※本記事は、株式会社エル・ティー・エスの有価証券報告書(第24期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エル・ティー・エスってどんな会社?
プロフェッショナルサービスとIT業界向けプラットフォーム事業を展開し、企業の変革を支援する企業です。
■(1) 会社概要
2002年に設立され、企業変革を支援するプロフェッショナルサービス事業を開始しました。2014年にはIT業界向けプラットフォーム「アサインナビ」の提供を開始し、2017年に東証マザーズへ上場を果たしました。近年では2023年に日比谷コンピュータシステムなどを子会社化し、事業基盤を拡大しています。
同社グループは連結で1,003名、単体で456名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の樺島弘明氏で、第2位は事業会社のクレスコ、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 樺島弘明 | 13.31% |
| クレスコ | 6.81% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は樺島弘明氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 樺島弘明 | 代表取締役社長執行役員 | 1998年エヌエヌ生命保険入社。ラーニング・テクノロジー・コンサルティング等を経て2002年同社設立、取締役に就任。同年代表取締役社長となり、2026年1月より現職。 |
| 李成一 | 取締役副社長執行役員 | 1998年アクセンチュア入社。2002年同社設立に伴い取締役に就任。2005年取締役副社長を経て、2025年4月より現職。日比谷コンピュータシステム等の取締役も兼務。 |
| 亀本悠 | 取締役副社長執行役員 | 2009年フィンチジャパン入社。2011年同社に入社し、ビジネス開発等の部長を歴任。2019年取締役に就任し、戦略コンサルティング等の本部長を経て2026年1月より現職。 |
| 上野亮祐 | 取締役副社長執行役員 | 2008年同社入社。ビジネスコンサルティング各部の部長や執行役員を経て、2020年取締役に就任。専務執行役員などを歴任し、2026年1月より現職。 |
社外取締役は、武村文雄(元日本アイ・ビー・エム・サービス専務取締役)、高橋直樹(元AIGジャパン・ホールディングス取締役常務執行役員)、川添晶子(公認会計士川添晶子事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プロフェッショナルサービス事業」および「プラットフォーム事業」を展開しています。
■プロフェッショナルサービス事業
同社グループは、企業の変革を支援するため、戦略構築からIT導入、ビジネスプロセスの改善と実行支援までをワンストップで提供しています。事業は「Business Process & Technology」「Strategy & Innovation」「Social & Public」の3領域に分かれています。
収益は、顧客の課題や変革テーマに応じたコンサルティングやシステム開発等の役務提供を完了した時点で、顧客から対価を受け取るモデルです。運営は同社や、日比谷コンピュータシステム、ワクトなどの連結子会社が共同で行っています。
■プラットフォーム事業
IT人材とITプロジェクトに取り組む顧客企業を直接つなぐ「アサインナビ」や、フリーコンサルタントのマッチングを行う「プロフェッショナルハブ」等のサービスを提供しています。IT業界の多重下請け構造の改善や人材不足の解消を目指しています。
収益は、プラットフォーム利用やイベント参加に応じた会費のほか、役務提供契約に基づくマッチング収益や研修参加費を顧客から受け取ります。運営は主に連結子会社のエル・ティー・エス リンクが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は継続して拡大しており、74億円から171億円へと大きく成長しています。経常利益も一時的な踊り場はあったものの、全体としては増加傾向にあり、6億円から13億円へと伸長しています。積極的な採用やM&Aを通じた事業規模の拡大が業績を牽引しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 74億円 | 96億円 | 122億円 | 166億円 | 171億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 5億円 | 7億円 | 11億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 5.1% | 6.1% | 6.4% | 7.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 2億円 | 3億円 | 4億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で堅調に推移しており、増収を達成しています。売上総利益や営業利益も同様に増加しており、安定した利益成長が見られます。人材投資や外注費の増加を吸収しつつ、収益性を確保して規模の拡大を続けています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 166億円 | 171億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.6% | 35.6% |
| 営業利益 | 11億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 6.7% | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が23億円(構成比48%)、役員報酬が2億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
