ヘリオス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヘリオス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヘリオスは東京証券取引所グロース市場に上場し、体性幹細胞やiPS細胞技術を活用した再生医療等製品の研究・開発・製造を主力事業としています。直近の業績はマイルストン収入の減少等により減収となったものの、研究開発費や一般管理費のコントロール等により各種損失幅は縮小傾向にあります。


※本記事は、株式会社ヘリオスの有価証券報告書(第15期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ヘリオスってどんな会社?


体性幹細胞やiPS細胞を活用した再生医療等製品の研究開発を推進するバイオテクノロジー企業です。

(1) 会社概要


2011年2月、現代表である鍵本忠尚氏らの出資により日本網膜研究所(現ヘリオス)を設立し、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植による加齢黄斑変性治療法の開発を開始しました。2013年9月に現社名へ変更し、2015年6月に東証マザーズに上場を果たしました。2024年4月には米国企業の資産を買収しています。

従業員数は連結で75名、単体で66名です。筆頭株主は創業者の鍵本忠尚氏で、第2位は金融機関のモルガン・スタンレーMUFG証券、第3位も金融機関の三菱UFJ銀行です。

氏名 持株比率
鍵本 忠尚 24.05%
MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) 5.24%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC)(常任代理人 三菱UFJ銀行) 3.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表執行役社長CEOは鍵本忠尚氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鍵本 忠尚 取締役 代表執行役社長CEO アキュメン設立し社長就任。2011年同社を設立し、2012年社長就任。サイレジェン社長等を経て、2018年より現職。
リチャード・キンケイド 取締役 執行役CFO ゴールドマン・サックス証券等を経て、2018年同社社外取締役に就任。2019年より現職。


社外取締役は、樫井正剛(元アステラス製薬執行役員)、余語裕子(元フィデリティ投信執行役員)、グレン・ゴームリー(元第一三共専務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」を展開しています。

(1) 体性幹細胞再生医薬品分野


生体のさまざまな組織にある「体性幹細胞」を利用し、現在有効な治療法のない疾患等に対する新たな治療法を開発しています。主に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や脳梗塞急性期、外傷に対する治療薬として「HLCM051」の開発を進めており、グローバルでの開発権を含めた関連資産を所有しています。

収益モデルは、製品の販売や開発パートナーからのマイルストン収入等が想定されます。現在は研究開発段階にあり、治験結果をもとに規制当局との協議を進めながら事業化を目指しています。運営は主に同社および米国子会社のHealios NAが行っています。

(2) iPSC再生医薬品分野


iPS細胞を特定の機能を持った細胞に変化させ、人体と近似の機能を持つ細胞を移植することで機能回復を目指す製品を開発しています。遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のNK細胞を用いた固形がん向けのがん免疫細胞療法などの研究を進めています。

収益源として、iPS細胞株や医療材料、次世代iPS細胞(UDC)の提供による売上、提携先からの契約一時金やマイルストン収入を見込んでいます。運営は同社が主体となり、がん免疫細胞療法の研究開発業務は子会社のAkatsuki Therapeuticsが主導しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、ライセンス契約等による一時金収入の有無により売上収益が大きく変動しています。研究開発への先行投資が続いているため各期とも損失を計上していますが、固定費の削減や合理化施策の実施などにより、直近の税引前損失および当期損失のマイナス幅は縮小傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 0.4億円 0.9億円 1億円 6億円 1億円
税引前利益 -45億円 -53億円 -36億円 -41億円 -21億円
利益率(%) -10882.9% -5922.2% -2996.7% -725.2% -2044.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -49億円 -52億円 -38億円 -42億円 -22億円

