スパイダープラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スパイダープラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スパイダープラスは東京証券取引所グロース市場に上場し、建設業界の生産性向上を支援する施工管理ソフトウエア「SPIDER+」の提供を主力事業として展開しています。直近の業績は、建設DX投資需要を取り込み契約社数と単価が順調に増加して大幅な増収を達成し、経常赤字も大きく縮小する改善傾向にあります。


※本記事は、スパイダープラスの有価証券報告書(第27期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スパイダープラスってどんな会社?


建設業界の業務効率化と生産性向上を実現する施工管理ソフトウエア「SPIDER+」を展開する企業です。

(1) 会社概要


1997年9月に個人事業の伊藤工業として創業し、2000年にケイ・ファクトリーを設立して熱絶縁工事事業を行いました。2010年にヴェイシスを設立してIT事業を開始し、2011年に建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」をリリースしました。2012年に両社が合併してレゴリスとなり、2020年にスパイダープラスへ商号変更、2021年に東京証券取引所へ上場しました。

同社グループは、連結従業員数260名、単体従業員数258名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長を務める伊藤謙自氏で、第2位および第4位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はCHIYOMARU STUDIOとなっています。

氏名 持株比率
伊藤 謙自 52.90%
THE BANK OF NEW YORK 133652 (常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 5.86%
CHIYOMARU STUDIO 2.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は伊藤謙自氏が務めています。取締役の50%が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
伊藤 謙自 代表取締役社長 1992年に昭和コーポレーションへ入社。1997年に伊藤工業を創業し、2000年に同社(旧ケイ・ファクトリー)を設立して代表取締役に就任。2010年にヴェイシスを設立し代表取締役に就任。
鈴木 雅人 取締役副社長コーポレート推進本部長 1997年にリコーテクノシステムズへ入社し複数企業を経て2010年に同社へ入社。2017年に取締役、2022年に取締役執行役員を経て、2025年より現職。
藤原 悠 取締役執行役員CFO経営管理本部長兼事業企画本部長 2008年に新日本有限責任監査法人へ入所。コンサルティング会社等を経て2021年に同社へ入社し管理本部本部長に就任。2022年に取締役を経て同年より現職。


社外取締役は、吉田淳也(ジャフコ等を経てKUSABI代表パートナー)、広木大地(ミクシィ執行役員等を経てレクター創業代表取締役)、森竜太郎(インテグリカルチャー創業CFO等を経てアノン創業代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ICT事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

ICT事業(SPIDER+)


同社は、建設現場の施工管理業務をデジタル化し、省人化と業務効率化を実現するソフトウエア「SPIDER+」を提供しています。主な顧客は総合建設会社(ゼネコン)や総合設備会社(サブコン)であり、大規模な建設現場の現場監督を中心に広く利用されています。

収益モデルは、月額基本利用料等のサービスを継続的に提供して得る「ストック収益」と、付随するスポット作業等による「フロー収益」に区分されています。ソフトウエアによる「標準化」に加え、BPOサービスやコンサルティング等も統合的に提供しており、運営は同社およびベトナム子会社のSpiderPlus Vietnamが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績推移を見ると、売上高は順調に拡大を続けています。建設業界におけるDX投資需要を的確に捉え、主力サービスの契約社数と単価が増加したことが大幅な増収に寄与しました。一方、戦略的な先行投資により経常損失が続いていましたが、売上成長に伴って赤字幅は大きく縮小しており、収益性の改善が進んでいます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 41億円 49億円
経常利益 -5.3億円 -0.4億円
利益率(%) -12.9% -0.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -7.6億円 -0.4億円

