フルキャストホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フルキャストホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フルキャストホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、短期系人材サービスを主力とする短期業務支援事業や営業支援事業、飲食事業、警備事業などを展開しています。直近の業績では、主力の短期業務支援事業や警備事業の成長が牽引し、全社で増収増益を達成するなど、順調な事業拡大を続けています。


※本記事は、株式会社フルキャストホールディングスの有価証券報告書(第33期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フルキャストホールディングスってどんな会社?


短期系人材サービスを主力とし、営業支援や飲食、警備など多角的な事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


同社は1990年にリゾートワールドとして設立され、1992年にフルキャストへ社名変更し、短期業務請負業を開始しました。2001年に店頭市場へ上場し、2008年に持株会社体制へ移行して現社名に変更しました。2012年の労働者派遣法改正に伴いアルバイト紹介等のサービスを開始し、近年もM&Aにより事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で1,515名、単体で101名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は創業者関連のヒラノ・アソシエイツで、第2位および第3位には投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
ヒラノ・アソシエイツ 37.63%
UH Partners 2投資事業有限責任組合 7.57%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは平野岳史氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
平野岳史 代表取締役社長CEO 1984年ハーベストフューチャーズ入社。1990年リゾートワールド設立、代表取締役社長。フルキャストマーケティング代表取締役社長等を経て、2024年12月より現職。
坂巻一樹 代表取締役副社長 1989年エーアイ通商入社。1995年フルキャスト入社。同社代表取締役社長等を経て、2014年フルキャストホールディングス代表取締役社長CEO、2024年12月より現職。
石川敬啓 取締役 1990年リゾートワールド専務取締役。フルキャストファクトリー代表取締役、ビート代表取締役会長等を経て、2016年3月より現職。
貝塚志朗 取締役 1990年リゾートワールド専務取締役。フルキャストテクノロジー代表取締役、リアヴィオ代表取締役等を経て、2017年3月より現職。


社外取締役は、大木優紀(令和トラベル執行役員CCO)、佐々木孝二(佐々木税務会計事務所所長)、上杉昌隆(桜田通り総合法律事務所共同経営者)、戸谷英之(RSM清和監査法人理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「短期業務支援事業」「営業支援事業」「飲食事業」「警備・その他事業」を展開しています。

(1) 短期業務支援事業


顧客企業の業務量の増減に合わせ、タイムリーに短期系人材サービス、イベント系人材サービス、給与管理代行サービス等の短期人材サービスを提供しています。

顧客企業から人材紹介手数料や派遣料金、業務請負代金などを受け取る収益モデルです。運営は主にフルキャストやトップスポット、フルキャストシニアワークスなどが担っています。

