モバイルファクトリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モバイルファクトリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モバイルファクトリーは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、位置情報連動型ゲームを中心とするモバイルゲーム事業や着信メロディなどのコンテンツ事業を展開しています。直近の業績は主力タイトルが好調に推移し過去最高の売上高を更新して増収、経常利益も増益となりましたが、税金等調整額の影響で純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社モバイルファクトリーの有価証券報告書(第25期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. モバイルファクトリーってどんな会社?


位置情報連動型ゲームなどのモバイルゲーム事業と、着信メロディなどのコンテンツ事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2001年10月に有限会社モバイルファクトリーとして設立され、2003年に株式会社へ組織変更しました。2004年にコンテンツ事業に参入して着メロ等の配信を開始し、2011年に位置情報連動型ゲーム「駅奪取」をリリースしました。2015年にマザーズへ上場し、現在はスタンダード市場に上場しています。

現在の体制は、連結従業員数75名、単体従業員数75名で構成されています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は創業者の宮嶌裕二氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には個人株主の村上貴明氏が名を連ねており、創業者が高い持株比率を有して経営を牽引していることが窺えます。

氏名 持株比率
宮嶌 裕二 49.74%
THE BANK OF NEW YORK MELLON 140044(常任代理人 みずほ銀行) 2.65%
村上 貴明 2.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役は宮嶌裕二氏が務めており、社外取締役比率は83.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宮嶌 裕二 代表取締役 1995年ソフトバンク入社、1999年サイバーエージェント入社。2001年モバイルファクトリー設立、2003年代表取締役就任。ジーワンダッシュ代表取締役。


社外取締役は、成沢理恵(京都芸術大学教授)、山口周(元コーン・フェリー・ヘイグループシニア・クライアント・パートナー)、塩澤義介(元日本たばこ産業常勤監査役)、伊藤英佑(伊藤会計事務所代表)、行方一正(第一カッター興業取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モバイルゲーム事業」、「コンテンツ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) モバイルゲーム事業


位置情報を利用し、コレクション要素も兼ね備えた「ステーションメモリーズ!(駅メモ!)」などの位置情報連動型ゲームの開発および運営を行っています。通勤・通学、旅行などユーザーの移動そのものを楽しみに変えるゲーム体験を主に一般の個人ユーザー向けに提供しています。

ユーザーはサービスを基本無料で利用できますが、一部のアイテムや機能を有料サービスとして提供しており、これらアイテム課金などが主な収益源です。SNSプラットフォームやアプリマーケット等を通じて配信され、システムの開発や運営は主にモバイルファクトリーが行っています。

(2) コンテンツ事業


主にスマートフォン向けに「最新曲★全曲取り放題」や「レコチョクメロディ」などの着信メロディやスタンプ素材が取り放題となるコンテンツ配信サービスを提供しています。自社で直運営する自社モデルと他社名義で運営するOEMモデルを展開しています。

ユーザーに月額利用料を支払ってもらい、その範囲内で幅広いジャンルの着信メロディや着信音を提供するサブスクリプション型の有料課金収入が主な収益源です。着メロ音源の制作、サイトの開発および運営は主にモバイルファクトリーの社内で行われています。

(3) その他


位置情報共有SNSやメタバースプラットフォームの運営に関連するSuishow事業などで構成されています。なお、位置情報共有SNS「NauNau」についてはサービスの再開時期は現在未定となっています。

