※本記事は、株式会社サイバーリンクスの有価証券報告書(第62期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サイバーリンクスってどんな会社?
サイバーリンクスは、流通業や官公庁向けにクラウドサービスを提供するIT企業です。
■(1) 会社概要
1956年にテレビの組立・修理業として創業し、1964年に南海無線として設立された後、携帯電話販売代理店業務を開始しました。2000年に南海通信特機を存続会社として数社を吸収合併し、サイバーリンクスに商号変更しました。その後、クラウドサービス事業を拡大し、2014年に上場しています。
従業員数は連結で815名、単体で590名です。大株主は、筆頭株主が事業会社のサイバーコアで、第2位がエフティグループ、第3位がサイバーリンクス従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サイバーコア | 24.38% |
| エフティグループ | 3.63% |
| サイバーリンクス従業員持株会 | 3.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は東直樹氏が務めています。社外取締役は6名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村上 恒夫 | 代表取締役会長 | 松下電器産業(現パナソニックコネクト)を経て、1979年に同社専務取締役に就任。1993年に代表取締役社長を務め、南大阪電子計算センターなどの関連会社役員を歴任し、2024年より現職。 |
| 東 直樹 | 代表取締役社長 | エムケーシー(現TIS)を経て、1993年に近畿中部レジホンセンター(現同社)入社。取締役リテイルネットワーク事業部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 湯川 隆志 | 常務取締役 | 整理回収銀行(現整理回収機構)を経て、1998年に同社入社。移動通信部長やモバイルネットワーク部長を務め、2003年に取締役モバイルネットワーク事業部長に就任。2012年より現職。 |
| 水間 乙允 | 取締役 | インアンドインなどを経て、2001年に同社入社。技術統括室長や執行役員最高情報責任者(CIO)を務め、南大阪電子計算センターなどの関連会社役員を歴任し、2023年より現職。 |
| 松山 浩士 | 取締役 | 住友金属システム開発などを経て、2003年に同社入社。クラウド基盤管理室長や流通クラウド事業部流通サービス本部長を務め、2021年に執行役員副事業本部長に就任。2024年より現職。 |
| 中越 康之 | 取締役 | 紀陽銀行やピクセラなどを経て、2009年に同社入社。リテイルネットワーク事業部営業部長やリテイル事業部長を務め、2024年に執行役員副事業本部長に就任。2025年より現職。 |
| 鳥居 孝行 | 取締役 | 紀陽銀行を経て、2003年に同社入社。総合管理部経営企画室長や総務企画課長を務め、2012年に総合管理部長に就任。関連会社監査役を歴任し、2025年より現職。 |
| 盛田 義次 | 取締役 | 1980年に南大阪電子計算センターに入社。同社の取締役や常務取締役などを歴任し、2022年に同社代表取締役社長に就任。2023年より同社の取締役に就任し、現在に至る。 |
社外取締役は、本間英明(エスクロー・エージェント・ジャパン会長)、内田善彦(周南公立大学教授)、下宏(元和歌山県副知事)、森本鉄平(公認会計士森本鉄平事務所所長)、山﨑和典(元田辺市企画部長)、宮内宏(宮内・水町IT法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「流通クラウド事業」「官公庁クラウド事業」「トラスト事業」「モバイルネットワーク事業」を展開しています。
■流通クラウド事業
流通食品小売業向け基幹業務クラウドサービスや、大手食品卸売業を主要顧客としたEDI等のクラウドサービスを提供しています。また、商品画像データベースや多言語対応販売管理システムなども展開しています。
顧客である食品小売業や卸売業から、システム利用に伴う定常的な情報処理料や保守料等を受け取るモデルです。この事業の運営は主に同社が行っています。
■官公庁クラウド事業
地方自治体向けに、行政情報システムの導入や保守・運用サービスを提供しています。また、防災行政無線システムをはじめとする通信システムの施工および保守などのサービスも展開しています。
地方自治体や官公庁から、システム導入費やクラウドサービスの継続的な利用料、通信システムの工事費などを受け取ります。運営は同社、南大阪電子計算センター、シナジーの各社が行っています。
■トラスト事業
ブロックチェーン技術を活用したデジタル証明書発行サービスを提供しています。さらに、マイナンバーカードを活用した本人認証システムなど、利便性と安全性を両立するトラストサービスを展開しています。
民間企業や官公庁、教育機関などから、デジタル証明書の発行やシステム利用に伴う手数料を受け取る収益モデルとなっています。この事業の運営は主に同社が行っています。
■モバイルネットワーク事業
NTTドコモの一次代理店であるコネクシオと締結している代理店契約に基づき、二次代理店として和歌山県下でドコモショップ10店舗を運営し、携帯電話端末やアクセサリなどを販売しています。
一般消費者からの商品購入代金や、通信キャリアおよび一次代理店からの販売手数料などを収益源としています。この事業の運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の連結業績を見ると、売上高は安定して成長を続け、132億円から181億円へと拡大しています。経常利益も順調に推移し、直近では19億円を突破しました。利益率も7%台から10%台へと向上しており、クラウドサービス等のストック型ビジネスの拡大が収益性の向上に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 132億円 | 122億円 | 150億円 | 159億円 | 181億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 11億円 | 11億円 | 13億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 7.2% | 9.3% | 7.1% | 8.0% | 10.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 7億円 | 5億円 | 10億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大きく増加し181億円となりました。これに伴い売上総利益も49億円から59億円へと伸長し、売上総利益率は32.5%に改善しています。営業利益も13億円から18億円へと大幅な増益を達成し、営業利益率も10%台に乗せるなど、本業の収益力が着実に高まっていることが確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 159億円 | 181億円 |
