ツバキ・ナカシマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツバキ・ナカシマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するツバキ・ナカシマは、精密ボールや精密ローラー、送風機の製造販売をグローバルに展開する企業です。直近の業績は、欧州の自動車産業低迷やセラミック事業の価格競争激化、構造改革に伴う減損損失などの影響により、減収および大幅な営業赤字となる厳しい事業環境にあります。


※本記事は、ツバキ・ナカシマの有価証券報告書(第20期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ツバキ・ナカシマってどんな会社?


同社グループは、精密ボールや精密ローラーなどの各種産業用精密部品をグローバルに製造販売しています。

(1) 会社概要


1934年に創業し、1996年の合併を経て現在の社名となりました。2007年のMEBOによる非上場化で構造改革を進め、2015年に再上場しました。2017年の米企業事業部買収などグローバル展開を加速する一方、2025年にはリニア事業を譲渡し事業の選択と集中を進めています。

従業員数は連結2,447名、単体432名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も海外ファンドの常任代理人である銀行、第3位も信託銀行となっており、国内外の機関投資家が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.82%
BBH CO FOR ARCUS JAPAN VALUE FUND(常任代理人 三菱UFJ銀行) 3.82%
日本カストディ銀行(信託口) 3.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表執行役社長 CEOは松山達氏が務めています。社外取締役の比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
松山達 取締役 代表執行役 CEO 2001年ボストンコンサルティング入社。デュポン、KKR等を経て2024年同社代表執行役社長CEO。2025年より現職。
上田洋一 取締役 執行役 CFO 2001年アビーム入社。ヤンセンファーマ等で財務要職を歴任。2024年同社執行役副社長CFOを経て2025年より現職。
アンナ・ドルギーフ 取締役 執行役 CHRO 1996年NASA入局。BAT等でHR統括を歴任。レイノルズ・アメリカンCHROを経て2024年同社執行役CHRO。2025年より現職。


社外取締役は、淡輪敬三(元ウイリス・タワーズワトソン社長・指名委員長)、山本昇(元BNP Paribas本部長・報酬委員長)、加藤忠智(元マッキンゼーマネジャー)、加藤ゆう里(元ヤンセンファーマCFO・監査委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プレシジョン・コンポーネントビジネス」および「ブロア・リアルエステイトビジネス」を展開しています。

プレシジョン・コンポーネントビジネス


自動車や工作機械のベアリングに使用される精密ボールや精密ローラーを主に提供しています。環境に配慮したセラミックボールは風力発電やEV、半導体製造装置などの成長分野で重要な役割を担っており、ボールペンのペン先など幅広い顧客ニーズに応える高品質な製品を製造しています。

収益源は、これら精密部品の販売代金です。グローバルな製造ネットワークを活かし、国内外のベアリングメーカー等の顧客から収益を得ています。運営は主にツバキ・ナカシマのほか、米国や欧州、アジアなどに展開する各海外連結子会社が行っています。

ブロア・リアルエステイトビジネス


製鉄所や火力発電所、原子力発電所、セメントプラントなどの主要部に使用される中・大型の遠心送風機等を製造販売しています。各施設の用途に応じた高効率、高圧力、大風量、低騒音型の製品を提供し、産業インフラを支えています。

収益源は、これら中・大型送風機等の販売およびメンテナンス代金、ならびに不動産の賃貸収入です。事業の規模はグループ全体の約1.3%にとどまりますが、安定した需要に対応しています。運営は主にツバキ・ナカシマが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上収益が700億円前後で推移していますが、利益面は変動が激しくなっています。2024年12月期は黒字を確保したものの、2025年12月期は欧州の事業環境悪化や競争激化、さらに構造改革に伴う多額の減損損失や棚卸資産評価損を計上したことで、大幅な最終赤字に転落しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 679億円 790億円 771億円 759億円 698億円
税引前利益 50億円 -96億円 43億円 17億円 -240億円
利益率(%) 7.4% -12.2% 5.5% 2.3% -34.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 -91億円 -13億円 9億円 -272億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で減少していますが、売上総利益は増加し売上総利益率も改善しています。一方で、販売費及び一般管理費の増加や、多額の減損損失などの影響により、営業利益は大幅な赤字へと悪化する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 759億円 698億円
売上総利益 20億円 46億円
売上総利益率(%) 2.6% 6.5%
営業利益 8億円 -223億円
営業利益率(%) 1.1% -32.0%


