ビジョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ビジョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ビジョンは東京証券取引所プライム市場に上場し、国内外向けのモバイルWi-Fiルーターレンタル「グローバルWiFi」事業や情報通信サービス事業、グランピング・ツーリズム事業を展開しています。直近の業績は、インバウンド需要の好調や法人向けストック収益の拡大により、過去最高の増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ビジョンの有価証券報告書(第25期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ビジョンってどんな会社?


国内外のモバイルWi-Fiルーターレンタル事業と、法人向けの情報通信インフラ支援を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1995年に設立され、2007年に法人携帯電話事業を開始しました。2012年に海外渡航者向けWiFiレンタル「グローバルWiFi」の提供を始め、主力の通信事業を確立しました。2015年に東証マザーズへ上場を果たし、その後市場変更を経て規模を拡大しています。近年は2022年に山梨県でグランピング施設をオープンするなど、グランピング・ツーリズム事業という新たな収益基盤の構築にも注力しています。

現在の従業員数は連結で789名、単体で540名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行の口座となっていますが、第2位には創業者の佐野健一氏が実質的に議決権を有する信託口座が名を連ねており、上位には信託銀行や証券会社等の金融機関が多く並んでいます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.02%
みずほ信託銀行有価証券管理信託(佐野健一口0730078号) 8.01%
日本カストディ銀行(信託口) 5.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長CEOは佐野健一氏、代表取締役社長COOは大田健司氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
佐野健一 代表取締役会長CEO 1991年光通信入社。1995年有限会社ビジョン設立、代表取締役。2004年同社代表取締役。国内外のグループ会社の代表や取締役を歴任し、2023年3月より現職。
大田健司 代表取締役社長COO 1997年旧ビジョン入社。2001年同社取締役、2015年同社取締役営業本部長。ベストリンクなどグループ会社の代表を歴任し、2023年3月より現職。
中本新一 取締役CFO 1991年光通信入社。1995年有限会社ビジョン入社。2015年同社取締役管理本部長。国内外のグループ会社の取締役を歴任し、2023年3月より現職。


社外取締役は、内藤真一郎(ファインドスターグループ代表取締役)、原田静織(ランドリーム代表取締役)、那珂通雅(ボードウォーク・キャピタル代表取締役)、森詩絵里(インテグラル法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「グローバルWiFi事業」、「情報通信サービス事業」、「グランピング・ツーリズム事業」および「その他」事業を展開しています。

グローバルWiFi事業


国内外へ渡航する個人や法人顧客に対し、世界各国の通信キャリア等から調達したモバイルWi-FiルーターのレンタルやeSIMを活用したデジタル通信サービスを提供しています。
収益は、ダイレクトサイトや空港カウンターを通じた個人顧客からのレンタル料や、法人契約に基づく継続的な利用料から得ています。運営は主にビジョンやベストリンク、および海外の各子会社が行っています。

情報通信サービス事業


法人およびSOHO事業者向けに、通信回線や電力の取次ぎ、OA機器の販売などの情報通信インフラの構築支援と、それに付随する保守や継続的なサービスを提供しています。
収益は、通信キャリアからの取次手数料や機器販売によるフロー型収益と、保守やサービス利用料によるストック型収益から構成されています。運営は主にビジョンやベストリンク、アルファーテクノなどが行っています。

グランピング・ツーリズム事業


プライベート空間を重視した高付加価値なグランピング施設の運営や、地域の観光資源を商品化し訪日外国人をターゲットとしたDMCモデルの旅行サービスを提供しています。
収益は、個人客や訪日外国人旅行者からの宿泊料や旅行手配・体験サービスの提供に対する代金から得ています。運営は主にビジョンおよびこしかの温泉が行っています。

その他


上記の報告セグメントに含まれない事業として、スペースのレンタル事業や記帳代行サービス、メディア事業、通信販売事業などを展開しています。
収益は、スペースの利用者からのレンタル料や、業務受託による手数料などから得ています。運営は主にビジョンやあどばる、ZORSE、Vision Worksなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、力強い拡大基調が続いています。新型コロナウイルスの影響から立ち直り、インバウンド需要の回復によるグローバルWiFi事業の伸びや、情報通信サービス事業での継続的なストック収益の積み上げが寄与しました。売上高、利益ともに毎期継続して成長を遂げ、利益率も着実に向上しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 181億円 255億円 318億円 355億円 390億円
経常利益 11億円 24億円 43億円 54億円 65億円
利益率(%) 6.3% 9.5% 13.6% 15.3% 16.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 15億円 30億円 33億円 45億円

