窪田製薬ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

窪田製薬ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

窪田製薬ホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場する眼科医療ソリューション企業です。近視や網膜疾患向けの医薬品、ウェアラブル近視デバイスなどの医療機器の研究開発を手掛けています。直近の業績は市場調査などに注力したことで減収となりましたが、研究開発費の減少等により赤字幅は縮小傾向にあります。


※本記事は、窪田製薬ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 窪田製薬ホールディングスってどんな会社?


同社は、眼疾患の視力維持・回復を目指し、革新的な医薬品や医療機器の研究開発を行う眼科医療ベンチャーです。

(1) 会社概要


2002年に米国で設立されたアキュセラ・インクをルーツとします。2014年に東証マザーズに上場し、2015年に日本法人を設立しました。2016年に三角合併を経て現在の窪田製薬ホールディングスへ社名を変更し、2022年に東証グロース市場へ移行するとともにウェアラブル近視デバイスの販売を開始しました。

現在の従業員数は連結で8名、単体で7名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者である窪田良氏で、第2位は同氏の資産管理会社である窪田アセットマネージメント、第3位は金融機関であるSBI証券となっており、創業者と関連会社で高い持株比率を占めています。

氏名 持株比率
窪田良 35.51%
窪田アセットマネージメント 12.38%
SBI証券 1.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性0名の計4名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長、社長兼最高経営責任者は窪田良氏が務めています。社外取締役比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
窪田良 代表取締役会長、社長兼最高経営責任者 2002年にアキュセラ・インクを設立し社長に就任。2014年に慶應義塾大学医学部客員教授。2015年より同社代表取締役会長、社長兼最高経営責任者。クボタビジョン・ジャパン代表取締役会長等を兼任。


社外取締役は、中川祐輝(クリアデラ代表取締役)、藤原正明(凜研究所代表取締役)、澁谷太志(渋谷キャピタルグループ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療用医薬品・医療機器事業及びこれらに関連する事業」を展開しています。

(1) 医療機器事業


網膜に人工的な光刺激を与えて近視の進行抑制を目指すウェアラブル近視デバイス「Kubota Glass」や、在宅で網膜の状態を測定できる遠隔眼科医療モニタリングデバイス「eyeMO」などの研究開発および販売を行っています。

ウェアラブル近視デバイスは提携販売店等を通じて一般消費者や医療機関向けに販売され、製品代金等から収益を得ています。モニタリング機器はレンタル事業等による収益モデルです。事業運営は同社や子会社のクボタビジョン・ジャパンなどが行っています。

(2) 医薬品事業(低分子化合物)


眼科領域における革新的な治療薬として、独自の視覚サイクルモジュレーション技術に基づく低分子化合物「エミクススタト塩酸塩」の開発を進めています。主にスターガルト病や糖尿病網膜症を適応症とした治療薬としての実用化を目指しています。

現在は研究開発段階ならびに提携パートナー候補との協議段階であり、将来的な製造販売やコンパッショネート・ユース制度を通じたライセンス提供によるロイヤルティ収入等を目指しています。研究開発は同社および米国子会社のクボタビジョン・インクなどを中心に推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上収益は数千万円規模で推移しており、依然として研究開発フェーズにあるため本格的な収益化には至っていません。一方で、税引前利益および当期利益は一貫してマイナスとなっていますが、研究開発費や一般管理費の抑制により赤字幅は年々縮小する傾向を示しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 - 0.1億円 0.4億円 0.3億円 0.2億円
税引前利益 -26.2億円 -20.2億円 -14.9億円 -13.3億円 -6.8億円
利益率(%) - -24423.4% -3734.6% -4902.2% -3169.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -26.2億円 -20.2億円 -14.9億円 -13.3億円 -6.8億円