販売費及び一般管理費のうち、グループ共通費精算額が14億円(構成比12%)、のれん償却額が11億円(同10%)、業務委託費が11億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のプレシジョン・コンポーネントビジネスは、欧州での自動車産業低迷やセラミックボールの価格競争激化により減収となり、減損損失や棚卸資産評価損の計上で大幅なセグメント赤字となりました。一方、ブロア・リアルエステイトビジネスは増収を確保しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
プレシジョン・コンポーネントビジネス 752億円 689億円 6億円 -225億円 -32.6%
ブロア・リアルエステイトビジネス 8億円 9億円 2億円 2億円 18.1%
調整額 -1億円 0億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 760億円 698億円 8億円 -223億円 -32.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ツバキ・ナカシマのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期損失などにより資金が減少したものの、減損損失や棚卸資産の減少などが主な要因となり、資金が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出があったものの、事業売却や有形固定資産の売却による収入が主な要因となり、資金が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いなどにより、資金が減少しました。これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べて増加しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 49億円 105億円
投資CF -38億円 11億円
財務CF -19億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「精密加工の力で世界を動かす」ことをパーパス(存在意義)として掲げています。また、「回転/転がり」における最高の品質、効率、イノベーションを追求し、お客様にとって最も信頼される存在であり続けることをビジョン(目指す姿)として設定し、日々の生活や社会に大きく貢献する企業を目指しています。

(2) 企業文化


全社員が目指す働き方・考え方として、「安全に」「誠実に」「成果主義」「ダイナミックに」「成長」の5つのバリュー(価値観)を共有しています。何よりも安全と誠実さを重視し、課題解決に対する責任感や、情熱を持って行動する姿勢、そして会社やチーム、個人の成長に力を尽くす文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年12月期から2029年12月期までの5か年を対象とした中期経営計画を策定しています。初年度となる2025年12月期は基盤づくりの年と位置づけ、抜本的な事業・コスト構造の見直しを実施しました。最終年度には以下の目標達成を目指しています。

・売上収益 870億円
・営業利益 100億円

(4) 成長戦略と重点施策


目標達成に向けて、2026年以降はグローバルフットプリント(生産拠点)の最適化および一層のコスト削減を推進します。さらに、成長セグメントに経営資源を集中的に投下することで収益性の改善を図り、キャッシュを創出する強固な体質の構築と、持続的な企業価値の向上を目指して戦略を実行していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本を中長期的な企業価値向上の重要な基盤と位置付けています。パーパスやバリューをグローバル組織全体で共有し、組織の一体感醸成や従業員の主体的関与を強化しています。また、多様性・公平性・包摂性を重要な経営課題とし、多様な背景を持つ人材が能力を十分に発揮できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.0歳 16.9年 5,162,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.5%
男女賃金差異(正規雇用) 84.8%
男女賃金差異(パート・有期) 52.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経営幹部層の女性比率(37.5%)、部長級・上級専門職層の女性比率(19.2%)、従業員推奨度(7.03)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 有利子負債に関するリスク

同社は有利子負債の元利金返済のため、追加借入や資産売却等による資金調達が必要となる場合があります。金融市場の状況や資産売却先の有無により資金調達が左右されるほか、金利上昇局面では利払い負担が増加し、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 財務制限条項に抵触するリスク

同社グループは複数のローン契約を締結しており、これらには一定の財務制限条項(コベナンツ)が設定されています。業績悪化などによりこれらの条項に抵触した場合、金融機関から期限前返済等を求められる可能性があり、資金繰りや財務状態に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 原材料の価格上昇と調達リスク

一部の材料や部品は特殊性から調達先が限られ、代替が難しい場合があります。供給遅延や取引終了、生産能力不足が発生した場合、材料不足や調達コスト増が生じるリスクがあります。また、想定を超える原材料価格の上昇を販売価格やコストダウンで吸収できない場合、利益率が悪化する可能性があります。

(4) 海外事業の展開に伴うリスク

同社グループは海外に多数の製造拠点を有しています。海外事業では、投下資本の計画通りの回収が難しくなることや、法規制・税制の変更、政治・経済の変動、インフラ障害、為替変動などのカントリーリスクが存在し、これらが操業やコスト、需要に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。