※本記事は、サイボウズ株式会社 の有価証券報告書(第28期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サイボウズってどんな会社?
グループウェア「サイボウズ Office」や業務改善プラットフォーム「kintone」を提供するソフトウェア企業です。
■(1) 会社概要
1997年に愛媛県松山市で設立され、「サイボウズ Office」シリーズを発売しました。2000年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2006年には市場第一部へ変更しました。2011年に独自開発クラウド基盤「cybozu.com」上で「kintone」等のサービス提供を開始し、クラウド事業へ大きく舵を切りました。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、現在は米国やアジアにも拠点を展開しています。
連結従業員数は1,321名、単体では1,030名です。筆頭株主は創業メンバーの一人である畑慎也氏で、第2位は代表取締役社長の西端慶久(青野慶久)氏が代表を務める資産管理会社のCbzサポーターズです。第3位には信託銀行が名を連ねています。経営陣が主要株主として安定した持分を保有しつつ、事業拡大を続けています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 畑 慎也 | 17.65% |
| Cbzサポーターズ | 17.53% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.3%です。代表取締役社長は西端慶久(青野慶久)氏です。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西端 慶久 | 代表取締役社長 | 1994年松下電工入社。1997年同社設立時に取締役副社長就任。2005年より現職。 |
| 岡田 陸 | 取締役 | 2020年同社入社。人事本部所属を経て、2021年取締役就任。2024年より現職。 |
| 田岡 朋弥 | 取締役 | 2022年同社入社。経営支援本部所属を経て、2024年より現職。 |
| 森岡 貴和 | 取締役 | 住友銀行等を経て2005年同社入社。営業本部副本部長等を歴任し、2021年取締役就任。2023年より現職。 |
社外取締役は、熊平美香(エイテッククマヒラ代表取締役)、渡邊裕子(HSW Japan Partner and Co-founder)です。
2. 事業内容
同社グループは「ソフトウェアの開発・販売」の単一セグメントで事業を展開しています。
■ソフトウェア事業
企業や組織内の情報共有を円滑にするグループウェアの開発と販売を行っています。主力製品には、業務アプリ構築クラウドサービス「kintone」、中小企業向け「サイボウズ Office」、中堅・大規模組織向け「Garoon」、メール共有サービス「メールワイズ」などがあります。顧客は民間企業から自治体まで多岐にわたり、特に「kintone」は現場主導の業務改善ツールとして導入が進んでいます。
収益は主に、クラウドサービスの利用料(サブスクリプション)およびパッケージ製品のライセンス販売・保守料から得ています。クラウドサービスの売上が全体の大部分を占め、継続的なストック収益が基盤となっています。運営は主にサイボウズが行い、海外ではKintone Corporation(米国)、才望子信息技術(上海)有限公司(中国)などの子会社が各地域での販売・サポートを担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けています。特にここ数年はクラウドサービスの積み上げにより収益基盤が安定拡大しており、利益面でも高い水準を維持しています。第26期には一時的に利益率が低下しましたが、その後回復し、当期は売上高297億円、経常利益53億円と過去最高水準の業績を達成しました。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 157億円 | 185億円 | 221億円 | 254億円 | 297億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 15億円 | 10億円 | 36億円 | 53億円 |
| 利益率(%) | 14.5% | 7.9% | 4.5% | 14.1% | 18.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 2億円 | 1億円 | 24億円 | 34億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は90%前後と非常に高い水準を維持しており、ソフトウェア事業特有の高収益構造が見て取れます。営業利益率は前期の13.3%から当期は16.5%へと改善しており、増収効果が利益増に直結していることがわかります。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 254億円 | 297億円 |
| 売上総利益 | 231億円 | 267億円 |
| 売上総利益率(%) | 90.7% | 90.1% |
| 営業利益 | 34億円 | 49億円 |
| 営業利益率(%) | 13.3% | 16.5% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が94億円(構成比43.0%)、広告宣伝費が56億円(同25.7%)を占めています。売上原価については、大部分がソフトウェア償却費やサーバー運用等の費用で構成されています。
■(3) セグメント収益
同社グループは「ソフトウェアの開発・販売」の単一セグメントであるため、全社売上がそのままセグメント売上となります。主力製品である「kintone」や「サイボウズ Office」のクラウドサービスが好調に推移し、全社的な増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) |
|---|---|---|
| ソフトウェア事業 | 254億円 | 297億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスの「健全型」です。本業で稼いだ現金を、将来の成長のための設備投資(主にサーバー関連)や株主還元、自己株式取得に充てています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 45億円 | 56億円 |
| 投資CF | -25億円 | -31億円 |
| 財務CF | -8億円 | -36億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念を掲げています。この理念のもと、情報共有の基盤となるソフトウェアを提供することを主な事業領域とし、世界中のチームワーク向上に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社では、「理想への共感」「多様な個性を重視」「公明正大」「自主自律」「対話と議論」といった文化を重視しています。また、「誰もが取締役的な意識をもって役割を担う」と考え、徹底的に情報をオープンにし、一人ひとりが自立心を持って質問責任を果たし、意思決定者が説明責任を果たす風土を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標としての経営計画は記載されていませんが、将来の収益力を一層高めるため、クラウドサービスの成長およびエンタープライズ市場へのビジネス推進に向けた投資を継続する方針を示しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、新規顧客の獲得およびパートナー連携の強化を重点施策としています。特に、エンタープライズ企業や大規模組織への「kintone」導入促進に注力し、「kintoneエンタープライズ認証」制度や大規模向けコースの展開を進めています。また、グローバル展開として、米国市場に加え東南アジア市場への注力を強化し、現地の営業拠点やパートナー企業との連携を通じてエコシステムを拡大していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「チームワークあふれる社会を創る」という共通の想いのもと、多様な個性や価値観を持つメンバー一人ひとりと対話し、チームの生産性とメンバーの幸福が両立するマッチングを目指しています。採用においては積極的な人材確保を進めるとともに、入社後のオンボーディングやキャリア支援制度を充実させています。また、働く場所や時間を自律的に選択できる環境整備を行い、多様性を尊重する風土の発展に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 35.8歳 | 6.2年 | 6,879,178円 |
※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び持株会奨励金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 30.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 78.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 78.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 79.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 78.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(45.0%)、国内従業員持株会加入率(86.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変化と技術革新
利用している技術(Web、クラウド、AI等)は進歩が速く、業界標準や利用者ニーズも急速に変化しています。新製品や新サービスへの対応、新たな技術革新への対応が遅れた場合、提供する製品・サービスの陳腐化を招き、競争力が低下する可能性があります。
■(2) 人材の採用・育成と確保
事業拡大において専門性を有する人材の採用・育成は不可欠ですが、人材獲得競争の激化により採用が困難となる場合や、在職人材の社外流出が生じた場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。
■(3) システム障害とサービス停止
クラウドサービスはインターネットに依存しているため、自然災害、事故、通信インフラの故障、サイバー攻撃等によりシステム障害が発生した場合、クラウド事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。サービスの停止は顧客の信頼喪失や業績への悪影響につながる恐れがあります。
■(4) 情報セキュリティとデータ管理
顧客情報や営業秘密の漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により業績に影響を及ぼす可能性があります。特にクラウドサービス上のデータの破壊、紛失、漏洩等は、事業の収益性に大きな影響を与えるリスクがあります。



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