これら新領域におけるサービスの開発および運営は、連結子会社であるSuishowが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね右肩上がりの成長を継続しており、直近の期では過去最高となる34億円を記録しました。経常利益も着実に積み上がり、直近2期間は連続して30%以上の高い利益率を維持しています。一方、当期利益は直近で減益となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 29.0億円 31.4億円 33.7億円 33.2億円 34.3億円
経常利益 8.5億円 8.7億円 9.4億円 10.6億円 11.5億円
利益率(%) 29.5% 27.5% 27.9% 31.9% 33.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.9億円 5.5億円 -0.4億円 7.1億円 4.5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益と営業利益もそれぞれ前年を上回っています。売上総利益率は50%前後で推移しており、営業利益率も30%を超える高い水準を維持しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 33.2億円 34.3億円
売上総利益 16.3億円 17.6億円
売上総利益率(%) 49.2% 51.4%
営業利益 10.6億円 11.2億円
営業利益率(%) 31.9% 32.7%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が2.7億円(構成比41.6%)、従業員給与が0.9億円(同14.6%)を占めています。また、売上原価においては経費が12.3億円(構成比73.8%)、労務費が4.4億円(同26.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のモバイルゲーム事業は、積極的な広告投資による新規ユーザーの獲得や商材の多様化が奏功し、増収となっています。一方でコンテンツ事業は、課金会員数が緩やかに減少している影響により減収となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
モバイルゲーム事業 30.3億円 31.7億円
コンテンツ事業 2.9億円 2.5億円
その他 0.0億円 -
連結(合計) 33.2億円 34.3億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 6.6億円 8.6億円
投資CF -0.3億円 -16.2億円
財務CF -3.1億円 -8.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「わたしたちが創造するモノを通じて世界の人々をハッピーにすること」をミッションに掲げています。ステークホルダーと協働し、創造するモノやそのプロセスを通じてインターネット業界や地域社会へ貢献し、社会課題の解決と人々にハッピーを届けることを目指しています。

(2) 企業文化


「社員は財産である」「チャレンジし続ける」「スピード×クオリティ」「ありがとうで高収益を」という4つの行動バリューを定めています。また、求める人物像として「協調性」「主体性」「責任感」の3つの人材バリューを掲げ、これらを理解し実践できる人材の確保と育成を重視した組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標


成長性と収益性の拡大を追求し、企業価値を向上させることを経営目標としています。売上高の拡大に注力する一方でコスト削減を図り、利益体質の向上を目指しています。経営成果を測る客観的な指標として、「連結営業利益」および「EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却費+株式報酬費用)」を重視して事業を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


位置情報連動型ゲームを中心とする主軸事業において、広告投資を増加させユーザー基盤の拡大を図る成長戦略を掲げています。ユーザーの移動を通じて新たな経済圏を形成し、地域経済の活性化に貢献することを目指します。
・他社IPとのタイアップ等による新規ユーザー獲得
・AI技術活用による開発期間短縮と生産性向上
・M&Aを視野に入れた協業による経済圏の拡大

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


フルリモートワークを基本とする独自の柔軟な働き方「モバワーク」を導入し、遠方在住の優秀な人材の確保を進めています。また、従業員の自律的な学びを支援するため、業務時間内に自習や社内勉強会を実施できる「シェアナレ!」制度の運用や、書籍購入・外部セミナー参加費用の会社負担など、能力開発とスキル向上に積極的に投資しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 34.7歳 7.5年 6,120,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 37.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 99.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 104.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 107.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 位置情報連動型ゲームの特性と市場環境


主力の位置情報連動型ゲームはユーザーの移動を伴うため、自然災害や感染症流行による移動自粛が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、通信インフラの高度化やAI等の新技術への対応が遅れた場合、事業機会の損失につながる懸念があります。対策として、移動を伴わなくても遊べる機能の拡充や、積極的なAIツールの導入検証を進めています。

(2) プラットフォームや特定サービスへの依存


提供サービスの多くをアプリマーケット等のプラットフォーム経由で配信しており、プラットフォーム運営会社の事業戦略や手数料率の変更が業績に影響を与える可能性があります。また、特定タイトルの売上比率が高く、同タイトルの業績悪化が全体に波及するリスクがあります。これに対し、提供チャネルの多様化や新規タイトルの開発で収益基盤の分散化を図っています。

(3) 情報セキュリティと個人情報管理


事業の性質上、多数のユーザーの個人情報を扱っており、サイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化する中で情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用失墜を招く恐れがあります。また、生成AIの利用により意図せず機密情報が流出するリスクも存在します。多層的な防御施策や脆弱性診断の徹底、法人向けAIプランの利用などにより管理体制を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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