サイフューズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイフューズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイフューズは東京証券取引所グロース市場および福岡証券取引所Q-Boardに上場する、細胞製品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務を展開する企業です。2025年12月期の売上高は前年比で大幅な増収(約4.2倍)となり、研究開発投資の効率化等により営業損失の幅は縮小しています。


※本記事は、株式会社サイフューズの有価証券報告書(第16期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サイフューズってどんな会社?


人工材料を使用せず、細胞のみで立体的な組織・臓器を作製する革新的な「3D細胞製品」の実用化を目指す再生医療ベンチャーです。

(1) 会社概要


2010年にサイフューズとして設立され、2012年にはバイオ3Dプリンタ「regenova」の販売を開始しました。2022年に東京証券取引所グロース市場に上場し、2023年には創薬支援向けの3D細胞製品「ヒト3Dミニ肝臓」の販売を開始しました。2025年に福岡証券取引所Q-Board市場へ重複上場しています。

従業員数は単体で23名です。筆頭株主は金融商品取引業者のSBI証券で、第2位は創業者の秋枝静香氏、第3位は投資・金融業務等を行うSBI Ventures Twoです。

氏名 持株比率
SBI証券 5.56%
秋枝静香 5.31%
SBI Ventures Two 4.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役の秋枝静香氏らが経営を牽引しており、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
秋枝静香 代表取締役 2004年九州大学大学院研究員、2010年サイフューズ入社、2016年取締役、2018年より現職。
三條真弘 取締役CFO経営管理部長 2000年リソー教育入社、2008年シンバイオ製薬入社、2015年サイフューズ入社、2018年より現職。
岸井保人 取締役事業推進部長 2003年マイクロンジャパン入社、2008年三菱電機入社、2015年サイフューズ入社、2026年より現職。


社外取締役は、吉岡康弘(元富士フイルム再生医療研究所長)、鈴木邦彦(元メディネット社長)です。

2. 事業内容


同社は「細胞製品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務」の単一セグメントにおいて、再生医療・創薬支援・デバイスの3つの領域で事業を展開しています。

(1) 再生医療領域


人工材料を使用せず、細胞のみで立体的な組織・臓器を作製する独自の基盤技術を用い、新しいコンセプトの再生医療等製品の開発を行っています。主に末梢神経再生、骨軟骨再生、血管再生等のパイプライン開発を進め、医療機関等に提供しています。

収益は主に大学や研究機関、提携企業との共同開発や研究用3D細胞製品の各種受託等から得ています。運営はサイフューズが行い、太陽ファルマテックなどのパートナー企業とともに製造販売体制の構築を進めています。

(2) 創薬支援領域


製薬企業や非臨床試験受託企業等に向け、ヒト細胞のみから成る3D細胞製品の開発・販売を行っています。「ヒト3Dミニ肝臓」をはじめとする機能性細胞デバイスを提供し、新薬開発の安全性・有効性評価を支援しています。

収益は製品の販売や共同研究、受託試験の対価として製薬企業等から受け取ります。運営はサイフューズが行っており、新たに脂肪性肝炎(MASH)領域の疾患モデルの販売も開始し、創薬プロセスの強力なサポート体制を整えています。

(3) デバイス領域


独自の基盤技術を搭載したバイオ3Dプリンタを中心としたデバイス及び関連消耗品の開発・製造・販売を行っています。また、細胞製品の商業生産を視野に入れた次世代装置や自動化技術の開発にも注力しています。

収益はバイオ3Dプリンタの機器販売および専用消耗品類の販売等によるベース収益で構成されます。運営はサイフューズが行っており、PHC等のパートナー企業との連携を通じて、生産技術開発や自動化技術の進展を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、製品開発に伴う先行投資が継続しているため経常損失が続いていますが、2025年12月期はデバイスの普及や3D細胞製品の販売進展等により売上高が大きく回復し、経常損失の幅も縮小傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 7.1億円 3.7億円 0.6億円 0.5億円 2.3億円
経常利益 1.4億円 -4.3億円 -5.9億円 -8.7億円 -7.6億円
利益率(%) 20.5% -115.7% -959.2% -1597.4% -329.6%
当期純利益 1.4億円 -4.7億円 -5.9億円 -8.7億円 -7.6億円

