日本エマージェンシーアシスタンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本エマージェンシーアシスタンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する日本エマージェンシーアシスタンスは、海外での医療アシスタンス事業およびライフアシスタンス事業を展開しています。直近の業績は、海外旅行保険に付帯するアシスタンス業務の受託増などにより売上高が前期比で増加し、増収増益を達成しており、堅調な推移を見せています。


※本記事は、日本エマージェンシーアシスタンス株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日本エマージェンシーアシスタンスってどんな会社?


同社グループは、国境をまたいだ環境にいるユーザーに対する医療・ライフアシスタンス事業を展開しています。

(1) 会社概要


2003年に仏Europ Assistance社の日本法人として設立され、医療アシスタンスサービスを開始しました。2005年に資本関係を解消し独立しました。2007年にはクレジットカード会社との提携によるコンシェルジュサービスを開始し、2012年に大阪証券取引所JASDAQに株式を上場しました。

現在の従業員数は連結で247名、単体で169名です。筆頭株主は創業者の徐志敏氏であり、第2位はヴァンタークルーズヘルスサービスインク、第3位は徐宏沢氏となっています。

氏名 持株比率
徐志敏 12.78%
ヴァンタークルーズヘルスサービスインク 7.22%
徐宏沢 6.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は山本秀樹氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
山本秀樹 代表取締役社長営業部管掌 1987年日興證券入社。東京証券取引所、SMBC日興證券(香港)等を経て2024年同社入社。2025年より現職。
吉井眞一 取締役営業開発部管掌経理部管掌経営企画部管掌IR室管掌海外センター担当情報システム部担当医療事業部担当クレームアドミニストレーション部担当総務人事部担当CRMソリューション部担当沖縄センター担当RMS部担当クレームアドミニストレーション部長総務人事部長 2003年同社入社。管理部長やCRMソリューション部長等を歴任し、2019年取締役就任。2024年常務取締役を経て2025年より現職。
辛鑫 取締役ネットワーク管掌国際医療事業部担当EJC担当 2003年みずほコーポレート銀行入行。2014年同社入社。国際医療事業部長等を経て、2025年取締役就任。2026年より現職。
徐宏沢 取締役グローバルアライアンス新規取引先開拓担当 2018年China AMC Hong Kong入社。Sino Biopharmaceutical Group等を経て2025年同社顧問。2026年より現職。
千代隆明 取締役(監査等委員) 1995年World Access入社。2005年同社入社。ネットワーク部長等を歴任し、2026年より現職。


社外取締役は、安原貴彦(元みずほ銀行取締役副頭取)、井坂俊達(公認会計士)、戸賀智子(ASK GROUP HOLDINGS取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療アシスタンス事業」および「ライフアシスタンス事業」を展開しています。

医療アシスタンス事業


海外旅行保険の付帯サービスとして、被保険者が海外で被った怪我や病気に対する医療手配や搬送手配を提供します。また、企業や官公庁、大学向けに、海外駐在員や留学生に対する医療支援やセキュリティ・アシスタンスサービス、訪日外国人向けの医療ツーリズム支援等も展開しています。

損害保険会社や契約企業・大学から年間契約料および対応件数に応じた手数料収入を得ています。同社のほか、米国、シンガポール、中国、タイ、カナダの各海外子会社が連携し、主に現地でのサービス提供を担っています。

ライフアシスタンス事業


クレジットカード会社からの受託により、カード会員に対して海外でのレストラン予約やイベントチケットの取得などを手配するコンシェルジュサービスを提供しています。緊急事態への対応とは異なり、より気持ちよく、より楽しい海外生活をサポートします。

