船場 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

船場 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

船場は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、商業施設やオフィスなどの企画から設計、施工までを手掛ける商環境創造事業を展開する企業です。2025年12月期の業績は、売上高が328億円と前期比で増収となり、経常利益も23億円へと拡大し、堅調な増収増益を達成しました。新しい空間価値の提供で成長を続けています。


※本記事は、株式会社船場の有価証券報告書(第65期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 船場ってどんな会社?


商業施設やオフィス等の調査、企画、デザイン、設計、施工までをトータルに手掛ける商環境創造企業です。

(1) 会社概要


1962年2月に東京で船場ウインドとして設立され、1968年に現在の船場へ商号変更しました。1980年代からアジア展開を開始し、台湾やシンガポールなどに子会社を設立しています。2016年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌年には第一部銘柄に指定されました。現在はグローバルに空間創造事業を展開しています。

現在の従業員数はグループ全体で554名、単体で420名です。筆頭株主はリヤ興産で、第2位は取締役会長の栗山浩一氏、第3位は船場従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
リヤ興産 41.09%
栗山浩一 7.91%
船場従業員持株会 4.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小田切潤氏が務めています。社外取締役比率は60.0%(3/5)です。

氏名 役職 主な経歴
小田切潤 代表取締役社長 丸紅やアクセンチュア、オンワードホールディングス等を経て、2024年に同社副社長執行役員に就任。2025年より現職。
秋山弘明 取締役常務執行役員 1989年に同社入社。経営企画室長や執行役員などを歴任し、2022年に取締役に就任。2025年より現職。


社外取締役は、甲斐太氏(元NEC Latin America CFO)、松尾美香氏(元AIGジャパン・ホールディングス取締役)、清水一身氏(元セプテーニ・ホールディングス取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「商環境創造事業」を展開しています。

(1) 専門店

同社は、物販専門店、飲食店、サービス専門店などの商空間における調査・分析、企画・コンサルティング、デザイン・設計、施工を手掛けています。店舗のブランド価値を高め、集客や販売促進に貢献する空間デザインを提供しています。

収益は、顧客である専門店の運営企業から得られる企画・設計・施工の対価で構成されています。国内外での事業運営は、船場および装備、台湾船場室内装修などの海外子会社が連携して行っています。

(2) 大型店・複合商業施設

百貨店、量販店、商業ビル、ショッピングセンターなどの大型商業施設を対象とした空間創造を行っています。地域社会に密着した大規模な空間開発において、企画から施工までの総合的なプロジェクトマネジメントを提供します。

収益源は、大型施設を開発・運営するディベロッパーや流通業の企業からのプロジェクト受注による対価です。イオングループなどの主要顧客と連携し、船場が主体となって施設の魅力向上に向けたサービスを提供しています。

(3) オフィス・余暇施設等

商業施設で培ったノウハウを活かし、オフィス、ショールーム、ホテル、教育施設などの空間づくりに注力しています。多様化する働き方や余暇の過ごし方に合わせ、デジタル技術を活用した付加価値の高い空間提案を行っています。

顧客となる一般企業やホテル運営会社、教育機関等から企画・設計・施工の費用を受領する収益モデルです。船場および各関連子会社が主体となり、人や環境に配慮したエシカルデザインを取り入れた空間構築を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績は、売上高が193億円から328億円へと順調に拡大を続けています。経常利益も5億円から23億円へと大幅な成長を遂げており、利益率も2.4%から7.2%へと着実に改善しています。空間投資の需要回復を背景に、持続的な成長軌道に乗っています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 193億円 228億円 249億円 290億円 328億円
経常利益 5億円 7億円 14億円 20億円 23億円
利益率(%) 2.4% 3.2% 5.5% 6.9% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 5億円 10億円 15億円 15億円

