※本記事は、株式会社アプリックスの有価証券報告書(第41期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年4月8日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. アプリックスってどんな会社?
ストックビジネスとシステム開発を両輪に展開するアプリックスの特徴を概観します。
■(1) 会社概要
アプリックスは1986年にソフトウエア開発を目的に設立されました。1997年に家電組込み向けのJavaプラットフォームを発表し、2003年に上場を果たしました。近年は2019年にスマートモバイルコミュニケーションズを完全子会社化するなど、通信サービス領域へも事業を拡大しています。
同社グループは連結で53名、単体で43名の従業員を擁しています。筆頭株主は資本業務提携先である光通信で、第2位は個人のチャールズ レーシー、第3位は光通信に関連する投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 光通信 | 5.06% |
| チャールズ レーシー | 4.38% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 無限責任組合員 光通信 | 3.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は倉林聡子で、取締役4名のうち2名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 倉林 聡子 | 代表取締役社長 | 1997年CSK入社。2005年アプリックス入社。内部監査室長、経営管理部長等を経て、2022年より現職。 |
| 鳥越 洋輔 | 取締役 | 2009年テレコムサービス入社。2018年スマートモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長。2022年より現職。 |
社外取締役は、平松庚三(元ライブドア社長)、田口勉(元アイネット取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ストックビジネス事業」および「システム開発事業」を展開しています。
■ストックビジネス事業
各種通信サービスのプラン設計やバックオフィス業務に対応するMVNOサービス、クラウドWiFiルーターの提供、リテールメディアプラットフォームなどを展開し、幅広い顧客にサービスを提供しています。
継続的な利用料を収益源とするストックモデルを採用しています。運営は主にスマートモバイルコミュニケーションズが行っており、通信機能付きAIドライブレコーダーや光コラボレーションサービス等も扱っています。
■システム開発事業
創業以来培ってきた組込み開発技術をベースに、クラウド関連システムの開発やフロントエンド・バックエンドシステムの構築支援、ロケーションビーコンの販売などを行っています。
顧客のニーズに応じた受託開発や技術サポート等を通じて、開発や製品販売の対価を収益源としています。同事業の運営は同社が主体となって推進し、多様な開発要件にワンストップで対応しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は安定して推移していましたが、直近の2025年12月期は主要顧客の契約減少などの影響により大幅な減収となりました。利益面でも、減収の影響に加えて新規事業関連の減損損失などが重なり、各段階で赤字に転落するなど厳しい状況にあります。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 35億円 | 38億円 | 37億円 | 29億円 |
| 税引前利益 | 0.9億円 | 3.2億円 | 2.1億円 | -0.7億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 8.5% | 5.7% | -2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 3.4億円 | 1.6億円 | -1.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な減少に伴い、売上総利益も減少しています。一方で、販売費及び一般管理費は増加しており、収益性の悪化を招く要因となっています。その結果、営業損益は赤字に転じています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 37億円 | 29億円 |
| 売上総利益 | 0.9億円 | 0.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 2.3% | 1.8% |
| 営業利益 | 2.2億円 | -0.6億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | -2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が0.8億円(構成比31%)、役員報酬が0.6億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ストックビジネス事業は主要顧客の取引減少により大幅な減収となりました。システム開発事業も開発案件の減少等により売上が落ち込んでおり、全社的な業績の重しとなっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ストックビジネス事業 | 32億円 | 25億円 |
| システム開発事業 | 5.8億円 | 3.7億円 |
| 連結(合計) | 37億円 | 29億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アプリックスは、多様な事業展開を通じてキャッシュ・フローの創出を図っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、リテールメディアプラットフォームの展開や電子マネーサービスの提供開始、通信機能付きAIドライブレコーダー等の拡販といったストックビジネス事業の推進により、安定的な収益確保を目指しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、システム開発事業におけるハードウェア試作開発支援やクラウド関連システムの開発等、将来の成長に向けた投資を行っています。財務活動によるキャッシュ・フローは、事業拡大に必要な資金調達や返済等を通じて、財務基盤の強化を図っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.2億円 | 2.8億円 |
| 投資CF | -11億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | 2.6億円 | -1.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「テクノロジーの力でワクワクの共有と価値創造」という経営理念を掲げ、ICTと最新テクノロジーの融合による豊かな生活体験の創出を目指しています。社会資本の整備と新たな剰余価値の創出に向けて歩みを進めることを使命としています。
■(2) 企業文化
社員の多様な価値観を尊重した働き方の実現と、高いパフォーマンスを発揮できる環境作りを重視しています。完全テレワークの実施やフレックスタイム制度の導入のほか、社員同士がお互いをID(ニックネーム)で呼び合うことで上下関係や組織の壁を取り払い、「個」を活かす組織作りを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な収益性の向上を目的として、事業利益やEBITDAを経営指標として重視しています。また、東証グロース上場維持基準における時価総額基準の変更を見据え、時価総額の向上を明確な目標として掲げています。
* 時価総額100億円以上(上場維持基準適合に向けた目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
グローバルキャストとのM&Aを通じたグループ一体経営の推進と、光通信グループとの連携を含むM&Aやアライアンスの推進を成長戦略の柱としています。自社の開発力とパートナーの販売基盤を融合させることで事業規模を拡大し、企業価値と時価総額の早期向上を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を重要視し、社員の働きがいの向上を目的とした社内プロジェクト「ワークライフ・コラボレーション・プログラム」を展開しています。多様な働き方の促進、個を活かす組織作り、キャリア形成とコミュニケーションの活性化の3つを柱に、各種制度の整備や資格取得支援等のリカレント教育に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 47.2歳 | 12.1年 | 5,726,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定経営者への依存によるリスク
代表取締役をはじめとする特定の経営層の知識や経験が事業運営において重要な役割を果たしており、これら経営層が不測の事態により執務困難となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ネットワークセキュリティに関するリスク
事業活動において情報システムの果たす役割が高まる中、システム障害やコンピュータウィルスの侵入、人的過失等により情報漏洩やシステム停止が発生した場合、事業活動に支障を来す可能性があります。
■(3) 戦略的企業買収や新規事業参入等に関するリスク
有望市場の獲得や技術開発を目的に企業買収等を行う可能性がありますが、戦略的提携や新規事業が当初の計画通りに進捗しない場合、または出資先の財政状態が悪化した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 市場環境の変化と競争激化のリスク
主力事業の一つであるMVNOサービス市場は競争が激しく飽和状態にあります。独自色のあるサービス展開により差別化を図る方針ですが、競争を優位に進められなかった場合、収益が低下するリスクがあります。



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