クレジットカード会社から受け取る年間契約料収入を主たる収益源としています。同事業の運営は主に同社が担っており、医療アシスタンスサービスで培った24時間体制のオペレーション能力を活かしてサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時減少したものの、当期は回復に転じています。利益面でも前期に落ち込みが見られましたが、当期は増収効果に加えて業務効率化などが寄与し、経常利益および当期純利益ともに増益を達成しており、業績は回復傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 44億円 62億円 36億円 29億円 37億円
経常利益 2億円 7億円 2億円 1億円 1億円
利益率(%) 5.6% 11.7% 5.0% 2.2% 2.8%
当期純利益 2億円 5億円 1億円 0.1億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も前期から拡大しています。売上総利益率は小幅に低下したものの、営業利益は前期から大きく増加し、利益率も改善を見せています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 29億円 37億円
売上総利益 8億円 9億円
売上総利益率(%) 27.5% 23.5%
営業利益 0.5億円 1億円
営業利益率(%) 1.8% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2億円(構成比29.4%)、外注費が1億円(同17.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


医療アシスタンス事業は、海外旅行保険に付帯するアシスタンス業務の受託増などに加え、訪日外国人向けの医療手配需要が堅調に推移し、大幅な増収となりました。ライフアシスタンス事業も、既存取引先のカード会員数増加に伴う契約見直しにより増収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
医療アシスタンス事業 25億円 32億円
ライフアシスタンス事業 4億円 5億円
連結(合計) 29億円 37億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -0.4億円 3億円
投資CF -1億円 -1億円
財務CF 1億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、日本人の視点に立った細やかな「ジャパンスタンダード」のアシスタンスの提供を掲げています。グローバル化が進む現代において、日本人だけでなく世界中の顧客に対し、一人一人の気持ちに寄り添い、真に求められているサービスを提供し続けることを目指して経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、全役員・従業員が共有すべき行動指針として「EAJ行動規範」を制定しています。「法令の遵守」「環境保全への寄与」「お取引先との信頼関係の確立」「従業員の自己実現への環境づくり」などを定め、公正かつ誠実な企業活動を推進し、企業の社会的責任を果たすことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業の継続的な拡大を通じた企業価値の向上を経営の目標としています。利益の確保に加え、現金の動きを把握するキャッシュ・フロー経営を重視するとともに、ROE(自己資本利益率)の向上に努めています。また、財務基盤の強化に向けて、以下の数値目標を設定しています。

* 自己資本比率:30%以上を維持
* 保有すべき現預金水準:概ね20~30億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、持続的な成長を実現するため、「生成AIによる業務改革」「インバウンド事業の拡大」「顧客基盤拡大の積極展開」の3本柱からなる成長戦略を推進しています。AIを活用したDX投資によって業務効率化と省力化を図るほか、高度医療や予防医療を含む医療ツーリズム事業を強化します。また、既存事業の高収益化や新規顧客開拓により、安定したビジネス基盤の構築を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社内に異なる経験や技能、属性を反映した多様な視点や価値観が存在することが、会社の持続的成長の確保に不可欠であると考えています。そのため、社内での女性の活躍推進をはじめとする多様性の確保を推進しています。また、年齢や性別にとらわれない幅広い採用活動や、社内研修の強化による人材育成と定着に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.0歳 8.3年 5,168,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 56.5%
男性育児休業取得率 100.0%


※労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外渡航者数の急激な減少


同社の中核事業は、海外駐在員や海外渡航者向けのアシスタンスサービスです。そのため、国内外の経済動向や急激な円安、政情不安、地域紛争、テロ、パンデミックなどにより海外渡航者数が急減した場合、サービスの提供件数が連動して減少し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 官公庁からの受託業務の変動


同社は、外国人診療に関する相談窓口や災害医療情報システム(EMIS)などの業務を官公庁から受託しています。これらの事業は一般競争入札によるため、落札できなかった場合や、予算の執行状況によって受託業務が縮小した場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 医療機関等への立替金の回収遅延


同社は、医療アシスタンス事業において、医師や医療機関への事前の支払いのために保険会社などに対する立替金が発生します。事業拡大に伴って立替金額も増加する傾向にあり、与信管理や前受金の収受など対策を講じていますが、多額の立替金の回収遅延や貸倒れが生じた場合、財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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