※本記事は、インフォメティス株式会社の有価証券報告書(第13期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. インフォメティスってどんな会社?
同社は、エネルギーデータとAIを掛け合わせた最適化ソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2013年4月に設立され、同年7月にソニーから機器分離推定技術(NILM)を譲渡されて独立しました。2016年に電力見える化サービスを商用化し、2018年には東京電力パワーグリッドと合弁でエナジーゲートウェイを設立しました。2024年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。
同社グループの従業員数は連結で38名、単体で35名です。筆頭株主は事業会社のフォーバルで、第2位は事業会社のTIS、第3位は事業会社の伊藤忠エネクスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| フォーバル | 12.94% |
| TIS | 5.67% |
| 伊藤忠エネクス | 5.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役は只野太郎氏です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 只野太郎 | 代表取締役 | 1991年4月ソニー入社。2013年4月インフォメティス設立、代表取締役就任。エナジーゲートウェイ取締役などを経て現職。 |
| 横溝大介 | 取締役CFO | 2000年11月TAC入社。SBIベリトランスやサイジニア取締役CFOなどを経て、2020年6月インフォメティス入社。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、髙橋元弘(末吉綜合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エナジー・インフォマティクス事業」の単一セグメントを展開しています。
■国内領域
電力消費者向けに電力の見える化や設備の遠隔制御を行う「ienowa」「enenowa」などを提供しています。また、電力事業者向けにはデマンドレスポンス支援サービス「BridgeLAB DR」や簡易電力見える化サービスを展開し、受託開発や実証実験を通じた新たな価値創造にも取り組んでいます。
収益源は、電力センサーの販売や初期設定費用等のアップフロント収益と、アプリ利用料や運用保守料等の継続的なリカーリング収益から成ります。販売は主に、販売代理店であるエナジーゲートウェイを通じて行われています。
■海外領域
英国を拠点とし、欧州圏での脱炭素化を背景としたヒートポンプ(電気給湯器)の最適化制御サービスなどを展開しています。2025年11月からは同社の技術を活用したサービス搭載製品の商業販売が開始されました。
収益源は、現地提携先を通じた電力センサーの販売や、最適化サービスの利用料、特別なシステム開発による受託料金などから構成されます。運営は主に連結子会社であるInformetis Europe Ltd.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2024年12月期まで拡大傾向にありましたが、大口顧客との契約終了の影響で直近は大きく減少しています。利益面では研究開発や事業基盤への投資が先行し赤字が続いており、直近は評価損の計上も重なり大幅な赤字となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6.8億円 | 5.0億円 | 9.2億円 | 9.8億円 | 5.3億円 |
| 経常利益 | -2.6億円 | -3.0億円 | -0.7億円 | 0.6億円 | -7.2億円 |
| 利益率(%) | -38.1% | -60.5% | -7.8% | 5.6% | -135.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -6.4億円 | -2.8億円 | -3.4億円 | -0.5億円 | -7.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い売上総利益も縮小し、売上総利益率は低下しています。一方で、上場維持費用や人材投資等の固定費負担が重く、営業利益は黒字から大幅な赤字へと転落しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9.8億円 | 5.3億円 |
| 売上総利益 | 6.6億円 | 2.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.8% | 51.8% |
| 営業利益 | 0.5億円 | -6.3億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | -118.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.4億円(構成比15%)、減価償却費が1.3億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内領域は、大口顧客との契約終了によりセンサー販売等の収益が減少し、売上高が大幅に縮小しました。一方、海外領域は英国での商業展開が始動し、横ばいで推移しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 国内領域 | 9.7億円 | 5.2億円 |
| 海外領域 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 9.8億円 | 5.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
インフォメティスは、エナジー・インフォマティクス事業を単一セグメントで展開しています。当連結会計年度は、営業活動により資金を使用しました。これは、主に減価償却費の計上や売上債権の減少があったものの、税金等調整前当期純損失が影響したためです。投資活動では、無形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、短期借入金の増加や長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済により、前年同期と比較して得られた資金は減少しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.1億円 | -4.4億円 |
| 投資CF | -3.2億円 | -2.8億円 |
| 財務CF | 6.4億円 | 3.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「エネルギーデータの力で、暮らしの未来を変えていく。」をミッションとして掲げています。エネルギーとAIをコア技術とし、エネルギー最適化ソリューションを提供することで、日本および世界でのカーボンニュートラルの社会実装に挑み続けています。
■(2) 企業文化
エネルギーとテクノロジーの両領域に精通した優秀な人材の確保と育成を重視しています。また、高いレベルのAIやデータ活用、ソフトウェア開発を実践するため、すべての従業員がパフォーマンスを最大限発揮できる職場環境や公平な評価制度の実現に努めています。
■(3) 経営計画・目標
SaaS型収益モデルを採用しているため、事業の成長率を正しく評価する基準として「ARR(Annual Recurring Revenue:年次経常収益)」を経営指標に位置付けています。ストック型ビジネスの拡大により、長期的かつ安定的な収益基盤の確立を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
次世代スマートメーターによる高精細電力データの活用に向けた技術開発や、アライアンス体制の構築・強化を推進しています。また、英国を拠点とした欧州各国への展開を加速し、ヒートポンプの最適化制御サービスなど、グローバルな成長戦略を展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
エネルギーとテクノロジーの両面に精通した人材を確保するため、国内外での積極的な採用活動を行っています。従業員に対しては、現場でのOJTに加え多様な研修制度を導入し、プロフェッショナルとして能力を発揮できる環境整備と評価制度の構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 45.4歳 | 6.1年 | 8,020,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) エネルギーデジタル市場の成長鈍化
エネルギーマネジメントシステム関連市場は拡大が見込まれていますが、市場が想定どおりに成長しない場合、同社グループの事業計画や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) AIデータ分析分野での競合激化
AIを利用した電力データ分析市場には海外を中心に競合企業が複数存在します。競合他社がより優れたサービスを提供した場合、競争力が低下し、収益に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 半導体等部材の調達とコスト上昇
電力センサーの製造に必要な半導体等の部材が需給逼迫によりタイムリーに調達できない場合や、調達コスト・物流コストが急騰し製品価格に転嫁できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 欧州等の海外市場開拓の遅延
欧州圏でのヒートポンプ普及を背景とした海外展開を進めていますが、優秀な人材の確保が進まない場合や、現地の法規制、エネルギー市場の変革に遅れをとった場合、海外事業の成長が阻害される可能性があります。



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