網屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

網屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する網屋は、ログ管理の「データセキュリティ事業」と、クラウド型ネットワークインフラを提供する「ネットワークセキュリティ事業」を展開する総合セキュリティプロバイダです。昨今のサイバー攻撃対策需要の高まりを背景に、直近の業績は売上・利益ともに大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社網屋の有価証券報告書(第30期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 網屋ってどんな会社?


サイバーセキュリティ製品やサービスを自社で開発し提供する、セキュリティの総合プロバイダです。

(1) 会社概要


1996年にネットワークの設計・構築事業を目的に設立されました。2005年にアクセスログ製品「ALog」を販売してデータセキュリティ事業を開始し、2010年にはクラウドVPNサービス「Verona」でネットワークセキュリティ事業も開始しました。2021年に上場を果たし、近年はM&Aも推進しています。

従業員数は連結で252名、単体で183名です。筆頭株主はチャクルで、第2位は創業時のメンバーであり現代表取締役社長の石田晃太氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
チャクル 27.40%
石田 晃太 13.10%
日本カストディ銀行(信託口) 5.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長は石田晃太氏が務めており、社外取締役比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
石田 晃太 代表取締役社長 2002年に網屋へ入社し、事業部マネジャーや事業部長、営業本部長などを歴任。2008年に取締役、2014年に常務取締役を経て、2020年より代表取締役社長に就任し現職。
佐久間 貴 取締役セキュリティプロダクト事業部長 コスメディアで取締役や常務取締役を歴任後、2019年に網屋へ入社。執行役員データセキュリティ事業部長などを経て、2025年より取締役セキュリティプロダクト事業部長として現職。
寺園 雄記 取締役セキュリティサービス事業部長 2001年に網屋へ入社。各種営業部長や執行役員ネットワークセキュリティ事業部長などを歴任。2021年に取締役に就任し、2025年より取締役セキュリティサービス事業部長として現職。


社外取締役は、森雅司(元フォレスタリサーチ&コンサルティング代表取締役)、権浩子(元子どもの食卓代表取締役)、森詩絵里(元インテグラル法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「データセキュリティ事業」および「ネットワークセキュリティ事業」を展開しています。

データセキュリティ事業


ログ管理のためのソフトウエア製品やクラウドサービスの開発・販売・保守サービスのほか、サイバーセキュリティ対応の支援サービスやコンサルティング等を提供しています。予算や人材に制限がある中堅・中小企業を含む幅広い企業を顧客としています。

自社開発製品「ALogシリーズ」のライセンス販売や、クラウド版の月額利用料、また包括的なセキュリティ対策を月額固定で提供する「セキュサポ」から収益を得ています。事業の運営は網屋および子会社のグローブテック・ジャパンが行っています。

ネットワークセキュリティ事業


ネットワークインフラをすべてクラウドで提供するサービスや、顧客の要件に沿ったネットワークインフラを個別設計するインテグレーション事業を提供しています。建設業や飲食業のほか、テレワーク環境を運用管理する企業などを顧客としています。

初期のネットワーク機器の販売代金や、その後のクラウド上からの運用・管理に対するサブスクリプション型の月額サービス利用料から収益を得ています。事業の運営は網屋および子会社のASネットワークセキュリティが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、それに伴い経常利益も順調に拡大しています。特に直近の第30期は、ランサムウエア対策製品やサービスの需要が堅調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。利益率も改善傾向にあり、高収益体質が定着しつつあることが伺えます。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 36億円 48億円 59億円
経常利益 4億円 5億円 10億円
利益率(%) 12.0% 11.4% 17.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 4億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も大きく伸長しています。利益率の高いサブスクリプション型サービスや、高単価なインテグレーション案件の増加が利益率の大幅な改善に寄与しており、収益性の向上が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 48億円 59億円
売上総利益 20億円 28億円
売上総利益率(%) 41.2% 47.9%
営業利益 5億円 11億円
営業利益率(%) 11.0% 17.7%


販売費及び一般管理費(約18億円)のうち、給料及び手当が4.7億円(構成比26.4%)、賞与引当金繰入額が0.9億円(同5.0%)、株式報酬費用が0.6億円(同3.4%)を占めており、事業拡大に伴う人材関連の費用が大きな比重を占めています。

