フリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(グロース)に上場し、スモールビジネス向けに「freee会計」などのクラウドERPサービスを提供するプラットフォーム事業を展開しています。当期の売上高は333億円で前期比30.8%の増収となり、営業損益は6億円の黒字に転換しました。積極的な機能開発と顧客基盤の拡大により、成長と収益化を両立させています。


※本記事は、フリー株式会社 の有価証券報告書(第13期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フリーってどんな会社?


スモールビジネス向けの統合型クラウドERPを開発・運営する企業です。「freee会計」や「freee人事労務」などを通じ、業務効率化を支援しています。

(1) 会社概要


同社は2012年に設立され、翌2013年に「クラウド会計ソフトfreee(現・freee会計)」をリリースしました。2014年には人事労務ソフトの提供を開始し、2019年に東証マザーズ(現・グロース)へ上場しました。その後も電子契約サービスを提供する企業の完全子会社化や、販売管理ソフトのリリースなど事業領域を拡大しています。

現在の連結従業員数は1,901名(単体1,851名)です。筆頭株主は創業者で代表取締役CEOの佐々木大輔氏で、第2位および第3位は資産管理業務を行う金融機関の顧客口座となっています。

氏名 持株比率
佐々木 大輔 18.56%
MSIP CLIENT SECURITIES 9.87%
MSCO CUSTOMER SECURITIES 8.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役CEOは佐々木大輔氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々木 大輔 代表取締役CEO 2004年博報堂入社。ALBERT、グーグルを経て、2012年7月同社設立、代表取締役CEOに就任。2020年より一橋大学経営協議会委員を兼任し、現在に至る。
横路 隆 取締役CTO 2010年ソニー入社。2012年7月同社設立とともに取締役に就任。2015年執行役員CTOを経て、2021年9月より取締役CTOとして現職。


社外取締役は、ユミ・ホサカ・クラーク(元ビザ・ワールドワイド・ジャパン プロダクト&ソリューション日本本部長)、内藤陽子(元新日本監査法人)、浅田慎二(One Capital代表取締役CEO)、平野正雄(早稲田大学大学院教授・指名報酬委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 統合型クラウドERP


個人事業主や中小法人向けに、会計、人事労務、販売管理などのバックオフィス業務を効率化するSaaS型クラウドサービスを提供しています。銀行口座等とのデータ連携やAIによる自動仕訳機能などが特徴です。主なプロダクトには「freee会計」「freee人事労務」「freee販売」「freee申告」などがあります。

これらのサービスは主にサブスクリプション方式で提供されており、ユーザー企業から継続的な利用料を受け取る収益モデルとなっています。運営は主に同社が行っていますが、電子契約サービス「freeeサイン」や連結会計ソフトなどは、M&Aによりグループ入りした子会社等の事業を統合・承継して展開しています。

(2) 金融サービス


スモールビジネスの資金繰り改善を目的とした金融サービスを提供しています。事業用クレジットカード「freeeカード Unlimited」や、請求書買取による資金調達支援などを行っています。会計データを用いた独自の与信モデルを活用し、従来の金融機関では対応が難しかった層へのサービス提供を可能にしています。

収益源は、クレジットカードの決済手数料や金融サービスの利用料などが中心です。運営は同社に加え、2025年9月に完全子会社化したGMOクリエイターズネットワーク(現・連結子会社)などが担っており、グループ全体で金融サービスのラインナップ強化を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、直近5期間で3倍以上に成長しています。利益面では、先行投資により赤字が続いていましたが、当期においては営業損益および経常損益が黒字化を達成しました。有料課金ユーザー数の増加と顧客単価(ARPU)の上昇が成長を牽引しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 103億円 144億円 192億円 254億円 333億円
経常利益 -27億円 -31億円 -80億円 -86億円 4.1億円
利益率(%) -26.5% -21.5% -41.5% -34.0% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -28億円 -116億円 -123億円 -102億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約3割増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。これまで営業損失を計上していましたが、増収効果に加え、コストコントロールが進んだことで営業利益が黒字転換しました。収益性が着実に向上していることが伺えます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 254億円 333億円
売上総利益 210億円 274億円
売上総利益率(%) 82.5% 82.2%
営業利益 -84億円 6.1億円
営業利益率(%) -33.0% 1.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が70億円(構成比26%)、研究開発費が47億円(同18%)、広告宣伝費が42億円(同16%)を占めています。売上原価においては、詳細な内訳データはありませんが、サーバー費用やカスタマーサポート費用が含まれています。

