サイボウズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイボウズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイボウズは東京証券取引所プライム市場に上場し、グループウェアの開発やクラウドサービスの提供を主力事業として展開しています。主力製品のkintoneやサイボウズOfficeなどのクラウドサービス売上が堅調に推移し、直近の業績では売上高、各利益ともに前期を上回る大幅な増収増益を達成して成長を続けています。


#記事タイトル:「サイボウズ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、サイボウズ株式会社の有価証券報告書(第29期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サイボウズってどんな会社?


同社は、情報共有の基盤となるグループウェアの開発とライセンス販売、クラウドサービスを主力としています。

(1) 会社概要


1997年に愛媛県松山市で設立され、同年に「サイボウズ Office」シリーズを発売しました。2000年に東京証券取引所マザーズへ上場後、2006年に市場第一部(現プライム市場)へ移行しました。2011年に独自開発のクラウド基盤上で「kintone」などの提供を開始し、海外への事業展開も推進しています。

現在の従業員数は連結で1,356名、単体で1,080名です。筆頭株主は創業者である畑慎也氏で、第2位は代表取締役社長の西端慶久氏の資産管理会社であるCbzサポーターズ、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
畑慎也 17.64%
Cbzサポーターズ 17.52%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.4%です。代表取締役社長は西端慶久氏が務めており、取締役9名のうち社外取締役の比率は約22%となっています。

氏名 役職 主な経歴
西端慶久 代表取締役社長 1994年松下電工入社。1997年同社設立に参画し取締役副社長に就任。2005年より現職。
岡田陸 取締役 2020年同社入社、人事本部に所属。2021年3月に取締役に就任し現職。
田岡朋弥 取締役 2022年同社入社、経営支援本部などに所属。2024年3月に取締役に就任し現職。
永岡恵美子 取締役 1992年日本興業銀行入行。東京スター銀行等を経て2014年同社入社。2025年より現職。


社外取締役は、磯田満梨(神戸大学大学院経営学研究科教授)、熊平美香(エイテッククマヒラ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウェアの開発・販売」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) kintone(業務アプリ構築クラウドサービス)


プログラミングの専門知識がなくても、自社の業務に合わせたシステムを簡単に作成できるクラウド型の業務アプリ構築サービスを提供しています。柔軟なカスタマイズ性を強みに、中小企業から大企業、自治体まで幅広い顧客に導入されています。

顧客から月額または年額の利用料(サブスクリプション)を受け取るモデルを中心に収益を上げています。運営は同社のほか、米国や中華圏、東南アジアなどで展開するKintone Corporationなどの各海外現地法人が担っています。

(2) グループウェアおよびその他のサービス


中小企業向けの「サイボウズ Office」、中堅・大規模組織向けの「Garoon」、メール共有サービスの「メールワイズ」といった情報共有やコミュニケーションを支えるツールを提供しています。

主にクラウド基盤を利用したSaaSとしての利用料から収益を得ており、一部はパッケージ製品のライセンス販売や保守サービスの提供も行っています。同社および各地域の販売子会社を通じてサービスが提供・運営されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりの成長を続けており、直近5年間で継続的な増収を達成しています。経常利益も一時的な踊り場を経て直近では大幅な増益を記録し、利益率も27%台まで大きく向上しており、収益力の向上が顕著に表れています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 185億円 221億円 254億円 297億円 374億円
経常利益 15億円 10億円 36億円 53億円 103億円
利益率(%) 7.9% 4.5% 14.1% 18.0% 27.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 1億円 24億円 34億円 70億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な拡大に伴い、売上総利益も順調に増加しています。利益率の高いビジネスモデルを背景に売上総利益率は90%という極めて高い水準を維持しており、営業利益率も前期の16%台から27%台へと大きく改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 297億円 374億円
売上総利益 267億円 337億円
売上総利益率(%) 90.1% 90.0%
営業利益 49億円 101億円
営業利益率(%) 16.5% 27.0%


販売費及び一般管理費(単体ベース)のうち、人件費が79億円(構成比37%)、広告宣伝費が56億円(同26%)を占めています。また、売上原価においては、減価償却費が20億円(構成比43%)、通信費が14億円(同30%)となっています。

(3) セグメント収益


同社はソフトウェアの開発・販売の単一セグメントで事業を展開しています。主力製品であるkintoneの導入拡大や既存顧客の全社利用推進、さらに価格改定の影響もあり、当期の売上高は前期から大幅に増加しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
ソフトウェアの開発・販売 297億円 374億円
連結(合計) 297億円 374億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 56億円 107億円
投資CF -31億円 -31億円
財務CF -36億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は48.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.1%で、いずれも市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念のもとで、情報共有の基盤となるソフトウェアを提供することを主な事業領域としています。事業活動を通して世界中にチームワークを普及させることが、社会に対する責任を果たすことにつながると考えて経営を行っています。

(2) 企業文化


理念の実現に向けて、同社自身が大切にしている5つのカルチャー(「理想への共感」「多様な個性を重視」「公明正大」「自主自律」「対話と議論」)を体現し、チームの生産性とメンバーの幸福がともに高い状態の組織であることを目指しています。情報共有を通じて情報格差をなくし、主体的に行動できる風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


中長期の事業戦略として、クラウドサービスの更なる成長とグローバル展開を推進しています。具体的な数値目標として、中期ターゲットの達成を掲げて経営に取り組んでいます。

* 連結売上高:509億円(2028年12月期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


将来の収益力をより一層高めるため、引き続きパートナー企業との連携を強化しながら、エンタープライズ市場を含めた新規顧客の獲得と既存顧客の全社利用推進に注力します。また、業務改善を加速させるAI機能の開発と搭載を優先的に進めるとともに、北米や中華圏、APACを中心としたグローバル展開も機動的に推進していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「100人100通りのマッチング」を重視し、一人ひとりの多様な個性や強みが最大限に発揮されるよう、柔軟な働き方の選択肢を提示しています。自律的なキャリア開発を支援する仕組みやタレントマネジメントを整備し、チームの生産性と従業員の幸福を両立させることで、中長期の事業戦略を加速させるための人材確保と組織強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.4歳 6.7年 7,188,078円


※平均年間給与は賞与、基準外賃金及び持株会奨励金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.7%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.0%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 85.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(45.0%)、国内従業員持株会加入率(89.1%)、グローバル拠点の持株制度加入率(69.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と市場環境の変化


Webやクラウド、AI等の技術革新は進歩が速く、業界標準や顧客ニーズも急速に変化します。これらへの対応が遅れた場合、提供するサービスやクラウド環境が陳腐化して他社に対する競争力の低下を招き、同社グループの事業や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) クラウドサービスのシステム障害


製品・サービスの提供や営業活動においてインターネット環境に大きく依存しています。自然災害やサイバー攻撃、通信インフラの障害等によりシステムが正常に稼働しない事態が発生した場合、クラウド事業や顧客への代替サービス提供に極めて重大な影響を与えるリスクがあります。

(3) 情報セキュリティとデータ管理


クラウドサービス事業を展開する上で、営業秘密や顧客情報などの保護は極めて重要です。クラウド上のデータの破壊や紛失、漏洩といったインシデントが発生した場合、社会的な信用が失墜するとともに損害賠償訴訟に発展する恐れもあり、事業の収益性に多大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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