AnyMind Group 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AnyMind Group 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AnyMind Groupは東京証券取引所グロース市場に上場し、ブランドコマースやパートナーグロース領域でEC及びD2C支援等を提供する企業です。直近の業績は、東南アジアや日本市場での大型顧客獲得により増収を達成した一方、利益水準も着実に改善しており、堅調な成長を続けています。


※本記事は、AnyMind Group株式会社の有価証券報告書(第7期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. AnyMind Groupってどんな会社?


同社グループは、ブランド企業やクリエイター向けにEC支援やマーケティング支援をグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


2016年にシンガポール等で創業しマーケティング支援を開始しました。2019年に日本でAnyMind Groupを設立し、2020年の組織再編で最終親会社となりました。2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場し、近年はマレーシアやベトナムでの企業買収を通じECやライブコマース支援を加速させています。

現在の従業員数は連結で2,160名です。筆頭株主は代表取締役CEOの十河宏輔氏で、第2位は小堤音彦氏、第3位は資産管理業務等を行う日本カストディ銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
十河宏輔 37.69%
小堤音彦 9.61%
日本カストディ銀行(信託口) 8.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは十河宏輔氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
十河宏輔 代表取締役CEO 2010年マイクロアド入社後、アジア各法人のCEO等を経て2016年4月に同社グループを創業。2020年3月より現職。
大川敬三 取締役CFO デロイトトーマツコンサルティング、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て2018年2月に同社グループ入社。2020年3月より現職。


社外取締役は、池内省五(元リクルートホールディングス取締役)、北澤直(元Coinbase CEO)、岡知敬(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネット関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) ブランドコマース(法人ブランド支援)領域


法人クライアントやクリエイター向けに、ブランドの企画からECサイト構築・運用、マーケティング、物流管理に至るまでのバリューチェーン全体をワンストップで支援するサービスを提供しています。インフルエンサーマーケティングやデジタル広告運用、ライブコマース等の各種プラットフォームを展開しています。

収益源は、広告主からのマーケティング報酬や、D2C/ECプラットフォームでの商品販売収益、法人クライアントとのレベニューシェア、月額固定のサブスクリプション利用料など多岐にわたります。運営はAnyMind Japan等の各地域の子会社が主体となって行っています。

(2) パートナーグロース領域


ウェブメディアやアプリ運営者(パブリッシャー)、およびYouTubeやTikTok等の動画配信クリエイターに対して、データ分析や収益化支援、ユーザーエンゲージメント向上等の成長支援ソリューションを提供しています。広告在庫枠の管理やタイアップ案件のマッチング等も行います。

パブリッシャー向けには連携する広告枠の販売に伴う広告収益を、クリエイター向けには動画配信サイトの広告収益やタイアップ案件による収益を受け取ります。これらの総収益からパートナーへ合意した比率で報酬を支払うモデルです。運営はフォーエムなどのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上収益は右肩上がりで拡大を続けており、力強い成長軌道を描いています。利益面では一時的な先行投資の影響で変動が見られるものの、全体として黒字基調を定着させており、着実な収益性の改善と事業規模の拡大を両立させていることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 193億円 248億円 335億円 507億円 573億円
税引前利益 -5億円 3億円 6億円 25億円 14億円
利益率(%) -2.8% 1.3% 1.9% 5.0% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -8億円 2億円 6億円 23億円 9億円

