電通総研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

電通総研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する電通総研は、コンサルティングから受託システム開発、自社ソフトウェア製品の提供まで総合的な情報サービスを展開しています。企業のデジタル投資意欲を背景に、売上高は10期連続、営業利益および純利益は8期連続で過去最高を更新しており、堅調な増収増益トレンドを維持しています。


※本記事は、株式会社電通総研 の有価証券報告書(第51期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 電通総研ってどんな会社?


コンサルティングからシステム開発、ソフトウェア提供まで、企業のビジネス変革を支える総合情報サービス企業です。

(1) 会社概要


1975年、電通グループと米国ゼネラル・エレクトリックの合弁により電通国際情報サービスとして設立されました。2000年に東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。近年では2024年に電通国際情報サービスから電通総研へ社名を変更するとともに、ミツエーリンクスを子会社化し事業領域を拡大しています。

同社の従業員数は連結で4,618名、単体で2,492名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は親会社であり事業会社の電通グループで、第2位および第3位は資産管理業務等を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
電通グループ 61.78%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.57%
日本カストディ銀行(信託口) 3.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表取締役社長の岩本浩久氏がトップを務め、社外取締役の比率は過半数を超えています。

氏名 役職 主な経歴
岩本浩久 代表取締役社長社長執行役員最高経営責任者兼最高執行責任者 1995年同社入社。執行役員、製造ソリューション事業部長、専務執行役員などを歴任。2024年1月よりdentsu Japan DXプレジデントを務め、同年3月より現職。
大金慎一 取締役専務執行役員コーポレート統括 1988年ダイヤモンドコンピューターサービス入社。1992年同社入社、執行役員等を経て2023年1月よりコーポレート統括を務め、同年3月より現職。
妹尾真 取締役常務執行役員事業統括 1992年同社入社。アイティアイディコンサルティング代表取締役社長を経て2022年同社へ転籍。常務執行役員等を歴任し2026年3月より現職。


社外取締役は、髙岡美緒(元マネックスグループ執行役員)、和田知子(元KPMG税理士法人パートナー)、安江令子(元富士ソフト常務執行役員)、関口厚裕(元電通トランスフォーメーション・プロデュース局長)、村山由香里(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー)、笹村正彦(天侖堂代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融ソリューション」「ビジネスソリューション」「製造ソリューション」「コミュニケーションIT」事業を展開しています。

金融ソリューション


金融業のビジネス変革および一般事業会社の金融サービス機能活用を支援するソリューションを提供しています。メガバンクや信託銀行、政府系金融機関などを主な顧客として、システムの構築から保守までを担います。

顧客の個別要求に基づく受託システム開発や、次世代融資ソリューションなどの独自ソフトウェア製品の提供により、顧客から開発費および利用料・保守費用を受け取ります。運営は主に同社や電通総研ITなどが担っています。

ビジネスソリューション


人事・会計を中心に、企業の経営管理業務の高度化を支援するソリューションを提供しています。商社や電気・ガス業、小売業などの多様な事業会社を顧客として、業務プロセスの改革やIT活用を支援します。

連結会計ソリューションや統合人事ソリューションなどのソフトウェア製品を導入・提供し、顧客から導入費用や利用料を受け取るモデルです。本事業の運営は主に同社単体で行っています。

製造ソリューション


製造業のビジネスプロセスおよびバリューチェーンの高度化を支援するソリューションを提供しています。輸送機器業などを主要顧客とし、製品の企画・開発から生産に至るまでのIT課題を解決します。

国内外のソフトウェアベンダーが開発した商品や自社製品を販売し、システム構築から保守サポートまでを提供して収益を得ます。運営は同社や、子会社のエステックなどが手掛けています。

コミュニケーションIT


企業のマーケティング変革および官庁や自治体のデジタル改革を支援するソリューションを提供しています。電通グループなどの事業会社や公共機関を顧客として、デジタル施策をサポートします。

マーケティングや自治体向けCRM等のシステム構築、ソフトウェア提供によるシステム開発・保守費用を主な収益源としています。同社のほか、ミツエーリンクスなどの子会社が運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して拡大を続けており、企業のデジタル投資意欲の高まりを背景に堅調な成長を遂げています。経常利益および当期純利益も増益トレンドを維持しており、一時的な原価増や販管費の増加を吸収して高い収益性を保っています。利益率も安定して高い水準で推移しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,121億円 1,291億円 1,426億円 1,526億円 1,649億円
経常利益 132億円 184億円 212億円 211億円 236億円
利益率(%) 11.8% 14.2% 14.9% 13.8% 14.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 86億円 115億円 142億円 164億円 157億円