プロフェッショナルサービス事業は、DX関連の旺盛なニーズを背景にコンサルティング案件が堅調に推移し、増収を達成しました。一方、プラットフォーム事業は「プロフェッショナルハブ」の稼働人員の伸び悩みなどにより、減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| プロフェッショナルサービス事業 | 149億円 | 156億円 |
| プラットフォーム事業 | 17億円 | 15億円 |
| 連結(合計) | 166億円 | 171億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的である「末期型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | -3億円 |
| 投資CF | 21億円 | -1億円 |
| 財務CF | -14億円 | -16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.3%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「可能性を解き放つ~人の持っている可能性を信じ、自由で活き活きとした人間社会を実現する~」というミッション(Mission)を掲げています。また、ビジョン(Vision)として「世界を拡げるプロフェッショナルカンパニー」を目指し、社会の持続的発展に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、ありたい姿を示すバリュー(Value)として、「プロフェッショナルとしてあり続ける」「協働を加速させる」「自身の人生を彩っていく」というステークホルダー視点の価値観を定めています。また、行動規範として「Change(変える・変わる)」「Learn(学び続ける)」など7つの指針を掲げ、理念経営を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、収益性を維持しながらの規模拡大を目指し、事業の成長性を示す「売上高成長率」とともに「営業利益成長率」を重要な経営指標に位置付けています。2025年12月期から2027年12月期を「2nd Growth Plan」期間とし、以下の数値目標を掲げて経営を推進しています。
* 営業利益年平均成長率20%超
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を総合的に支援し、「デジタル時代のベストパートナー」を目指しています。「2nd Growth Plan」期間では、サービス競争力と従業員エンゲージメントの向上、顧客関係の強化を通じて収益性の回復を図ります。また、周辺領域や海外事業の探索、M&Aの積極的な活用による非連続的な成長も推進し、次なる飛躍の土台整備を進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、適切な水準でサービスを提供する質の高い人材を最も重要な経営資源と位置付けています。「自律」「自由」「信頼」などの人事理念を根幹に据え、積極的な採用活動を継続するとともに、多様な経験を積めるキャリアパスや階層別・テーマ別研修等の学びの支援を提供しています。また、健康経営やワークスタイル変革を通じて、人材の定着と育成を強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 34.8歳 | 4.9年 | 6,711,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.7% |
| 男性育児休業取得率 | 69.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 67.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 34.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変化と競合
国内外の経済情勢や景気動向の悪化により企業のIT投資マインドが低下した場合、新規顧客開拓や既存顧客からの受注減少につながる恐れがあります。また、大手コンサルティング会社やSIer、他社のクラウドソーシングサービス等が同社の提供領域において競合となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の取引先への依存
同社の売上高は、特定の取引先への依存度が10%に近い水準となっており高くなっています。営業力の強化や新規顧客の獲得により依存度の緩和に努めていますが、取引先の経営方針の変更等により契約が短期間で終了したり規模が縮小されたりした場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 優秀な人材と外注先の確保
コンサルティング業界における人材獲得競争が激化する中、優秀な人材の採用・育成が計画通りに進まない場合や、人材の社外流出、採用コストの高騰が生じた場合、サービスの品質低下を招く恐れがあります。また、適切な外部協力会社をタイムリーに確保できず外注コストが高騰した場合も、事業展開が阻害される可能性があります。
■(4) プロジェクト管理とシステムトラブル
請負案件において、予期せぬトラブルやスケジュール変更により工数が大幅に増加し、不採算案件が発生するリスクがあります。また、プラットフォーム事業においては、インターネット経由でのサービス提供に伴い、大規模なアクセス集中や不正アクセス等によるシステム障害が発生した場合、サービス利用者からの信頼を損なう恐れがあります。



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