大塚ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大塚ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大塚ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、医療関連事業やニュートラシューティカルズ関連事業を主力とするトータルヘルスケア企業です。直近の業績では、抗精神病薬や社会課題別カテゴリーの製品が好調に推移し、全セグメントで増収を達成、営業利益も大幅な増益となるなど順調な成長を続けています。


※本記事は、大塚ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 大塚ホールディングスってどんな会社?


医療関連とニュートラシューティカルズ関連を両輪とし、世界の人々の健康に貢献するヘルスケア企業です。

(1) 会社概要


2008年7月に株式移転により設立され、同年10月に大塚製薬工場、翌年に大鵬薬品工業を完全子会社化してグループ体制を構築しました。2010年12月に上場を果たし、近年は2024年にジュナナセラピューティクス、2025年にはアラリスバイオテックを買収するなど、積極的な事業拡大を推進しています。

現在の従業員数は連結で37,758名、単体で224名です。株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位には野村信託銀行の大塚創業家持株会信託口が続いており、機関投資家や関係者による安定した資本基盤を有していることが特徴です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.69%
野村信託銀行 大塚創業家持株会信託口 9.91%
日本カストディ銀行(信託口) 5.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性5名の計17名で構成され、女性役員比率は29.4%です。代表取締役社長兼CEOは井上眞が務めています。社外取締役比率は29.4%です。

氏名 役職 主な経歴
井上眞 代表取締役社長兼CEO 1983年に大塚製薬に入社。同社で執行役員や専務取締役などの要職を歴任し、ニュートラシューティカルズ事業を牽引。2020年より同社代表取締役社長を務め、2025年より現職。
大塚一郎 代表取締役会長 1987年に大塚製薬工場へ入社。大塚製薬の常務取締役等を経て、2004年に大塚製薬工場の代表取締役社長に就任。2014年より同社の代表取締役副会長を務め、2015年より現職。
樋口達夫 取締役相談役 1977年に大塚製薬に入社し、2000年に同社代表取締役社長に就任。2008年より同社の代表取締役社長兼CEOを務め、大塚製薬の代表取締役会長を経て2025年より現職。
松尾嘉朗 代表取締役副社長 1985年に大塚製薬に入社。総務部長や法務・企画渉外担当の常務執行役員などを経て、2022年に大塚製薬の代表取締役副社長に就任。2025年より現職。
牧野祐子 取締役CFO 1982年に大塚製薬に入社後、監査法人やバクスターを経て2000年に再入社。同社や大塚製薬で経理・財務分野の執行役員を務め、2019年より現職。
高木修一 取締役 1989年に飛島建設へ入社後、1995年に大塚製薬へ入社。大塚製薬工場や大塚アメリカで要職を務め、2022年に同社常務取締役CSOに就任。2024年より現職。
小林将之 取締役 1989年に大和銀行に入行後、1993年に大鵬薬品工業へ入社。大鵬ファーマU.S.A.の社長等を経て、2012年に大鵬薬品工業の代表取締役社長に就任。2017年より現職。
東條紀子 取締役 1987年にゴールドマン・サックス証券会社に入社。マッキンゼー等を経て2008年に同社常務取締役に就任。ファーマバイトの取締役CEOなどを経て、2018年より現職。


社外取締役は、松谷有希雄(日本公衆衛生協会会長)、青木芳久(伊藤忠商事理事)、三田万世(元モルガン・スタンレー証券マネージング・ディレクター)、北地達明(神奈川県顧問)、瀬口二郎(りそなホールディングス社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療関連事業」「ニュートラシューティカルズ関連事業」「消費者関連事業」および「その他の事業」を展開しています。

医療関連事業


精神・神経、がん、循環器・腎、自己免疫領域などを重点領域とし、治療薬や臨床栄養製品の研究開発から製造・販売までを手がけています。統合失調症治療薬「レキサルティ」や「エビリファイ メンテナ」などの主力製品を持ち、国内外の医療現場に向けて高品質な医薬品を提供し、患者の治療に貢献しています。

収益は主に、医療機関等に向けた医薬品の販売代金や、提携先からのライセンス収入によって構成されています。事業の運営は、大塚製薬、大鵬薬品工業、大塚製薬工場などが日本国内を担当し、海外では大塚アメリカファーマシューティカルや大鵬オンコロジーなどがそれぞれの地域で事業を展開しています。

