※本記事は、株式会社サンセイランディックの有価証券報告書(第50期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンセイランディックってどんな会社?
サンセイランディックは、権利関係が複雑な不動産の買取と権利調整を行い、資産価値を高めて販売する事業を展開しています。
■(1) 会社概要
サンセイランディックは1976年に設立され、1991年から主力となる底地の取扱いを開始しました。2011年にJASDAQへ上場し、2014年には東証一部へ市場変更を果たしています。近年では、2019年に資金調達等を目的としたサンセイランディックファンディング、2021年には宿泊施設運営を行う八幡平観光活性化合同会社を設立し、事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で190名、単体でも190名体制となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は代表取締役社長である松﨑隆司氏で、第2位は個人株主の松浦正二氏、第3位は信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松﨑隆司 | 15.86% |
| 松浦正二 | 5.60% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は松﨑隆司氏が務めており、取締役7名のうち2名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松﨑隆司 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。営業本部長等を経て2003年より現職。サンセイランディックファンディング代表取締役などを兼任。 |
| 太木眞 | 専務取締役営業管掌兼第二営業本部長兼企画本部長 | みずほ不動産販売常務執行役員等を経て2016年入社。常務取締役などを経て2025年7月より現職。 |
| 今福規之 | 取締役第一営業本部長 | 2003年同社入社。名古屋支店長、営業第二部長等を経て2017年3月より現職。 |
| 森岡俊陽 | 取締役第三営業本部長 | ニッショーを経て2008年同社入社。名古屋支店長等を経て2021年1月より現職。 |
| 三浦玄如 | 取締役管理本部長 | 朝日監査法人を経て2014年同社入社。経営企画室長、経理部長等を経て2025年1月より現職。 |
社外取締役は、高橋廣司氏(プロネット代表取締役社長)、村崎直子氏(ノブリジア代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 底地事業
土地所有者が第三者に土地を貸して地代収入を得ている「底地」を買取り、隣地との境界確定や借地権者との交渉等の権利調整を行います。借地権者のニーズに合わせ、借地権者へ底地を販売して完全所有権化を促す、あるいは借地権を買い取って完全所有権化し、不動産会社や個人に販売します。
収益は主に、権利調整後の底地や完全所有権化された不動産を第三者へ販売することによる売却益から得ています。また、販売までの期間中は借地権者からの地代も収益源となります。事業の運営は主にサンセイランディックが主体となって行っています。
■(2) 居抜き事業
老朽化して十分に収益を上げることができないアパートやビルなどの借家権付土地建物(居抜き)を土地建物所有者から買取ります。その後、借家権者に対して退去の依頼や移転先の紹介、移転費用の負担などの明渡し交渉を行い、賃貸借契約を合意解約して完全所有権とします。
退去後、空き物件となった土地建物、あるいは必要に応じて建物解体後の更地を不動産仲介業者を通じて不動産会社や事業会社、個人に販売し、その売却益を収益としています。この事業の運営も主にサンセイランディックが担っています。
■(3) 所有権およびその他関連事業
権利関係の調整が不要な完全所有権物件を所有者から買取り、不動産会社や個人に販売する事業のほか、不動産の売買仲介や土地活用のコンサルティングを行っています。また、土地所有者から地代集金や契約更新などを一括して請け負う「オーナーズパートナー」サービスも展開しています。
完全所有権物件の売却益のほか、仲介手数料やコンサルティング手数料、賃貸管理に伴う業務受託手数料が主な収益源となります。さらに、自社で保有するオフィスビルやアパート等からの賃料収入も得ており、これら一連の事業運営はサンセイランディックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は変動を伴いながらも全体として拡大傾向にあります。特に2023年12月期以降は230億円規模へ大きく成長しました。経常利益についても着実な成長を見せており、直近では利益率が改善し、親会社株主に帰属する当期純利益とともに高い水準を記録するなど、堅調な収益基盤を構築しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 168.4億円 | 155.3億円 | 232.7億円 | 256.2億円 | 233.5億円 |
| 経常利益 | 10.0億円 | 12.8億円 | 17.7億円 | 15.9億円 | 18.5億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 8.3% | 7.6% | 6.2% | 7.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6.1億円 | 10.6億円 | 11.9億円 | 10.5億円 | 12.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、原価率の改善により売上総利益は増加し、利益率が大幅に向上しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も前年を上回る結果となり、収益性の高い事業運営が実現されています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 256.2億円 | 233.5億円 |
