トレードワークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレードワークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレードワークスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、証券フロントシステムを中心とした金融ITソリューションの提供を主力事業としています。直近の業績では、インターネット取引システムなどのストック型収入とスポット型収入がともに伸び、増収増益を達成しており、安定した収益基盤と高い成長性を示しています。


※本記事は、株式会社トレードワークスの有価証券報告書(第28期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トレードワークスってどんな会社?


証券会社向けのインターネット取引システムなど、高度な金融ITソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


1999年に設立され、証券システム開発を開始しました。2007年にはFXシステム事業へ参入し、2010年にセキュリティ診断事業を開始しています。2017年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場を果たし、現在はスタンダード市場へ移行しています。直近では2025年に同業他社の買収等を積極化しています。

従業員数は連結で270名、単体で154名体制で事業を運営しています。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の浅見勝弘氏で、第2位は資本業務提携先であるSBIホールディングス、第3位は同じく資本業務提携先の松井証券となっています。

氏名 持株比率
浅見 勝弘 28.76%
SBIホールディングス 5.12%
松井証券 4.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は齋藤正勝氏が務めています。取締役6名のうち社外取締役は2名であり、社外取締役比率は約33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
齋藤 正勝 代表取締役社長 元カブドットコム証券(現三菱UFJeスマート証券)代表取締役社長。ミンカブ・ジ・インフォノイド取締役副社長を経て2024年7月より現職。
浅見 勝弘 代表取締役会長 アイネス、日本ストラタスコンピュータを経て、1999年に同社を設立し取締役に就任。代表取締役社長を経て2024年7月より現職。
徳島 直哉 取締役 全商コンピュータサービスを経て2002年に同社入社。システム統括本部長、事業本部長等を歴任し、2026年1月より現職。
加藤 雅也 取締役 2006年に同社入社。金融ソリューション第二部長、デジタルコマース事業部長、事業本部副部長等を歴任し、2026年1月より現職。


社外取締役は、水上公晴(元SMBC日興証券)、森田宗男(元金融庁総合政策局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、システム開発事業及びこれらの付帯業務の単一セグメントで事業を展開しています。

金融ITソリューション


同社グループの主力事業であり、証券会社や金融情報システムサービス事業者向けにインターネット取引システムの企画、開発、保守、運用等を提供しています。また、次世代金融向けにWeb3関連ソリューションや生成AIを活用した業務支援ソリューションの展開も進めており、金融領域のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。

収益モデルとしては、従来からのパッケージ製品販売や請負開発によるフロー型収入に加え、導入後の保守・運用やクラウド形式で機能を提供するSaaS型サービスによるストック型収入を主力としています。事業の運営は主にトレードワークスが行っており、証券インターネット取引システム「Trade Agent」などを展開しています。

セキュリティサービス・その他


セキュリティサービス事業では、顧客のWebやネットワーク環境に対する脆弱性診断から、多要素認証基盤の提供による不正アクセス防止までを一気通貫で提供しています。また、非金融セクター向けにIT技術者を提供するIT人材サービスや、投資助言・代理業としてオンライン投資助言サービスなども展開し事業領域を広げています。

収益は、セキュリティ診断やコンサルティング費用、IT技術者の派遣・受託開発に関する業務報酬、投資助言サービスの利用料などで構成されています。運営はトレードワークスが行うほか、ペガサス・システムがIT人材サービスを、トレードアドバイザリーテクノロジーズが投資助言サービスを担当するなど、グループ各社が連携しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の連結業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。一方で利益面は、積極的な戦略投資や開発遅延等の影響により一時的に赤字を計上する期間もありましたが、直近ではプロジェクト管理精度の向上や原価構造の改善が進み、黒字転換を果たして収益性の高い事業構造へと移行しつつあります。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 33億円 38億円 46億円 51億円
経常利益 3億円 0.4億円 -0.5億円 3億円
利益率(%) 10.0% 1.1% -1.2% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -0.5億円 -2億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益が大きく増加しており、売上総利益率も改善傾向にあります。これは収益性の高いストック型ビジネスへの転換や付加価値生産性の向上が寄与したものです。営業利益についても、前期間の赤字から当期間は大幅な黒字へと改善し、利益創出力の強化が明確に表れています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 46億円 51億円
売上総利益 8億円 12億円
売上総利益率(%) 17.1% 24.7%
営業利益 -0.6億円 3億円
営業利益率(%) -1.2% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2億円(構成比25.1%)、役員報酬が1億円(同15.0%)を占めています。売上原価については、外注加工費が23億円(構成比59.9%)、労務費が14億円(同36.7%)となっています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

