ファンコミュニケーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファンコミュニケーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するファンコミュニケーションズは、国内最大級のアフィリエイト広告サービス「A8.net」を主力とするCPAソリューション事業や、ラジオアプリ等を展開する戦略事業を手掛けています。直近の業績は、売上高約71億円、営業利益約20億円と着実な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ファンコミュニケーションズの有価証券報告書(第27期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ファンコミュニケーションズってどんな会社?


アフィリエイト広告サービスを中心に、インターネット広告市場でプロシューマーを支援する企業です。

(1) 会社概要


1999年にインターネット上のマーケティングをサポートする企業として設立され、2000年にアフィリエイト広告サービス「A8.net」を開始しました。2005年にジャスダック上場、2014年には東京証券取引所市場第一部への市場変更を果たしました。その後、2015年にスマートフォンアプリ向けCPI広告サービス「A8app」を開始し、2024年にはWANDを完全子会社化してインフルエンサーマーケティング事業を展開しています。

同社グループの従業員数は連結で356名、単体で319名です。筆頭株主は創業者の柳澤安慶氏で、第2位および第3位には事業会社である光通信の関連投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
柳澤安慶 41.90%
UH Partners 2投資事業有限責任組合 7.50%
光通信KK投資事業有限責任組合 7.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は二宮幸司氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
二宮幸司 取締役社長 2004年入社。ADN事業部長、執行役員等を経て、2015年取締役。2024年より現職。
吉永敬 取締役副社長 2005年入社。A8事業部長、執行役員等を経て、2015年取締役。2025年より現職。
加藤正人 取締役 2009年入社。ADN事業部営業推進部長、執行役員等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、小尾一介(元インモビジャパン日本代表)、穂谷野智(元ソネット・メディア・ネットワークス社長)、丸野登紀子(出澤総合法律事務所弁護士)、小泉正明(小泉公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「CPAソリューション事業」および「戦略事業」を展開しています。

CPAソリューション事業


インターネット上でマーケティング活動を行う企業に対して、見込客を効率的に集客するアフィリエイト広告サービス「A8.net」や、スマートフォンアプリ向けCPI広告サービス「A8app」を提供しています。広告主のウェブサイトで購買や会員登録などの成果が発生した場合に、媒体となるパートナーサイトへ報酬を支払う成果報酬型広告を扱います。

広告主から広告料を回収し、パートナーサイト運営者への成果報酬の支払いを代行することで、広告主とパートナーサイトの仲介手数料を収益源としています。同事業の運営は主にファンコミュニケーションズが行っています。

戦略事業


国内最大規模のお笑いラジオアプリ「GERA」、オンラインサロン開設サービス「YOOR」、デジタルマーケティングプロセス最適化支援サービス「N-INE」、インフルエンサーマーケティング事業「LUMOS BUZZ」などを提供しています。海外広告主の日本市場進出支援も手掛けています。

限定コンテンツを楽しめる番組メンバーシップ機能やスポンサー権利の販売、オンラインサロンの会員売上の一部を手数料として徴収するビジネスモデルなどで収益を得ています。運営はファンコミュニケーションズやファンコミュニケーションズ・グローバル、WANDが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は会計基準の変更等に伴い267億円から70億円台へと推移しています。経常利益は概ね20億円前後で安定して推移しており、堅調な収益基盤を維持しています。利益率についても20%後半から30%台と高い水準を保っています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 267億円 77億円 74億円 70億円 71億円
経常利益 25億円 24億円 21億円 17億円 20億円
利益率(%) 9.4% 31.6% 28.4% 24.0% 28.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 13億円 11億円 15億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の70億円から71億円へと微増し、売上総利益も59億円から62億円へと増加しました。営業利益は16億円から20億円へと拡大し、営業利益率も22.9%から27.7%へと上昇しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 70億円 71億円
売上総利益 59億円 62億円
売上総利益率(%) 84.6% 86.9%
営業利益 16億円 20億円
営業利益率(%) 22.9% 27.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料が17億円(構成比40%)、広告宣伝費が6億円(同15%)を占めています。売上原価については、労務費が4億円(構成比46%)、経費が4億円(同44%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力となるCPAソリューション事業はトップラインが鈍化したものの、生産性向上の取り組みによって増益基盤を支えています。戦略事業は、一部サービスの撤退による減収影響を各領域の成長が上回り、大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
CPAソリューション事業 59億円 57億円
戦略事業 10億円 14億円
連結(合計) 70億円 71億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 13億円 21億円
投資CF -3億円 -26億円
財務CF -13億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「つくる 信じる コツコツと」を企業理念に掲げています。新しい価値をつくり、その可能性を信じ、たとえ社会にすぐに受け入れられなくても決してあきらめず、カメのように一歩ずつ着実に前進していくことを使命としています。また、経営ビジョンとして「プロシューマー・ハピネス」を掲げています。

(2) 企業文化


「プロシューマー・ハピネス」の実現に向けて、生産者と消費者が融合する「プロシューマー」が社会でより活躍し、幸せを感じられるようなサービス提供にフォーカスしています。やりがいである「内的ハピネス」と金銭的報酬である「外的ハピネス」の双方を提供し、関わる人々の喜びを最大化する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2027年度までの中期経営計画において、事業構造の革新に向けたAI・DX投資やM&Aを推進し、持続的な成長を目指しています。2027年度の最終年度における主要な数値目標として以下を掲げています。

* 全サービス広告主ID数 6,000ID
* 全サービスメディアID数 50,000ID
* 営業利益 30億円
* ROE 10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


主力のアフィリエイト事業での利益最大化と並行して、戦略事業への投資を拡大し、デジタルマーケティング全般を一気通貫で支援する「プロシューマー支援企業」への進化を図ります。すべてのプロセスにAIを活用する「グロースサークル戦略」を推進し、社内オペレーションシステム「FANCOMI AI」の開発による業務の自律化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


AI駆動型の事業展開を支えるため、AIリテラシーの高いエンジニアやデジタルマーケティングのコンサルティング能力を備えた人材の確保・育成を急務としています。また、出社を基本とした「オフィス中心×AI活用」の勤務体制に移行し、対面コミュニケーションによる意思決定の迅速化とAIによる定型業務の自動化で生産性向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.8歳 7.8年 5,591,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.0%
男性育児休業取得率 76.9%
男女賃金差異(全労働者) 69.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 116.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と競合


インターネット関連分野における顧客ニーズの変化やプラットフォーマーのプライバシーに関する仕様変更、競合他社の増加により、市場環境の変化に適切に対応できない場合、競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) AI技術の急速な進展と普及


AI検索の普及に伴うメディアサイトへのトラフィック減少や、AIを活用した新マーケティング手法への技術対応の遅れ、AI生成コンテンツによる法的リスクが顕在化した場合、同社の収益や競争優位性に影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制と情報のセキュリティ管理


事業展開において取得する個人情報やデータが法的規制の対象となる場合や、外部からの不正アクセスによる情報流出が発生した場合、サービスの利用制限や損害賠償請求、社会的信用の失墜を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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