富士山マガジンサービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士山マガジンサービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士山マガジンサービスは東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場し、雑誌定期購読サイトの運営など雑誌販売支援事業を主力とする企業です。学習塾を運営するEdTech事業にも進出しています。直近の業績は売上高が増加したものの、投資や各種費用の増加により経常利益は減益となっています。


※本記事は、富士山マガジンサービスの有価証券報告書(第24期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富士山マガジンサービスってどんな会社?


同社グループは、雑誌定期購読サイトの運営およびEdTech事業を展開しています。

(1) 会社概要


2002年7月に設立され、同年12月に雑誌定期購読サイトをリリースして事業を開始しました。2007年にはデジタル雑誌販売を開始し、2015年に上場を果たしました。2018年にデジタル雑誌取次事業を連結化し、2024年からはM&Aを通じて学習塾を運営するEdTech事業にも進出しています。

従業員数は連結で111名、単体で87名体制です。大株主の状況は、筆頭株主が創業者の西野伸一郎氏で、第2位が共同設立者の神谷アントニオ氏です。第3位には事業提携先である図書館流通センターが名を連ねており、経営陣と事業パートナーが上位を占める安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
西野伸一郎 26.58%
神谷アントニオ 12.18%
図書館流通センター 10.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長CEOは西野伸一郎氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西野伸一郎 代表取締役会長兼社長CEO 1988年日本電信電話入社。Amazon.com Japanジェネラルマネージャー等を経て、2002年7月同社設立、代表取締役社長就任。2026年2月より現職。
神谷アントニオ 取締役COO兼社長室長 1994年KamiyaConsulting設立。2002年同社設立に参画しCTOに就任。米国子会社代表等を経て、2026年2月より現職。
佐藤鉄平 取締役CFO 2000年エヌ・アイ・エフベンチャーズ入社。楽天等を経て2013年9月同社入社、社長室長。2025年1月より現職。


社外取締役は、高橋誉則(カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役社長兼CEO)、松浦道生(アナザーチーム代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「雑誌販売支援事業」および「EdTech事業」を展開しています。

(1) 雑誌販売支援事業


雑誌の定期購読サイトを通じ、紙媒体およびデジタル雑誌の受注から配送までをワンストップで提供しています。一般個人のほか、美容室や図書館などの法人向けにも大量購入や定期購読サービスを展開し、読者と出版社を繋ぐプラットフォームとして機能しています。

収益は、購読者からの代金を回収し、出版社との契約に基づく手数料を受け取るコミッション収益や、配送などの請負収益が中心です。運営は同社のほか、デジタル雑誌の取次を行うmagaportやECサイト支援を行うイデアなどの子会社群が担っています。

(2) EdTech事業


オンライン学習塾や実店舗での学習塾事業を展開し、難関大学や医学部への進学者を育成しています。都市部への通塾が難しい生徒向けのオンライン指導や、専門的な指導に特化した学習サービスを提供し、新たな顧客層の開拓を進めています。