(2) 損益計算書


前期に計上したライセンス契約に基づく一時金収入の影響がなくなったこと等により、当期は大幅な減収となりました。各種研究開発費や一般管理費の計上が継続しており、営業損失の状態が続いています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 6億円 1億円
売上総利益 4億円 -0.5億円
売上総利益率(%) 79.1% -45.2%
営業利益 -28億円 -33億円
営業利益率(%) -507.7% -3211.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が15億円(構成比65%)、その他が8億円(同35%)を占めています。売上原価の主な内訳は、その他が4億円(構成比55%)、労務費が3億円(同45%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は医薬品事業の単一セグメントであるため、事業全体としての収益状況を示しています。研究開発の進捗に伴う先行投資が継続しており、マイルストン収入の有無によって売上高が大きく変動する傾向にあります。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
医薬品事業 6億円 1億円 -28億円 -33億円 -3211.5%
連結(合計) 6億円 1億円 -28億円 -33億円 -3211.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ヘリオス社のキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の状況を示しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業の根幹をなす研究開発活動やその他の日常的な運営活動から得られる資金の増減を表します。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた設備投資や研究開発への支出、あるいは資産の売却などによる資金の動きを示します。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済といった、外部からの資金の借り入れや返済、株式の発行や自己株式の取得などによる資金の増減を表します。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -18億円 -32億円
投資CF -14億円 -11億円
財務CF 0.8億円 63億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「『生きる』を増やす。爆発的に。」というミッションを掲げています。また、「iPSC再生医薬品を活用し、世界中の患者に治癒と希望を届ける。世界中に承認販売まで自社で行う体制を構築し、全ての人からRespectを受けるバイオ企業を確立する」というビジョンに沿って、研究開発から製造・販売までを実現する体制の確立を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、再生医療という新しい産業を牽引し、グローバルリーディング企業を目指して成長を続けるため、人材を最も重要な資源と考えています。高い専門性や多様な文化・背景・価値観を有する人材が互いの能力を最大限発揮しあうことを促進し、切迫感と積極的なチャレンジを生み出す組織風土の醸成を重視したダイバーシティマネジメントを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、開発中の製品が上市されるまでは研究開発費を中心に先行投資が続く想定です。そのため、具体的な数値目標は設定せず、新たな提携や多面的な資金源の確保による財務の安定化と、早期の製品上市に向けた開発計画の着実な進捗に目標を置いて事業を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


日本国内で承認の目途が立つ開発パイプラインの事業化や経営基盤強化を目指す短期戦略と、世界でデファクトスタンダードの地位を築く革新的基盤技術を確立する長期戦略を推し進めています。短期戦略で得られたノウハウや収益を長期戦略へ戦略的に投資し、持続的な成長を果たす方針です。既存パイプラインの開発推進、アライアンス体制の強化、資金調達・管理の最適化、人材の獲得を優先課題として取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


新しい産業を創生し成長を続けるため、ポテンシャルの高い人材を世界中から確保し、活躍できる場を提供することを重視しています。成果に応じて報い、挑戦する従業員に能力開発の機会を提供するタレントマネジメントや、多様な人材が能力を最大限発揮しあえるダイバーシティマネジメントを通じて、競争に勝ち抜く人材の育成と獲得を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 46.4歳 6.1年 9,115,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 開発期間の長期化と追加資金調達


体性幹細胞およびiPSC再生医薬品分野において、製品が実際に上市されるまでは収益が上がらず、多額の研究開発費により損失を計上し続ける見込みです。想定外の費用発生や資金調達の難航が生じた場合、経営成績および事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新と競合の出現


再生医療分野は世界的に注目を集めており、新しい知識や技術が発見されやすい領域です。競合他社が同社の知的財産権を上回る新技術を開発して先行上市した場合や、同社が環境変化へ迅速に対応できない場合、今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 再生医療等製品に関する法規制の変更


薬機法など再生医療等製品に関する法規制は、技術革新や予期せぬ事態への対応のため継続的に見直される可能性があります。法規制の追加等により、想定以上の品質管理や追加の開発費用、多数の試験が求められた場合、開発スケジュールの遅延や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。