ニュートラシューティカルズ関連事業


医療関連事業で培ったノウハウを活かし、人々の健康維持・増進を目指す機能性飲料や栄養補助食品を提供しています。代表的な製品には「ポカリスエット」「オロナミンCドリンク」「カロリーメイト」のほか、サプリメント「ネイチャーメイド」や女性の健康をサポートする「エクエル」などがあり、幅広い層に支持されています。

収益は主に、一般消費者向けの製品販売代金から得られています。事業の運営は、国内では大塚製薬を中心に展開しており、海外ではファーマバイト、デイヤフーズ、ニュートリション エ サンテなどの子会社が、科学的根拠に基づいた独自の健康食品や飲料の製造および販売を行っています。

消費者関連事業


生活に身近な食と健康をテーマに、ミネラルウォーターや嗜好性飲料、食品の製造・販売を行っています。カリフォルニア生まれのミネラルウォーター「クリスタルガイザー」や、微炭酸飲料「マッチ」、市販用レトルト食品の草分けである「ボンカレー」など、多様なブランドを展開し消費者の日常に寄り添っています。

収益は主に、スーパーやコンビニエンスストアなどを通じた一般消費者向けの製品販売代金によって構成されています。事業の運営は、国内では大塚食品が中心となって製品の製造と販売を担っており、海外ではCGロクサーヌやアルマなどの関連会社がミネラルウォーター等の事業を展開しています。

その他の事業


ヘルスケア領域を支える多角的な事業として、化学製品の製造販売、計測機器の製造・輸入販売、紙器や合成樹脂成形製品の製造、さらにグループ内外の製品の保管・出荷を担う倉庫・運送事業などを展開しています。グループ全体のサプライチェーンやインフラを支え、効率的な事業運営に貢献しています。

収益は主に、各種製品の販売代金や物流・保管サービスの提供にともなう手数料などから得られています。事業の運営は、化学製品を扱う大塚化学、計測機器の大塚電子、パッケージ関連の大塚包装工業や大塚テクノ、物流業務を担う大塚倉庫など、それぞれの専門分野に特化した子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで成長を続けており、2兆4000億円規模に到達しています。税引前利益も直近2年間で急激な伸びを示し、特に最新期は主力の医療関連事業の好調などを背景に大幅な増益を達成しました。利益率も19.0%まで上昇しており、収益性の向上が鮮明に表れています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 1兆4983億円 1兆7380億円 2兆1857億円 2兆3299億円 2兆4689億円
税引前利益 1636億円 1730億円 1427億円 3359億円 4680億円
利益率(%) 10.9% 10.0% 7.1% 14.4% 19.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 1255億円 1339億円 1216億円 3431億円 3632億円

(2) 損益計算書


売上収益の順調な拡大にともない、売上総利益も着実に増加しています。売上総利益率は約72%と高い水準を維持しており、高付加価値な製品群が貢献していることがわかります。また、営業利益率も前期から大きく改善しており、本業における稼ぐ力が一段と強化されている状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2兆3299億円 2兆4689億円
売上総利益 1兆6694億円 1兆7698億円
売上総利益率(%) 71.7% 71.7%
営業利益 3236億円 4794億円
営業利益率(%) 13.9% 19.4%

(3) セグメント収益


主力の医療関連事業は、統合失調症治療薬や持続性注射剤の販売増が牽引し、増収増益を達成しました。ニュートラシューティカルズ関連事業も主要カテゴリーが堅調に成長し増収に寄与しています。全セグメントにおいて増収を記録しており、事業ポートフォリオ全体でバランスの取れた成長を実現しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
医療関連事業 1兆6290億円 1兆7442億円 2851億円 4453億円 25.5%
ニュートラシューティカルズ関連事業 5570億円 5777億円 598億円 577億円 10.0%
消費者関連事業 338億円 346億円 230億円 252億円 72.6%
その他の事業 1137億円 1159億円 75億円 80億円 6.9%
調整額 -36億円 -36億円 -518億円 -568億円 -
連結(合計) 2兆3299億円 2兆4689億円 3236億円 4794億円 19.4%


