※本記事は、株式会社ブイキューブ の有価証券報告書(第25期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ブイキューブってどんな会社?
ブイキューブは、Web会議やオンラインセミナー配信などのビジュアルコミュニケーションDX事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1998年に有限会社ブイキューブインターネットとして創業し、2004年にビジュアルコミュニケーション事業を開始しました。2013年に東証マザーズへ上場し、2021年には米国でイベントDX事業を展開するTEN Events, Inc.を子会社化しました。2024年には構造改革の一環としてプロフェッショナルワーク事業を譲渡するなど、事業ポートフォリオの最適化を進めています。
連結従業員数は372名、単体では275名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の間下直晃氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位のトミーコンサルティングインクは上位株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 間下 直晃 | 13.88% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 10.19% |
| トミーコンサルティングインク | 2.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長グループCEOは間下直晃氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 間下 直晃 | 代表取締役社長グループCEO | 1998年ブイキューブインターネット設立。2004年ブイキューブブロードコミュニケーション(現同社)社長。2025年3月より現職。 |
| 高田 雅也 | 代表取締役副社長国内CEO | 2002年日立製作所入社。2006年同社取締役副社長。2022年社長を経て、2025年3月より現職。 |
| 水谷 潤 | 取締役副社長国内COO | 2006年同社入社。営業本部長、CRO、専務取締役などを経て、2022年3月より現職。 |
| 山本 一輝 | 取締役CFO経営企画本部長 | 2003年監査法人トーマツ入所。2019年同社CFO・経営企画本部長。2021年3月より現職。 |
| ランドルフ・ジョーンズ | 取締役 | 米国IT企業等を経て2023年Xyvid, Inc.(現 TEN Events, Inc.)CEO。2024年12月より現職。 |
| 中丸 毅 | 取締役監査等委員 | 1984年日本アイ・ビー・エム入社。2014年同社入社。事業推進室長等を経て2025年3月より現職。 |
社外取締役は、西村憲一(元ミライト相談役)、松山大耕(妙心寺退蔵院副住職)、秋元秀仁(税理士)、小松慶子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンタープライズDX事業」、「イベントDX事業」、「サードプレイスDX事業」を展開しています。
■(1) エンタープライズDX事業
企業や官公庁向けに、Web会議「V-CUBE ミーティング」や「Zoom」等のコミュニケーションツール、SDK(ソフトウエア開発キット)などを提供しています。社内外のコミュニケーションDXを支援するサービス群です。
収益は主にクラウドサービスの月額定額利用料(サブスクリプション)や、SDKのライセンス販売から得ています。運営は主にブイキューブが行っているほか、シンガポールの子会社Wizlearn Technologies Pte. Ltd.等がLMS(学習管理システム)を提供しています。
■(2) イベントDX事業
各種イベントやセミナーのオンライン化・リモート化を支援する事業です。配信ソフトウエア「V-CUBE セミナー」や「EventIn」、バーチャル株主総会システムの提供に加え、配信サポートや運用支援も行っています。
収益は、配信ソフトウエアの利用料と各種運用支援サービスを組み合わせたSaaS+サービス型で得ています。運営はブイキューブのほか、米国のTEN Events, Inc.などがサービス提供を行っています。
■(3) サードプレイスDX事業
テレワークを支援する防音型スマートワークブース「テレキューブ」を企業や公共空間に提供しています。駅やオフィスビルなどの公共空間への設置や、オフィス内への導入を進め、新たなワークスタイルの定着を図っています。
収益は、企業向けにはブース本体の販売およびサブスクリプション形式でのレンタル料から得ています。公共向けでは時間貸しによる利用料収入等があります。運営はブイキューブおよび連結子会社のテレキューブ株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2020年12月期から2022年12月期にかけて売上高は拡大しましたが、その後は減少傾向にあります。利益面では2023年12月期に営業赤字へ転落し、2024年12月期も赤字が継続しています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 115億円 | 122億円 | 111億円 | 105億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 12億円 | 6億円 | -2.8億円 | -3.2億円 |
| 利益率(%) | 12.3% | 10.7% | 5.0% | -2.5% | -3.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 13億円 | 5億円 | -56億円 | -14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しており、売上総利益率も低下しています。営業損失は拡大しており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 111億円 | 105億円 |