(2) 損益計算書


売上収益は市場調査や販売チャネルの検討に注力した影響で減少しました。一方で、研究開発費や販売費および一般管理費などの事業費用が大幅に減少したことにより、営業利益のマイナス幅は前期と比較して大きく縮小しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 0.3億円 0.2億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -13.5億円 -8.9億円
営業利益率(%) -4948.7% -4194.3%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が2.4億円(構成比43.4%)、給与手当が1.0億円(同18.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントで事業を展開しています。売上収益は海外市場における販売チャネルの検討や市場調査等に注力したため減収となりました。一方で、研究開発費等のコスト削減を進めた結果、営業利益の赤字幅は改善しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
医療用医薬品・医療機器関連事業 0.3億円 0.2億円 -13.5億円 -8.9億円 -4194.3%
連結(合計) 0.3億円 0.2億円 -13.5億円 -8.9億円 -4194.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業は赤字ですが将来の成長に向けて借入や増資等で資金調達を行い投資を継続する「勝負型」の傾向を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -12.0億円 -5.8億円
投資CF -0.4億円 -
財務CF -0.9億円 10.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-42.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


世界中で眼疾患に悩む皆さまの視力維持と回復に貢献することを目的としています。具体的には、「最先端のサイエンスにより有効な治療法がない眼疾患に医療革新をもたらすこと」「社会に貢献する企業であり続けること」「イノベーションを生み出す職場環境を構築し、働く社員の生活向上を目指すこと」の3つを指針として掲げています。

(2) 企業文化


多様な人材が活躍できる環境の整備を進めており、従業員の能力向上を目的とした研修やスキル開発の支援を重視しています。また、言語や文化、価値観の異なる人々と円滑なコミュニケーションを図れるグローバル人材のニーズに応えるべく、多様なバックグラウンドを持つ人材が最大限能力を発揮できるオープンな職場環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


眼疾患に苦しむ人々の負担を軽減するための医薬品および医療機器を開発し、上市(販売)することを中長期的な経営目標としています。現時点では定量的な売上や利益の数値目標は公表していませんが、優れた市場潜在能力を有するパイプラインの選定や、限られた時間と資源で市場価値を生み出せる製品候補の開発に注力しています。

(4) 成長戦略と重点施策


ウェアラブル近視デバイス「Kubota Glass」について、日本市場でのマーケティング強化に加え、中国や台湾等のアジア圏を中心としたグローバル展開と販路拡大を推進しています。同時に製造プロセスの見直しによる原価低減を図ります。また、医薬品「エミクススタト塩酸塩」の早期収益化に向けた提携活動や、外部とのパートナーシップによるパイプラインの拡充にも積極的に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


成長戦略の実現には、高度な専門知識、技能、経験を持つ多様な人材の確保と育成が不可欠であると位置付けています。ワークライフバランスを実現しやすいフレックスタイム制度の導入や、インセンティブとしてのストックオプション制度の整備を進めるほか、OJTを通じた実践的なスキル習得の機会を提供し、働きやすい職場環境の構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 47.6歳 1.8年 5,350,329円


※平均年間給与は、支給対象期間1年未満の者については在籍期間の給与を基に見込みで算出されています。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品・医療機器の研究開発における不確実性


眼科領域向けの医薬品や医療機器の開発プロセスにおいて、所轄官庁の定める有効性や安全性の基準を満たさないと判断された場合、開発の中止や追加試験を余儀なくされる可能性があります。これにより、投下した研究開発費の回収不能や製品の上市遅延が生じ、企業のパイプライン価値や事業継続に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 臨床試験時の予期せぬ副作用と製造物責任


臨床試験において予期せぬ副作用が確認された場合、試験の中止や開発計画の見直しが必要となる可能性があります。また、上市後に副作用が判明した場合には、販売中止や回収措置を迫られるほか、製造物責任による金銭的・法的な損害を負い、同社の社会的信用が大きく低下するリスクが存在します。

(3) 独自の知的財産権の保護と侵害リスク


同社の企業価値は、特許や営業秘密などの独自の知的財産権に依存しています。出願した特許が取得できない、あるいは第三者から知的財産権を侵害された場合、期待される収益が失われる恐れがあります。逆に同社製品が他社の権利を侵害した場合は、製造販売の差し止めや多額の損害賠償を請求されるリスクがあります。

(4) 新製品の商業化と販売体制構築の遅延


開発中の製品が製造販売承認を取得し販売可能となった際、同社は新たな販売・マーケティング体制を構築する必要があります。しかし、この体制構築に想定以上の時間を要した場合や、適切な外部パートナーとの提携が遅れた場合には、製品の市場浸透や収益化が遅れ、同社の業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。