ソリトンシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソリトンシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソリトンシステムズは東京証券取引所プライム市場に上場し、ITセキュリティ事業を主力として映像コミュニケーション事業などを展開する企業です。直近の連結業績は、主力のITセキュリティ分野における自社製品やクラウドサービスの販売が堅調に推移し、増収増益を達成して持続的な成長を続けています。


※本記事は、株式会社ソリトンシステムズの有価証券報告書(第48期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ソリトンシステムズってどんな会社?


同社は、ITセキュリティ対策製品の開発やネットワーク構築を主力とする独立系メーカーです。

(1) 会社概要


1979年3月に設立され、インテルジャパン等との関わりを経てネットワーク関連のビジネスを展開してきました。1996年にはITセキュリティソフトウエア体系を発表し、現在の主力事業の基盤を確立しました。2007年のジャスダック証券取引所上場、2017年の東証一部上場を経て成長を続け、2024年にはサイバー防衛研究所を設立するなど、新たな分野への事業展開も積極的に進めています。

同社グループの従業員数は連結で655名、単体で643名です。筆頭株主は創業者で会長の鎌田信夫氏の資産管理会社である有限会社Zen-Noboksで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
有限会社Zen-Noboks 44.29%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.73%
ソリトンシステムズ従業員持株会 3.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役執行役員会長の鎌田信夫氏、代表取締役執行役員社長の鎌田理氏が経営を牽引しています。また、取締役6名のうち4名が社外取締役であり、経営の透明性を高める体制を敷いています。

氏名 役職 主な経歴
鎌田 信夫 代表取締役執行役員会 長 1973年インテルジャパン入社。1979年に同社を設立し代表取締役社長に就任。九州工業大学非常勤講師を経て、2024年より現職。
鎌田 理 代表取締役執行役員社 長 1994年日本オラクル入社。同社シニアディレクターを経て2021年に同社入社、取締役に就任。ITセキュリティ事業部長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、石原冴子(日本オラクル執行役員)、高徳信男(高徳公認会計士事務所所長)、中村修(慶應義塾大学特任教授)、飯塚久夫(元NTTコミュニケーションズ常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITセキュリティ」「映像コミュニケーション」「Eco 新規事業開発」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) ITセキュリティ


情報漏洩対策、認証とアクセス制御、テレワークやサイバーセキュリティ対策などの製品およびクラウドサービスの開発・販売を行っています。また、IoTセキュリティ対策や、企業向けのネットワークインテグレーションと運用サービスも提供しています。

自社開発したアプライアンス製品やライセンスの販売代金、保守サービス料、クラウドサービスの利用料を企業や官公庁などの顧客から受け取る収益モデルです。運営は主にソリトンシステムズやサイバー防衛研究所などが行っています。

(2) 映像コミュニケーション


モバイル回線を利用して高精細かつ短遅延で映像を伝送する「Smart-telecasterシリーズ」の開発と販売を行っています。国内外の防衛、治安、災害対処などのパブリックセーフティ分野を中心に活用されています。

ハードウェア製品の販売代金や、映像伝送に関連するクラウドサービスの利用料などを顧客から収受することで収益を得ています。近年は建設機械の遠隔操縦システムなども展開しており、運営は主にソリトンシステムズが行っています。

(3) Eco 新規事業開発


超低消費電力のアナログ・デジタル混在半導体デバイスの開発・販売や、映像伝送システム等の開発を行っています。先進プロジェクトとして、アナログ方式によるエッジAIデバイス用ICの研究開発にも取り組んでいます。

