※本記事は、株式会社CAC Holdingsの有価証券報告書(第60期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. CAC Holdingsってどんな会社?
CAC Holdingsは、国内外でシステム構築やシステム運用管理サービスを提供するIT企業です。
■(1) 会社概要
1966年にコンピュータソフトウエアの受託設計制作等を目的に設立されました。1994年にシーエーシーへ商号変更し、2000年に東証一部へ上場しています。2014年には持株会社体制へ移行し、現在のCAC Holdingsへ商号を変更しました。近年も複数のIT企業を子会社化し、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で4,764名、単体で85名です。筆頭株主は過去に合弁会社設立などの協業実績がある事業会社の小学館で、第2位は資産管理業務等を行う信託銀行、第3位は自社の社員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小学館 | 17.75% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.53% |
| CAC社員持株会 | 3.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は西森良太氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西森 良太 | 代表取締役社長 | 1994年入社。米国子会社社長やシーエーシー社長などを歴任し、2021年1月より現職。 |
| 酒匂 明彦 | 取締役会長 | 1983年入社。金融システム事業部長や代表取締役社長などを経て、2023年3月より現職。 |
| 佐別當 宏友 | 取締役兼執行役員 | 2000年入社。経営企画部長やシーエーシーの代表取締役社長などを経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、松尾 美香(アサヒグループホールディングス顧問)、大槻 友紀(東京ビジネスサービス専属産業医)、渡邊 龍男(有限会社ソレイルソウル取締役)、原田 達也(東京大学先端科学技術研究センター教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内IT」および「海外IT」の事業を展開しています。
■国内IT
国内の顧客向けに、システム構築サービス、システム運用管理サービス、人事BPOサービスなどを提供しています。
システム開発や運用、保守などの役務提供に対する業務委託料や請負代金を主な収益源としています。事業の運営は主にシーエーシーやアークシステムなどの国内子会社が行っています。
■海外IT
海外の顧客向けに、システム構築サービス、システム運用管理サービス、保守サービスなどを提供しています。
海外におけるシステム構築や運用に関する役務提供の対価として、顧客から業務委託料や保守料等を受け取っています。事業の運営は主にCAC AMERICA CORPORATIONやPT Mitraisなどの海外子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は概ね500億円前後で安定して推移していますが、経常利益は特定顧客の内製化や人的資本への投資強化等の影響により、直近では減益傾向にあります。一方、当期利益は投資有価証券の売却益計上などにより増加しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 479億円 | 480億円 | 505億円 | 521億円 | 506億円 |
| 経常利益 | 37億円 | 32億円 | 31億円 | 34億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 7.7% | 6.6% | 6.2% | 6.5% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 | 21億円 | 25億円 | 31億円 | 33億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、特定顧客における内製化の影響などにより売上が減少したことに伴い、売上総利益も減少しています。さらに、成長基盤の構築に向けた人的資本投資を継続したことで販売費及び一般管理費が増加し、営業利益率の低下につながっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 521億円 | 506億円 |
| 売上総利益 | 136億円 | 133億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.1% | 26.3% |
| 営業利益 | 34億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が37億円(構成比34%)、役員報酬が5億円(同4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内IT事業は、新規連結子会社の寄与があったものの、特定顧客における内製化や大型案件の収束により減収となりました。一方、海外IT事業はインド子会社の伸長などにより増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 国内IT | 393億円 | 373億円 |
| 海外IT | 127億円 | 133億円 |
| 連結(合計) | 521億円 | 506億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
CAC Holdingsは、投資有価証券の売却益が営業活動によるキャッシュ・フローを大きく押し上げましたが、法人税等の支払いや投資事業組合運用損などが影響し、前年比で収入は減少しました。投資活動では、有価証券や子会社株式の取得が支出の主な要因となりました。財務活動では、配当金の支払いが支出の大部分を占めました。これらの結果、現金及び現金同等物は減少しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 57億円 | 15億円 |
| 投資CF | -13億円 | -13億円 |
| 財務CF | -29億円 | -12億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世界をフィールドに先進のICTをもって新しい価値を創造する」を企業理念に掲げています。グローバリゼーションや多様化する価値観から生まれる市場ニーズを的確に汲み取り、テクノロジーを駆使して新しい価値を創造し続けることで、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「CAC Vision 2030」の達成に向け、「Five Values(Creativity、Humanity、Challenge、Respect、Pride)」を体現する人材を重視する文化があります。社員が失敗を過度に恐れることなく挑戦し、会社とともに自律的に成長できる環境づくりを進めています。
■(3) 経営計画・目標
事業収益の継続的な拡大を通じた企業価値の向上を目標としています。2026年12月期の重要な経営指標として以下の項目を設定し、持続的な成長を目指しています。また、独自の指標「CAC Group Positive Index」を用いて社会的インパクトの最大化も図っています。
* 売上高
* 調整後EBITDA
* ROE
* エクイティスプレッド
* 自己資本配当率(DOE)
■(4) 成長戦略と重点施策
生成AIをはじめとする技術の進展や顧客ニーズの変化に対応するため、事業ポートフォリオの多様化を推進しています。従来の「顧客のIT課題の解決」を中心とする事業から、「社会が抱える課題の解決」に資する事業構造への転換を図り、以下の施策に取り組んでいます。
* AI Transformationの推進
* 新規事業の創出・発展
* 継続的なM&Aの実行
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「様々な機会を通じて多様な経験を積む」ことが従業員の成長に重要であると捉え、プロフェッショナル人材を育成するための環境整備に注力しています。研修だけでなく、マルチアサインメント等の実践を通じた挑戦の機会を提供し、次世代リーダーの計画的な育成も推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.2歳 | 11.5年 | 9,456,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.0% |
| 男性育児休業取得率 | 108.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※男女の賃金の差異については、連結子会社に含めて開示を行っているため、提出会社単体の数値は記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(83.5%)、年次有給休暇取得率(59.0%)、平均月間法定外労働時間(10.7時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT投資関連の激しい受注獲得競争
情報サービス産業では、投資対効果に対する顧客の厳しい要請や新規参入企業の増加などにより、熾烈な受注獲得競争が展開されています。人員の不稼働による損失やプロジェクトの採算悪化を招き、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 先端技術の進展に対する対応遅れ
技術環境が大きく変化するIT業界において、AIなどの予想を超える技術の進展や新たな技術動向が生じた際に対応が遅れた場合、市場での競争力やブランド価値が低下し、事業活動に支障をきたす可能性があります。
■(3) 特定顧客や業種への高い依存
同社の売上高は特定の顧客や業種への依存度が高くなっています。これは同社の強みである一方で、該当顧客のIT投資行動の変化や経営変動、特定業界の急激な環境変化が起きた際、業績に影響を与えるリスクをはらんでいます。



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