| 売上総利益 | 49億円 | 59億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.9% | 32.5% |
| 営業利益 | 13億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 7.9% | 10.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が15億円(構成比38%)、役員報酬が3億円(同7%)、法定福利費が3億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントにおいて堅調な売上成長が見られます。特に官公庁クラウド事業は、自治体における基幹システムの統一・標準化関連案件の進行や文書管理システムの導入拡大などにより、前期から大きく売上を伸ばしました。トラスト事業も規模は小さいながら高い成長率を示し、全社的な増収に貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 流通クラウド事業 | 49億円 | 53億円 |
| 官公庁クラウド事業 | 68億円 | 85億円 |
| トラスト事業 | 0.8億円 | 1.5億円 |
| モバイルネットワーク事業 | 41億円 | 42億円 |
| 連結(合計) | 159億円 | 181億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローの状況を見ると、営業活動で生み出した資金を原資としつつ、借入等による外部調達も組み合わせながら積極的な投資を行っている積極型のパターンを示しています。クラウドサービス基盤や新規開発への先行投資を継続し、さらなる成長を目指す姿勢が伺えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 16億円 |
| 投資CF | -13億円 | -12億円 |
| 財務CF | -3億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.1%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「気高く、強く、一筋に ~皆で創り出す仕事を通じて社会の発展に貢献を~」を経営理念として掲げています。技術の進歩やトレンド変化の激しい情報サービス業界において、社会や顧客にとって何が必要なのかを見極め、最優良で高品質なサービスを提供し続けることで社会に貢献することを事業目的としています。
■(2) 企業文化
同社は、「シェアクラウド(共同利用型クラウド)」をキーワードに、高機能かつ安価なサービスを提供し、顧客企業だけでなく業界全体の活性化に貢献する価値観を重視しています。「LINK Smart ~もたず、つながる時代へ~」というブランドコンセプトのもと、多様なステークホルダーとともに持続可能な社会の実現に貢献する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年度を最終年度とする中期経営計画において、「人々の豊かな暮らしに貢献し、誰からも選ばれるITカンパニーへ。」というビジョンを掲げています。継続的に得られる「定常収入」を重要指標と位置づけ、ストック型ビジネスモデルを経営の根幹に据えています。
* 定常収入:126億円
* 売上高:221億円
* 経常利益:30.0億円
* ROE:13.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、「シェアクラウド」による安心・安全で高品質なサービスの充実と積極的な展開を図ります。具体的には、AI等の先進技術を積極的に活用した次世代基幹システムの開発や、マイナンバーカードを活用したトラストサービスの拡大を推進します。また、働きがいのある職場環境の整備やデジタル人材の育成を通じた人的資本投資も重点施策として位置づけ、持続的な企業価値の向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を持続的成長を支える重要な経営基盤と位置付けています。働く環境戦略「Work Smart」を掲げ、従業員一人ひとりが能力と熱意を最大限に発揮できる職場づくりを推進しています。戦略的に人材を育てる教育体系の整備や、AI活用による生産性の向上、多様な強みが発揮できる人事制度への刷新に取り組むとともに、都市圏での採用拡大にも注力し、優秀な人材の確保と定着を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 37.9歳 | 10.0年 | 5,645,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 78.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 71.1% |
※男性育児休業取得率については、当事業年度に取得の対象となる従業員がいなかったため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(32.9%)、中途採用者比率(57.8%)、離職率(6.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客の投資・購買意欲等による影響
小売業界の市場縮小や自治体の予算削減、行政システムの標準化等の動向により、顧客の情報システム投資意欲が低下した場合、新規開拓の低迷や既存案件の減少が生じ、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報セキュリティに関するリスク
クラウドサービスにおいて多数の顧客情報や企業情報を保有しているため、サイバー攻撃やシステムの誤動作等により情報漏洩やデータ改ざんが発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 物価上昇に関わるリスク
サービス提供に必要な機器やサーバー等の設備調達において、物価上昇による原価増加が生じるリスクがあります。コスト削減や料金改定によっても吸収しきれない場合、顧客の離反等を招き業績に影響を及ぼす可能性があります。



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