官公庁向けの小型伝送装置の追加販売や、人感センサー製品などの販売代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営は主にソリトンシステムズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は170億円台から一時的な足踏みを経つつも当期は198億円まで着実に拡大しています。経常利益も当期は過去最高の30億円水準に達しており、利益率も15%台へと向上して、安定的な成長と高収益化が進んでいることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 174億円 198億円 191億円 186億円 198億円
経常利益 25億円 22億円 28億円 22億円 30億円
利益率(%) 14.3% 11.2% 14.7% 11.6% 15.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 15億円 19億円 16億円 22億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸びており、収益性が向上しています。利益率も改善傾向にあり、コストコントロールと付加価値の高いサービス提供が両立していることが分かります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 186億円 198億円
売上総利益 83億円 92億円
売上総利益率(%) 44.6% 46.7%
営業利益 20億円 28億円
営業利益率(%) 11.0% 14.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が22億円(構成比35%)、研究開発費が11億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるITセキュリティ事業が全売上の大部分を占めており、当期も着実な増収を牽引しています。また、映像コミュニケーション事業やEco新規事業開発も規模は小さいながら着実に売上を伸ばしており、全体として堅調な事業成長を示しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
ITセキュリティ 175億円 185億円
映像コミュニケーション 10億円 11億円
Eco 新規事業開発 1億円 2億円
連結(合計) 186億円 198億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業の営業利益で借入金の返済を行い、投資も手元資金で賄うことができている「健全型」の優良な財務状態にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 20億円 36億円
投資CF -2億円 -102億円
財務CF -5億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.0%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.5%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ネットワークおよびミクロなデバイス技術の進歩によって、質・量・スタイルがダイナミックに変化していく人間の知的活動を支援し、人々の幸せと社会の繁栄に貢献すること」を企業理念としています。環境変化に対応して成長し、すべてのステークホルダーに対する社会的責任を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


受託開発や輸入再販ではなく、独自の標準製品を開発してオリジナル製品やサービスとしてユーザーに提供するメーカーとしての強いこだわりを持つ文化があります。ソフトウェアとハードウェアの両面をカバーし、世界に通ずる技術と実現スピードを重視して業務に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


ITセキュリティを鍵として、新たな技術や市場への積極的な展開により事業拡大を図り、企業価値を持続的に向上させることを目標としています。経営の推進にあたっては、1株当たり当期純利益をひとつの重要な経営指標として位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


海外展開を視野に入れたユニークな製品・サービスの開発や、広報・IRの強化による情報発信を成長戦略の柱としています。また、基幹システムと情報系システムの連携によるデータ活用や、AIの積極的活用を通じて、従来を一段上回る業務効率化と生産性向上の実現を重点施策に掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


新卒・中途や年齢、性別に関わらず多様な人材を採用し、OJTや目的別専門研修を通じて成長を支援しています。個性を尊重し潜在能力を引き出すことでイノベーションの創出を目指しており、資格取得支援や主体的なキャリア形成を促す社内公募制度の導入など、長期的に活躍できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.0歳 13.3年 6,800,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.0%
男性育児休業取得率 72.7%
男女賃金差異(全労働者) 18.2%
男女賃金差異(正規雇用) 21.1%
男女賃金差異(パート・有期) 20.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティと情報漏洩


顧客の多種多様な重要情報を取り扱う機会が多く、厳格な情報管理体制を敷いていますが、万一、外部からの不正侵入や内部からの情報の紛失・破壊・漏洩等が発生した場合、損害賠償請求や信用低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自社製品の開発と陳腐化


市場ニーズを先取りした新製品・新技術の開発に注力していますが、今後の開発プロジェクトにおいて、開発期間中の市場環境の変化や類似・競合製品の出現により、将来的に開発コストを回収できなくなる可能性があります。

(3) 他社商品の調達・供給停止


国内外の他社ベンダーの商品を販売代理店として取り扱っており、これらには戦略上重要な商品も含まれています。将来において主要ベンダーが事業戦略の見直しや合併・解散等の理由により商品の供給を停止した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) プロジェクト管理と不採算案件の発生


ネットワークシステムの構築等にあたり全社的なプロジェクト管理体制を構築していますが、顧客ニーズによる納期の短縮化や案件の高度化・複雑化により、想定を上回る開発工数がかかって不採算プロジェクトが発生する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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