※本記事は、東テク株式会社 の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東テクってどんな会社?
空調機器の販売と計装工事をコア事業とし、快適空間の創造と環境負荷低減に貢献する独立系技術商社です。
■(1) 会社概要
1955年に東京機工として設立され、1960年にダイキン工業と販売代理店契約を締結し空調事業の基盤を築きました。1986年に現商号へ変更し、2004年にジャスダックへ上場しました。その後、M&Aによる事業拡大を経て2017年に東証一部へ市場変更し、2022年3月にはシンガポールのQuantum Automation Pte.Ltd.を取得して海外展開を加速させています。
2025年3月31日時点の従業員数は連結2,679名、単体1,101名です。筆頭株主は日本レイで、第2位は主要仕入先でもあるダイキン工業、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。ダイキン工業とは長年にわたる取引関係があり、安定した資本・業務提携関係を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本レイ | 12.78% |
| ダイキン工業 | 7.26% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.73% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は小山馨氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小山 馨 | 代表取締役社長 | 1978年同社入社。大阪支店長、計装事業統括部長、技術本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 草野 和幸 | 取締役東テクグループ会長 | 1955年同社設立に関与。社長、会長を経て、2025年4月より現職。創業以来の経営を牽引。 |
| 長尾 克己 | 取締役会長 | 1982年同社入社。東日本営業統括本部長などを経て、2006年社長就任。2025年6月より現職。 |
| 中溝 敏郎 | 取締役監査等委員 | 1979年富士銀行入行。2007年同社入社、管理本部長、経営管理本部長などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、斎藤政賢(元東京ビルサービス社長)、宇佐美敦子(税理士法人山田&パートナーズ代表社員)、荒田和人(公認会計士)、久保田征良(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「商品販売事業」「工事事業」および「その他」事業を展開しています。
■商品販売事業
空調機器、制御機器、省エネ機器および発電機等の仕入・販売を行っています。主な顧客は建設会社やサブコン、ビルオーナー等で、都市部の再開発案件や工場の設備投資需要に対応しています。また、納入した機器の保守点検やスポットメンテナンス等のアフターサービスも提供しています。
収益は、顧客への機器販売代金および保守契約に基づくメンテナンス料から得ています。運営は主に東テク、東テク北海道、アーチバック等が担っており、ダイキン工業等の主要メーカーから機器を仕入れ、顧客に最適なシステムを提案・販売しています。
■工事事業
計装工事、管工事、電気設備工事等の設計・施工を行っています。ビルの空調や照明等を自動制御する計装システムや、給排水衛生設備などの施工を手掛け、快適な環境づくりを支援しています。施工後の設備の保守・メンテナンスも提供しており、建物のライフサイクルに合わせたサービスを展開しています。
収益は、請負契約に基づく工事代金および保守メンテナンス料から得ています。運営は主に東テク、アイ・ビー・テクノス、北日本計装、東テク北海道、東テク電工、および海外子会社のQuantum Automation Pte.Ltd.等が行っています。
■その他
再生可能エネルギーの普及に貢献するため、自社で保有する太陽光発電施設を利用した売電事業を行っています。
収益は、発電した電力を電力会社へ販売することによる売電収入です。運営は東テクが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大しており、特に直近2期は2桁成長を記録しています。利益面でも、経常利益、当期利益ともに増加傾向にあり、利益率も向上しています。資源高や資材価格高騰の影響を受けつつも、再開発案件やデータセンター需要の取り込み、メンテナンス事業の伸長により、収益性を高めています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,097億円 | 1,101億円 | 1,267億円 | 1,407億円 | 1,560億円 |
| 経常利益 | 68億円 | 71億円 | 82億円 | 106億円 | 156億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 6.5% | 6.5% | 7.5% | 10.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 38億円 | 44億円 | 49億円 | 80億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は24.6%から26.9%へ改善しました。営業利益率は7.0%から9.4%へと大きく向上しています。販売費及び一般管理費は増加していますが、増収効果と原価管理の徹底により、利益率の改善が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,407億円 | 1,560億円 |
| 売上総利益 | 346億円 | 419億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.6% | 26.9% |
| 営業利益 | 99億円 | 147億円 |
| 営業利益率(%) | 7.0% | 9.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が95億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が32億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに増収増益となりました。商品販売事業は再開発案件が好調で、保守メンテナンスも伸長しました。工事事業はカーボンニュートラル対応やデータセンターなどの大型設備需要を取り込み、大幅な増収増益を達成しました。特に工事事業の利益率改善が全社の利益増に大きく寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 商品販売事業 | 839億円 | 907億円 | 178億円 | 197億円 | 21.7% |