(2) 営業支援事業


主に販売代理店網を主軸としたインターネット回線など通信商材等の販売代行や、コールセンター業務を提供しています。

通信サービス等の契約取次によるインセンティブ収益や、業務受託による手数料を受け取る収益モデルです。運営は主にエフプレインやエムズラインが行っています。

(3) 飲食事業


店舗運営による飲食チェーン経営やフランチャイズ加盟店へのライセンス供与、ならびに食材等の販売を提供しています。

一般顧客からの飲食代金や、加盟店からのロイヤルティ収益、食材販売代金を受け取る収益モデルです。運営はグロービート・ジャパンなどが担っています。

(4) 警備・その他事業


主に公共施設や一般企業などに対して、常駐警備や雑踏警備、交通警備などの警備業務等を提供しています。

顧客企業や公共施設等からの警備請負契約に基づく固定的な警備業務代金や従量制の料金を受け取る収益モデルです。運営はフルキャストアドバンスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が概ね増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。経常利益は一時的な増減があるものの、高水準の利益率を維持しており、当期純利益も安定して推移しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 524億円 646億円 690億円 686億円 772億円
経常利益 76億円 99億円 87億円 73億円 78億円
利益率(%) 14.6% 15.3% 12.6% 10.7% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 38億円 51億円 61億円 55億円 82億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が増加しており、営業利益も堅調に推移しています。利益率も安定した水準を維持しており、効率的な事業運営が行われていることが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 686億円 772億円
売上総利益 245億円 264億円
売上総利益率(%) 35.8% 34.2%
営業利益 71億円 79億円
営業利益率(%) 10.4% 10.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が60億円(構成比32%)、雑給が17億円(同9%)、広告宣伝費が14億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の短期業務支援事業は、需要拡大と子会社化の寄与により増収増益となりました。営業支援事業や警備・その他事業も増収増益と好調でしたが、飲食事業は出店費用の増加等により減益となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
短期業務支援事業 552億円 611億円 83億円 85億円 13.9%
営業支援事業 33億円 51億円 2億円 2億円 4.9%
飲食事業 76億円 74億円 6億円 5億円 6.1%
警備・その他事業 24億円 36億円 2億円 5億円 14.6%
調整額 -0.5億円 -0.7億円 -22億円 -18億円 -
連結(合計) 686億円 772億円 71億円 79億円 10.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 58億円 14億円
投資CF 2億円 -60億円
財務CF -29億円 62億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.0%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念として「すべての人をいちばん輝ける場所へ。」を掲げています。年齢や性別、国籍などにとらわれない多様な就業機会を提供し、雇用を求める企業には必要な労働力を適時に提供することで、双方にとって最適なマッチングを実現し、社会課題の解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、コンプライアンス最優先の経営を推進し、その維持・向上に努めることを重視しています。すべてのステークホルダーからの信頼構築を最優先事項として事業に取り組み、持続的な企業価値の向上を通じて社会の発展に貢献する行動様式が浸透しています。また、グループシナジーを最大化し、常に付加価値の向上を目指す姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2029」を策定し、最終年度である2029年12月期において以下の数値目標を掲げて経営を推進しています。

・連結営業利益 125億円
・ROE 20%以上
・総還元性向 50%
・DEレシオ 上限1.0倍

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、労働力人口減少下の需要に対応するため事業基盤の強化を図ります。主力サービスである紹介やBPOを中心に収益を伸長させつつ、業務効率化による生産性向上を推進します。また、M&Aやグループ再編を通じた事業領域の拡充、グローバル展開の加速、新規出店の継続などにより、企業価値の最大化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な企業価値向上の源泉を従業員の成長と位置付け、人種・国籍・性別等に拘らない多様な人材の確保と育成を推進しています。新卒・中途入社社員の早期戦力化に向けた研修メニューの充実や、ワーク・ライフ・バランスに配慮した就業環境の改善に取り組むとともに、将来の経営幹部候補を獲得するための施策も実行しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.1歳 12.0年 5,733,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.2%
男性育児休業取得率 57.9%
男女賃金差異(全労働者) 68.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 76.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 84.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員及び臨時従業員を含めた女性比率(60.0%)、短期業務支援事業における紹介、派遣等の稼働者に占める女性比率(47.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) グループの事業展開方針について


既存事業の収益が見込みどおりに推移しない場合や、新規事業において期待したシナジーが得られない場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、M&Aに伴う為替リスクやカントリーリスク、保有先企業の業績悪化による株式等の減損処理が発生するリスクも存在します。

(2) 法的規制の変更と各種事業許可について


労働者派遣法や職業安定法など各種法令の改正や解釈変更が事業に影響を与える可能性があります。また、有料職業紹介事業や労働者派遣事業の許可の取消し、事業廃止命令等を受けた場合、サービスの継続が困難となり、同社の業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 顧客企業及びスタッフのデータベース管理について


スタッフや顧客の情報を管理するシステムが災害やサイバー攻撃で停止した場合、業務に重大な支障をきたします。また、情報漏洩が発生した際には同社に対する社会的信用の失墜や損害賠償の請求につながり、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

フルキャストホールディングスの転職研究 2025年12月期決算に見るキャリア機会

フルキャストホールディングスの2025年12月期決算は、売上高が過去最高を更新。大型M&Aによりグローバル・ハイクラス紹介への進出とAI戦略を加速させています。「なぜ今フルキャストなのか?」「転職希望者がどの新設事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。