メドレー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メドレー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メドレーは東証プライム市場に上場するIT企業です。医療ヘルスケア領域の人材不足を解決する人材プラットフォーム事業「ジョブメドレー」や、医療機関向けのクラウド診療支援システム等を提供する医療プラットフォーム事業を展開しています。直近の業績は、売上高が順調に拡大し増収を達成した一方で、減益となっています。


※本記事は、メドレーの有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メドレーってどんな会社?


医療ヘルスケア領域における人材採用システムやクラウド診療支援システムなどを展開するIT企業です。

(1) 会社概要


2009年に設立され、同年人材採用システム「ジョブメドレー」の提供を開始しました。2015年に医療情報提供サービス、2016年にオンライン診療システム等の提供を開始して事業を拡大し、2019年に株式上場を果たしました。近年はM&Aを積極的に行い、医療ヘルスケア領域でのサービスを拡充しています。

現在の同社グループは、連結従業員数1,815名、単体1,511名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は代表取締役社長の瀧口浩平氏であり、第2位は大株主の豊田剛一郎氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。経営陣が上位株主として名を連ねており、強力なリーダーシップを発揮しています。

氏名 持株比率
瀧口浩平 19.42%
豊田剛一郎 9.05%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは瀧口浩平氏が務めています。取締役7名のうち4名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
瀧口浩平 代表取締役社長CEO 2002年Gemeinschaft,Inc.設立。2009年同社設立、代表取締役社長CEO就任。現在に至る。
河原亮 取締役上級執行役員 CFOファイナンス統括部長 2007年JPモルガン証券入社。2016年同社取締役CFO就任。2023年上級執行役員ファイナンス統括部長就任。現在に至る。
竹内真 取締役 2001年富士ソフトABC入社。ビズリーチ取締役CTO等を経て、2025年同社上級執行役員、同年取締役就任。現在に至る。


社外取締役は、瓜生英敏(元ビザスク取締役グローバルCSO)、木村新司(Gunosy代表取締役会長CEO)、桜庭理奈(元GEヘルスケア・ジャパン執行役員)、松本恭攝(ラクスル取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、人材プラットフォーム事業、医療プラットフォーム事業、新規開発サービスの3つの報告セグメントを展開しています。

人材プラットフォーム事業


医療ヘルスケア領域における人材不足の課題を解決するため、事業所向けの人材採用システム「ジョブメドレー」や「グッピー求人」、オンライン研修システム「ジョブメドレーアカデミー」などを運営・提供しています。幅広い職種を対象とした求人情報を取り扱い、ダイレクトリクルーティング機能も備えています。

収益源は、求職者が入職した時点で費用が発生する成果報酬(ジョブメドレー)や、求人情報の閲覧に応じた課金(グッピー求人)などです。事業所インタビュー記事などのオプションプランも提供しています。これらのサービス運営は、主に同社が主体となって行っています。

医療プラットフォーム事業


医療機関の業務効率改善や患者の医療アクセス向上を目指し、クラウド診療支援システム「CLINICS」や調剤薬局向けシステム「MEDIXS」、歯科向けシステム「DENTIS」、電子カルテ「MALL」などを提供しています。また、患者向け医療情報サービスも展開しています。

収益源は、主に医療機関から受け取るクラウドシステムの初期導入費用および継続的な月額利用料などのシステム利用料です。また、診療報酬債権等のファクタリングサービスによる手数料収入も得ています。運営は、同社およびメドレーフィナンシャルサービスなどのグループ会社が行っています。

新規開発サービス


中長期的な成長に向けた新規事業として、介護施設を探す方やその家族に向けた介護施設紹介サービス「みんかい」などを提供しています。施設の基本情報や費用、医療ケア受け入れ体制などの詳細な情報を提供し、施設選びや入居に関する問い合わせのサポートを行っています。