収益は、学習塾の受講生から受け取る授業料などのサービス利用料が中心です。運営は、しょうわ出版をはじめ、Create Education Onlineやクリエイト研究会などの子会社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は50億円台後半で概ね安定して推移していますが、当期は新規事業等への参入により増収となりました。一方で、事業拡大に伴う投資や各種費用の増加が影響し、経常利益および利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 59.3億円 59.7億円 57.7億円 56.2億円 58.1億円
経常利益 5.2億円 4.4億円 3.6億円 3.0億円 1.7億円
利益率(%) 8.8% 7.4% 6.2% 5.3% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.1億円 2.8億円 2.2億円 1.9億円 0.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加したものの、相対的に利益率の低いデジタル雑誌関連の売上構成比が上昇したことで売上総利益率は低下しています。また、先行投資やM&A関連費用の増加により、営業利益も減少しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 56.2億円 58.1億円
売上総利益 16.7億円 15.7億円
売上総利益率(%) 29.8% 27.1%
営業利益 3.1億円 1.6億円
営業利益率(%) 5.5% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.2億円(構成比30%)、支払手数料が2.4億円(同17%)、決済手数料が2.2億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の雑誌販売支援事業は、デジタル雑誌の読み放題サービス向け取次が好調に推移し、増収を牽引しました。新規参入したEdTech事業も、M&Aによる学習塾の連結子会社化が通年で寄与したことにより売上規模が拡大しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
雑誌販売支援事業 55.7億円 56.5億円
EdTech事業 0.5億円 1.6億円
連結(合計) 56.2億円 58.1億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、既存事業で生み出される営業キャッシュ・フローを主な財源とし、システム開発投資やアライアンス、M&Aなどを通じて非連続的な成長を目指しています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益や減価償却費、未収入金の減少などにより資金が増加しました。投資活動では、有形・無形固定資産の取得や子会社株式の取得などにより資金が使用されました。財務活動では、配当金の支払いと短期借入金の返済により資金が使用されました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2.8億円 4.2億円
投資CF -1.6億円 -4.8億円
財務CF -0.3億円 -1.6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「求めている読者に求めている雑誌を提供する」という企業理念を掲げています。書店数の減少で出版社が購読者を獲得する機会が減る中、独自のWEBサイトを通じて読者と出版社を繋ぐ「雑誌出版業界における流通プラットフォーマー」となることを基本方針とし、日本の出版文化と読書文化の発展を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「興味が生きがいになる世の中に」をミッションとして掲げ、個人の趣味や関心に寄り添うサービスの提供を重視しています。また、環境変化の激しいインターネット市場において、各グループ会社が自律的な意思決定を行うことでスピード感のある経営を実現しつつ、理念やカルチャーを共有して一体感を持って事業に取り組む組織風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


経営目標として、取扱高、売上高および営業利益の持続的な成長率を重視しています。また、これらの財務数値を支える先行指標として、取扱高の伸び率や同社グループが提供するサービスの総登録会員数を主要なKPI(重要業績評価指標)に据え、定期購読という購読スタイルの普及を通じて業界ナンバーワンの事業者になることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存の雑誌販売支援事業を収益基盤としつつ、デジタル領域での成長を推進します。具体的には、デジタル雑誌の取次強化や出版社向けWEBメディア構築支援に注力し、定期購読者のデータを活用したEC事業(マガコマース)や広告配信事業を展開します。さらに、雑誌市場への依存リスクを軽減するため、EdTech事業など新規市場の開拓も並行して進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は性別や年齢に関わらず機会の平等を確保し、能力に基づき評価するジョブ型登用を行っています。フレックスタイム制やリモートワークによりワークライフバランスを重視するほか、従業員同士で称賛を送り合う文化を育成しています。また、メンター制度を用いたOJTや、直属の上司を通さずに異動希望を出せる制度など、個人のキャリア実現を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.1歳 9.1年 5,379,884円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出版業界の縮小と物流環境の悪化


書店や書籍購買者の減少、雑誌の休刊といった出版業界全体の市場縮小は、同社の取扱雑誌数の減少に直結するリスクがあります。さらに、Eコマース拡大による配送費の値上げや物流網のひっ迫などの環境悪化が、利益率の圧迫やサービス品質の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の業務委託先および検索エンジンへの依存


雑誌の配送や商品保管など、各種オペレーションの大半を特定の外部企業であるニューブック等に委託しているため、委託先との取引継続が困難になった場合、サービス提供に支障が生じる恐れがあります。また、新規顧客獲得の多くを主要な検索エンジンに依存しており、検索アルゴリズムの変更等により集客力が低下するリスクを抱えています。

(3) 情報セキュリティとシステム障害


同社はサービス運営において多数の個人情報を保有しており、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用の失墜を招く恐れがあります。実際に過去には外部からの攻撃によるサイト停止を経験しており、システムの安定稼働やセキュリティ対策の不備が事業運営に直接的な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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