※本記事は、株式会社大塚ホールディングス の有価証券報告書(第17期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 大塚ホールディングスってどんな会社?
世界の人々の健康に貢献する「トータルヘルスケア企業」として、革新的な医薬品や「ポカリスエット」等の機能性飲料、食品等をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
2008年、大塚製薬の株式移転により設立。2010年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。M&Aを積極的に進め、2013年に米国アステックス社、2017年にカナダのデイヤフーズ社を買収しました。2024年には米国ジュナナ社を買収し、創薬基盤を強化しています。
連結従業員数は35,338名、単体では183名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業家持株会信託口、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっており、信託銀行や持株会が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.27% |
| 野村信託銀行 大塚創業家持株会信託口 | 9.85% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性5名の計17名で構成され、女性役員比率は29.4%です。代表取締役社長兼CEOは井上 眞氏です。社外取締役比率は29.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 眞 | 代表取締役社長兼CEO | 1983年大塚製薬入社。ニュートラシューティカルズ事業等の要職を経て、2020年同社代表取締役社長。2024年大塚ホールディングス代表取締役COOを経て、2025年1月より現職。 |
| 大塚 一郎 | 代表取締役会長 | 1987年大塚製薬工場入社。大塚製薬取締役、大塚製薬工場代表取締役社長、大塚ホールディングス代表取締役副会長等を経て、2015年3月より現職。 |
| 松尾 嘉朗 | 代表取締役副社長 | 1985年大塚製薬入社。同社常務執行役員総務部長、大塚ホールディングス専務取締役、大塚製薬代表取締役副社長等を経て、2025年1月より現職。 |
| 牧野 祐子 | 取締役CFO | 1982年大塚製薬入社。監査法人、バクスターを経て2000年大塚製薬再入社。大塚ホールディングス執行役員経営財務会計部長等を経て、2019年3月より現職。 |
| 高木 修一 | 取締役 | 1995年大塚製薬入社。大塚製薬インドCEO、大塚アメリカ取締役会長等を歴任。2024年1月より大塚ホールディングス取締役および大塚製薬工場代表取締役社長。 |
| 小林 将之 | 取締役 | 1993年大鵬薬品工業入社。大塚アメリカ社長兼CEO等を経て、2012年大鵬薬品工業代表取締役社長。2017年3月より大塚ホールディングス取締役。 |
| 東條 紀子 | 取締役 | ゴールドマン・サックス証券等を経て2008年大塚ホールディングス常務取締役。大塚アメリカ社長兼CEO等を歴任し、2017年より大塚メディカルデバイス代表取締役社長。 |
| 樋口 達夫 | 取締役相談役 | 1977年大塚製薬入社。同社代表取締役社長、大塚ホールディングス代表取締役社長兼CEO等を歴任。2025年1月より現職。 |
社外取締役は、松谷 有希雄(元厚生労働省医政局長)、青木 芳久(元伊藤忠商事代表取締役専務執行役員)、三田 万世(元モルガン・スタンレー証券マネージング・ディレクター)、北地 達明(元監査法人トーマツ社員)、瀬口 二郎(元メリルリンチ日本証券代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医療関連事業」「ニュートラシューティカルズ関連事業」「消費者関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 医療関連事業
治療薬および臨床栄養製品等の研究開発、製造販売を行っています。精神・神経、がん、循環器・腎領域などを重点領域とし、グローバルに展開しています。
主に医療機関や医薬品卸売業者等から製品の販売代金を受け取ります。運営は主に大塚製薬、大鵬薬品工業、大塚製薬工場および海外子会社等が行っています。
■(2) ニュートラシューティカルズ関連事業
機能性飲料、機能性食品、サプリメント等の研究開発、製造販売を行っています。「ポカリスエット」「カロリーメイト」「ネイチャーメイド」などのブランドを有します。
主に小売業者や卸売業者等から製品の販売代金を受け取ります。運営は主に大塚製薬、ファーマバイト、デイヤフーズ、ニュートリション エ サンテ等が行っています。
■(3) 消費者関連事業
ミネラルウォーター「クリスタルガイザー」や「ボンカレー」、「マッチ」などの食品・飲料の製造販売を行っています。
主に小売業者や卸売業者等から製品の販売代金を受け取ります。運営は主に大塚食品、CGロクサーヌ等が行っています。
■(4) その他の事業
化学製品、計測機器の製造販売、倉庫・運送事業等を行っています。
主に顧客企業から製品代金やサービス料を受け取ります。運営は主に大塚化学、大塚電子、大塚倉庫等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりに増加しており、特に直近の2024年12月期は前期比で大幅な増収となっています。利益面でも、税引前当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益ともに2024年12月期に大きく伸長し、過去最高水準を記録しています。利益率も改善傾向にあり、成長性と収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 14,228億円 | 14,983億円 | 17,380億円 | 20,186億円 | 23,299億円 |
| 税引前利益 | 1,900億円 | 1,636億円 | 1,730億円 | 1,427億円 | 3,359億円 |
| 利益率(%) | 13.4% | 10.9% | 10.0% | 7.1% | 14.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,481億円 | 1,255億円 | 1,339億円 | 1,216億円 | 3,431億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加しました。営業利益は前期比で倍増以上となっており、収益性が大きく向上しています。これは主力製品の伸長等によるものです。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 20,186億円 | 23,299億円 |