収益源は、入居者がサービスを通じて介護施設に入居した際に施設側から受け取る成果報酬です。また、米国向けの現地法人を通じて人材採用システム「Jobley」の事業拡大に向けた投資なども進めています。これらの事業運営は、同社などが主体となって取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、事業規模が順調に拡大していることが伺えます。一方、経常利益は2024年12月期まで増加傾向にありましたが、2025年12月期は成長投資やM&Aに伴う一時的な費用等の影響もあり大幅な減益となり、当期利益は赤字に転じています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 109億円 142億円 205億円 293億円 368億円
経常利益 7億円 15億円 38億円 41億円 22億円
利益率(%) 6.8% 10.8% 18.3% 13.9% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 10億円 26億円 28億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から大きく伸長し、それに伴い売上総利益も増加しています。一方で、事業拡大や成長投資に伴うコストの増加により、営業利益は前期比で微減となり、営業利益率も低下する結果となりました。将来のさらなる成長に向けた積極的な投資フェーズにあることが読み取れます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 293億円 368億円
売上総利益 189億円 232億円
売上総利益率(%) 64.6% 63.0%
営業利益 23億円 22億円
営業利益率(%) 7.9% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が84億円(構成比40%)、業務委託料が19億円(同9%)、広告宣伝費が13億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高を見ると、主力の人材プラットフォーム事業が顧客事業所数および会員数の順調な増加により大きく売上を伸ばしています。また、医療プラットフォーム事業もクラウドシステム等の導入が進み増収に貢献しており、全セグメントにおいて堅調な売上成長を実現しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
人材プラットフォーム事業 211億円 263億円
医療プラットフォーム事業 76億円 94億円
新規開発サービス 6億円 11億円
連結(合計) 293億円 368億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだキャッシュを成長投資や借入金の返済・株主還元等に充てている「健全型」の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 24億円 35億円
投資CF -107億円 -71億円
財務CF 119億円 -68億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「医療ヘルスケアの未来をつくる」というミッションを掲げています。医療技術が進歩する中で、テクノロジー活用の遅れなどの課題を解決し、万人が技術の恩恵を受けられる状況を目指しています。インターネットテクノロジーによって課題を解決していくことが、結果的に患者と医療従事者の双方にとって「納得できる医療」の実現につながると考えています。

(2) 企業文化


同社グループは長期展望に向けて、困難なことを成し遂げられる企業になるために必要不可欠な行動原則として「Our Essentials」を定めています。これを採用選考や人事評価など様々な場面での判断基準として活用し、中長期の人材育成や多様な価値観を反映した組織風土の醸成につなげています。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期フリーキャッシュ・フローの最大化を重視しており、その源泉となる売上高および売上高総利益を大きくするフェーズにあると考えています。新中期目標として、以下の数値を掲げ、早期達成に挑戦しています。

* 2029年12月期の売上高:1,000億円
* 2029年12月期のEBITDA:200億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、売上高を「顧客事業所数」と「ARPU(顧客事業所当たりの売上額)」に分解し、「顧客数の最大化」と「ARPUの継続改善」に取り組んでいます。継続的な顧客獲得に加え、サービス利用率の向上やプロダクトラインナップの強化に積極的な投資を行い、M&Aや事業連携も活用して収益力を強化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「長期的な成果のための組織づくり」と「多様な人材の採用と活躍の推進」を経営課題として重要視しています。優秀な人材を確保し定着させるため、競争力のある報酬水準の設定や株式価値と連動したインセンティブ設計を行うとともに、育児や介護と両立できる制度の整備など、一人ひとりの強みを活かせる社内環境の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 33.8歳 3.6年 5,629,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.4%
男性育児休業取得率 95.8%
男女賃金差異(全労働者) 60.0%
男女賃金差異(正規雇用) 67.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連市場の技術革新に関するリスク


AI等の技術革新や新たな規制の導入により、インターネット関連市場が大きな変革を迫られた際、適切に対応できなかった場合は、提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。同社グループでは、エンジニアを中心とした優秀な人材の確保と市場動向の情報収集に努め、影響を最小限に抑えるよう対応しています。

(2) 医療ヘルスケア市場の動向や政策転換に関するリスク


収益の多くを依存する医療ヘルスケア市場において、成長の停滞や縮小、政策転換によるデジタル活用の動向変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社グループは、サービスラインナップの充実や米国市場などグローバル展開によるリスク分散を進めるとともに、政策動向に関する情報収集体制を強化しています。

(3) 同業他社との競争激化に関するリスク


医療ヘルスケア領域のインターネットサービス市場には競合企業が多く存在し、他の有力企業による新規参入等で競争が激化した場合は、マーケティング費用の増加や顧客単価の低下を招く可能性があります。これに対し、顧客ニーズに合ったサービスの拡充とオペレーションの効率化を追求し、競争力の維持・強化に取り組んでいます。

(4) 人材採用システムにおける不正行為に関するリスク


人材プラットフォーム事業において、採用の事実を隠蔽するなどの不正行為や報告漏れが増加し適時に捕捉できなかった場合、成果報酬の売上高が減少し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社グループは、利用規約での禁止や違約金請求等の厳正な措置を講じるとともに、採用プロセスのシステム化を通じて正確に状況を把握する体制構築に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。