同社のキャッシュ・フローは、本業の営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の優良な状態にあります。強固な収益力を背景に、自己株式の取得や配当の支払いなど株主還元を積極的に行いながら、次なる成長に向けた戦略的な投資を継続しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 3546億円 4036億円
投資CF -2658億円 -1616億円
財務CF -1894億円 -1373億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「Otsuka-people creating new products for better health worldwide(世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する)」という企業理念を掲げています。この理念のもと、透明性と公平性を保ちながら迅速な意思決定を行い、すべてのステークホルダーとの対話を通じて信頼に応えることで、持続的かつ中長期的な企業価値の増大と社会的責任を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業文化を自ら実践し体現できる人材こそが持続的成長の基盤であると捉え、「流汗悟道(自ら汗をかき、実践から真理を悟る)」「実証」「創造性」を重んじる文化を培っています。失敗を恐れずに挑戦し、既成概念にとらわれない多角的な視点を持つことで、新たな価値を生み出す姿勢が奨励されており、多様なバックグラウンドを持つ人材が互いに能力を発揮できる組織づくりが進められています。

(3) 経営計画・目標


同社は2024年度から2028年度までを対象とする「第4次中期経営計画」を策定し、2035年の長期ビジョン達成に向けた基盤構築を進めています。「新規事業の拡大と次世代の成長を生み出す投資を促進」を掲げ、独自の事業基盤への投資や財務戦略の強化に注力しています。

・事業利益成長率2桁以上の成長ステージの確立
・3,000億円規模の研究開発投資の継続
・ROICやROEによる資本コストを意識した経営の実践

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業をコア事業とし、未充足の医療ニーズや社会課題の解決に向けた事業領域の拡大を図っています。外部機関やベンチャー企業との協業を深め、オープンイノベーションによる創薬基盤の強化を推進するとともに、グローバルな新エリア展開にも挑戦しています。

・精神・神経、がん、循環器・腎、自己免疫領域での新薬開発
・地球環境、女性の健康、少子高齢社会に対応する製品の創出

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本を中長期的成長の基盤と位置づけ、「経営・グローバル人材」「研究開発人材」「デジタル人材」の育成に注力しています。幅広い事業ポートフォリオを活かした部門横断的なローテーションや海外出向などを通じて、多様な経験を積めるキャリアパスを提供しています。また、健康経営の推進や多様性(DE&I)を尊重する職場環境の整備により、従業員エンゲージメントを高める施策を展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 46.9歳 3.3年 10,004,876円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.6%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 67.8%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 82.5%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 56.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.6%)、博士号保有者数(570名)、海外出向者数(170名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 各国政府の医療費抑制策による影響


日米欧をはじめとする各国政府は医療費の適正化を推進しており、定期的な薬価の引き下げやジェネリック医薬品の使用促進が行われています。特に重要市場である米国では、インフレ抑制法による価格交渉の導入などが進んでおり、こうした医療費政策の動向や薬価制度の改定が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新薬開発における不確実性


医療用医薬品などの開発には多額の投資と長期間のプロセスが必要であり、臨床試験で想定した有効性や安全性が確認できないリスクが伴います。開発の遅延や中止が生じた場合、投資した研究開発費を回収できず、独占販売期間の短縮や競合品の先行を許すことで、中長期的な事業計画や利益率に影響を与える可能性があります。

(3) 新規カテゴリー・海外エリア展開の遅延


ニュートラシューティカルズ関連事業では、次世代の成長ドライバーとして新カテゴリーの創出や新たな海外市場への展開を進めています。しかし、顧客の潜在ニーズを的確に捉えた製品を投入できなかった場合や、進出先での法的規制、経済情勢の変化、政情不安などが顕在化した場合、事業計画に支障をきたす可能性があります。

(4) サプライチェーンの透明性と安定供給


自社工場だけでなく、製造委託先や物流会社を含む広範なサプライチェーンにおいて、環境問題や人権、品質の不備などに関する不適切な事態が発生した場合、製品の供給が不安定化する恐れがあります。製品供給の遅滞は社会的信用の失墜を招き、同社のブランド価値や業績に対して重大な悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。