(2) 損益計算書


増収効果により売上総利益と営業利益がともに増加しています。ソフトウェア製品の原価増や人的投資に伴う費用の増加があったものの、システム開発案件などの好調が収益を牽引し、営業利益率も前年と同水準の安定した数値を確保しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,526億円 1,649億円
売上総利益 561億円 604億円
売上総利益率(%) 36.8% 36.6%
営業利益 210億円 229億円
営業利益率(%) 13.8% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が119億円(構成比32%)、販売促進費が61億円(同16%)、業務開発費が37億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントにおいて堅調に売上を伸ばしています。特にコミュニケーションITは、公共機関やグループ向けビジネスの拡大に加えて子会社化の影響もあり、売上が大きく増加しました。また、ビジネスソリューションでも主力ソフトウェアの導入案件が拡大し、全社的な増収に寄与しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
金融ソリューション 341億円 348億円
ビジネスソリューション 236億円 280億円
製造ソリューション 606億円 610億円
コミュニケーションIT 344億円 410億円
連結(合計) 1,526億円 1,649億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で得た資金で借入の返済や事業投資を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 237億円 191億円
投資CF -119億円 -30億円
財務CF -80億円 -86億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.7%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「誠実を旨とし、テクノロジーの可能性を切り拓く挑戦者として、顧客、生活者、社会の進化と共存に寄与する。」と定義した企業理念(ミッション)の実現に向け、事業活動を推進しています。社会や企業の変革を立案・実現する「X Innovator(クロスイノベーター)」をありたき姿として掲げています。

(2) 企業文化


従業員一人ひとりが自由度と裁量権を大きく持ち、プロフェッショナルとして自らのアイデアを組織の中で実現できることを重視しています。行動指針「AHEAD(先駆けとなる)」にふさわしい行動を促進し、自己革新とイノベーションを実現し続けるオープンな文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2025年から2027年までの3か年を対象とする中期経営計画「社会進化実装 2027」を推進しています。シンクタンク、コンサルティング、システムインテグレーション機能の連携により、課題提言からテクノロジーによる解決までの循環を生み出すことを目指しています。

・売上高:2,100億円
・営業利益:315億円
・営業利益率:15.0%
・ROE:18.0%以上
・就業人員数:6,000名

(4) 成長戦略と重点施策


企業変革・社会変革起点での価値提供を目指し、営業機能と技術機能の統合により案件獲得と価値提供を加速します。また、生成AIなどの先端テクノロジーの活用や、電通グループや外部機関との連携を通じたソリューションの強化を図ります。

・成長投資枠:3か年累計750億円(研究開発、生産性向上、M&A等)
・連結配当性向:2027年12月期に50%を目指す

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


さまざまな専門性を持つ人材を競争力の源泉と位置づけ、「多様なプロフェッショナルの創出と活躍」を重点テーマとしています。従業員の自律的な成長と人間魅力の向上を支援するため、教育プログラムの拡充や人的資本に関するデータ活用、ハイブリッドワークの推進など働きやすい環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.9歳 10.7年 11,250,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 76.5%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.8%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 63.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(32.7%)、エンゲージメントスコアにおける肯定的回答割合(75%)、1人あたり教育費(182千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム開発時のトラブルや不具合


システム構築サービスにおいて、開発工程中に想定外のトラブルが発生すること等により開発費用が増加し、収益性が低下する可能性があります。また、納品後に重大な不具合が発生した場合、品質回復のための費用発生や損害賠償請求、信用失墜につながるおそれがあります。同社はプロジェクト・マネジメント機能を強化し、開発プロセスの標準化に努めています。

(2) 専門人材の確保と育成


同社が必要とする優秀なプロフェッショナル人材の確保や育成が想定どおりに進まない場合、あるいは労働環境の悪化等で生産性が低下した場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、積極的な採用活動や従業員教育の強化、柔軟な働き方を支援する各種制度の導入・充実を図り、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んでいます。

(3) サイバー攻撃と情報セキュリティ


コンピューターウイルスやサイバーテロ、人的過失などによりシステムサービスの中断や機密情報の漏洩が発生した場合、顧客からの損害賠償請求や事業の停滞を招くリスクがあります。同社は情報セキュリティ委員会を設置し、全社的なマネジメント体制を構築するとともに、継続的な従業員教育と技術的対策によりセキュリティレベルの向上を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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