※本記事は、株式会社ブイキューブの有価証券報告書(第26期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年4月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ブイキューブってどんな会社?
ビジュアルコミュニケーションツールの提供や個室ブースの展開で、多様な働き方を支援しています。
■(1) 会社概要
同社は1998年にブイキューブインターネットとして設立され、Webソリューションサービスを開始しました。2004年にブイキューブブロードコミュニケーションに社名変更してビジュアルコミュニケーション事業を本格化させ、2006年に現在のブイキューブへ変更しています。2013年に東証マザーズへ上場し、その後東証一部(現在のプライム市場)へステップアップしました。近年は、2019年にテレキューブを、2021年にTEN Events, Inc.を子会社化し、事業領域を拡大しています。
現在の連結従業員数は344名、単体では259名体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業者の間下直晃氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 間下 直晃 | 13.88% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.10% |
| 楽天証券 | 3.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長CEOは水谷潤氏が務めており、社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 水谷 潤 | 代表取締役社長CEO | 2006年4月に同社入社。営業本部長や取締役副社長・国内COO等を経て、2026年4月より現職。 |
| 山本 一輝 | 常務取締役CFO | 有限責任監査法人トーマツや地域経済活性化支援機構等を経て、2019年4月にCFO就任。2026年4月より現職。 |
| 間下 直晃 | 取締役会長 | 1998年10月にブイキューブインターネットを設立。代表取締役社長・CEO等を経て、2026年4月より現職。 |
| 中丸 毅 | 取締役監査等委員 | 日本アイ・ビー・エムを経て2014年6月に同社入社。事業推進室室長等を経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、松山大耕(臨済宗大本山妙心寺退蔵院副住職)、秋元秀仁(秋元秀仁税理士事務所代表税理士)、小松慶子(弁護士法人三浦法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンタープライズDX事業」「イベントDX事業」「サードプレイスDX事業」を展開しています。
■エンタープライズDX事業
主に企業や官公庁等を対象に、社内外のコミュニケーションにおけるDXを支援するサービスを提供しています。具体的には、Web会議システム「Zoom」のリセールや、映像組み込み型サービスの開発を容易にする「Agora」、学習管理システム(LMS)等のプロダクトを取り扱っています。
収益源は、契約期間に応じて定額制サービスを提供する期間契約型や、顧客のニーズに応じてカスタマイズや開発を請け負う受注販売型によるシステム利用料および開発費用です。事業の運営は同社やWizlearn Technologies Pte. Ltd.などが行っています。
■イベントDX事業
様々な分野のイベントにおいて、顧客のニーズに応じた企画・制作から、当日の運営、効果測定までをワンストップで支援するサービスを提供しています。Webセミナー配信ソフトウエアの提供に加え、リアル開催とオンラインを融合させたハイブリッドイベントのサポートも行っています。
収益源は、基幹となる配信ソフトウエアの利用料と各種運用支援サービスを加えたSaaS+サービス型による利用料・サポート費用です。事業の運営は同社およびTEN Events, Inc.が行っています。
■サードプレイスDX事業
自宅や職場とは異なる「第3の場所」を提供することで、場所にとらわれない働き方の実現を支援しています。企業や公共空間に向けて、防音個室ブース「テレキューブ」の提供や管理運営システムの開発を行っています。
収益源は、企業向けのテレキューブ本体の販売代金や、月額課金方式であるサブスクリプション形態によるレンタル料です。事業の運営は同社および子会社のテレキューブが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向にあり、直近では減収が続いています。利益面では前期から経常赤字に転落しており、当期は米国子会社の上場関連費用の発生や減損損失の影響により、赤字幅が大幅に拡大する結果となりました。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 115億円 | 122億円 | 111億円 | 105億円 | 99億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 6億円 | -3億円 | -3億円 | -20億円 |
| 利益率(%) | 10.7% | 5.0% | -2.5% | -3.1% | -20.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 5億円 | -43億円 | -10億円 | -37億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い売上総利益も減少しています。また、当期は販売費及び一般管理費が大幅に増加したため、営業赤字が17億円まで拡大し、収益性が大きく悪化している状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 105億円 | 99億円 |
