和心 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

和心 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(グロース)に上場する和心は、日本文化を感じるオリジナル商品を製造販売するインバウンドMD事業と、サウナ付き貸別荘などを運営するその他事業を展開しています。近年はインバウンド需要の回復により来店客数が増加して増収となっており、利益面でも継続的な黒字を計上して増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社和心の有価証券報告書(第23期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 和心ってどんな会社?


和心は、日本文化をテーマにした商品展開と宿泊施設の運営を手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1997年に個人事業として創業し、シルバーアクセサリーブランドを立ち上げました。2003年に和心を設立して法人化し、2005年には主力となるかんざしブランド「かんざし屋wargo」を発足しました。2018年にはマザーズ(現グロース)市場への上場を果たしています。近年は事業の多角化を進めており、2020年に子会社マイグレを設立して不動産賃貸および宿泊施設運営事業を開始し、2025年には同社を完全子会社化しました。

同社グループの従業員数は連結で48名、単体で48名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役の森智宏氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるフォレストです。

氏名 持株比率
森智宏 25.23%
フォレスト 15.46%
佐野健一 11.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役は森智宏氏です。8名中4名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
森智宏 代表取締役 1997年個人事業創業、2003年和心設立、代表取締役就任。2015年フォレスト代表取締役社長就任より現職。
最上夢人 専務取締役店舗事業本部長 1997年個人事業創業、2003年和心設立、専務取締役就任等を経て現職。
小田桐新五 専務取締役法人営業本部長 1994年レインボー入社、2006年和心入社。取締役等を経て現職。
斎藤順一 取締役CFO 2006年General Electricインターナショナル入社、2025年和心執行役員CFO等を経て現職。


社外取締役は、稲井祥平(リフィナス設立代表取締役社長)、白潟敏朗(白潟総合研究所代表取締役社長)、津金庸平(津金庸平公認会計士・税理士事務所設立)、山口一(CONOC代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インバウンドMD事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) インバウンドMD事業


かんざし(かんざし屋wargo)、傘(北斎グラフィック)、箸(箸や万作)など、日本文化を感じるオリジナル商品の企画・デザインから製造・販売までを一貫して行う製造小売業(SPA)です。また、アニメやゲームなどのサブカルチャーコンテンツを手掛ける企業向けに、キャラクターグッズのOEMサービスも提供しています。

一般消費者からの商品購入代金、および法人顧客からのOEM制作代金を主な収益源としています。商品は全国の主要観光地における実店舗および自社ECサイトを通じて販売されており、事業の運営は主に和心が担当しています。

(2) その他事業


静岡県の伊豆半島や東京、金沢などの都市部において、空き家をリノベーションしたサウナや露天風呂付きの貸別荘を運営する宿泊施設事業と、不動産賃貸事業を展開しています。絶好のロケーションを活かし、日常からかけ離れた非日常空間を提供しています。

宿泊客からの宿泊料金、および不動産の賃借人からの賃貸料を収益源としています。当事業の運営は子会社のマイグレが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は継続的な増加傾向にあります。特に近年のインバウンド需要の回復により来店客数が増加し、増収を強力に牽引しています。利益面でも、過去の赤字から黒字転換を果たしており、安定して利益を創出する増収増益のトレンドが定着しつつあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 9.0億円 10.0億円 13.3億円 20.9億円 27.8億円
経常利益 -4.9億円 -2.2億円 0.1億円 3.9億円 5.3億円
利益率(%) -54.7% -22.1% 0.8% 18.6% 19.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -5.1億円 -1.6億円 -0.0億円 3.8億円 7.0億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から大きく拡大しており、それに伴い売上総利益および営業利益も順調に増加しています。各利益率も高い水準を維持・向上させており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 20.9億円 27.8億円
売上総利益 14.2億円 19.6億円
売上総利益率(%) 67.9% 70.3%
営業利益 4.2億円 5.7億円
営業利益率(%) 19.9% 20.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与が4.7億円(構成比34.0%)、地代家賃が3.4億円(同24.1%)を占めています。なお、売上原価(8.3億円)の内訳データについては記載がありません。

(3) セグメント収益


インバウンドMD事業は、観光客の増加に伴う来店客数の増加や新規出店効果により、売上高が堅調に拡大しています。その他事業においても、静岡県を中心とした空き家リノベーションによる宿泊施設等の運営が着実に稼働し、増収に貢献しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
インバウンドMD事業 19.6億円 25.9億円
その他事業 1.3億円 2.0億円
連結(合計) 20.9億円 27.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる健全型です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2.0億円 6.1億円
投資CF -1.9億円 -1.4億円
財務CF -1.0億円 -0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は80.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は『日本のカルチャーを世界へ』を経営理念として掲げています。日本の風土や生活様式、哲学や技術の賜物である「日本のカルチャー」を実感できる場を提供することを通じて、日本の人々だけでなく世界の人々を幸せにすることが同社グループの存在意義であると定めています。

(2) 企業文化


人材を重要な経営資源と位置づけ、従業員の多様性を尊重することで組織の活性化を図る文化を持っています。髪色やネイルなど外見にとらわれない採用を行い、働きやすい環境を整備することで従業員満足度を高め、仲間と共に向き合い成長していく企業風土の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年12月期の連結業績予想として、以下の数値を目標に掲げています。

* 売上高:36.0億円
* 営業利益:7.5億円
* 経常利益:7.4億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:6.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


伝統と革新の両面で日本を象徴する商品を提供しつつ、IT技術革新への対応と新規出店の加速により事業を拡大します。インバウンド需要を取り込むための好立地への出店や、アニメ・ゲーム分野でのOEM営業体制の強化を図ります。また、空き家を活用した宿泊施設の新規展開などを推し進め、収益の多角化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社が継続的な成長を遂げるため、各分野に精通した優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。特に「日本のカルチャー」に関する知識を備えたデザイナーやECサイト運営に関わるエンジニアの採用に注力しています。また、時短勤務やシングルマザー手当の導入など、多様な働き方を支援する環境整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 34.9歳 3.4年 4,607,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模等の要件から公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率や男女賃金差異などの記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員における女性比率(75.0%)、パート・アルバイトにおける女性比率(88.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 雇用環境に係るリスク


生産年齢人口の減少や雇用形態の変化により、従業員の採用競争は激しい状況にあります。適切な人材の採用や人員配置が計画通りに進まない場合、あるいは人材確保のために非正規社員の時間給単価が上昇して人件費比率が高まった場合には、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


自社のECサイトなど多数の媒体を運営する上で、多くの個人情報を保有しています。不測の事態により個人情報の消失や外部への漏洩事故が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜を招き、同社グループの業績および財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(3) カントリーリスク


同社のインバウンドMD事業は、商品の生産の大半を中国やタイなどの海外製造会社に委託しています。そのため、関係地域の地政学的リスクや市場リスク、信用リスク、あるいは為替レートの大幅な変動などが商品の仕入れ価格等に影響を与え、業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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