トレードワークスは、第三者割当増資による資本増強で自己資本比率を高めています。

同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加があったものの、利益計上や棚卸資産の減少などにより増加しました。投資活動では、無形固定資産や投資有価証券の取得により、資金流出が大きくなっています。財務活動では、株式発行や長期借入れにより、大幅な資金収入を得ています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 3億円 3億円
投資CF -4億円 -9億円
財務CF 3億円 8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「エンドユーザーの視点にたって、高い信頼性と安全性を備えたシステム構築を目指し、金融資本市場の発展と豊かな社会の実現に貢献する」という経営の基本理念を掲げています。また、創業以来の経営の基本方針として「情報通信技術で社会に貢献及びお客様の繁栄に寄与し、最も信頼されるパートナー」であることを目指し、IT業界のリーディングカンパニーとしての役割を果たそうとしています。

(2) 企業文化


同社は、従業員をはじめとしたステークホルダーの「彩りある未来」の実現を目指し、社会的存在意義をサステナブル推進方針と位置付けています。また、年齢や性別、国籍等にとらわれない多様な人材が活躍できる環境づくりを重視し、従業員一人ひとりが働きがいを持って成長できるよう、個人の成長とチームでの協働を掛け合わせて人的資本の価値を最大限に引き出す文化の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は収益性の改善を伴う成長を重視し、事業の質を高めながら安定的な利益創出力の強化に取り組むことを目標としています。特に、売上総利益率および営業利益率の改善を重要な経営指標と位置付けています。2026年12月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の客観的な指標を掲げています。

* 売上高:57億円
* 営業利益:4.8億円
* 営業利益率:8.4%
* 親会社株主に帰属する当期純利益:3億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、AI等の自動化技術を活用して短いリードタイムでも高品質・高安定性を両立できる体制の確立を目指しています。また、東海東京フィナンシャル・ホールディングス等の大手総合証券との資本業務提携を通じて顧客基盤の強化と具体的な案件創出を推進します。海外展開においても、米国Alpaca社との提携を起点とし、グローバル市場で通用するプラットフォーム基盤の構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は多様なバックグラウンドを持つ人材に対し、専門性に応じた様々なトレーニングプログラムを提供して人材育成を推進しています。「働きがいと個の成長を醸成する人事制度の導入」「多様なチームワークを機能させる環境整備」「個人のキャリア形成と組織力向上を支える教育機会の提供」を柱とし、全従業員が活躍できる人事制度への進化に向けた人材投資を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.3歳 6.5年 6,350,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 63.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 105.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 戦略投資に関するリスク


同社グループは「開発・フロー型」から「利用型・ストック型」へのビジネスモデル転換に向け、データセンター増強などの戦略的投資を継続しています。早期の高収益体制構築を目指していますが、期待した利用者を獲得できず想定収益が見込めない場合や、標準化が進展せず想定以上のコストが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) システム及びサービスの不具合等のリスク


事業拡大に伴うデータ量増大に対処するため、クラウド基盤の活用や設備の二重化などセキュリティ対策に努めています。しかし、インターネット回線のトラブル、未知のウイルス、自然災害等の予測困難な要因でシステムに不具合が生じ、顧客に機会損失を発生させた場合、高額な損害賠償や信用力の低下を招くリスクがあります。

(3) 証券業界の動向と法的規制のリスク


同社グループは証券業界を中心とした事業展開を行っており、証券業界の動向は景気や株式市況の影響を大きく受けます。市況変動により証券会社の業績が悪化しIT設備投資が減退した場合や、金融機関のシステムを制限するような新たな法令・規制が実施された場合には、受注の減少などを通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。