(3) セグメント収益


データセキュリティ事業は、ランサムウエア対策やガイドライン対応としての「ALog」の需要が堅調に推移し、各種支援サービスも伸長したことで増収増益となりました。ネットワークセキュリティ事業も、サブスクリプション型のクラウドサービスが好調だったほか、インテグレーション案件の利益率改善が寄与し、両セグメントともに高い成長を実現しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
データセキュリティ事業 19億円 25億円 7億円 10億円 41.3%
ネットワークセキュリティ事業 29億円 35億円 7億円 10億円 29.2%
調整額 - - -8億円 -10億円 -
連結(合計) 48億円 59億円 5億円 11億円 17.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

網屋のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、堅調な営業活動により、前年度を上回る資金収入を確保しました。投資活動では、事業拡大に向けた設備投資や子会社株式の取得等が行われました。財務活動では、自己株式の処分による収入があった一方で、借入金の返済や自己株式の取得による支出もありました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 12億円 13億円
投資CF -1億円 -0.9億円
財務CF 6億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「顧客が抱えるあらゆるセキュリティへの課題」を包括的に請け負う「総合セキュリティプロバイダ」を目指し、独自の技術力によって製造した「セキュリティの自動化」で社会に貢献することを経営方針としています。また、「高水準のセキュリティを、すべての人が得られる社会に」をビジョンに掲げ、安全を誰もが享受できる社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


ビジョンである「高水準のセキュリティを、すべての人が得られる社会に」を実現するため、よりシンプルで使いやすい製品やサービスを提供しています。従業員やステークホルダーの個の成長が製品やサービスの成長に繋がり、それがミッション達成に繋がるという考えのもと、個人の自律的な学びと実践的なスキルの習得を奨励する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


既存事業を着実に成長させ、セキュリティの総合プロバイダとして事業規模を拡大させることを中期経営計画の目標としています。これを達成するための重要な経営指標として、以下の数値を掲げて進捗を管理しています。

・売上高
・営業利益
・前年度からの売上高成長率
・年間定期収益を示すARR(Annual Recurring Revenue)

(4) 成長戦略と重点施策


データセキュリティ事業では、ログ管理製品のクラウド版「ALog Cloud」を中堅・中小企業へ拡販し、包括的代行サービス「セキュサポ」などのサブスクリプション体系へ移行することで収益構造の転換を図ります。ネットワークセキュリティ事業では、テレワーク用のVPNや無線LANサービスの販売を強化し、運用代行サービスやゼロトラストネットワークへの対応を推進して事業を拡大する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業規模の拡大に伴い、優秀なIT技術者を確保・育成することを重要な経営課題と位置づけています。学生インターンや大学との共同研究を通じて積極的に人材を採用する方針です。また、サイバーセキュリティ対策やAIスキルの研修、資格取得を支援し、透明性と公平性を担保した人事評価制度によって従業員のモチベーションを高める施策を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 34.0歳 5.2年 5,989,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 119.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員女性比率(30.0%)、女性のマネージャー比率(15.4%)、女性の役員比率(21.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバーセキュリティ市場の競合激化


サイバーセキュリティ市場は成長業界であり、通信メガキャリアなどの巨大企業を含む多くの競合が存在しています。競争環境の激化により、同社の製品やサービスの優位性が他社に劣後した場合、同社の財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐため、サービスの開発や技術力の強化で差別化を図っています。

(2) クラウドサービスのシステムトラブル


同社が提供するクラウド型のセキュリティサービスにおいて、自然災害や通信障害、サイバー攻撃、アクセス過多などによりシステムが停止するリスクがあります。これに対し、ネットワークの負荷分散や冗長化など安全性を重視した対策を講じていますが、大規模な障害が発生した場合には社会的信用の低下を招く恐れがあります。

(3) 顧客情報など重要資産の漏洩リスク


事業活動を通じて取引先の重要情報や個人情報を取り扱うため、情報の漏洩や紛失のリスクが存在します。情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格を取得し、委員会を設置して従業員教育や対策を講じていますが、万が一情報漏洩が発生した場合は社会的信用が失墜し、業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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