| 工事事業 | 568億円 | 652億円 | 167億円 | 221億円 | 33.9% |
| その他 | 0.4億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 0.2億円 | 57.9% |
| 調整額 | -24億円 | -25億円 | -0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 1,407億円 | 1,560億円 | 346億円 | 419億円 | 26.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東テクは、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、手元資金を潤沢に確保しています。これは、好調な業績を背景に、税金等調整前当期純利益が大きく伸びたことなどが主な要因です。投資活動では、有形・無形固定資産の取得や敷金・保証金の差入などにより資金を使用しましたが、投資有価証券の売却収入などもあり、その支出額は限定的でした。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いにより資金が使用されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 99億円 | 139億円 |
| 投資CF | -4億円 | -11億円 |
| 財務CF | -60億円 | -84億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、経済性や利便性だけでなく、その先にあるこころの豊かさを求めていくことを使命とし、「東テクグループはこころ豊かな快適環境を創造します。」という存在意義を定めています。この理念のもと、事業活動を通じて社会的価値および経済的価値の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
「価値の高いサービスでお客様の満足度を高める」「地球にやさしい環境づくりで社会に貢献する」「出会いを大切にしこころ豊かな企業体質を実現する」ことを経営において重視しています。「ここちよいを、その先へ。」を長期ビジョンに掲げ、人、社会、地球にとっての新しい時代の「ここちよさ」を追求する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
収益構造の改革を重点課題とし、売上高および経常利益の絶対額の確保と利益率向上に取り組んでいます。効率性と財務安定性の両立を目指し、以下の数値を経営指標の目標として掲げています。
* 2026年3月期 売上高:1,600億円
* 2026年3月期 経常利益:158億円
* ROE:12%以上
* PBR:1倍以上
* 自己資本比率:50%前後
■(4) 成長戦略と重点施策
「人にここちよい」をテーマとした中期経営計画に基づき、持続的成長に向けた施策を推進しています。既存事業の深耕に加え、脱炭素社会への貢献や海外展開を加速させます。
* 人財への投資:教育・研修の充実やエンゲージメント向上施策により、自律的に価値を創造できる人財を育成します。
* ESG経営:GHG排出削減などの環境課題への貢献や、ダイバーシティ推進による働きやすい職場環境の構築を進めます。
* コア事業の強化:大型・高収益案件への注力、既存顧客の深耕と新規開拓、トータルソリューション力の活用により収益力を高めます。
* 海外事業の拡大:東南アジア地域での拠点拡大やM&Aの活用により、グローバル展開を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自ら考え、自発的に行動し、新しい価値を生み出せる人財」を求める人物像とし、人こそが最も重要な経営資本であると認識しています。教育・研修制度の充実やエンゲージメントサーベイに基づく改善活動を通じ、社員一人ひとりの成長支援と、意欲を持って働ける環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.5歳 | 12.1年 | 8,409,326円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.1% |
| 男性育児休業取得率 | 52.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 55.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、生活習慣病リスク者割合(69.0%)、EXスコア(75.9)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気及び市場の動向
建築設備業界は景気変動や政府の経済政策の影響を受けやすい特性があります。民間設備投資や公共投資が想定以上に低迷した場合、受注減少等により同グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競争の激化
商品販売事業や工事事業における同業他社との競争は厳しくなっています。価格競争の激化や競合他社の攻勢など、予期せぬ競争関係の変化が生じた場合、収益性が低下し、経営成績等に影響を与える可能性があります。
■(3) 債権回収
建築設備業界の慣行上、売上債権の管理が極めて重要です。同グループは与信管理を徹底していますが、取引先の経営悪化等により多額の不良債権が発生した場合、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 仕入先の状況の変化
主要仕入先であるダイキン工業からの仕入額が全体の約26%を占めています。主要仕入先の生産能力や品質の変化、または同グループとの取引関係に変更が生じた場合、商品の安定供給に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。



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