※本記事は、OATアグリオ株式会社の有価証券報告書(第16期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. OATアグリオってどんな会社?
先進的な農薬や肥料、バイオスティミュラント製品の研究開発および製造販売をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
2010年9月に大塚化学のアグリテクノ事業部が新設分割され、大塚アグリテクノとして設立されました。2014年4月に現在のOATアグリオへ商号変更し、同年6月に株式を上場しています。その後もスペインのLIDA Plant ResearchやオランダのBlue Wave Holdingなどを子会社化し、グローバルな事業展開を推進しています。
現在の従業員数は連結で596名、単体で170名です。筆頭株主は投資事業組合の光通信KK投資事業有限責任組合で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は事業会社である伊藤忠ケミカルフロンティアとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.56% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.51% |
| 伊藤忠ケミカルフロンティア | 5.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は岡尚氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡尚 | 代表取締役社長 | 1983年に大塚化学薬品へ入社し、技術開発部長などを歴任。2013年に同社取締役へ就任し、事業推進部や農薬事業部などの各部長を務める。2020年3月より現職。 |
| 北口聡史 | 取締役 上席執行役員経営企画室室長生産統括部部長 | 2012年に同社事業推進部へ入社。肥料・BS事業部長などを経て、2020年3月に取締役へ就任。購買調達部長や経営企画室長などを務め、2025年3月より現職。 |
| 奥村亘 | 取締役 上席執行役員海外営業本部本部長 | 2010年に同社海外営業部へ入社。海外営業部欧米グループのリーダーや海外営業部長を経て、2020年3月に取締役へ就任。2023年3月より現職。 |
| 高瀬尋樹 | 取締役 執行役員総務部部長 | 2015年に同社事業推進部へ入社。購買調達部長や総務部長を経て、2022年3月に取締役へ就任。インプランタイノベーションズ取締役も兼任し、2024年1月より現職。 |
| 末村泉美 | 取締役 執行役員国内営業本部本部長 | 2011年に同社大阪支店四国出張所長として入社。肥料・BS事業部長などを歴任後、2022年3月に取締役執行役員および国内営業本部本部長へ就任し、現在に至る。 |
| 渡辺伊都子 | 取締役 執行役員人事部部長 | 2011年に同社経理・情報システム部へ入社。人事部リーダーや人事部長を経て、2023年3月に取締役執行役員および人事部長へ就任。DX担当も兼任し、現在に至る。 |
社外取締役は、木村稔(公認会計士・木村稔会計事務所代表)、小川順(京都大学大学院農学研究科教授)、荒木源德(モルガン・ルイス・アンド・バッキアス外国法事務弁護士事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アグリテクノ事業」の単一セグメント内で、防除技術、施肥灌水技術、バイオスティミュラントの各分野を展開しています。
■(1) 防除技術(農薬製品分野)
農作物に対して悪影響を与える病害虫から農作物を守る技術や雑草類を駆除する技術として、植物の医薬品と位置づける「農薬」を提供しています。殺虫剤、殺菌剤、除草剤などの研究開発・製造を行っています。
全国農業協同組合連合会(全農)をはじめとする商社やメーカー向けに農薬製品を販売し、収益を得ています。運営は同社および旭化学工業やインド、中国などの関連会社が担っています。
■(2) 施肥灌水技術(肥料製品・システム分野)
農作物を適正に生育させるための栄養分を与える技術や、農作業の省力化を図る技術を総称し、肥料や「養液土耕栽培システム」として施設園芸農家向けに提供しています。
全農や商系代理店を通じて肥料とシステムを販売するほか、直販サイトでの一般消費者向け販売や、海外市場への切り花の品質保持剤販売から収益を得ています。運営は同社や養液土耕栽培研究所、オランダのBlue Wave Holdingなどが行っています。
■(3) バイオスティミュラント分野
植物が本来持つ免疫力や機能を高め、耐寒性や耐暑性、病害虫耐性および成長促進を促す物質や技術を提供しています。植物成長調整剤や葉面散布液肥などを展開しています。
国内外の代理店等を通じて製品を販売し、収益を得ています。主要製品である「アトニック」を中心に、スペインのLIDA Plant Researchが開発した製品などもグローバルに展開しており、同社および各海外子会社が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は安定的に成長を続けており、227億円から320億円へと拡大しています。経常利益も概ね右肩上がりで推移しており、収益力の高さと堅調な事業拡大の傾向がうかがえます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 227億円 | 270億円 | 290億円 | 298億円 | 320億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 34億円 | 38億円 | 32億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 12.6% | 13.1% | 10.9% | 11.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 23億円 | 25億円 | 21億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の298億円から320億円へと約7%増加し、売上総利益も144億円から154億円へと順調に伸長しています。営業利益も31億円から35億円に拡大し、本業の収益性が向上していることが確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 298億円 | 320億円 |