(2) 損益計算書


直近の売上高は前期比で大きく伸びており、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、原価を抑えながら付加価値の高いサービスを提供できていることがわかります。営業損失は計上しているものの、増収効果によって赤字幅は大幅に改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 41億円 49億円
売上総利益 28億円 36億円
売上総利益率(%) 68.0% 73.9%
営業利益 -5.2億円 -0.1億円
営業利益率(%) -12.8% -0.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が14億円(構成比39%)、業務委託費が4.0億円(同11%)、販売手数料が3.7億円(同10%)を占めています。売上原価については、経費が9.6億円(構成比75%)、労務費が3.2億円(同25%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -3.7億円 0.8億円
投資CF -0.5億円 -1.8億円
財務CF 3.2億円 -1.6億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「“働く”にもっと『楽しい』を創造する。」をミッションとして掲げています。「“働く”を心底楽しいと思えることが最も生産性を向上させる」と信じており、顧客の課題解決による喜びや楽しさを通じて、誰もが仕事にもっと夢中になれる世の中を作り続けていくことを究極的な目標としています。このミッションの実現に向け、建設業界における「現場インフラ企業」へと進化することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、ミッションおよびビジョンの達成に向けて、組織として一体感を持って顧客課題に向き合い、顧客の成果に貢献するための「企業文化」の醸成を不可欠と考えています。そのために必要な行動指針等をバリュー(Value)として定め、組織内への浸透と文化形成を推進しています。また、従業員一人ひとりが「自分の居場所がある」「安心して働ける」と感じられる環境づくりにも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、建設現場における特定の業務課題を解決するSaaS企業にとどまらず、現場のあらゆる課題を広く網羅的に解決する「現場インフラ企業」へと進化することを中期的な経営方針として掲げています。先行投資期間を経て成長性と収益性を両立するフェーズに移行しており、今後は通期での黒字化を見据え、収益性を伴った事業成長を推進していく方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、主力サービスである施工管理ソフトウエアを進化させた統合プラットフォーム「SPIDER+ Workspace構想」の開発を推進し、BPOサービスやプロフェッショナルサービスなどのソリューション系サービス展開を強化しています。また、蓄積された現場データとAI等の最新技術を掛け合わせた機能開発を進め、競争優位性を高めています。さらに、国内市場でのシェア拡大に加えて、海外展開をはじめとする新たな市場開拓にも同時に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「人的資本戦略」を重要な経営戦略の一つと位置付けています。ミッションに深く共感し、事業成長を牽引する即戦力や次世代を担う新卒人材の採用を促進しています。また、個人の自律的な成長とポテンシャルの最大化を図るため「人材マネジメントポリシー」を策定し、正当な評価・称賛の仕組みを構築しています。適材適所の人員配置やテクノロジーの活用による生産性向上、安心して働ける環境整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.3歳 2.6年 6,240,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員構成比率(34.0%)、男女賃金格差(1,734千円)、エンゲージメントスコア・ミッション・ビジョンへの共感(76点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業界の動向による影響


同社グループは建設業に特化したソリューション「SPIDER+」を主力としており、建設市場およびDXニーズの拡大を前提として事業を展開しています。しかし、建設市場の急激な収縮や、業界におけるソフトウエア投資意欲の長期的な減退などが発生した場合、顧客企業の業況悪化や倒産等が生じ、同社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定サービス「SPIDER+」への依存


売上高の大部分を主力製品である「SPIDER+」が占めています。同社は継続率の維持やアップセル、統合プラットフォーム構想などにより収益基盤の安定と拡大を図っていますが、本サービスに何らかの深刻な問題が生じた場合や、競合・新規参入企業との競争が激化して優位性が揺らいだ場合、同社グループの事業展開に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(3) 競争環境の激化


同社は建設業界特有の業務ノウハウに精通したSaaSソリューションを提供しており、新規参入には障壁があると考えています。しかし、資金力やブランド力を持つ有力企業が想定以上にリソースを投下して市場へ参入し、競争が激化した場合には、競争力を維持できなくなるリスクがあります。同社は継続的なサービス開発やマーケティング活動の強化により競争力の維持向上を図っています。

(4) 技術革新とセキュリティ要件への対応


クラウドサービスやAI分野における技術革新のスピードは速く、これらを継続的にサービスへ取り込む必要があります。また、大手建設会社を中心にセキュリティ要件が高度化しています。同社はエンジニアの採用や開発環境の整備に注力していますが、必要な技術やノウハウの獲得が困難になった場合、サービスの競争力低下や対応コストの増加により業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。