エラン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エラン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エランは東京証券取引所プライム市場に上場し、病院や介護施設向けに衣類やタオル類の洗濯付きレンタルと日用品を組み合わせた「CSセット」を提供する介護医療関連事業を展開しています。業績面ではCSセットの導入施設数が順調に増加し、直近の連結決算において増収増益を達成するなど堅調に推移しています。


※本記事は、株式会社エランの有価証券報告書(第32期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

エラン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. エランってどんな会社?


エランは、入院・入所生活を手ぶらで送れるようにする「CSセット」を主力とする介護医療関連企業です。

(1) 会社概要


1995年に神奈川県で寝具販売業として設立され、2003年に介護医療関連事業を開始し、相模原支店でCSセットのサービスをスタートしました。2014年に東京証券取引所マザーズへ上場し、翌2015年に市場第一部へ変更しました。2024年にはエムスリーの公開買付により同社のグループに入りました。

現在の従業員数は連結で974名、単体で310名です。筆頭株主は事業会社の関連であるエムスリーで、第2位は創業者の櫻井英治氏、第3位は中島信弘氏となっています。

氏名 持株比率
エムスリー 55.00%
櫻井 英治 4.49%
中島 信弘 4.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長社長執行役員CEOは峯崎友宏氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は4名です。

氏名 役職 主な経歴
峯崎 友宏 代表取締役社長社長執行役員CEO 1999年アイ・エス・オーに入社し、2003年同社に入社。営業部長、取締役業務本部長、常務取締役運営管理本部長などを歴任し、2025年より現職。
石塚 明 取締役執行役員CSO経営戦略本部長 リアルワールド(現デジタルプラス)の執行役員CFOなどを経て、2019年同社に入社。総務人事本部長や経営戦略本部長を務め、2022年より現職。
上條 陽一 取締役執行役員CFO管理本部長 第一勧銀情報システムや監査法人トーマツを経て、2015年に同社に入社。経営管理部長や執行役員管理本部副本部長などを務め、2025年より現職。
松本 友紀子 取締役 サイバーエージェントなどを経て、2011年にエムスリーに入社。同社キャリアプラットフォームグループリーダーなどを歴任し、2025年より現職。
狩野 雄祐 取締役常勤監査等委員 小野測器などを経て、2003年に同社入社。経営企画部長や運営管理部長、執行役員事業開発本部長などを務め、2026年より現職。


社外取締役は、江守直美(元福井大学医学部付属病院副病院長)、愛川直秀(愛川法律事務所所長)、齋藤美帆(元ストラテジー・アドバイザーズ執行役員)、三浦太(元新日本監査法人シニアパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「介護医療関連事業」を展開しています。

(1) CSセット


病院に入院する患者や介護老人保健施設等に入所する方に対して、衣類やタオル類の洗濯サービス付きレンタルと日常生活用品の提供を組み合わせたサービスを提供しています。これにより、利用者やその家族は手ぶらで入院・入所し、洗濯や日用品補充の手間を省くことができます。

収益源は、利用者が入院・入所した日数に応じて支払う日額制の利用料金です。運営は同社およびエランサービスなどの子会社が行っています。サービスの導入に伴う病院・施設への業務委託手数料の支払いや、リネンサプライ業者への洗濯代金等の支払いも発生し、関係者間で相互にメリットを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間を通じて売上高は一貫して増加しており、316億円から554億円へと大きく成長しています。経常利益も概ね増加傾向にあり、直近の期では42億円に達しています。利益率は7〜9%台で安定して推移しており、堅調な事業拡大がうかがえます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 316億円 363億円 414億円 475億円 554億円
経常利益 28億円 34億円 37億円 35億円 42億円
利益率(%) 8.9% 9.4% 8.9% 7.5% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 21億円 25億円 24億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。一方で、物価高騰に伴う仕入価格の上昇などの影響により、売上総利益率はわずかに低下しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 475億円 554億円
売上総利益 107億円 119億円
売上総利益率(%) 22.6% 21.4%
営業利益 36億円 43億円
営業利益率(%) 7.5% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が28億円(構成比37%)、通信費が8億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


介護医療関連事業は、神戸支店を含めた全国の拠点から営業活動を展開し、新規契約施設が増加したことで導入施設数が拡大しました。この結果、売上高および利益ともに前年を上回る実績となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
介護医療関連事業 475億円 554億円 36億円 43億円 7.7%
連結(合計) 475億円 554億円 36億円 43億円 7.7%


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローの状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 45億円 43億円
投資CF -22億円 -35億円
財務CF -8億円 -8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「私達は、お客様に満足していただける最高の商品とサービスを追求し、情熱を持った行動を通じて、心豊かな生活環境の実現に貢献します」という経営理念を掲げています。この理念のもと、事業活動を通じて医療・ヘルスケア領域における社会の課題を解決していくことをミッションと位置づけています。

(2) 企業文化


同社は、より多くの人々、ひいては社会全体に笑顔があふれる状態を目指すことをビジョンとしています。このビジョンの実現に向けて、全活動を支える「ELAN Credo」を定義しています。従業員一人ひとりがこの価値観や行動指針を深く理解し、主体性を持って失敗を恐れずに挑戦する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高営業利益率および営業活動によるキャッシュ・フローを重要な客観的指標として重視しています。事業規模の拡大と徹底したコスト管理を行うことで、付加価値の高い商品やサービスの提供を図り、売上高営業利益率の向上と安定したキャッシュ・フローの確保に努めることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、CSセットの全国シェア拡大に注力するとともに、利用者や病院関係者との強固な関係を活かした新規ビジネスへの参入を推進します。また、エムスリーグループとのシナジーによる事業規模の拡大やIT化・DX化による生産性向上、ベトナムなどの新興国における積極的な海外展開を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員の成長なくして企業の成長はないと考え、人材を事業価値創出に不可欠なものと位置づけています。新卒採用を中心とした営業職の増員に加え、システムや法務などの専門人材の中途採用も推進しています。多様な人材が能力を最大限に発揮できるよう、柔軟な勤務制度の導入や障がい者の積極採用など環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.0歳 4.8年 5,317,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 63.6%
男女賃金差異(全労働者) 59.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 47.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(69.8%)、外国人社員数(9名)、研修参加率(48.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新規導入施設への導入計画が想定どおり進まないことによるリスク


営業エリアの開拓において、人員や物流面の問題、提携先との関係変化等が生じた場合、あるいは感染症の流行により営業活動の自粛を余儀なくされた場合、新規契約施設の獲得が進まず、同社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 売上債権の貸倒に関するリスク


CSセットの利用代金は原則として後払いであり、利用者の経済状態の悪化や死亡などにより未回収が発生するリスクがあります。債権回収体制の構築遅れや多額の不良債権の発生は、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 気候変動に関するリスク


気候変動に伴う猛暑や豪雨災害の増加、環境規制の強化は、サプライチェーンの維持に影響を及ぼす可能性があります。これらの環境問題への対応が困難な事態が発生した場合、同社の事業継続や業績に影響を与える懸念があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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