| 売上総利益 | 144億円 | 154億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.5% | 48.1% |
| 営業利益 | 31億円 | 35億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 10.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が38億円(構成比32%)、研究開発費が27億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別に見ると、農薬分野は主力製品やグリーンプロダクツの販売が好調に推移して増収となりました。肥料・バイオスティミュラント分野も、猛暑対策の新製品や養液土耕栽培システムの普及などが寄与し、国内外ともに順調に売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 農薬 | 111億円 | 118億円 |
| 肥料・バイオスティミュラント | 185億円 | 200億円 |
| その他 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 298億円 | 320億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主にグリーンプロダクツやバイオスティミュラント、スマート農業への積極投資を支えています。投資活動によるキャッシュ・フローは、研究開発費の増加や海外市場での販売拡大に向けた活動に充当されています。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入等により、設備投資や長期運転資金の調達を行っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | 49億円 |
| 投資CF | -6億円 | -15億円 |
| 財務CF | -25億円 | -33億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「食糧増産技術(アグリテクノロジー)と真心で世界の人々に貢献します」という経営理念を掲げています。農薬や肥料、独自の栽培システムなどを開発・製造・販売する過程で、作物の増収に寄与する総合的な技術の開発と体系化に取り組み、増え続ける世界人口を支える食糧問題の解決を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「栽培の楽しさ・難しさを自ら体験し、世界に発信する」ことを企業文化として掲げています。すべての人々に「育てる喜び」「観る感動」「食べる幸せ」をSNSやイベントなどを通じて届けることを重視し、アグリテクノロジーの普及を通じて人や環境に優しい持続可能な農業への貢献に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年12月期を最終年度とする「新中期経営計画(2024-2026年)<さらなる挑戦への積極投資>」において、目標とする経営指標を設定しています。
* 連結営業利益率:12.0%
* 連結ROE:13.8%
* 2026年12月期 売上高:338億円
* 2026年12月期 営業利益:38億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は持続可能な農業に貢献すべく、イノベーションに向けた研究開発へ集中投資を行っています。具体的には、「人と環境にやさしいグリーンプロダクツ」「バイオスティミュラント事業」「施設園芸分野でのスマート農業への取り組み」「グローバル製品展開」の4つを重点領域として位置づけ、既存技術との組み合わせによる「儲かる農業」の具体化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営理念の実現に向けて社員一人ひとりの専門性を高め、互いを尊重し協力し合う組織づくりを進めています。社内外の研修や技術交流を通じて知見を広げ、持続可能な食料生産の未来を切り拓く人材を育成するとともに、誠実な対応とチームワークを大切にする企業文化を醸成しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.4歳 | 8.6年 | 6,999,380円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.6% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 86.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 33.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 農業市場の動向による影響
同社の主要製品である農薬や肥料の最終消費者は農業従事者であるため、農業市場の動向が経営成績に影響を及ぼします。国内における農業従事者の高齢化や後継者不足、農作物の販売価格の下落、さらに政府の農業政策の変更などによる市場環境の変化が懸念されます。
■(2) 法規制の強化・変更リスク
国内外での農薬や肥料の生産・販売は様々な法令の規制を受けています。今後の法令改正によって、既存製品の製造や販売、原料調達が制限される可能性や、海外大手企業の市場参入制限緩和による競争激化、販売価格の下落などが発生し、業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 固定資産および子会社株式の減損リスク
同社グループは事業拡大に向けて積極的に外部の経営資源を獲得しており、多額の固定資産を保有しています。景気変動や世界的災害などにより、今後の事業計画と乖離が生じて期待されるキャッシュ・フローが生み出されない場合、固定資産や子会社株式の減損処理が必要となる可能性があります。



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