| 売上総利益 | 14,073億円 | 16,694億円 |
| 売上総利益率(%) | 69.7% | 71.7% |
| 営業利益 | 1,396億円 | 3,236億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 13.9% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が4,468億円(構成比47%)、販売促進費が2,458億円(同26%)を占めています。売上原価については、人件費や原材料費などが含まれています。
■(3) セグメント収益
医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業が牽引し、全社的な増収増益に貢献しました。特に医療関連事業は主力製品の伸長により大幅な増益となりました。消費者関連事業も利益率が向上しています。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医療関連事業 | 13,912億円 | 16,290億円 | 1,437億円 | 2,851億円 | 17.5% |
| ニュートラシューティカルズ関連事業 | 4,835億円 | 5,570億円 | 342億円 | 598億円 | 10.7% |
| 消費者関連事業 | 371億円 | 338億円 | 121億円 | 230億円 | 68.1% |
| その他の事業 | 1,102億円 | 1,137億円 | 3億円 | 75億円 | 6.6% |
| 調整額 | -33億円 | -36億円 | -507億円 | -518億円 | - |
| 連結(合計) | 20,186億円 | 23,299億円 | 1,396億円 | 3,236億円 | 13.9% |
なお、2024年12月期の「消費者関連事業」の利益には、持分法投資利益も含まれていることに注意が必要です。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金をもとに、投資活動や株主還元、有利子負債の返済を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2,832億円 | 3,546億円 |
| 投資CF | -1,905億円 | -2,658億円 |
| 財務CF | -603億円 | -1,894億円 |
企業の収益力を測るROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)は13.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る親会社所有者帰属持分比率は73.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”を企業理念としています。これは、世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造するという同社グループの使命を表しています。
■(2) 企業文化
「流汗悟道(Commitment)」「実証(Actualization)」「創造性(Creativity)」を経営の真髄として重視しています。ユニークかつ多様な事業と、世の中の真のニーズやサイエンスを有機的に結合させ、新たな価値を創造することを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2028年度を対象とする第4次中期経営計画を策定しています。「新規事業の拡大と次世代の成長を生み出す投資を促進~創造と成長の5年間~」と位置づけ、2035年に目指す姿を見据えた取り組みを推進します。
■(4) 成長戦略と重点施策
医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業をコア事業とし、独自の事業基盤への投資、新たな価値創造、積極的な財務戦略に注力します。「地球環境」「女性の健康」「少子高齢社会」を重点課題と捉え、トータルヘルスケア企業として社会課題解決を目指します。
* 医療関連事業:精神・神経、がん、循環器・腎領域を中心に革新的な新薬を創出。
* ニュートラシューティカルズ関連事業:新カテゴリー・新エリア展開への挑戦。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業理念の実現に向け、イノベーションの源泉である人材力を強化し、その力を最大化する環境整備を進めています。独自の人材育成プログラムを通じた企業文化の実践者の育成や、多様な事業を有する同社ならではの多彩な人材が活躍できる職場づくり、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 44.4歳 | 3.2年 | 10,634,077円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 29.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 91.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 91.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 87.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(21.8%)、男性育児休業取得率(77.5%)、女性育児休業取得率(103.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医療費抑制策に関するリスク
各国政府による医療費適正化の方針や薬価引き下げ、ジェネリック医薬品の使用促進、米国におけるインフレ抑制法による価格抑制方針等が、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新薬開発の不確実性に関するリスク
多額の研究開発投資を要する新薬開発において、有効性・安全性が確認できないことによる開発遅延や中止が発生した場合、中長期的な事業計画や業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 副作用等に関するリスク
医薬品等において予期せぬ重大な副作用が生じた場合、開発・販売の中止や製品回収が必要となり、売上収益や開発計画に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 品質に関するリスク
製品の製造プロセスにおける不備や法令違反により品質問題が生じた場合、製品回収や販売停止、社会的信頼の喪失につながり、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。



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