| 売上総利益 | 39億円 | 36億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.7% | 36.1% |
| 営業利益 | -2億円 | -17億円 |
| 営業利益率(%) | -2.3% | -17.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が20億円(構成比39%)、株式報酬費用が7億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
サードプレイスDX事業は多人数用ブースの好調により増収増益を達成しましたが、エンタープライズDX事業は一部事業譲渡等の影響で減収減益となりました。イベントDX事業は米国子会社の上場関連費用の発生により大幅な営業赤字を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンタープライズDX事業 | 41億円 | 35億円 | 7億円 | 5億円 | 15.1% |
| イベントDX事業 | 38億円 | 35億円 | -6億円 | -21億円 | -59.2% |
| サードプレイスDX事業 | 26億円 | 28億円 | 7億円 | 8億円 | 27.7% |
| 連結(合計) | 105億円 | 99億円 | -2億円 | -17億円 | -17.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業赤字を資産売却+借入で補填する救済型のキャッシュ・フロー状況となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | -6億円 |
| 投資CF | -5億円 | 4億円 |
| 財務CF | -8億円 | 11億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は-23.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「Evenな社会の実現 ~すべての人が平等に機会を得られる社会の実現~」をミッションに掲げています。誰もが境遇に左右されず、機会を平等に得られる世界をつくり、人と人が会うコミュニケーションの時間と距離を縮めることで、より豊かな社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「常に情報通信技術を高度に活用することにより、新しい価値の創造を通じて、より豊かな人間社会の実現を目指す」という経営理念のもと、映像コミュニケーションのソリューションサービスの提供を通じ、シームレスなコミュニケーション社会の実現に貢献する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
不採算事業の切り離しと収益構造の改革、スポンサー選定による資本増強と非公開化を通じて財務体質の改善と事業再建を図ることを最優先課題として掲げています。また、将来的な株主還元については以下の数値を目標としています。
・配当性向:NOPLAT(みなし税引後利益)に対して20%、将来的には30%
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長と資本効率の向上を最優先とし、成長領域への投資強化による事業ポートフォリオの再編を進めています。各事業領域において、それぞれの強みを活かしたオーガニックな成長を目指しています。
・エンタープライズDX:生成AIを活用した新規サービスの拡充とAI×ロボティクス事業の拡大
・イベントDX:データを徹底活用するイベントの効果分析等による差別化
・サードプレイスDX:テレキューブのラインナップ拡充と利用用途の拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ピープル・サクセスポリシー」を基に、「新たな価値を共創しつづける人財の育成」を方針として定めています。社員の成長を会社の成長と捉え、自らの成長を志し挑戦する社員に対し、評価報酬制度を含む独自の人材開発総合施策「The GOLD」を通じて総合的支援を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 37.3歳 | 8.0年 | 6,741,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.8% |
| 男性育児休業取得率 | 62.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育休取得率(100%)、女性従業員比率(41.8%)、管理職における中途採用者比率(79.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI技術の進展による事業への影響
同社グループが提供するコミュニケーションツールやソリューションが、AIエージェント等の新技術により代替される可能性があります。競合環境の変化が競争力に影響を与え、事業戦略の見直しや既存サービスの陳腐化を引き起こすリスクがあります。
■(2) イベントDX事業の収益性低下
オンラインイベント市場において、需要の鈍化やリアルイベントへの回帰傾向が見られます。特定の大型顧客や大型イベントへの依存度が高い収益構造において、顧客方針の変化や価格競争の激化により利益率が低下するリスクが存在します。
■(3) サードプレイスDX事業の環境変化
ハイブリッドワークの定着により個室空間のニーズが高まる一方で、一部の企業でオフィスへの完全回帰の動きが見られます。これにより、テレキューブの設置先の稼働率や企業の導入意欲に影響を及ぼし、収益性が変動するリスクがあります。



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