| 売上総利益 | 46億円 | 39億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.9% | 37.7% |
| 営業利益 | -1.6億円 | -2.4億円 |
| 営業利益率(%) | -1.4% | -2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が20億円(構成比49%)、支払手数料が5億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エンタープライズDX事業は事業譲渡の影響等により減収減益となりました。イベントDX事業は米国のリアル回帰の影響等で減収となり、営業損失が継続しています。サードプレイスDX事業は企業向け販売が堅調で増収となりましたが、利益は微減しました。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンタープライズDX事業 | 43億円 | 41億円 | 7億円 | 7億円 | 16.4% |
| イベントDX事業 | 42億円 | 38億円 | -5億円 | -6億円 | -15.0% |
| サードプレイスDX事業 | 26億円 | 26億円 | 8億円 | 7億円 | 28.3% |
| 連結(合計) | 111億円 | 105億円 | -1.6億円 | -2.4億円 | -2.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状態は「健全型」です。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 8億円 |
| 投資CF | -19億円 | -5億円 |
| 財務CF | 6億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は算出できず(当期純損失のため)、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は-1.3%で市場平均を大きく下回っています(債務超過)。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Evenな社会の実現 ~すべての人が平等に機会を得られる社会の実現~」をミッションに掲げています。映像技術を活用して距離や時間の壁を取り払い、大都市一極集中や少子高齢化などの社会課題を解決することで、誰もが機会を平等に得られる社会の構築を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「ピープル・サクセスポリシー」を人財方針として掲げ、社員の成長を会社の成長と捉えています。また、挑戦を生む環境づくりとして、部署や役職を越えた新規事業立案コンテスト「Next ATARIMAE Challenge」を開催するなど、新たな価値創造と自律的なキャリア形成を推奨する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2025年12月期以降は、事業ポートフォリオの最適化やコスト管理の強化を進め、収益性の改善を目指しています。具体的な数値目標として、以下を掲げています。
* 2025年12月期:連結売上高108~120億円
* 2026年12月期:連結売上高120~130億円
■(4) 成長戦略と重点施策
財務体質の改善と売上成長の促進を優先課題としています。TEN Holdings, Inc.のNASDAQ上場後の株式売却による資金調達や有利子負債の削減を進めるとともに、各事業においては選択と集中を行い、生成AI活用やハイブリッドイベントなどの成長領域への投資を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「新たな価値を共創しつづける人財の育成」を方針とし、独自の評価報酬制度や人財開発施策「The GOLD」を通じて、社員のキャリア開発や学習機会を支援しています。性別や国籍等に関わらず機会を提供する「Evenな社会」の実現を社内でも推進し、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 37.0歳 | 7.4年 | 6,140,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 63.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育休取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI技術の進展による事業への影響
AI技術の急速な進展により、同社グループのコミュニケーションツール等がAIエージェント等の新技術に代替される可能性があります。競合環境の変化が競争力低下やサービスの陳腐化を招く恐れがあるため、AI関連技術の動向を注視し、新技術との連携や独自価値の訴求に努めています。
■(2) イベントDX事業の収益性低下に関するリスク
オンラインイベント市場においてリアル回帰や需要鈍化が進み、同事業の収益性が低下する可能性があります。特定の大型顧客やイベントへの依存、価格競争による利益率低下もリスク要因です。これに対し、ハイブリッド対応の強化や高付加価値化により収益の安定化を図っています。
■(3) サードプレイスDX事業の市場環境の変化に関するリスク
オフィス回帰の動きにより、テレキューブ等のサードプレイス型サービスの稼働率や導入意欲が低下する可能性があります。ハイブリッドワークの定着を前提としつつも、設置環境の最適化や利用用途の拡大に取り組むことで、稼働率と収益性の改善を目指しています。
■(4) エンタープライズDX事業の不確実性に関するリスク
対面回帰の動きにより、オンライン会議・配信ソリューションの利用率が低下する可能性があります。特にサブスクリプション型顧客の解約進行による売上減少が懸念されます。機能改善や顧客接点の強化を通じ、継続的な価値提供を図っています。



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