(3) セグメント収益


同社はプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの比較情報は記載を省略します。全社的な売上高は、有料課金ユーザー企業数の増加およびARPUの上昇により堅調に推移しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
連結(合計) 254億円 333億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスである一方、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスであり、さらに財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっています。これは、本業で得た現金に加え、外部からの資金調達も行いながら、成長のための投資を積極的に実施している「積極型」の状態と言えます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -68億円 37億円
投資CF -11億円 -46億円
財務CF 37億円 50億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げています。このミッションのもと、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」の実現を目指し、スモールビジネスがデータとテクノロジーを活用して生産性を向上させ、社会に新たなムーブメントを起こす存在となることを支援しています。

(2) 企業文化


同社は「マジ価値を届けきる集団」であると自己定義し、ユーザーにとって本質的な価値(マジ価値)を届けることを重視しています。このためのマインドとして「社会の進化を担う責任感」「ムーブメント型チーム」という「マジ価値2原則」を掲げ、行動指針として「理想ドリブン」「アウトプット⇒思考」などの「マジ価値指針」を共有しています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な財務目標として、2028年6月期までに調整後フリー・キャッシュ・フロー(FCF)マージンを15%以上に向上させることを掲げています。また、持続的な事業成長と収益性の両立を目指し、対前期比売上高成長率と調整後FCFマージンの合計で40%に到達することを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


ユーザー基盤の拡大に加え、会計・人事労務以外の新規領域への注力や金融サービスの強化により、統合型プラットフォームとしての価値を高める方針です。また、プロダクトへのAI導入による機能強化と、社内業務におけるAI活用による生産性向上を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ミッション実現のため、従業員の自律的な成長と組織のパフォーマンス最大化を重視しています。「freee style 人事制度」により四半期ごとの目標設定とフィードバックを行い、個人のキャリアビジョンと会社の目標の整合を図っています。また、「ジャーマネ」と呼ばれるマネージャーの育成強化や、ダイバーシティ推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 33.1歳 2.2年 6,884,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.9%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 71.5%
男女賃金差異(正規雇用) 77.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 98.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性の割合(31.0%)、管理職に占める女性労働者の割合(18.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) クラウド関連市場の動向


同社の事業はクラウドサービスの普及を前提としていますが、国内のBtoB向けクラウド市場は発展途上です。法的規制の変更や技術革新の停滞などにより、クラウドサービスの導入が想定通りに進まない場合、市場の成長が阻害され、同社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新と競争環境


クラウドサービス分野は技術革新が速く、常に最新技術を取り入れる必要があります。対応が遅れた場合や、競合他社がより優れたサービスを提供した場合、競争力が低下する恐れがあります。また、既存の競合に加え、新規参入による競争激化が、同社の市場シェアや収益性に影響を与える可能性があります。

(3) システム障害と情報セキュリティ


同社のサービスは通信ネットワークや外部クラウド基盤(AWS)に依存しています。自然災害やサイバー攻撃、システム障害などによりサービスが停止した場合、顧客への損害賠償やブランド毀損につながるリスクがあります。また、機密情報や個人情報の漏洩が発生した場合も、社会的信用の失墜や法的責任を問われる可能性があります。

(4) 人材の確保と育成


事業拡大に伴い、開発部門を中心に優秀な人材の確保が不可欠です。エンジニア等の獲得競争は激しく、採用や育成が計画通りに進まない場合、または人材確保のために人件費が高騰した場合、サービスの質や開発スピードの低下、利益率の悪化などを招き、事業展開に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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