(2) 損益計算書


売上高はバイオ3Dプリンタや3D細胞製品の販売増により大幅に伸長し、売上総利益率も改善しています。研究開発投資を継続しつつも製造プロセスの効率化を図り、営業損失幅は縮小しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 0.5億円 2.3億円
売上総利益 0.2億円 1.1億円
売上総利益率(%) 30.9% 49.3%
営業利益 -9.0億円 -8.3億円
営業利益率(%) -1645.9% -358.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が4.2億円(構成比44%)、役員報酬が1.2億円(同13%)を占めています。売上原価においては、材料費が0.4億円(構成比34%)、経費が0.2億円(同16%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントで事業を展開しており、足元のベース収益となるデバイス販売や3D細胞製品の販売、各種受託の進展により、当期の売上高は前期比で大幅な増収となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
細胞製品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務 0.5億円 2.3億円
連結(合計) 0.5億円 2.3億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のための借入や株式発行等で資金を調達し、研究開発への投資を継続する勝負型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -7.6億円 -5.3億円
投資CF -0.1億円 -4.0億円
財務CF -0.5億円 12.6億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.3%で、グロース市場の製造業平均をやや下回る水準となっています。なお、ROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていません。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「細胞から希望をつくる」「革新的な三次元細胞積層技術の実用化を通じて医療の飛躍的な進歩に貢献する」を企業理念に掲げています。人工の足場材料を用いることなく細胞だけで立体的な組織・臓器を作製し、再生医療や創薬分野において社会貢献することを企業使命としています。

(2) 企業文化


役職員のワークライフバランスの実現とパフォーマンス最大化を目指して、役職員自らが価値創造へ向けた最適な環境を構築していく独自の環境整備活動「まほろばプロジェクト」を推進し、多様な人材が活躍できる組織文化の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な事業戦略として、バイオ3Dプリンタの普及によりベース収益を確保し、研究用組織での細胞製品の実用化を経て、再生医療等製品の承認取得を目指しています。現在は先行投資の段階にあり、十分な手元流動性を確保し、安定した資金力(キャッシュポジション)を維持することを重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「強固な事業基盤の構築」「経営基盤の強化」「人的資本経営の拡充」を重点施策としています。専門性の高いパートナー企業との強固な共同開発体制を構築し、製品上市へ向けた臨床開発を加速させます。また、バイオ3Dプリンタの普及や自動化技術の開発により基盤技術のプラットフォーム化を推進し、将来の商業生産を支える産業化技術基盤の確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業成長と価値創造の源泉は「人」にあるとし、独自の技術情報を継承する高度専門人材の確保と育成、次世代リーダーの育成に注力しています。すべての社員がライフステージに合わせた柔軟な働き方で能力を発揮できる体制を構築し、人的資本経営に基づく持続的な組織成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.8歳 5.8年 9,351,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 先端医療製品の研究開発に関するリスク


再生医療の基盤となる技術が急速に進歩する中で、新技術による同社技術の陳腐化や、現時点では想定できない副作用等の安全上の課題が顕在化する可能性があります。また、臨床試験に必要な症例の確保が困難になる等、開発が遅延するリスクがあります。

(2) 法規制の変化に由来するリスク


再生医療等製品に関する法規制やガイドラインは継続的に見直されています。将来的な法改正により、より厳格な品質管理基準への適合を求められたり、従来使用が認められてきた原材料の使用が制限されたりする可能性があり、事業展開に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 製品の安全性と製造に関するリスク


ヒト細胞を原材料として使用するため、感染の危険性を完全に排除することは困難です。また、製品の製造プロセスにおける不適合品の発生や不適切な取扱いに起因して、製品の自主回収や損害賠償請求等が発生し、社会的信頼や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 知的財産権に関するリスク


同社は事業の核となる基盤特許を自社で権利確保し、強固な技術的参入障壁を構築しています。しかし、出願中の特許が成立しない場合や、事業に必要な特許が確保できない場合、第三者が同等のノウハウを独自に開発した場合には、技術的優位性が低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。