アトラグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アトラグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アトラグループは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、鍼灸接骨院の経営支援を行うA-COMS事業と玩具販売事業を展開しています。直近の業績では、売上高が39.3億円と減収になったものの、経常利益は1.5億円と大幅な増益を達成し、収益性の改善が進んでいます。同社の実態を有価証券報告書から読み解きます。


※本記事は、アトラグループの有価証券報告書(第21期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アトラグループってどんな会社?


A-COMS事業を軸に鍼灸接骨院のインフラ構築を推進し、玩具販売も展開する企業です。

(1) 会社概要


2005年に鍼灸接骨院の開業支援コンサルティング業として有限会社權左ヱ門を設立し、2006年にアトラへ商号変更しました。2014年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2016年に同市場第一部へ市場変更しています。2021年にはアトラグループへ商号変更し、ペリカンを子会社化して玩具販売事業を開始しました。

従業員数は連結で131名、単体で64名です。筆頭株主は事業会社であるみどり会で、第2位は創業者の久世博之氏、第3位は事業会社のサイエンスとなっています。

氏名 持株比率
みどり会 21.73%
久世博之 5.72%
サイエンス 4.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は久世博之氏が務めています。社外取締役比率は33.3%(9名中3名)です。

氏名 役職 主な経歴
久世博之 代表取締役会長兼社長兼A-COMS事業部担当兼社長室長 八幡屋整骨院を開業後、2005年にアトラ(現アトラグループ)を設立し代表取締役に就任。ペリカン取締役などを経て、2021年より現職。
田中克典 取締役経理財務部担当兼総務人事部長 JA大阪中河内を経て2005年にアトラ(現アトラグループ)に入社。アトラファイナンス代表取締役などを経て、2023年より現職。
片田徹 取締役開発企画部担当兼情報システム部担当 関西歯研などを経て2006年にアトラ(現アトラグループ)取締役就任。アトラファイナンス取締役などを経て、2024年より現職。
荒谷宗弘 取締役第一営業部担当兼第二営業部担当 さくら介護グループ取締役副社長などを経て2010年にアトラ(現アトラグループ)入社。執行役員などを経て、2025年より現職。
中村智広 取締役 ソニーやミスミを経て、クオンタムリープ・アジア代表取締役などに就任。クオンタムリープ代表取締役社長を経て、2026年より現職。
萩原一禎 取締役 三菱商事やソニーを経て、musica代表取締役社長などに就任。クオンタムリープのパートナー等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、髙田明夫(元大阪地方検察庁特別捜査部長)、岩田潤(ディキャピタル代表取締役)、奥村佳文(BTJ税理士法人パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「A-COMS事業」および「玩具販売事業」を展開しています。

A-COMS事業


同社グループは鍼灸接骨院の経営支援を目的に、機材や消耗品の販売、自費施術をテーマとしたセミナーの開催を行っています。また、基幹システム「A-COMS」を通じた療養費の請求代行や物販支援システムの提供に加え、フランチャイズチェーンである「ほねつぎ」や「ほねつぎデイサービス」を展開しています。

収益源として、加盟院などから加盟金、ロイヤリティ、システム利用料、代行手数料を受け取るほか、機材等の販売代金を受領します。運営は主にアトラグループが担うほか、アトラファイナンスやアトラケアなどの子会社が関連サービスや直営店舗を展開しています。

玩具販売事業


同社グループは、ペリカンという店舗ブランドを通じて、一般消費者向けに知育玩具や文具、雑貨などの販売を行っています。少子化やネット販売が拡大する環境下において、リアル店舗ならではのサービス拡充や売れ筋商品の確保を図り、子どもの健全な成長に貢献することを目指しています。

