※本記事は、STIフードホールディングスの有価証券報告書(第9期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. STIフードホールディングスってどんな会社?
水産原料の調達から製造・販売までを一貫して手掛け、安全で価値ある食品を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1988年に新東京インターナショナルとして設立され、水産原材料等の輸入販売を開始しました。その後、事業譲渡や吸収合併を経て、2017年に持株会社としてSTIフードホールディングスを設立しました。2020年に東証二部へ上場し、2025年には味の浜藤等をグループ化して新たにリテール事業を開始しています。
現在の従業員数は連結で413名、単体で91名です。筆頭株主は創業者である十見氏の資産管理会社である十見で、第2位は創業者の十見裕氏、第3位は事業会社である極洋となっています。国内外で調達した水産資源を活かし、安全・安心な商品の提供と持続可能なバリューチェーンの構築に取り組んでいます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 十見 | 33.92% |
| 十見裕 | 12.15% |
| 極洋 | 8.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長兼社長CEOは十見裕氏が務めています。社外取締役比率は約33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 十見裕 | 代表取締役会長兼社長CEO | 1978年伊藤忠アパレル入社。1988年新東京インターナショナル設立。STIミヤギ代表取締役社長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 柳澤重英 | 取締役副会長 | 1979年日綿實業入社。ニチメンフーズ取締役等を経て、2010年エス・ティー・アイへ転籍。STIミヤギ代表取締役社長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 山﨑敬介 | 取締役常務執行役員事業統括本部長 | 1996年新東京インターナショナル入社。新東京フード代表取締役社長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 壷井知行 | 取締役常務執行役員管理本部長兼カンパニー事業本部長 | 1997年コナミコンピュータエンタテインメントスクール入社。コナミグループ財務本部等を経て、2019年入社。2026年1月より現職。 |
| 青木健太朗 | 取締役上席執行役員事業統括本部長代行 | 1995年トリコロール入社。2000年新東京インターナショナル入社。STIミヤギ取締役等を経て、2026年3月より現職。 |
社外取締役は、上平光一(上平光一公認会計士・税理士事務所所長)、桑山貴洋(桑山代表取締役社長)、ダグラスハウランド(NOT A HOTEL執行役員)、安間香和里(ヤスマ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品製造販売事業」および「リテール事業」を展開しています。
■(1) 食品製造販売事業
同セグメントでは、主にコンビニエンスストア向けの水産惣菜や、水産原材料を使った缶詰・レトルト製品の製造・販売を行っています。また、おにぎりや弁当などに使用される水産食材をデイリー惣菜メーカー向けに提供しています。
収益源は、コンビニエンスストアや食材商社等への製品・食材の販売代金です。運営はSTIフードホールディングスのほか、STIフード、STIエナック、STIサンヨー、STIミヤギなどの子会社が担っています。
■(2) リテール事業
同セグメントでは、主に首都圏の百貨店やエキナカを中心にテナントを展開し、漬け魚を中心とした水産総菜や高級弁当の製造・販売を行っています。
収益源は、一般消費者への商品販売代金です。運営は、2025年4月にグループへ加わった味の浜藤等の子会社が中心となって事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の売上高は右肩上がりで成長し、直近では386億円に達しています。経常利益は一時的に減少した期もありますが、概ね15億円から29億円の範囲で安定して推移しており、継続的な黒字基調を保っています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 263億円 | 276億円 | 318億円 | 356億円 | 386億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 15億円 | 23億円 | 29億円 | 26億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 5.5% | 7.3% | 8.2% | 6.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 12億円 | 11億円 | 11億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大していますが、原材料価格や労務費等のコスト上昇により、売上総利益率および営業利益率は前期と比較してわずかに低下しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 356億円 | 386億円 |
| 売上総利益 | 100億円 | 104億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.0% | 27.1% |
| 営業利益 | 29億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が37億円(構成比47%)、従業員給料が13億円(同16%)を占めています。また、売上原価は282億円となり、売上高に対する構成比は73%を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の食品製造販売事業が引き続き成長を牽引し、増収増益を達成しました。また、当期から新たにリテール事業が加わったことで、事業領域の拡大と収益基盤の多様化が進んでいます。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 食品製造販売事業 | 356億円 | 361億円 | 29億円 | 31億円 | 8.5% |
| リテール事業 | - | 25億円 | - | 1億円 | 2.7% |
| 連結(合計) | 356億円 | 386億円 | 29億円 | 26億円 | 6.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で借入金の返済や設備投資を手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 20億円 |
| 投資CF | -35億円 | -16億円 |
| 財務CF | 4億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「社員の幸せと社会のより豊かな未来のために、国内外の食料資源を大切にし、価値ある食文化創造の責任を果たします」というミッションを掲げています。持続可能な原材料の調達や、特許を含む新技術による組み立てをベースに、商品の開発から一貫製造・販売までを手掛けています。
■(2) 企業文化
私たちが最も大切にする価値観として「正々堂々」を社是に掲げています。これを実践するための行動指針として、当たり前の徹底と過去や常識の否定を両立する「変革創造」、仕事を自ら作り出す「自主自立」、懸命に向き合う「誠心誠意」、全員の知恵と技術と想いをひとつにする「一致団結」を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
サービスの競争力を維持し、全事業の業績を向上させていくことが重要であると認識し、重視している経営指標を「売上高経常利益率」としています。さらに翌期からは、営業活動の収益性をより明確に把握するため、「売上高営業利益率」を重視する指標に変更していく方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続可能なバリューチェーンを創造し、伝統的なうま味を活かした製品開発と提供で永続企業としての成長を目指しています。市場でニーズの高い水産素材による惣菜開発のほか、新技術による鮮度延長や冷凍食品開発によるフードロス削減、無添加の健康志向商品や高齢者向け惣菜の開発等に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業部門において、商品の差別化を図る独自技術の開発や新商品開発を推進するため、優秀な人材の確保を図っています。さらに管理部門の強化や、将来にわたる成長力・収益力強化のために人材育成も不可欠と考え、社内研修プログラムや福利厚生、人事制度の充実に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.2歳 | 5.4年 | 6,933,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 41.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存度が高いこと
セブン-イレブン・ジャパンの加盟店及び直営店への売上割合が大部分を占めています。同社の店舗展開や販売方針、価格政策などの経営戦略が変更になった場合、取引関係が変化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達と価格高騰
主原料である水産素材は、世界的な健康志向の高まりによる魚食の増加等を背景に需要が高まり、資源確保が難しく価格が高騰しています。必要な量の確保が困難になることや仕入価格の上昇が利益率の低下を招き、業績に影響する可能性があります。
■(3) 製造部門における人材確保の難化
食品製造工場は24時間稼働を原則とした体制を構築しています。少子高齢化による労働人口減少や為替変動による外国人人材の減少等で採用環境が悪化しており、十分な人材確保や育成・定着ができない場合、競争力低下や業績悪化につながる可能性があります。
■(4) 食の安全性に関するリスク
食品メーカーとして衛生・品質管理を徹底していますが、不測の事態により商品のクレームや不具合品が発生するリスクがあります。万が一商品の回収や被害者への賠償など想定外の費用が発生した場合、社会的な信用低下と業績悪化につながる可能性があります。



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