(2) 損益計算書


売上収益および売上総利益はともに増加しており、事業規模の順調な拡大と付加価値の向上が確認できます。一方で、営業利益は成長に向けた各種投資や市場環境の変化に伴い前年を下回っていますが、本業での確かな利益創出を継続しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 507億円 573億円
売上総利益 188億円 219億円
売上総利益率(%) 37.0% 38.3%
営業利益 26億円 18億円
営業利益率(%) 5.1% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が99億円(構成比49%)、支払手数料が30億円(同15%)を占めています。売上原価の内訳としては、サービス提供コストが255億円(構成比72%)、商品原価が99億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「インターネット関連事業」の単一セグメントであるため、全社業績がそのままセグメント業績となります。法人ブランド支援事業が成長を牽引し、東南アジアや日本市場での大型顧客獲得が進んだことで売上規模の拡大が続いています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
インターネット関連事業 507億円 573億円 26億円 18億円 3.1%
連結(合計) 507億円 573億円 26億円 18億円 3.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、業容拡大のための運転資金や人件費等の営業費用を賄うために活用されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、M&A等で一時的に支出超過となることがありますが、中長期的な投資回収を見据えています。財務活動によるキャッシュ・フローは、必要に応じてエクイティファイナンス等で資金調達を行う場合があります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 24億円 3億円
投資CF -13億円 -59億円
財務CF 21億円 44億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Make Every Business Borderless」というミッションを掲げています。国境や産業、オンラインやオフラインなどの制約に捉われず、テクノロジーの力で誰もが簡単にビジネスをできる世界を実現するビジネスインフラとなり、社会に貢献していくことを目指しています。

(2) 企業文化


データとテクノロジーを活用したイノベーションの創出や、革新的な価値提供に向けた挑戦を続ける文化があります。アジアを中心とした多国籍なメンバーで構成され、多様性と包容性を重視しながら、国境や文化の違いを越えて連携し、機動的に事業を推進する組織風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


事業拡大および企業価値向上を示す指標として、売上収益および売上総利益を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでいます。成長が続く市場において、顧客ニーズに対応するためにプラットフォームを進化させ、継続的な成長と顧客基盤の拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


ソフトウェアとオペレーションを組み合わせた「BPaaS」モデルを基盤に、生成AIをプロダクト機能や社内業務プロセスへ活用し、業務効率化と生産性向上を推進します。さらに、M&Aを通じて獲得した技術やノウハウを自社プラットフォームへ統合し、東南アジアを中心とする成長市場においてクロスボーダー展開を加速させていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大に伴い、各国拠点におけるローカルチームの強化と、多国籍な人材が連携して機動的に事業を推進できる組織体制の構築を課題としています。特に、プロダクト開発、データ活用、AI導入等の専門領域における人材の確保と育成を進め、採用力強化や評価・報酬制度の高度化を通じた従業員のエンゲージメント向上を図っています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 86.8%
男女賃金差異(正規) 87.4%
男女賃金差異(非正規) 135.5%

※同社および連結子会社は公表義務に基づく公表項目として選択していないため、有報には女性管理職比率および男性育児休業取得率の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職の女性比率(37%以上)、役員の国籍数(11ヵ国以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マーケティング市場の季節変動性


インフルエンサーマーケティングやデジタルマーケティング市場は広告主の予算配分の影響を強く受け、特に年度末に売上収益が集中する傾向があります。このため、月次業績の変動が起こりやすく、繁忙期に向けた人員確保の体制や広告需要の想定外の下振れが、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 優秀な人材の獲得・育成


事業規模の急速な拡大に伴い、企業のミッションに共感する優秀な人材を継続的に採用し、強固な組織を構築することが不可欠です。求める専門人材が十分に確保・育成できなかった場合や、人材流出が進んだ場合には、事業成長のスピードや組織運営に支障をきたすリスクがあります。

(3) 在庫管理と品質問題


D2C/EC支援や自社ブランドの運営において、商品開発や製造委託事業者の選定を通じた品質管理を徹底していますが、予期せぬ品質不良や大規模なリコールが発生するリスクがあります。また、需要動向の見誤りによる欠品や滞留在庫の発生も、財務状態に影響を与える可能性があります。

(4) 海外事業展開と為替変動


アジアを中心とした15ヵ国・地域でグローバルに事業を展開しているため、各国の政治経済情勢や法的規制、売掛金の回収リスク等の影響を受けます。また、現地通貨での取引が多いため、為替相場の変動により、円換算時の経営成績および財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。