※本記事は、株式会社メドレックスの有価証券報告書(第24期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メドレックスってどんな会社?
同社は独自の経皮吸収技術を活用し、付加価値の高い新薬を開発する創薬ベンチャー企業です。
■(1) 会社概要
2002年に新しい剤型の医薬品を開発する企業として香川県で設立されました。2007年に米国子会社を設立し、2013年に東京証券取引所マザーズへ上場しました。2024年に豪州子会社を設立し、2025年には帯状疱疹後神経疼痛治療薬の販売承認を米国規制当局から取得するなど、研究開発を推進しています。
現在の従業員数は連結で21名、単体で20名という少数精鋭の体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は個人の江平文茂氏で、第2位は証券事業を展開する楽天証券、第3位も個人の永井崇久氏となっており、個人投資家や金融機関が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 江平文茂 | 3.79% |
| 楽天証券 | 3.49% |
| 永井崇久 | 3.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は松村米浩氏が務めており、社外取締役比率は44.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松村米浩 | 代表取締役社長 | コーポレイトディレクションを経て同社に入社。米国子会社社長などを歴任し、2017年より現職。 |
| 松村眞良 | 取締役会長 | 帝國製薬副社長などを経て2002年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 秋友比呂志 | 取締役開発部長 | 帝國製薬を経て同社に入社し監査役や取締役を歴任。米国子会社取締役も務め、2005年より現職。 |
| 濱本英利 | 取締役研究部長 | 帝國製薬を経て2002年に同社へ入社。2011年より現職。 |
| 藤岡健 | 取締役経営管理部長 | トーメンや青山監査法人等を経て公認会計士登録。CARTA HOLDINGS等を経て2019年より現職。 |
社外取締役は、岩谷邦夫(元アボットジャパン社長)、山崎泰志(税理士法人左光・鍋嶋会計代表社員)、大城紀子(元B-Bridge International独立コンサルタント)、森川さち子(森川さち子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品製剤開発及びこれらの付帯業務」の単一事業を展開しています。
■医薬品製剤開発事業
独自の経皮吸収型製剤技術やマイクロニードル技術を活用し、嚥下困難な患者にも投与可能な貼付剤や新しい投与デバイスを開発しています。主に中枢神経系疾患や疼痛治療の領域において、既存薬の有効性向上や副作用低減を実現する付加価値の高い医薬品候補を創出しています。
収益は、開発した医薬品候補を製薬会社などにライセンスアウトする際の契約一時金や、開発進捗に応じたマイルストン収入、および上市後の製品売上やロイヤルティから得ています。研究開発や提携推進などの事業運営は、同社および米国や豪州の開発子会社が共同で担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
開発先行型の創薬ベンチャーであるため、安定的な製品売上はまだ少なく、事業提携によるマイルストン収入の有無によって売上高が大きく変動する傾向にあります。研究開発への先行投資が継続しているため各段階の利益は赤字となっており、今後のパイプライン進展による早期の収益化が課題となっています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 0.3億円 | 2.6億円 | 1.3億円 |
| 経常利益 | -9.3億円 | -7.6億円 | -9.4億円 |
| 利益率(%) | -3151.1% | -292.8% | -731.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9.3億円 | -8.1億円 | -9.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の変動に伴い売上総利益も増減していますが、研究開発費を中心とした販売費及び一般管理費が先行して発生する事業構造となっています。そのため、営業利益は恒常的に赤字の状態が続いており、事業を軌道に乗せるための開発投資が先行するフェーズにあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2.6億円 | 1.3億円 |
| 売上総利益 | 2.6億円 | 1.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 99.9% | 99.1% |
| 営業利益 | -7.9億円 | -9.4億円 |
| 営業利益率(%) | -307.5% | -735.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が8.5億円(構成比80%)、役員報酬が0.5億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「医薬品製剤開発及びこれらの付帯業務」の単一セグメントであるため、セグメント別の利益データは開示されていません。売上高はマイルストン収入の獲得状況等により期ごとに変動しており、前期と当期を比較すると事業提携先からの収入タイミングの違いが売上に表れています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 医薬品製剤開発及びこれらの付帯業務 | 2.6億円 | 1.3億円 |
| 連結(合計) | 2.6億円 | 1.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「勝負型」の傾向を示しています。本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続している状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8.0億円 | -8.9億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | 10.7億円 | 7.5億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は92.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL(生活の質)の向上に資すること」を企業理念として掲げています。薬効の極大化や副作用の低減、飲み忘れ防止を可能にし、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しています。
■(2) 企業文化
研究開発を基軸とする創薬ベンチャーとして、人材の多様性は経営上の最重要課題の一つであると位置づけています。同社は、研究開発推進の背骨となる「多様性とチャレンジ精神を尊重する企業風土」を培い続けることを重視しており、性別や国籍、人種等の区別なく多様な人材の確保に努めています。
■(3) 経営計画・目標
創薬パイプラインの開発を一歩一歩進め、開発アセットの価値を高めていくことが企業価値を最大化する唯一の道筋であると考えています。2025年に販売承認を取得した帯状疱疹後神経疼痛治療薬の2026年後半からの販売開始や、他の主要パイプラインの臨床試験結果の取得を着実に進める方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
研究開発投資が先行する事業モデルであるため、製薬会社等とのパートナーシップ構築を重要な経営課題に据えています。各開発パイプラインの開発権や販売権のライセンスアウト(技術供与)を通じ、パートナーから収益を得て財務基盤の強化を図ります。また、適時適切な資金調達で開発資金を確保します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の推進が各部門の責任者や少数の研究開発人員に強く依存していることから、持続的な成長に向けて人的陣容の強化が欠かせないとし、常に優秀な人材の確保と育成に注力しています。また、研究部門においては裁量労働制を導入するなど、自由闊達な研究活動が行えるよう社内環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 49.7歳 | 12.4年 | 6,164,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新薬開発と収益化の不確実性
医療用医薬品の開発には多額の投資と長期の期間を要しますが、十分なデータが得られず上市が遅延または中止される可能性があります。また、ライセンス交渉や開発進捗に依存したマイルストン収益を見込んでいるため、計画に遅れが生じた場合は業績に影響が及ぶリスクがあります。
■(2) 少数の事業推進者や提携先への依存
少数精鋭の組織であり、現経営陣や少数の研究開発人員に強く依存しています。人材の流出や確保の遅れが生じた場合や、業務受託および提携先との関係が解消された場合には、事業活動の推進に重大な支障をきたす可能性があります。
■(3) 知的財産権に関するリスク
出願中の特許が成立しない可能性や、他社の優れた技術によって自社技術が淘汰されるリスクが常在しています。また、他社の知的財産権の侵害を未然に防ぐ体制を敷いていますが、第三者との間で紛争が生じた場合は業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。



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