記事タイトル:かっこ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、かっこ株式会社の有価証券報告書(第15期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. かっこってどんな会社?
同社はデータサイエンスを活用し、ECにおける不正検知サービス等をSaaS型で提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2011年に設立されました。2012年に不正注文検知サービスをリリースし、2016年には不正ログイン検知サービスの提供を開始しました。2020年に東京証券取引所マザーズに株式を上場し、2022年の市場区分見直しによりグロース市場へ移行して現在に至ります。
現在の従業員数は単体で36名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の岩井裕之氏が持分を保有する資産管理会社であり、第2位は同氏、第3位は同社執行役員である中沢雄太氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Symbolキャピタル合同会社 | 17.01% |
| 岩井裕之 | 15.94% |
| 中沢雄太 | 8.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は岩井裕之氏が務めています。また、取締役7名のうち3名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩井裕之 | 代表取締役社長 | 1995年星光堂入社。2005年ネットプロテクションズ入社。2011年同社設立、代表取締役社長に就任。リカバリー、Orchestra Holdings等の取締役も務め、現在に至る。 |
| 関根健太郎 | 専務取締役執行役員金融領域担当 | 1997年ダイヤコンサルタント入社。2015年同社入社、執行役員就任。2018年より専務取締役。 |
| 成田武雄 | 取締役執行役員EC領域担当 | 1997年星光堂入社。2014年同社入社、執行役員就任。2018年より取締役。 |
| 岡田知嗣 | 取締役執行役員プロダクト担当 | 2001年日本ヒューレット・パッカード入社。2013年同社入社。2014年執行役員就任。2020年より取締役。 |
社外取締役は、小川弦一郎(元日本総研情報サービス代表取締役専務)、中山寿英(元みなとグローバル代表取締役)、志村正之(元三井住友カード代表取締役専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「SaaS型アルゴリズム提供」事業を展開しています。
■(1) 不正検知サービス
ECにおける注文データを分析し、代金未回収となり得る注文をリアルタイムに検知する「O-PLUX」や、不正ログインを検知する「O-MOTION」をSaaS型で提供しています。EC事業者や金融機関などが主な顧客です。
定額の月額料金および審査件数に応じた従量課金である審査料金を収益源としています。運営はかっこが行っています。
■(2) 決済コンサルティングサービス
後払い決済(BNPL)を提供する事業者に向けて、決済システムの提供および事業の立ち上げ・運用のコンサルティングを行っています。
システムの提供やコンサルティングに対する報酬を収益源とし、「O-PLUX」を審査エンジンとして併用利用してもらうモデルを採用しています。運営はかっこが行っています。
■(3) データサイエンスサービス
企業が保有するビッグデータをAIや統計学などを用いて分析し、マーケティングや業務生産性などの課題を解決するアルゴリズムを開発・提供しています。
基礎集計、解析、システム構築などのフェーズごとに設定された料金を顧客企業から受け取ります。運営はかっこが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一時減少したものの直近で回復傾向を見せています。利益面では過去に経常利益および当期純利益ともに黒字を計上していましたが、直近3期間は連続して赤字となっています。ただし、直近では赤字幅が縮小しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9.5億円 | 10.8億円 | 9.5億円 | 7.3億円 | 8.2億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 | 1.5億円 | -1.2億円 | -2.5億円 | -1.4億円 |
| 利益率(%) | 18.0% | 14.3% | -12.4% | -34.7% | -16.7% |
| 当期純利益 | 1.2億円 | 1.0億円 | -3.2億円 | -2.6億円 | -1.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は改善しています。また、営業利益は依然として赤字ですが、マイナス幅は前年から大きく縮小しており、収益性の改善傾向がうかがえます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7.3億円 | 8.2億円 |
| 売上総利益 | 4.5億円 | 5.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.6% | 69.8% |
| 営業利益 | -2.4億円 | -1.3億円 |
| 営業利益率(%) | -33.3% | -16.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.7億円(構成比24.4%)、業務委託費が0.9億円(同12.2%)を占めています。売上原価のうち、経費が1.8億円(構成比70.9%)、労務費が0.7億円(同29.1%)を占めており、経費の主な内訳は外注加工費やデータ費となっています。
■(3) セグメント収益
主力の不正検知サービスは、市場におけるセキュリティ要件の高度化などを背景に導入が進み、大きく売上を伸ばしました。一方、決済コンサルティングサービスやその他サービスでは減収となっており、サービスごとに明暗が分かれる結果となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 不正検知サービス | 5.5億円 | 6.9億円 |
| 決済コンサルティングサービス | 0.9億円 | 0.5億円 |
| データサイエンスサービス | 0.5億円 | 0.6億円 |
| その他 | 0.4億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 7.3億円 | 8.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の局面となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2.0億円 | -0.7億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | -0.0億円 |
| 財務CF | -0.1億円 | 1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-17.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「未来のゲームチェンジャーの『まずやってみよう』をカタチに」という経営ビジョンを掲げています。有するデータサイエンスの技術やノウハウをもとに、アルゴリズムおよびソフトウエアを開発・提供することで、企業の課題解決やチャレンジを支援することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社の有価証券報告書には、企業文化に関する具体的な記載はありません。
■(3) 経営計画・目標
同社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、不正検知サービスにおけるストック収益の金額を重要な経営指標と位置づけています。具体的な数値目標の設定については有価証券報告書に記載がありません。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は不正検知サービスを中核とし、決済コンサルティングやデータサイエンスサービスとのシナジーを発揮して持続的な成長を図る方針です。具体的には、市場のレギュレーション強化を背景としたサービスの機能拡充、市場ドメイン単位のマーケティング戦略への転換、および業務提携やM&Aを通じた新規事業領域の構築を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的に企業価値を高めていくために、人材への積極的な投資が不可欠であると考えています。社員一人ひとりが自律的に成長できるよう、「自己申告制度」「ストレングスファインダー研修」「360度サーベイ」などを導入しています。また、多様な働き方で能力を発揮できるように「フルフレックス制度」や「テレワーク制度」等の就業環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.9歳 | 6.0年 | 7,019,527円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 36.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 529.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) システム基盤の外部依存
同社の提供するサービスは、外部クラウドサーバー(AWS)に依存しており、その安定的稼働が不可欠です。万が一、AWSの不具合や自然災害等によるシステム停止が発生した場合、サービスの停止や社会的信用の失墜を招き、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 個人情報等の情報漏洩リスク
不正検知サービスにおいて、ハッシュ化された審査データを受領・管理しています。関係者や業務提携先の過失等により個人情報が外部へ流出・悪用された場合、損害賠償責任の発生やブランドの毀損が生じ、事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定の市場への依存
売上高の大半を不正検知サービスが占めており、その取引先の多くがEC事業者です。EC市場は成長が見込まれているものの、予期せぬ環境変化により市場の成長が鈍化した場合には、同社の業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。



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