(2) 損益計算書


直近2年間の売上高は290億円から328億円へと増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率も6.6%から7.0%へと上昇しており、売上規模の拡大と高付加価値なサービス提供による収益性の向上が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 290億円 328億円
売上総利益 58億円 61億円
売上総利益率(%) 19.9% 18.5%
営業利益 19億円 23億円
営業利益率(%) 6.6% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が5億円(同13%)を占めています。売上原価については、外注費が151億円(構成比67%)、材料費が43億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


分野別の売上動向を見ると、オフィス・余暇施設等分野が大きく伸長しており、全体の成長を牽引しています。専門店分野も堅調に推移している一方で、大型店・複合商業施設分野は前年からやや減少する結果となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
専門店 89億円 105億円
大型店・複合商業施設 131億円 120億円
オフィス・余暇施設等 70億円 103億円
連結(合計) 290億円 328億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業のCFは「事業検討型(事業拡大に伴う売上債権の増加や仕入債務の減少等による運転資金の増加)」の傾向を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.9%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 35億円 -21億円
投資CF - 0.3億円
財務CF -5億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「SUCCESS PARTNER」を企業理念に掲げています。クライアントの成功を支援するだけでなく、コロナ禍を経た新しい時代を生きるためのミッションとして「未来にやさしい空間を」を制定しました。社員一人ひとりがこの指針のもと、同社にしかできない新しい魅力や価値を提供する仕事に誇りを持ち取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、人への配慮や思いやりの姿勢を地域や自然環境にまで広げるエシカルデザインの考え方を重視しています。「Good Ethical Company(気のあうエシカルな仲間たち)」をビジョンとして掲げ、資源循環を前提としたサーキュラーエコノミーの実現を目指し、持続可能な社会づくりにグループ一丸となって挑戦する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年12月期から2027年12月期までの3年間を対象とする「中期経営計画2027」を策定しています。この計画では「Create More Fun and More Fans!(私たちの発想がビジネスを楽しくする!そして熱狂的なファンを増やそう!!)」をスローガンとし、エシカルとデジタルを基軸に顧客や社会に対する提供価値の高度化と持続的な成長の実現を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の見通しとして幅広い空間における投資の堅調推移が見込まれる中、企業ブランディングやサステナビリティに関心を持つ顧客層の獲得を図ります。中期経営計画において、以下の5点を重点テーマとして定めています。
・未来を創る人材の育成と獲得
・“Good Ethical Company”のファンベース構築
・サービス領域の拡大と提供価値の向上
・持続的成長を支えるサプライチェーン
・グローバル市場の深耕

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社にとって顧客へのサービスを創造する源泉は人材であり、経営の根幹と位置づけています。ビジネスにおける課題発見と解決能力を持った創造性人材の育成と獲得に注力しており、新卒の学部不問採用や多様なバックグラウンドを持つキャリア採用を推進しています。また、多様なキャリアパスが描ける人事制度や研修プログラムへの投資を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.7歳 14.4年 7,613,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.9%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 33.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断推奨期間内受診率(98%)、年次有給休暇取得率(53%)、中途採用比率(74.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の投資計画の変動

同社の事業は流通・小売業界を中心とする受注事業であり、顧客の投資動向に大きな影響を受けます。Eコマースの普及などで実店舗の環境が厳しさを増す中、顧客の短期的な投資計画の変更に迅速に対応しきれない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制の遵守

事業運営において建設業法や建築基準法など多様な法的規制の適用を受けています。コンプライアンスを重視した経営を行っていますが、法令の改廃や新たな規制の導入、万が一法令に抵触する事態が生じた場合、業務遂行に支障が生じる可能性があります。

(3) 品質管理と安全衛生

制作物に関する品質上の欠陥や、施工現場での事故などが発生した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。また、廃棄物の不適切な処理が委託業者によって行われた場合にも信用リスクが生じます。

(4) 優秀な人材の確保と育成

役職員の創造性が同社の競争力の源泉です。採用や教育制度を通じて優秀な人材の確保・育成に努めていますが、事業拡大に対して十分な人材が確保できない場合や、多数の人材流出が発生した場合には、成長力や競争力が低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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