型案件において躯体工事など前工程の遅延や天災などで引渡し時期が期を越えて遅延した場合、業績が変動するリスクがあります。

(3) 品質管理・債権管理に関するリスク


想定外の不良やチェック漏れにより多額の工事のやり直しや顧客への補償金が発生するリスクがあります。また、経済環境の激変等により顧客企業の属する業界動向が悪化した場合、債権の滞留や貸倒れが発生する可能性があります。

(4) 人材確保と資材価格の変動リスク


設計や施工などの専門的な技能者の育成が計画通りに進まず、人員確保が困難になった場合や、原材料価格の高騰を請負代金に反映することが難しくなった場合、同社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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