博展 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

博展 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する博展は、リアルとデジタルを融合させたエクスペリエンス・マーケティング事業を展開しています。展示会やイベントの企画から運営までを一貫して手掛け、直近5期間の業績は右肩上がりの増収基調が続き、当期は大幅な増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、株式会社博展の有価証券報告書(第57期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 博展ってどんな会社?


展示会やイベント等の体験を軸としたマーケティング支援を展開する企業の特徴を解説します。

(1) 会社概要


同社は1970年に展示会やディスプレイ等の企画・制作を目的として設立されました。2008年に大阪証券取引所ヘラクレス(現・東証グロース)へ上場を果たしています。2016年にスプラシア(現デジタルエクスペリエンス)を完全子会社化してデジタル領域を強化し、近年もニチナンやヒラミヤを子会社化して事業基盤を拡大しています。

現在の従業員数は連結で586名、単体で501名体制です。大株主の構成を見ると、筆頭株主はT&Pホールディングスで、第2位に博展従業員持株会、第3位には貸会議室等の空間ビジネスを展開する事業会社のティーケーピーが名を連ねています。

氏名 持株比率
T&Pホールディングス 37.31%
博展従業員持株会 4.86%
ティーケーピー 3.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長執行役員CEOは原田淳氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
原田淳 代表取締役社長執行役員CEO ナカノコーポレーション等を経て2008年同社入社。事業部長等を歴任し、2026年3月より現職。
田口徳久 代表取締役会長執行役員 リクルートを経て1983年同社入社。1992年に社長就任以降経営を牽引し、2026年3月より現職。
藤井由康 取締役常務執行役員CFO 監査法人等を経て公認会計士登録。オープンアップグループ取締役等を経て、2026年3月より現職。
田中雅樹 取締役(常勤監査等委員) 複数企業で管理部門長を務め2017年入社。CFOコーポレート本部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、山下美砂氏(元アクサ・ホールディングス・ジャパン執行役員)、石原洋子氏(元博報堂人事部長)、石塚陽子氏(弁護士)、渡邉一治氏(元スクウェア・エニックス取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エクスペリエンス・マーケティング事業」の単一セグメントにおいて、複数の分野を展開しています。

(1) リアルイベント分野


企業の販促活動やPRを目的とした展示会、プロモーションイベント、プライベートショー、カンファレンスなどの企画・制作・運営を行っています。顧客企業とターゲット層が直接交わるリアルな体験の場を統合的にデザインし、創出しています。

顧客企業からイベント全体のプロデュース料や制作・運営費等を受け取る収益モデルです。運営は主に博展が担い、連結子会社のニチナンやヒラミヤが什器製造や施工などの面で連携して事業を推進しています。

(2) デジタル分野および商環境分野


デジタル分野では、動画配信プラットフォームやデジタルサイネージ、アプリ開発などのITソリューションを提供しています。商環境分野では、企業のショールームや商業施設等の空間デザイン・内装工事を手掛けています。

デジタル分野はシステムの開発や利用料を収益源とし、主にデジタルエクスペリエンスが運営しています。商環境分野は企画・設計・施工の請負代金を受け取るモデルで、博展を中心に事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な成長を遂げており、特に直近2期は大幅な増収を記録しています。利益面でも収益性の改善が進み、経常利益率は5%台から11%台へと上昇し、稼ぐ力が着実に高まっていることが分かります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 106億円 139億円 131億円 188億円 233億円
経常利益 6億円 7億円 10億円 14億円 26億円
利益率(%) 5.8% 5.2% 7.9% 7.3% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 5億円 7億円 10億円 19億円

(2) 損益計算書


直近2期の収益構造を見ると、増収効果により売上総利益率が30.2%から32.1%へ上昇しています。販売費及び一般管理費の増加を吸収し、営業利益率も7.4%から11.1%へと大きく向上しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 188億円 233億円
売上総利益 57億円 75億円
売上総利益率(%) 30.2% 32.1%
営業利益 14億円 26億円
営業利益率(%) 7.4% 11.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が20億円(構成比40%)、賞与引当金繰入額が4億円(同8%)を占めています。売上原価においては、外注費が130億円(構成比86%)と大部分を占め、次いで労務費が14億円(同10%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントのため、分野別の売上高の推移を比較します。主力事業の好調が全体の成長を牽引していることが分かります。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
リアルイベント分野 153億円 194億円
商環境分野 19億円 17億円
デジタル分野 9億円 7億円
その他 7億円 15億円
連結(合計) 188億円 233億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 11億円 27億円
投資CF -2億円 -0.5億円
財務CF -8億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は45.8%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も49.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人と社会のコミュニケーションにココロを通わせ、未来へつなげる原動力をつくる。」をパーパスとして掲げています。クライアントの成長やマーケティング課題の解決を実現するパートナーとして、コミュニケーションに関わる表現や手段、環境を統合的にデザインし、感性あふれる豊かな社会づくりを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、パーパス実現のために「人と組織」を育てることを重視しています。「ビジネスを創造する人材育成」「個の多様性を高め、活かす」「対話する組織文化の醸成」を掲げ、多様な価値観に触れて共創する組織活動を推進しています。あらゆる階層の境界を飛び越える対話が生まれる場づくりや環境整備に注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期的な成長を目指し、毎事業年度の事業計画の達成を重要視しています。次期(2026年12月期)の連結業績見通しとして具体的な数値目標を掲げて経営を推進しています。

* 売上高:238億円
* 営業利益:22億円
* 経常利益:22億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:16億円

(4) 成長戦略と重点施策


エクスペリエンス・マーケティングにおける高い競争力の確立を成長戦略の柱としています。業界および顧客理解力を高めて提案品質を向上させ、専門性を深めることで収益性の向上を図ります。また、脱炭素や資源循環型社会の実現に向けた「サステナブル・イベント」の実装を進め、環境に配慮したサービス提供に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


変化する経営環境へ機動的に対応できる人材の確保・育成を重要課題と位置づけています。実践経験を通じたビジネス創造人材の育成や、半期毎の面談を通じた個々の特性に沿ったマネジメントを強化しています。また、エンゲージメントサーベイによる定量的なモニタリングを実施し、継続的な成長環境の提供を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 34.8歳 7.0年 6,909,076円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.7%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 77.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 77.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 31.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、マネジメント強化プログラム受講率(91.0%)、ハラスメント教育の受講率(90.0%)、全社男女比率の女性比率(45%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況と企業の販促投資動向


主力事業であるイベントや展示会は、顧客企業の販促関連投資の動向に大きく影響を受けます。国内経済が長期間低迷し、企業の販促投資が大幅に削減された場合、案件規模の縮小や受注数の減少が生じ、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) イベント等の品質・安全管理リスク


大規模イベントの運営や展示ブースの施工を行うため、安全管理には細心の注意を払っています。また、オンライン配信でのネット回線や機材トラブルへの対応も求められます。万が一重大な事故やトラブルが発生した場合、顧客からの信頼低下や損害賠償による悪影響が生じるリスクがあります。

(3) 情報セキュリティと個人情報漏洩


事業遂行にあたり、顧客から個人情報や機密情報を受領する場合があります。社内体制の強化や保険加入などの対策を講じていますが、不測の事態により情報の漏洩、改ざん、不正使用等が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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