(2) 損益計算書


売上高の順調な成長に伴い、売上総利益と営業利益がともに拡大しています。特に情報通信サービス事業でのストック収益の増加や、AIを活用した生産性向上の取り組みが奏功し、営業利益率も着実に改善を続けています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 355億円 390億円
売上総利益 206億円 217億円
売上総利益率(%) 57.9% 55.6%
営業利益 54億円 65億円
営業利益率(%) 15.1% 16.6%


販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が33億円(構成比22.0%)、給与手当が31億円(同20.6%)、支払手数料が24億円(同16.0%)を占めています。売上原価では、商品の仕入のほかに外注費などの経費が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の収益を見ると、全事業で増収増益を達成しています。グローバルWiFi事業は訪日外国人の過去最高更新やアウトバウンドの回復が寄与し堅調です。情報通信サービス事業はストック収益の拡販が奏功し大幅な増収となりました。グランピング事業も施設稼働が好調に推移し大きく成長しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
グローバルWiFi事業 199億円 210億円 60億円 64億円 30.2%
情報通信サービス事業 145億円 164億円 17億円 17億円 10.6%
グランピング・ツーリズム事業 12億円 16億円 1億円 2億円 11.1%
その他 0.3億円 0.1億円 -2億円 -0.7億円 -
調整額 - - -22億円 -17億円 -
連結(合計) 355億円 390億円 54億円 65億円 16.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 31億円 36億円
投資CF -12億円 -21億円
財務CF -5億円 1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.2%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世の中の情報通信産業革命に貢献します。」を経営理念として掲げています。この理念のもと、サステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置付け、地球環境への貢献や持続可能な社会と経済成長の実現を目指すという使命のもとで事業活動を行っています。

(2) 企業文化


同社グループは、「地球の一員として多様な社会と共に創る未来のビジョン」を共生成長課題(ビジョンスローガン)として掲げています。お客様の期待を感動に変えるため、ためらうことなく変革への挑戦を続け、ステークホルダーに感謝し謙虚な気持ちで事業活動を行う行動規範を重視しています。

(3) 経営計画・目標


現在推進している中期経営計画(2025-2028)において、最終事業年度となる2028年度における営業利益100億円の達成を具体的な数値目標として掲げています。本業における収益力を示す営業利益および営業利益率を重要な経営指標と位置づけ、中長期的な収益性の向上を目指しています。

* 2026年度計画 営業利益:75億円
* 2026年度計画 営業利益率:17.9%

(4) 成長戦略と重点施策


情報通信サービス事業を主軸とした新成長戦略「Vision 3.0」を掲げ、「戦略的なデータドリブンセールス」を推進しています。ニッチ&フォーカス戦略による新市場開拓、プライス&クオリティ戦略による優位性の確立、CLT(カスタマー・ロイヤリティ・チーム)を通じたアップセル・クロスセル戦略により、ストック型収益の拡大と顧客生涯価値(LTV)の最大化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「社員(人財)は会社の重要な資産であり、社員のエンゲージメント向上が会社に対するロイヤリティの向上につながる」との教育方針を掲げています。階層別研修やe-ラーニング等を通じた自己実現の場の提供に加え、多様な働き方を認める「ビジョングループ人権方針」を策定し、全従業員が安心して活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.4歳 8.1年 5,581,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.1%
男性育児休業取得率 36.4%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 93.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(81.6%)、所定外労働時間(17.44時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 通信キャリアからの仕入条件と為替変動

世界各国の通信キャリア等から通信サービスを仕入れているため、事業方針の変更や仕入条件の悪化が生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、外貨建の取引を行っていることから、急激な為替レートの変動も収益を圧迫するリスクとなります。

(2) 情報通信サービス事業の仕入・取引条件の変動

通信回線の取次ぎや情報通信機器の販売において、通信キャリアの経営方針による手数料条件の大幅な変更や、機器の調達遅延・欠品、競争激化に伴う仕入単価の上昇が発生した場合、同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 地政学リスクや自然災害に伴う渡航需要の減退

主力事業であるグローバルWiFi事業やグランピング・ツーリズム事業は、国内外の渡航需要に大きく依存しています。世界情勢の悪化や大規模な自然災害等により交通インフラが寸断されたり、心理的な渡航意欲が減退したりした場合、業績に重大な影響が生じる懸念があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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