| 売上総利益 | 63.0億円 | 69.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.6% | 30.0% |
| 営業利益 | 18.8億円 | 22.5億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 9.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が11.2億円(構成比24%)、租税公課が6.8億円(同14%)、賞与が5.9億円(同12%)を占めています。売上原価については、土地原価が161.5億円と全体の99%を占め、不動産の仕入が原価の大部分を構成しています。
■(3) セグメント収益
同社は不動産販売事業の単一セグメントですが、販売区分別の売上高を見ると、底地および所有権の販売が前年を上回って推移しています。一方で、居抜き物件の販売が減少したことが影響し、全体としては減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 底地 | 102.3億円 | 116.4億円 |
| 居抜き | 129.8億円 | 87.0億円 |
| 所有権 | 19.2億円 | 24.0億円 |
| その他の不動産販売事業 | 0.7億円 | 0.5億円 |
| 連結(合計) | 256.2億円 | 233.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
勝負型のキャッシュ・フローです。本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続しています。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11.4億円 | -59.7億円 |
| 投資CF | -7.1億円 | -4.6億円 |
| 財務CF | 12.2億円 | 60.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人と人の未来を繋ぐ先駆者となる」をミッションに掲げています。不動産の既成概念を打ち破って成長してきた中で培ったノウハウを最大限に活用し、生み出される不均衡を解消することを役割としています。様々な社会課題と真摯に向き合い、社会に潤いや豊かさを提供する企業であり続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
企業文化の根底には、「自立自走」「プロフェッショナル思考」「変化を楽しもう」という3つのビジョンがあります。強い意志と主体性を持ち、専門性を高めて全てのステークホルダーの安心安全を大切にするとともに、多様性を認めてポジティブな挑戦を賞賛しています。また、「中庸」「質実」「不断」をポリシーとして掲げています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画に基づく次期の目標として、財務戦略および非財務戦略の着実な実行を通じて、事業基盤の強化と計画の達成を目指しています。具体的には、以下の数値を定量目標として掲げています。
* 連結売上高:255億円
* 連結営業利益:24億円
* 連結経常利益:19億円
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、権利調整を中心とした付加価値の高いメニューの拡充による「既存事業の強化」を推進しています。また、共有持分などの「派生事業」や、空き家や遊休資産を利活用する「地域活性化推進事業」の拡大を図っています。あわせて、資本効率性を意識した財務基盤の構築や人的資本への投資による経営基盤の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を会社の中核を成す重要な経営資源と捉え、従業員のスキルやモチベーション向上に積極的に投資しています。新たな人事制度を導入し、会社が期待する役割と提供する価値を明確にして成長の好循環を生み出す方針です。研修制度は全社共通のポータブルスキルと職種固有の専門スキルに分け、継続的な育成サイクルを運用しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.4歳 | 9.9年 | 8,522,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※同社は常時雇用する労働者が300人以下のため、男女賃金の差異に関する公表義務の対象ではなく、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 権利関係の複雑性と登記の不確実性
同社が主に取り扱う底地は、権利関係が不動産登記に正確に反映されていなかったり、相続により権利が複雑化していたりする場合があります。取得した権利が第三者の権利を侵害している等の事実が後になって判明した場合、同社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 権利調整の成否による業績変動
同社の事業は、収益化にあたり権利調整を行う場合が大半を占めています。借地権者が底地の販売交渉に応じない場合や、借家権者が明渡し交渉に応じず売却に至らないなど、権利調整における交渉が順調に進捗しない場合、同社グループの業績に変動が生じるリスクがあります。
■(3) 有利子負債への依存と金利変動リスク
不動産の取得資金を主に金融機関からの借入金により調達しているため、有利子負債への依存度が比較的高い水準にあります。今後も資金調達手段の多様化と自己資本の充実に注力する方針ですが、金融情勢の変化により金利水準が大幅に上昇した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。