※本記事は、株式会社ヤプリの有価証券報告書(第13期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤプリってどんな会社?
ノーコードアプリ運営プラットフォームを軸に、企業のDXを強力に支援するテクノロジー企業です。
■(1) 会社概要
2013年2月に設立され、アプリ運営プラットフォーム「Yappli」の提供を開始しました。2020年12月にマザーズ市場へ上場を果たし、その後も順調に事業を拡大しています。2023年8月には社内向けアプリ「UNITE by Yappli」を、2025年にはウェブ構築やLINEミニアプリへと領域を広げています。
従業員数は連結で294名、単体で290名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の庵原保文氏、第2位も同じく創業メンバーの佐野将史氏となっており、経営陣が上位を占めています。第3位には黒田真澄氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 庵原保文 | 16.18% |
| 佐野将史 | 16.18% |
| 黒田真澄 | 5.09% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長CEOは庵原保文氏が務めています。社外取締役は1名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 庵原保文 | 代表取締役社長CEO | トランスワールドジャパン、ヤフー、シティバンク銀行を経て、2013年に同社を設立し、代表取締役社長CEOに就任。現在はフラーやヤプリフードコネクトの取締役も兼任。 |
| 佐野将史 | 取締役 | ヤフーを経て、2013年の同社設立と同時に取締役CTOに就任。2022年1月より現職。 |
| 佐藤源紀 | 取締役執行役員CTO開発統括本部長兼システム本部長 | ディー・エヌ・エー、Kyashを経て、2018年に同社へ入社。プロダクト開発本部長や執行役員CTOを歴任し、2024年7月より開発統括本部長、2026年1月よりシステム本部長として現職。 |
社外取締役は、奥本直子氏(Amber Bridge Partners LLC設立CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アプリ運営プラットフォーム事業」の単一セグメントで展開しています。
ノーコードでiOSおよびAndroidのネイティブアプリを開発・運用できるクラウド型プラットフォーム「Yappli」を中核として提供しています。マーケティング領域での顧客体験向上や、HR領域での従業員エンゲージメント向上など、企業の用途に応じた多様なデジタル接点の構築を支援しています。
主な収益源は、プラットフォームの基本利用料や追加機能のオプション料金からなるサブスクリプション型の「月額利用料」と、初期制作等のフロー収益です。事業の運営は主に同社が担っており、LINEミニアプリ領域についてはヤプリフードコネクトが展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、当期は売上高61億円、経常利益8.8億円を計上し、安定した利益水準を確保しています。当期から連結決算へ移行しており、先行投資フェーズから投資効率を重視したバランス型の成長フェーズへとシフトしたことで、収益性の改善が明確に表れる結果となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | 61億円 |
| 経常利益 | - | - | - | - | 8.8億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | 14.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9.4億円 | -9.4億円 | -0.7億円 | 7.5億円 | 9.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益構造を見ると、当期は売上高61億円に対して売上総利益が40億円となり、66.5%の高い売上総利益率を維持しています。営業利益も8.8億円を確保し、SaaS型ビジネス特有のストック収益の積み上がりと効率的なコスト管理によって、着実な利益創出を実現しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | 61億円 |
| 売上総利益 | 36億円 | 40億円 |
| 売上総利益率(%) | - | 66.5% |
| 営業利益 | 5.5億円 | 8.8億円 |
| 営業利益率(%) | - | 14.6% |
販売費及び一般管理費(31億円)のうち、給料及び手当が8.6億円(構成比27.3%)、広告宣伝費が7.3億円(同23.1%)を占めています。また、売上原価(20億円)においては、広告媒体費が3.4億円(同16.6%)、サーバー費が3.0億円(同14.9%)、外注費が2.6億円(同12.6%)を占めており、システム運用とマーケティングへの投資状況がうかがえます。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ヤプリは、アプリ運営プラットフォーム事業を展開しており、営業活動により資金を獲得しています。投資活動では、子会社株式の取得や投資有価証券の購入に資金を使用しました。財務活動では、借入金の返済や自己株式の取得により資金が使われました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | - | 7.8億円 |
| 投資CF | - | -0.9億円 |
| 財務CF | - | -4.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「デジタルを簡単に、社会を豊かに」というミッションを掲げています。プログラミングの専門知識がなくても、直感的に操作できるプラットフォームを提供することで、企業のデジタル活用を強力に後押しし、社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していくことを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員一人ひとりを重要な資本として捉え、個性が活かせる環境づくりを重視しています。社内向けアプリを通じた情報共有や部活動制度、シャッフルランチなどを活用して部門を超えたコミュニケーションを活性化し、年齢や性別にとらわれない雇用など多様な人材が活躍できる組織運営を実践しています。
■(3) 経営計画・目標
持続可能な成長を実現するため、売上高の成長率と利益率の双方を重視した「バランス型の成長」を基本方針としています。事業管理においては以下の数値を主要KPIとして掲げています。
・契約アプリ数の拡大
・アプリ当たりの平均月額利用料の向上
・月次解約率(直近12カ月平均)の低水準維持
■(4) 成長戦略と重点施策
中核であるアプリ開発プラットフォームに加え、ウェブ構築やLINEミニアプリなど多様なデジタル接点を統合管理する「デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)」への進化を目指しています。具体的には、マーケティング領域とHR領域でのソリューション提供を強化するとともに、シナジーが見込める領域でのM&Aを機動的に活用して事業基盤の拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
優秀な人材の確保と育成を企業の持続的成長に不可欠な要素と位置づけています。リファラル採用や採用イベントを通じた新たな仲間づくりを推進するほか、充実したオンボーディングプログラムやメンター制度、専門性を高める各種研修を提供し、自律的な成長とリーダーシップの開発を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 35.5歳 | 3.8年 | 7,047,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 99.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の女性比率(41.4%)、退職率(9.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 先行投資に伴う財務的影響
システムの機能性向上や市場シェア拡大を目的に、人件費や広告宣伝費等の先行投資を実施しています。現在は費用対効果を重視した投資効率の管理を行っていますが、経営環境の急激な変化等により想定通りの成果が得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) モバイルアプリ市場の成長鈍化
同社は国内のモバイルアプリ市場を基盤に事業を展開しており、同市場は今後も成長が見込まれています。しかし、経済情勢や景気動向の悪化により市場の拡大が鈍化または縮小した場合、サービスの需要が減少し、経営成績や財政状態に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 競合他社の動向と競争激化
特許の取得や継続的な機能強化により高い参入障壁と優位性を確保していますが、競争環境の激化に伴い、同等の機能を持つプラットフォームを提供する競合他社が新たに参入した場合、価格競争やシェアの低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 為替変動によるリスク
同社は主に国内で事業を展開していますが、サーバー費用や一部の社内ツール利用料は外貨建での支払いとなっており、為替の影響を受けます。急激な円安が進行した場合、これらの運用コストが増加し、利益率を圧迫するリスクがあります。



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