収益源は、店舗を訪れる一般の顧客から受け取る玩具や文具などの商品販売代金です。同事業の運営はアトラグループの子会社であるペリカンが担っており、鍼灸接骨院への経営支援で培ったリアル店舗に対する経営指導のノウハウを店舗運営に活かしています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は2023年12月期の47億円をピークに減少傾向にありますが、利益面は改善が進んでいます。特に当期は経常利益が1.5億円に拡大し、当期利益も黒字転換するなど、収益性の向上が顕著に表れています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 32億円 47億円 45億円 42億円 39億円
経常利益 -2億円 0.2億円 0.6億円 0.0億円 1.5億円
利益率(%) -7.1% 0.3% 1.4% 0.0% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 0.0億円 0.5億円 -0.4億円 2.6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少したものの、売上原価の削減が進んだことで売上総利益は微増となりました。さらに、販売費及び一般管理費を圧縮した効果により、営業利益が大幅に改善し、利益率も大きく向上しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 42億円 39億円
売上総利益 13億円 13億円
売上総利益率(%) 31.5% 34.3%
営業利益 0.1億円 1.4億円
営業利益率(%) 0.1% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が3.5億円(構成比29%)、地代家賃が1.8億円(同15%)を占めています。売上原価(26億円)については、機材等の商品仕入高や給料手当等が主な内訳となっています。

(3) セグメント収益


主力であるA-COMS事業は、アトラ請求サービスなどが伸長したものの、介護支援の落ち込みなどにより全体では減収となりましたが、利益は大きく成長しました。一方、不採算店舗の閉店を進めた玩具販売事業は赤字幅が縮小しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
A-COMS事業 24億円 24億円 0.4億円 1.6億円 6.9%
玩具販売事業 18億円 16億円 -0.4億円 -0.3億円 -1.6%
連結(合計) 42億円 39億円 0.1億円 1.4億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益や資産売却等によって得た資金で借入金の返済を進める改善局面にあることが読み取れます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2.0億円 2.8億円
投資CF -0.3億円 0.4億円
財務CF -2.6億円 -2.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界中の人を健康にしたい。」という企業理念を掲げています。鍼灸接骨院業界においてコンプライアンス経営を徹底し、業界の発展と柔道整復師や鍼灸師の社会的評価向上に貢献することを目指しています。また、玩具販売事業を通じて子どもの健全な成長にも貢献し、社会課題の解決を図っています。

(2) 企業文化


同社は、コンプライアンスを重視し、法令や規則の遵守を徹底する文化を持っています。「企業行動憲章」や「コンプライアンス規程」を制定し、リスク・コンプライアンス委員会による継続的な体制強化を図るなど、社会環境と安全性を重視する姿勢が社内に根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は現在を成長途上の段階と位置づけており、売上高と営業利益の拡大を最も重視する経営目標を掲げています。まずは事業規模の拡大に取り組み、それに伴う業績向上や企業体質の強化に努めることで、持続的な成長を実現するための基盤づくりを推し進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の重点施策として、A-COMSの機能追加による会員増加や、自費施術をテーマにしたセミナーでの集客強化に取り組みます。また、美容や健康分野へアプローチする「ナチュラル・リバース・エイジング(自然な若返り)」のプラットフォーム拡大を図ることで、医療分野等への事業領域拡張を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業拡大と恒常的な成長を支える最大の資産は「人材」であると位置づけています。優秀な人材を人種・国籍・性別・年齢を問わず幅広く確保し、社内研修の実施など教育制度の充実に努めています。また、子育て世代にも働きやすい環境を整備することで、人材の定着と資本効率の最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.4歳 8.4年 4,802,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ほねつぎチェーン運営上のリスク


ほねつぎチェーンにおいて療養費の不正請求や重大な施術事故が発生し、行政処分などを受けた場合、チェーンに対する信用が失墜し、同社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は指導を徹底し、不正防止の仕組み導入に努めています。

(2) ほねつぎデイサービス運営上のリスク


ほねつぎデイサービスにおいて、重大な過失による介護事故が発生し行政処分を受けた場合、事業に対する信用が失墜する可能性があります。同社はフランチャイジーに対する指導を徹底し、介護事故が起こらないよう未然防止に努めています。

(3) 外部環境の変化に対するリスク


鍼灸接骨院業界において療養費が減少傾向にあるほか、接骨院の開設要件が厳格化する方向にあります。今後、療養費のさらなる減少や開設要件の厳格化が進行した場合、同社の事業展開や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) システム運用に関わるリスク


A-COMSやHONEY-STYLEなどのシステムにおいて重大な障害が発生し、顧客に多大な影響を及ぼした場合、損害賠償請求の発生や信用の低下を招くリスクがあります。同社は日常的な連携や社内研修を通じてシステム運用の安定化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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