勤次郎 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

勤次郎 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

勤次郎は東京証券取引所グロース市場に上場し、就業、人事、給与、健康管理を一体的に提供するHRMソリューション事業と、不動産賃貸事業を展開する企業です。主力のクラウドサービスの契約ライセンス数が順調に拡大しており、直近の業績は前期比で増収増益を達成するなど、高い成長と安定した収益を確保しています。


※本記事は、勤次郎の有価証券報告書(第45期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 勤次郎ってどんな会社?


同社は、就業や健康管理などのHRMクラウドサービスと不動産賃貸事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1981年に日通システムとして設立され、オフィスコンピューターやシステム開発の事業を開始しました。2004年に統合ERPパッケージ「勤次郎Enterprise」を発売し、2010年にはクラウドサービスの提供も開始して業容を拡大しました。2020年に東証マザーズへ上場を果たし、翌2021年に現在の「勤次郎」へと社名を変更しています。直近の2025年8月には、中小企業向けクラウド型HRMソリューション「JOBEE」をリリースしています。

同社グループの従業員数は連結で321名、単体で262名となっています。筆頭株主は創業者で代表取締役会長を務める加村稔氏の資産管理会社であるエヌイーシステムサービスで、第2位は同氏個人、第3位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
エヌイーシステムサービス 36.10%
加村稔 9.68%
勤次郎持株会 7.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長CEOは加村稔氏、代表取締役執行役員社長COOは加村光造氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
加村稔 代表取締役会長CEO 1972年日本警報装置中部(現エヌケーシー)取締役。1981年同社設立、代表取締役社長。日通システムベトナム(現勤次郎ベトナム)会長等を経て、2022年3月より現職。
加村光造 代表取締役執行役員社長COO 1997年ロジック入社。2002年同社入社。アイベックステクノロジー等を経て、2015年同社再入社。常務取締役執行役員営業本部長等を歴任し、2025年1月より現職。
平田英之 取締役常務執行役員CTO兼CIO兼クラウド戦略本部長兼品質保証室長 1983年日本電気入社。NEC Enterprise Communication Technologies, Inc. CEO等を経て2018年同社入社。事業戦略本部長等を歴任し、2026年1月より現職。
加村建史 取締役執行役員マーケティング戦略本部長 1998年カントー入社。2002年同社入社。管理部長、営業部長、ヘルスケア本部長等を歴任し、2021年取締役執行役員に就任。2025年1月より現職。
木下隆之 取締役執行役員特命担当 1981年日本電気入社。同社PB営業事業部統括部長を経て2022年同社入社。執行役員営業本部長等を経て、2023年3月取締役執行役員に就任。2025年3月より現職。
前畑岳史 取締役執行役員CFO兼管理本部長 1993年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。同行小田井支店長、上前津支店長を経て、2024年同社入社。執行役員CFO兼管理本部長に就任し、2025年3月より現職。


社外取締役は、藤岡旭(元中電興業社長)、加藤厚(加藤・上田総合法律事務所共同代表)、岡野英生(元あずさ監査法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HRM事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) HRM事業


多業種の事業者向けに、就業管理、人材管理、給与管理および健康管理を一体的に提供するHRMソリューションを展開しています。主に中堅・大企業向けの「Universal 勤次郎」と、主に従業員100名以下の企業向けクラウドサービス「JOBEE」の2製品を軸に、各種コンサルサポートなども提供しています。

収益源として、顧客企業からクラウドサービスの月額利用料やソフトウェアパッケージの販売代金、保守に伴うプレミアムサポート料を受け取ります。運営は主に同社と、連結子会社である勤次郎ベトナムが共同で行っています。

(2) 不動産賃貸事業


スペースの有効活用を目的として、同社が所有するビルのうち、空きフロアをオフィス用賃貸物件として提供しています。

入居するテナント企業から、オフィス利用に伴う毎月の賃料や管理費などを受け取る収益モデルです。当該事業の運営は同社が単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりで順調に推移しています。特に直近の2025年12月期は、主力のクラウドサービスの契約ライセンス数が大幅に増加したことなどを背景に、売上高が大きく伸長しました。利益面でも増収効果とリカーリング収益の積み上げにより利益率が改善し、大幅な増益を達成しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 33億円 36億円 39億円 44億円 54億円
経常利益 2億円 4億円 6億円 7億円 15億円
利益率(%) 7.3% 12.3% 14.4% 16.8% 28.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 3億円 4億円 5億円 10億円

