トリドリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トリドリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トリドリは東京証券取引所グロース市場に上場し、多様なインフルエンサーを支援するインフルエンス・プラットフォーム事業を展開する企業です。企業とインフルエンサーを繋ぐマッチングサービス等を運営し、企業の認知や集客課題を解決しています。直近の業績は売上高および経常利益ともに増収増益と好調に推移しています。


※本記事は、株式会社トリドリの有価証券報告書(第10期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トリドリってどんな会社?


同社はインフルエンサーの価値を最大化するプラットフォーム事業を展開し、企業のマーケティングを支援しています。

(1) 会社概要


2016年に設立し、成果報酬型広告の仲介サービスを開始しました。2018年には中核となるインフルエンサーと中小企業のマッチングプラットフォームを開始し、2020年にトリドリへ商号変更しています。その後も子会社化等で事業領域を広げ、2022年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で136名、単体で53名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の代表取締役社長CEOである中山貴之氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は投資事業有限責任組合となっています。個の時代を牽引する多様なインフルエンサーの支援体制をグループ全体で強化しています。

氏名 持株比率
中山 貴之 31.39%
日本カストディ銀行(信託口) 9.83%
Global Catalyst Partners Japan2号投資事業有限責任組合 5.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは中山貴之氏が務めています。取締役5名のうち社外取締役が2名を占めています。

氏名 役職 主な経歴
中山 貴之 代表取締役社長CEO 2016年に同社を設立し、代表取締役社長に就任。2023年より現職。
井上 智裕 取締役COO 2010年にファンコミュニケーションズに入社。2016年に同社に入社し、2021年に執行役員に就任。2023年より現職。
森田 一樹 取締役CFO 2005年に監査法人トーマツに入所。マクロミルなどを経て2020年に同社へ入社し、2021年に取締役に就任。2023年より現職。


社外取締役は、高安聡氏(ノースブルー総合法律事務所パートナー)、長谷部潤氏(東京リレーションズ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、インフルエンス・プラットフォーム事業の単一セグメントにおいて、顧客規模に応じた事業を展開しています。

(1) プロダクト領域


中小企業や個人事業主向けに、企業が直接インフルエンサーにPR投稿を依頼できるプラットフォーム「toridori base」等を提供しています。飲食や美容業界を中心に幅広い業種の顧客が利用し、AIを活用して最適なインフルエンサーの選定から運用までを自動化するサービスも展開しています。

収益源は主に顧客企業から受け取る月額使用料や、予算に応じた従量課金型の利用料です。一方、インフルエンサーにはサービスを無料で提供し、収益機会や活動支援を行っています。運営は同社およびグループ会社が行い、低価格帯での認知拡大や集客に向けたマーケティング活動を強力に支援しています。

(2) マーケティングパートナー領域


中堅・大手企業を主な対象として、マーケティング戦略の策定から広告企画、効果測定までを一気通貫で支援する総合広告代理店サービスや、幅広い層のインフルエンサーに特化した成果報酬型広告サービスを提供しています。また、インフルエンサー自身のブランド立ち上げや運営を共同で行う支援も手掛けています。

収益モデルは広告代理業務に係る手数料収入、成果発生件数に応じた成果報酬、およびブランド商品の販売実績に基づく収入など多岐にわたります。運営は同社や子会社のGIVINなどが行い、事業戦略に基づいたプロモーション支援と、インフルエンサーの新たな収益機会の創出を両立させています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、事業規模の順調な拡大が伺えます。経常利益についても、投資先行によるマイナスから黒字化を果たし、その後も利益率を継続的に改善させながら順調に利益を積み上げています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 10.6億円 20.5億円 32.2億円 42.7億円 53.7億円
経常利益 -4.0億円 -3.9億円 1.2億円 4.4億円 7.0億円
利益率(%) -38.2% -19.1% 3.6% 10.2% 13.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.9億円 -7.1億円 1.1億円 1.6億円 6.0億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益率も改善傾向にあるなど、本業の収益性が高まっていることがわかります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 42.7億円 53.7億円
売上総利益 39.1億円 49.0億円
売上総利益率(%) 91.6% 91.1%
営業利益 4.5億円 7.1億円
営業利益率(%) 10.6% 13.2%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費及び販売促進費が18.5億円(構成比44%)、給料及び手当が7.1億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


単一セグメントであるものの、サービス区分別に見るといずれの領域も売上を大きく伸ばしています。特にプロダクト領域が牽引役となり、全体の成長を力強く押し上げています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
プロダクト領域 26.9億円 34.7億円
マーケティングパートナー領域 15.8億円 19.0億円
連結(合計) 42.7億円 53.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 1.0億円 4.0億円
投資CF -9.1億円 -5.8億円
財務CF 7.2億円 5.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は『「個の時代」の、担い手に。』というミッションを掲げています。インフルエンサーを基軸としたプラットフォームを構築することで、様々な企業がSNSを効果的に活用し、インフルエンサーがより活躍できる世界を目指しています。そして、細分化された消費者のニーズにマッチするより良い社会の実現を追求しています。

(2) 企業文化


同社は、多様なバックグラウンドや経験を有する人材が存分に能力を発揮できる組織風土の醸成を重視しています。思想や信条、性別、国籍、採用区分にとらわれず、個々の経験や能力、多様な視点と価値観を尊重し合う姿勢を大切にしており、働きやすさの向上と生産性の両立を目指す環境づくりが継続的に推進されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度から2027年度を対象とする中期経営計画を策定し、目標達成に向けた取り組みを進めています。社会に与えるインパクトと成長可能性を勘案し、特に注力サービスである「toridori base」の売上総利益の成長を企業価値向上に直結する重要指標と位置づけ、顧客数などの動向を注視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、価値の源泉であるインフルエンサーデータベースのデータ量拡充と機械学習の強化を掲げています。また、中小事業者向けには店舗やEC事業者向けにサービスを細分化し、中堅・大手企業向けにはM&A等を通じて課題解決能力を強化することで、持続的な成長と市場シェアの拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業の成長フェーズに応じた組織体制の確立と、優秀な人材の継続的な確保および早期戦力化を人材戦略の軸に据えています。各職種の期待水準を明確化した評価制度の運用や、OJTを中心とした実践的な研修プログラムを通じて能力開発を促進するとともに、柔軟な働き方を選択できる環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 32.1歳 2.2年 4,735,808円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) SNSプラットフォームの利用動向と規制変更


同社の事業は主要SNS上でのマーケティングを中心としているため、ユーザーの利用動向の変化や、新たなSNSの流行に対する対応の遅れが業績に影響を及ぼす可能性があります。また、SNSの広告関連の規約変更によって従来の手法が利用できなくなるリスクや、セキュリティ問題による信頼性低下への対応も課題となります。

(2) 不適切な投稿によるブランドイメージの悪化


インフルエンサーのSNS投稿において、ステルスマーケティング等の広告関連法令への違反や、第三者の著作権・肖像権の侵害、不適切な発言による炎上が発生した場合、同社グループの社会的信用やブランドイメージが悪化するリスクがあります。これらを未然に防ぐため、厳格な広告審査体制やチェック体制を構築しています。

(3) M&A戦略の未達に伴う減損リスク


同社は成長戦略の一環として、既存事業とのシナジーが見込める企業を対象としたM&Aを積極的に推進しています。しかし、事前のデューデリジェンスを経ても、買収後の事業展開が計画通りに進捗しなかった場合、のれんの減損損失等が発生し、グループの財政状態やキャッシュ・フローに大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。