ムゲンエステート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ムゲンエステート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ムゲンエステートは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、首都圏や主要都市で中古不動産の買取再販と賃貸事業を展開する企業です。主力の買取再販事業において投資用・居住用ともに販売が好調に推移した結果、直近の業績は売上高が前期比9.8%増、当期利益が前期比9.4%増と増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ムゲンエステートの有価証券報告書(第36期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ムゲンエステートってどんな会社?


首都圏や主要都市で中古不動産の買取再販事業と賃貸事業を展開し、不動産の再生を通じて価値を創造する企業です。

(1) 会社概要


1990年5月に不動産の売買を主な事業目的として設立されました。1997年8月に不動産仲介事業を行う子会社フジホームを設立し、2007年1月に工事部門を設置して内外装工事を開始しています。2014年6月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場後、2016年に市場第一部、2022年にプライム市場、2023年にスタンダード市場へ移行しました。近年は不動産小口化商品やアセットマネジメント事業への展開も進めています。

現在の従業員数は連結で501名、単体で463名となっています。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の藤田進氏であり、第2位および第3位は創業家の資産管理会社となっています。

氏名 持株比率
藤田 進 17.39%
ドリームカムトゥルー 8.94%
夢現企画 6.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
藤田 進一 代表取締役社長 1994年4月大塚商会入社。1997年4月同社入社。2000年2月取締役、2001年2月専務取締役。2013年3月より現職。
藤田 進 代表取締役会長 1975年6月三和商事入社。1990年5月同社を設立し代表取締役社長。2013年3月より現職。


社外取締役は、仁田雅志(元東急文化村専務)、前川研吾(RSM汐留パートナーズ社長)、富所幸子(ネオファースト生命保険常務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産売買事業」および「賃貸その他事業」を展開しています。

(1) 不動産売買事業


首都圏1都3県や主要地方都市において、中古不動産の買取再販事業を中心に展開しています。買取した中古不動産を投資用と居住用に区分し、内外装工事等により価値を向上させて国内外の投資家や一般消費者に販売するほか、収益物件の開発や不動産特定共同事業法に基づく小口化商品の販売も行っています。

主な収益源は、再生不動産や自社開発物件、小口化商品の販売代金です。事業の運営は主に同社が行っており、一部の仲介業務は子会社のフジホームが担当しています。

(2) 賃貸その他事業


買取した投資用不動産や自社で保有する固定資産物件をエンドユーザー等に賃貸する事業です。また、これら物件の賃貸管理業務や建物の管理状況改善・修繕工事等によるバリューアップも行い、投資利回りの向上に繋げています。

主な収益源は、エンドユーザーからの賃料収入および賃貸管理に伴う管理手数料です。不動産の賃貸は同社が行い、賃貸管理業務はフジホームへ委託しています。また、ムゲンファンディングがクラウドファンディング連携サービス、ムゲンアセットマネジメントが私募ファンド組成等を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、2022年12月期に売上高が一時的に減少したものの、その後は右肩上がりで成長を続けています。特に投資用不動産の需要増を背景に、売上高は600億円を突破し、経常利益および当期利益も年々拡大しています。利益率も14%台まで向上するなど、収益性を伴った事業拡大を実現しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 340億円 312億円 516億円 622億円 683億円
経常利益 18億円 23億円 52億円 89億円 100億円
利益率(%) 5.2% 7.4% 10.2% 14.2% 14.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 15億円 36億円 60億円 67億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益状況を比較すると、主力の買取再販事業において高い収益性を確保できたことで、売上総利益率は26.6%から28.3%へと上昇しています。それに伴い営業利益も約15%増加し、収益構造の向上が顕著に表れています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 622億円 683億円
売上総利益 166億円 193億円
売上総利益率(%) 26.6% 28.3%
営業利益 96億円 110億円
営業利益率(%) 15.5% 16.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が29億円(構成比35%)、販売手数料が16億円(同19%)、租税公課が12億円(同15%)を占めています。売上原価の内訳も同様に、販売用不動産取得費が431億円(構成比88%)、委託内外装工事費が35億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不動産売買事業は、円安や低金利環境を背景とした国内外投資家からの需要増や、新築価格高騰に伴う中古不動産への需要シフトにより増収となりました。賃貸その他事業も、保有物件の増加によって賃貸収入が順調に拡大しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
不動産売買事業 598億円 653億円
賃貸その他事業 24億円 29億円
連結(合計) 622億円 683億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業はマイナスですが、将来成長のため借入等で資金調達を行い、積極的な投資を継続している「勝負型」の状況です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 26億円 -68億円
投資CF -3億円 -50億円
財務CF -8億円 104億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「夢現 -夢を現実に-」を掲げており、顧客の夢を実現することで企業の成長を遂げ、ステークホルダーの価値向上に貢献することを目指しています。また、「不動産に新たな価値を創造し、すべての人の豊かな暮らしと夢に挑戦する」というミッションの下、地球温暖化や空き家問題などの社会課題の解決に取り組んでいます。

(2) 企業文化


ミッションの実現に向けた行動指針として、「速さを追求」「あくなき挑戦」「多様な連携」「先を見通す」「貫く責任」の5つのバリューを定めています。これらを基軸に行動することで企業の競争力を高め、多様な価値観を認め合いながら誠実に挑戦を続ける組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2025年12月期からの第3次中期経営計画では、「事業領域の拡大」と「新たな価値創造」を事業戦略の軸として掲げています。既存事業の成長に加え、人材・DX投資や新規事業の創出に注力し、継続的な企業価値の向上を目指しています。2026年12月期の業績目標は以下の通りです。

・売上高:793億円
・営業利益:124億円
・経常利益:111億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:76億円

(4) 成長戦略と重点施策


主力の買取再販事業において、営業エリアの拡大や営業チャネル、アセットタイプの拡充により新規物件の取得を加速させます。また、工期短縮や不動産テック活用による在庫回転率の向上、業務オペレーション見直し等の原価管理による収益性の確保を進めます。さらに、不動産開発事業や特定共同事業による安定収益の拡大を図っていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「サステナビリティ経営の実現に向けた多様な人材の獲得と育成を強化」を方針とし、人材の確保と育成を経営上の最重要課題と位置づけています。専門性を持つ多様な人材の採用強化、マネジメント層の育成や次世代リーダーの発掘、自律的なキャリア形成の支援などを通じて最適な人材配置を行い、持続的な成長を支える組織基盤の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.4歳 3.4年 7,487,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 49.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(75.0%)、離職率(11.6%)、有給取得率(57.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 有利子負債への依存と金利変動に関するリスク

同社グループは不動産の買取資金を主に金融機関からの借入金によって調達しており、有利子負債への依存度が高くなっています。そのため、金融情勢の変動によって金利上昇や融資姿勢が変化した場合、支払利息の増加や仕入計画の変更等により、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 仕入・販売に関する競争環境の変化に関するリスク

主力事業である不動産買取再販事業は参入障壁が比較的低く、大手不動産会社等の事業参入により競争環境が厳しさを増しています。他社との競争により目標とする利益率の確保や計画通りの仕入・販売が行えない場合、事業規模の拡大や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 販売用不動産の評価損に関するリスク

期末に保有している販売用不動産について、正味売却価額が簿価等を下回る場合には商品評価損を計上します。経済情勢や不動産市況の悪化などにより、当初の計画通りに販売が進まず在庫が長期滞留した場合、評価損の計上によって同社グループの業績を圧迫するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。