(2) 損益計算書


当期の売上高は堅調に拡大し、売上総利益も順調に増加しています。クラウドサービス用サーバーなどの原価増を吸収し、売上総利益率は前期から大きく改善しました。販売費及び一般管理費は一定水準にコントロールされているため、営業利益率は大幅に上昇し、高収益体質が鮮明になっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 44億円 54億円
売上総利益 27億円 37億円
売上総利益率(%) 60.6% 68.1%
営業利益 7億円 15億円
営業利益率(%) 16.7% 28.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比33%)、退職給付費用が0.2億円(同1%)を占めています。また、売上原価においては、経費が13億円(構成比56%)、労務費が9億円(同38%)、材料費が1億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるHRM事業が全体の売上を牽引しており、直近でもクラウドサービスの利用者数拡大とライセンス売上の増加により大幅な増収を達成しています。一方、不動産賃貸事業はテナントの退出などもあり、前期比で微減となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
HRM事業 42億円 52億円
不動産賃貸事業 2億円 2億円
連結(合計) 44億円 54億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

勤次郎グループは、事業運営に必要な資金の流動性と調達源を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、クラウドサービス用サーバー設備等の設備投資や、ソフトウェア開発、人件費といった運転資金に充当されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた設備投資や研究開発に活用されています。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済等、財務基盤の安定化に寄与しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 12億円 22億円
投資CF -10億円 -30億円
財務CF -4億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「想像から創造へ」のもと「CSR&イノベーション」を企業理念として掲げています。ステークホルダーの期待を重視し、顧客企業の人的資本投資による労働生産性向上をサポートすること、さらに国民のヘルスアップを目指し、社会の持続的発展に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


イノベーション(技術革新)を常に行い、同社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図っていく文化があります。また、「想像から創造へ」の企業文化を繋ぎ、従業員一人ひとりが次代を担う中核人材として能力を発揮し、ワーク・エンゲイジメントを高めながらいきいきと活躍できる環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


売上・利益の成長、顧客満足度の向上に取り組みながら企業価値の最大化を目指すため、経営上の客観的な指標として、売上高営業利益率、クラウドサービスの利用者数(契約ライセンス数)、および解約率を掲げています。顧客満足度を向上させて解約率の低減を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


クラウド事業を成長ドライバーとし、リカーリングレベニュー(継続的な収益)を拡大することを基本戦略としています。働き方改革ソリューションと健康管理ソリューションから得られるビッグデータの分析とAI活用による新サービスの開発、オンプレミスからクラウドへの移行推進などを通じて収益拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働く人の健康と幸せが企業の未来を築く」という事業コンセプトのもと、健康経営の実践による人的資本の最大化を目指しています。若手従業員を中心とする「勤次郎元気プロジェクト」などを通じて能動的な働き方を推進し、優秀な人材の積極的な採用活動と教育研修により、能力を最大限に発揮できる職場づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.0歳 7.9年 6,707,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 88.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健診受診率(100.0%)、ストレスチェック受検率(100.0%)、平均残業時間(16時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定製品への依存リスク


HRM事業の売上高の大部分が「Universal 勤次郎」を中心とする勤次郎シリーズに依存しており、特に就業管理システム関連の割合が高くなっています。同分野で競合製品が出現した場合や技術革新への対応が遅れた場合、売上が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) クラウドサービスのシステム障害リスク


自社設備によるクラウドサービスを提供しており、セキュリティ対策や稼働監視システム、BCPに基づく早期復旧手順などの未然防止策を講じています。しかし、想定を超える障害でサービス停止が長時間に及んだ場合、顧客の信頼失墜や損害賠償請求などにより業績に悪影響を与えるおそれがあります。

(3) 情報システム障害に起因するリスク


事業活動において情報システムの重要性が増大しており、ネットワークの二重化やデータセンターの活用などの対策を実施しています。しかし、自然災害やテロ、サイバー攻撃などによって情報システムの障害が発生した場合、事業活動に支障が生じ、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 知的財産権に起因するリスク


同社グループが開発するソフトウェアやハードウェアに関して、第三者から侵害訴訟を提起されたことはありませんが、認識していない特許が成立している場合など、第三者の知的財産権に抵触する可能性を完全には排除できません。損害賠償や使用差し止めの訴えなどが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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